「入院中に一時外泊するのですが、その間も訪問看護は使えますか?」——退院前の外泊時に、在宅での生活に不安を感じるご家族から、よく聞かれる質問です。実は入院中の外泊であっても、要件を満たせば訪問看護を利用できる制度が用意されています。
この記事では、外泊中の訪問看護(訪問看護基本療養費Ⅲ)の対象者・点数・算定回数を、厚生労働省の告示に基づいて整理します。
- 入院中の外泊時に訪問看護を利用できる根拠制度
- 外泊中の訪問看護で使われる医療保険(訪問看護基本療養費Ⅲ)の点数
- 算定できる対象者と回数の違い
- 外泊中に訪問看護を利用した方がよいケース
目次
入院中の外泊時にも訪問看護は利用できる
結論として、入院中の患者が在宅療養に向けて一時的に外泊する場合、その外泊期間中に訪問看護を利用することができます。退院後いきなり在宅生活に戻るのではなく、外泊という「お試し期間」の中で、看護師が自宅の環境や介護状況を確認できる貴重な機会になります。

外泊時に訪問すると、病院の面談だけではわからなかった住宅環境や、実際の介護負担が見えてきます。退院後にトラブルが起きないよう、外泊中に一度介入できるかどうかは、その後の在宅生活の安定度を大きく左右します。
外泊中の訪問看護は医療保険を使用
外泊中の訪問看護は、介護保険ではなく医療保険の「訪問看護基本療養費(Ⅲ)」で算定されます。厚生労働省告示(訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法)によれば、点数は次の通りです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 療養費名 | 訪問看護基本療養費(Ⅲ) |
| 点数 | 8,500円(1日につき) |
| 算定対象 | 入院中で、在宅療養に備えて一時的に外泊している患者 |

外泊中の訪問看護に関する算定要件
対象者と算定回数
厚生労働省告示によれば、算定できる回数は対象者の状態によって異なります。
| 対象者 | 算定できる回数 |
|---|---|
| 特掲診療料の施設基準等別表第七に掲げる疾病等の者 | 入院中2回まで |
| 特掲診療料の施設基準等別表第八に掲げる者 | 入院中2回まで |
| その他、在宅療養に備えた一時的な外泊にあたり訪問看護が必要と認められた者 | 入院中1回まで |
別表第七・別表第八は、厚生労働大臣が定める「特掲診療料の施設基準等」(平成20年厚生労働省告示第63号)に基づく分類で、末期の悪性腫瘍、神経難病、気管切開・人工呼吸器管理が必要な状態など、医療依存度の高い疾病・状態が該当します。該当するかどうかは主治医が判断します。
別表第七・第八への該当有無は、疾患名だけで機械的に判断できるものではありません。実際の該当性は主治医が個々の患者の状態を踏まえて判断するため、対象になるかどうか迷う場合は、入院先の主治医・看護師にまず確認しましょう。

外泊中に訪問看護の利用をしたほうがよいケース
- 退院後に自宅で初めて医療処置(カテーテル管理、痰吸引等)を家族が行うことになる場合
- 在宅酸素療法や中心静脈栄養など、医療機器の管理が必要な場合
- 住宅環境(段差、動線、手すりの要否等)を実際に確認しておきたい場合
- 家族の介護負担・不安が大きく、外泊中に一度専門職の目でサポート体制を確認したい場合
特に、退院後いきなり在宅療養が始まると、家族が対応しきれず再入院につながるケースもあるため、外泊中の訪問看護は退院後の生活を安定させるための重要なステップと位置づけられています。
外泊中の訪問看護の流れ
- 主治医が外泊を許可する病状が安定し、外泊が可能と判断された段階で、主治医が外泊の許可を出す。
- 訪問看護指示書を交付してもらう入院先の主治医、または退院後にかかる予定の主治医から、外泊期間に対応した訪問看護指示書を発行してもらう。
- 訪問看護ステーションと調整する利用予定の訪問看護ステーションに連絡し、外泊期間中の訪問日程を調整する。
- 外泊期間中に訪問・状態確認実際の住環境・介護体制を確認し、必要な指導や助言を行う。
- 病院へ報告し、退院に備える訪問看護の結果を入院先の病院・主治医に報告し、退院後の支援体制の最終調整を行う。
外泊中に体調が悪化した場合はどうする?
外泊中に体調の変化があった場合は、まず訪問看護ステーションまたは入院先の病院に速やかに連絡することが基本です。訪問看護師は病状悪化の兆候を確認し、必要に応じて主治医への報告や、外泊の中断(入院への切り替え)を提案することもあります。
外泊は「在宅生活が可能かどうかを見極めるお試し期間」でもあります。うまくいかない部分が見つかったとしても失敗ではなく、退院までに対策を講じるための貴重な情報として活用しましょう。
退院後も同じ訪問看護ステーションを使えるか
外泊中に訪問した訪問看護ステーションが、退院後もそのまま在宅療養を担当するケースは多くありますが、必須ではありません。地域や利用者さんの希望によっては、外泊中の訪問と退院後の訪問で異なる事業所が対応することもあります。外泊中の訪問を、退院後の事業所選びの判断材料にするという視点を持っておくとよいでしょう。
よくある質問
外泊中の訪問看護は誰が費用を負担しますか?
医療保険が適用されるため、利用者は自己負担割合(1〜3割等)に応じた費用を負担します。具体的な負担額は保険の種類や年齢によって異なるため、詳しくは訪問看護ステーションまたは医療機関にご確認ください。
外泊中に複数回訪問してもらうことはできますか?
対象者の分類(別表第七・第八に該当するか等)によって、入院中に算定できる回数の上限が異なります。詳細な回数は主治医・訪問看護ステーションに確認しながら計画することが必要です。
訪問看護指示書はどのタイミングで準備すればよいですか?
外泊の許可が出た段階で、早めに主治医へ指示書の発行を依頼するのが望ましいです。準備に時間がかかる場合もあるため、外泊予定が決まったらできるだけ早く相談しましょう。

まとめ|外泊中も訪問看護で在宅生活の準備ができる
入院中の外泊は、退院後の在宅療養に向けた大切な準備期間です。訪問看護基本療養費(Ⅲ)を活用することで、外泊中に専門職の目で住環境や介護体制を確認でき、スムーズな退院・在宅移行につなげられます。
- 入院中の外泊時も、医療保険(訪問看護基本療養費Ⅲ・1日8,500円)で訪問看護を利用できる
- 別表第七・第八に該当する場合は入院中2回、それ以外は1回まで算定できる
- 該当性の判断は主治医が行うため、対象かどうかは早めに確認する
- 外泊中の訪問看護は、退院後の在宅生活を安定させるための重要なステップ
外泊の予定が決まったら、早めに主治医・訪問看護ステーションに相談し、必要な準備を進めましょう。
- 厚生労働省告示「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法」(平成20年3月5日厚生労働省告示第67号)
- 厚生労働省保医発0305第7号(令和6年3月5日)(特掲診療料の施設基準等別表第七・第八の根拠等)
算定要件・該当性の詳細は、個々の病状によって判断が異なります。実際の適用にあたっては、主治医・訪問看護ステーション・医療機関にご確認ください。























