令和8年10月19日に開かれた第271回社会保障審議会介護給付費分科会で、厚生労働省は令和9年度介護報酬改定に向けた訪問看護の論点と対応案を示しました。緊急時訪問看護加算を算定している利用者への月初回の夜間・深夜・早朝の緊急訪問でも、早朝・夜間加算と深夜加算を算定できるようにする案や、理学療法士等による訪問看護の評価の見直しなどが並んでいます。
単位数はまだ示されていませんが、訪問看護の改定の方向性が具体的に見えてきました。経営者・管理者が押さえておきたいポイントを整理します。
- 第271回介護給付費分科会(令和8年10月19日)の議題と資料
- 訪問看護の4つの論点と、事務局が示した対応案の中身
- 緊急時訪問看護加算と早朝・夜間、深夜加算の見直し案の背景データ
- 訪問看護ステーションへの影響と、今から準備しておきたいこと
目次
何が決まったのか(ニュースの概要)
厚生労働省は令和8年10月19日(月)10:00〜13:00、第271回社会保障審議会介護給付費分科会をWeb会議で開催しました。議題は「令和9年度介護報酬改定に向けて」で、訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導、居宅介護支援の6サービスが取り上げられました。
訪問看護については、資料3「訪問看護」で4つの論点と、それぞれの対応案が示されています。対応案は「〜してはどうか」という事務局の提案で、決定事項ではありません。単位数や算定要件は今後の議論を経て決まります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会議名 | 第271回社会保障審議会介護給付費分科会 |
| 開催日 | 令和8年10月19日(月)10:00〜13:00(Web会議) |
| 議題 | 令和9年度介護報酬改定に向けて(各サービス) |
| 資料 | 資料1 訪問介護/資料2 訪問入浴介護/資料3 訪問看護/資料4 訪問リハビリテーション/資料5 居宅療養管理指導/資料6 居宅介護支援 |
| 位置づけ | 論点と対応案の提示。単位数・算定要件は示されておらず、今後の議論で決まる |

10月9日の第269回(看多機の回)で「訪問看護の分科会で議論する予定」とされていた残薬確認なども、今回の資料に入っています。訪問看護の改定の中身を読むうえで、いちばん大事な資料になりそうです。
内容の詳細
訪問看護の4つの論点と対応案
資料3では、次の4つの論点が示されました。主な対応案を表にまとめます。
| 論点 | 主な対応案(資料3より要約) |
|---|---|
| ①在宅療養を支える訪問看護提供体制の強化 | ・緊急時訪問看護加算を算定していても、月初回の夜間等の緊急訪問で早朝・夜間加算、深夜加算を算定可能にする ・事故発生時等の安全管理体制に関する研修を受けることが望ましい旨を運営基準に加える ・サテライト設置について、より具体的な要件の目安を自治体に示す ・専門管理加算の評価対象を拡充する(認知症の利用者への支援など) ・事業所の実態に応じて、看護体制強化加算でターミナルケア加算を評価する ・残薬の確認と医師・薬剤師等への報告を運営基準上の要件にする ・在宅難治性皮膚疾患処置指導管理を受けている利用者を、特別管理加算(Ⅱ)・長時間訪問看護加算の対象に加える |
| ②訪問看護におけるICT等の活用の推進 | ・D to P with N(看護師等が同席するオンライン診療)の補助を行った場合の評価を新設する ・地域の医療機関等とICTで情報連携した場合の評価を設ける |
| ③期待される役割を踏まえた評価の見直し | ・算定率の低い介護予防訪問看護の初回加算(Ⅰ)を簡素化する ・理学療法士等による訪問看護について、サービスの提供体制や実績等を踏まえた評価の見直しをどう考えるか ・看護体制強化加算の経過措置(附則)を終了する |
| ④住まいの形態に合わせたサービス提供に係る報酬の在り方 | 同一建物等の居住者へのサービス提供のあり方をどう考えるか(高齢者住まいに関する分科会で説明・議論予定) |
緊急時訪問看護加算と早朝・夜間、深夜加算の関係
現行の介護保険では、緊急時訪問看護加算を算定している利用者に時間外の緊急訪問をした場合、月の初回は早朝・夜間、深夜の加算を算定できず、2回目以降の緊急訪問から算定できるルールです。医療保険では、夜間・早朝訪問看護加算や深夜訪問看護加算は緊急訪問看護加算と併算定できる扱いになっており、資料でもこの違いが整理されています。
資料には、全国訪問看護事業協会・日本訪問看護財団のアンケート(令和7年12月〜令和8年2月の3か月間)の結果が載っています。
| 時間帯 | 緊急訪問があった事業所 | うち月初回のため加算を算定できなかった利用者がいた事業所 | 1事業所あたりの算定できなかった利用者数(3か月) |
|---|---|---|---|
| 夜間(18〜22時) | 913事業所 | 570事業所 | 1.2人 |
| 深夜(22〜6時) | 618事業所 | 334事業所 | 0.8人 |
| 早朝(6〜8時) | 534事業所 | 304事業所 | 0.6人 |
関係団体は、夜間対応の手当の原資を確保する観点から、この要件の見直しを求めていました。今回の対応案は、その要望に沿った内容です。
理学療法士等による訪問看護は「論点」の段階
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士による訪問看護は、令和6年度改定で、前年度のリハ職の訪問回数が看護職員の訪問回数を超える事業所などに「1回につき8単位減算」が新設されました。今回の資料では、これまでの分科会で「リハ職の訪問が主体の事業所は、本来の訪問看護の姿と離れている」といった意見が出ていたことが整理されています。
対応案の表現は「サービスの提供体制や実績等を踏まえた評価の見直しについてどのように考えるか」にとどまっており、どのように見直すかの具体案はまだ示されていません。

月初めの夜中の緊急訪問は、現場の負担がいちばん大きいのに加算がつかない、というのが長年の声でした。オンコール手当の原資に直結する話なので、今後の議論をしっかり追いたいところです。
訪問看護ステーションへの影響
対応案がそのまま実現するとは限りませんが、方向性としては次のような影響が考えられます。
- 夜間・深夜・早朝の緊急訪問が多い事業所:月初回の緊急訪問にも時間帯の加算がつけば、収入が増える可能性があります
- リハ職の訪問が多い事業所:令和6年度に続き、評価の見直しの対象になる可能性があります。見直しの内容次第では収入への影響が大きくなります
- サテライトを多く設置している法人:自治体に示される要件の目安によっては、運営体制の見直しが必要になる可能性があります
- すべての事業所:残薬確認と医師・薬剤師等への報告、安全管理の研修が運営基準に入れば、手順書や記録様式の整備が必要になります
- 看護体制強化加算の経過措置を使っている事業所:経過措置が終了すれば、要件を満たせない場合は算定できなくなります
- 認定看護師などが在籍する事業所:専門管理加算の対象が広がれば、新たに算定できる可能性があります
今回示されたのは論点と対応案で、決定事項ではありません。単位数や算定要件は、今後の分科会の議論、審議報告、告示・通知などを経て決まります。
今からやるべき実務対応
- 時間外の緊急訪問の実績を集計する月初回の夜間・深夜・早朝の緊急訪問で、時間帯の加算を算定できなかった件数を把握しておきましょう。見直しが決まったときの収入への影響をすぐ試算できます。
- リハ職と看護職員の訪問回数の比率を確認する前年度・今年度の訪問回数の比率と、緊急時訪問看護加算・特別管理加算・看護体制強化加算の算定状況を整理しておきましょう。
- 残薬確認の手順と記録を整える利用者宅での残薬確認や、主治医・薬剤師への報告をどのように行い、どこに記録しているかを確認しておきましょう。
- 次回以降の分科会資料を確認する今後の分科会で議論が続き、審議報告に向けて内容が固まっていきます。資料は厚生労働省の分科会ページに掲載されます。
第271回介護給付費分科会で、訪問看護の報酬は決まりましたか?
決まっていません。第271回で示されたのは論点と事務局の対応案です。単位数や算定要件は示されておらず、今後の議論を経て決まります。
緊急時訪問看護加算と早朝・夜間、深夜加算について、どのような案が示されましたか?
現行では、緊急時訪問看護加算を算定している利用者への月初回の緊急訪問では早朝・夜間、深夜の加算を算定できません。対応案として、月初回の訪問時に緊急時訪問看護加算を算定している場合も、早朝・夜間加算と深夜加算を算定できるようにする案が示されました。
理学療法士等による訪問看護の減算は、さらに厳しくなりますか?
現時点ではわかりません。資料では、サービスの提供体制や実績等を踏まえた評価の見直しをどう考えるかという形で論点が示された段階で、具体的な見直し案はまだ示されていません。
まとめ|訪問看護の改定の方向性が見えてきた
第271回介護給付費分科会で、令和9年度介護報酬改定に向けた訪問看護の論点と対応案が示されました。夜間の緊急訪問の評価や残薬確認など、現場の実務に直結する内容が多く含まれています。
- 令和8年10月19日の第271回分科会で、訪問看護を含む訪問系6サービスの論点が示された
- 訪問看護の論点は「提供体制の強化」「ICT等の活用」「役割を踏まえた評価の見直し」「住まいの形態に合わせた報酬」の4つ
- 月初回の緊急訪問でも早朝・夜間加算、深夜加算を算定できるようにする対応案が示された
- 残薬確認・報告の運営基準化、D to P with Nの評価新設、ICT連携の評価なども対応案に入った
- 理学療法士等による訪問看護の評価の見直しは、具体案のない論点の段階
- 単位数・算定要件は未提示で、今後の議論で決まる
緊急訪問やリハ職の訪問の実績を今のうちに集計しておくと、改定内容が固まったときにすぐ影響を試算できます。





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