食事療法⑬ 困難事例 ~食事指導実践編~

 

Ns藤井

みなさん、こんにちは!看護師の藤井美幸です。

今回は、食事療法の13回目となります。

「困難事例 食事指導実践編」についてお話したいと思います。

今回のキーワードは「聴く」です。

 

間違いを指摘しない

医療従事者は、知らず知らずのうちに、対象者の話を聴いたつもりになりがちです。

 

 

そして問題があると分かると、その対象者を「変えてあげよう」という感情が根付きます。

相手の間違いを指摘してしまっているんですね。

 

 

どう考えても、このままの食事を続けていたら、糖尿病が悪化し、合併症を起こす可能性がある対象者がいます。

 

 

そこで、対象者の食習慣や生活習慣について以下のように話します。

 

このままの食事を続けると、糖尿病が悪化しますよ!合併症が起こりますよ!

 

正論ですし、間違っていないです。

しかし、対象者は、「分かっているけどできない!」と思っている人がほとんどです。

これは、対象者の行動を否定することになってしまっています。

正論は凶器となり得ます。

 

 

Ns藤井
私も、過去にこのような指導をいっぱいしてきました。

 

では、どうしたらいいのでしょうか?

医療従事者として、伝えなければならないことはたくさんありますよね。

それを伝えずに、どうやって指導するの?って思いますよね。

対象者の行動を変えようと思ったら、まずはとにかく「聴く」ことが大切です。

間違いを指摘せずに、「聴く」ことに徹します。

指摘したいところを我慢し、なぜそうなっているか、対象者の話をじっくりと聴いてみてください。

 

 

どう考えても、このままの食事を続けていたら、糖尿病が悪化し、合併症を起こす可能性がある対象者がいます。

話を聴くと、「ずっと偏った食事で、ろくな物を食べていないです。」と言っています。

 

 

色々と言いたいところをぐっとこらえ、以下のように伝えます。

 

ろくな物を食べていないって思われているんですね。

どうしてですか?

 

すると対象者から、「炭水化物や糖質は血糖値が上がる原因と分かっている」、「妻が亡くなってから食生活が乱れた」、「ご飯を作るのも大変」といった話が聴けました。

 

 

さらに聴き続けていきます。

 

それでもきちんと食事をしようとされているんですね。

素晴らしいですね。

何かご自身で気をつけていることはありますか?

 

すると、「野菜はなるべく食べようと思っているが、余り好きではない」、「温かいものが食べたいから、うどんとかラーメンとかになってしまう」と話してくれました。

 

上記の例は、とにかく話を聴くことで、対象者の状況や行動の理由が知ることができました。

これは、「聴く」ことで対象者を受容することができたということです。

 

 

そうすると、対象者は「この人は話を聴いてくれる」、「この人の言うことだったらやってみよう」など、共感してもらえたといった感情が起こります。

 

 

そのことは対象者の行動を変えるきっかけとなり、信頼関係を築くことができます。

医療従事者としてのアセスメントを保ちながら、対象者とともに問題解決方法を見出していきます。

 

 

Ns藤井
それでは、私が実際に経験した事例をお話します。

 

困難な事例

困難であったのは、以下のような理由で訪問拒否があったためです。

 

訪問拒否の理由
  • 誰とも会いたくない
  • 話をすることもない
  • 一人でも大丈夫
  • 家に色々な人が来るのが嫌

 

 

そんな中でも訪問をしなければいけなかった事例です。

その対象者さんは、ケアマネジャーやヘルパーにも口調を荒げることがあり、何度か担当者も変更になっていました。

 

 

家に入ることもスムーズにとはいきませんでした。

インターフォンを鳴らしても応答がありません。

ベランダから声をかけてみても応答がありません。

電話を何度かかけて、ようやく訪問できるといった具合でした。

到底、信頼関係を築くことなど、全く先が見えない状態だったと思います。

対象者さんからは、「アンタもしつこいね」とか、「あきらめて帰るかと思った」などの言葉もかけられました。

 

 

ここでカっとなって言い返してしまうと、訪問終了となりかねません。

 

Ns藤井
ここはグッと我慢し、「諦めが悪いのが取り柄なんです。」と明るく対応をしていました。

 

さらに困難は続きます。

対象者さんは、糖尿病でインスリンを使用されている方でした。

医師の指示の下、毎食前に打つインスリン量を決められていました。

 

 

しかし、なぜか朝はインスリンを打っていませんでした。

 

 

実際に記載されていた記録は以下のようになっています。

 

 

朝のインスリンのところを注目してください。

×と記載されており、インスリンを打っていませんでした。

 

 

ここで、私は以下のように言ってしまいました。

 

Ns藤井
朝もちゃんと打たないとダメですよ。

ご自身で勝手に判断してはダメですよ。

 

間違いを指摘してしまったんですね。

そこで、もう1度記録を良く見てみると、朝の血糖値が昼・夜と比べると、極端に低いことが分かります。

朝の血糖値はおおよそ100台です。

100を切ってしまっている時もありました。

さらに、起床時間も極端に異なっていることも気づきました。

 

 

そこから、早朝に低血糖が起こっていることが分かりました。

本人に冷汗などの低血糖症状がないか確認するも、特に自覚していませんでした。

 

 

また、会話を続けていく中で、低血糖への対処方法を知らないことや、2か月前に妻を亡くされていること、さらには希死念慮が強いことなどが分かってきました。

 

 

Ns藤井
「また死にたいって言われたらどうしよう?」とモヤモヤしながら訪問していました。

ただ、とても良いこともあったんです。

 

それは、3ヶ月以上も記録を続けてくれていたことです。

食事内容は炭水化物が多いなど問題はありましたが、記録を続けてくれていたことに対しては、訪問するたびに褒めていました。

他にも、薬を飲めていないことや、インスリンを打っていないことは指摘せず、3ヶ月ほど経過しました。

 

 

Ns藤井
その中で、「他にできることはありますか?」という話になりました。

 

できることを一緒に探す

とはいえ、対象者さんは口癖のように、「無理です」と言っていました。

 

 

訪問当初は、その言葉を鵜呑みにし、どうしたらいいのかと悩んでいました。

ですが、だんだんと本当は「なんとかしたい!」という思いがあることが、分かってきました。

 

 

そこで、「野菜から食べることはできますか?」と聞いてみました。

返事は「無理です」でした。

では、「豆腐とかゆで卵とかはどうですか?」と聞いてみました。

いつも通り、「無理です」と返されました。

ずっとこんな会話が続いていました。

 

Ns藤井
この頃は「また無理なのかな。訪問行くの嫌だなー。できることあるの?」と思っていました。

 

そんな中、対象者さんが血液検査の結果を報告してくれました。

なんと、HbA1cの値が良くなっていました。

その時は本当に嬉しそうでした。

 

 

実は、「無理です」と言いながらも、自身でできることを実行してくれていたんです。

毎回、その方のできること探しを、めげずに行っていて良かったと思いました。

 

 

Ns藤井
今、振り返ってみても、困難な事例だったなと思います。

とにかく「聴く」ことを続けた結果、共感してもらい、対象者の行動が変わるきっかけを作ることができた事例でした。

 

 

まとめ

  • 間違いを指摘しない
  • 対象者ができていることに目を向け、賞賛する
  • できることを一緒に探す

 

Ns藤井

以上、「困難事例 ~食事指導実践編~ 」についてでした。

ありがとうございました。

ぜひ、動画の方もご覧ください。

 

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