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間違いを指摘しない
医療従事者は、知らず知らずのうちに、対象者の話を聴いたつもりになりがちです。
そして問題があると分かると、その対象者を「変えてあげよう」という感情が根付きます。
相手の間違いを指摘してしまっているんですね。
どう考えても、このままの食事を続けていたら、糖尿病が悪化し、合併症を起こす可能性がある対象者がいます。
そこで、対象者の食習慣や生活習慣について以下のように話します。

正論ですし、間違っていないです。
しかし、対象者は、「分かっているけどできない!」と思っている人がほとんどです。
これは、対象者の行動を否定することになってしまっています。
正論は凶器となり得ます。

では、どうしたらいいのでしょうか?
医療従事者として、伝えなければならないことはたくさんありますよね。
それを伝えずに、どうやって指導するの?って思いますよね。
対象者の行動を変えようと思ったら、まずはとにかく「聴く」ことが大切です。
間違いを指摘せずに、「聴く」ことに徹します。
指摘したいところを我慢し、なぜそうなっているか、対象者の話をじっくりと聴いてみてください。
どう考えても、このままの食事を続けていたら、糖尿病が悪化し、合併症を起こす可能性がある対象者がいます。
話を聴くと、「ずっと偏った食事で、ろくな物を食べていないです。」と言っています。
色々と言いたいところをぐっとこらえ、以下のように伝えます。

どうしてですか?
すると対象者から、「炭水化物や糖質は血糖値が上がる原因と分かっている」、「妻が亡くなってから食生活が乱れた」、「ご飯を作るのも大変」といった話が聴けました。
さらに聴き続けていきます。

素晴らしいですね。
何かご自身で気をつけていることはありますか?
すると、「野菜はなるべく食べようと思っているが、余り好きではない」、「温かいものが食べたいから、うどんとかラーメンとかになってしまう」と話してくれました。
上記の例は、とにかく話を聴くことで、対象者の状況や行動の理由が知ることができました。
これは、「聴く」ことで対象者を受容することができたということです。
そうすると、対象者は「この人は話を聴いてくれる」、「この人の言うことだったらやってみよう」など、共感してもらえたといった感情が起こります。
そのことは対象者の行動を変えるきっかけとなり、信頼関係を築くことができます。
医療従事者としてのアセスメントを保ちながら、対象者とともに問題解決方法を見出していきます。

困難な事例
困難であったのは、以下のような理由で訪問拒否があったためです。
- 誰とも会いたくない
- 話をすることもない
- 一人でも大丈夫
- 家に色々な人が来るのが嫌
そんな中でも訪問をしなければいけなかった事例です。
その対象者さんは、ケアマネジャーやヘルパーにも口調を荒げることがあり、何度か担当者も変更になっていました。
家に入ることもスムーズにとはいきませんでした。
インターフォンを鳴らしても応答がありません。
ベランダから声をかけてみても応答がありません。
電話を何度かかけて、ようやく訪問できるといった具合でした。
到底、信頼関係を築くことなど、全く先が見えない状態だったと思います。
対象者さんからは、「アンタもしつこいね」とか、「あきらめて帰るかと思った」などの言葉もかけられました。
ここでカっとなって言い返してしまうと、訪問終了となりかねません。

さらに困難は続きます。
対象者さんは、糖尿病でインスリンを使用されている方でした。
医師の指示の下、毎食前に打つインスリン量を決められていました。
しかし、なぜか朝はインスリンを打っていませんでした。
実際に記載されていた記録は以下のようになっています。
朝のインスリンのところを注目してください。
×と記載されており、インスリンを打っていませんでした。
ここで、私は以下のように言ってしまいました。

ご自身で勝手に判断してはダメですよ。
間違いを指摘してしまったんですね。
そこで、もう1度記録を良く見てみると、朝の血糖値が昼・夜と比べると、極端に低いことが分かります。
朝の血糖値はおおよそ100台です。
100を切ってしまっている時もありました。
さらに、起床時間も極端に異なっていることも気づきました。
そこから、早朝に低血糖が起こっていることが分かりました。
本人に冷汗などの低血糖症状がないか確認するも、特に自覚していませんでした。
また、会話を続けていく中で、低血糖への対処方法を知らないことや、2か月前に妻を亡くされていること、さらには希死念慮が強いことなどが分かってきました。

ただ、とても良いこともあったんです。
それは、3ヶ月以上も記録を続けてくれていたことです。
食事内容は炭水化物が多いなど問題はありましたが、記録を続けてくれていたことに対しては、訪問するたびに褒めていました。
他にも、薬を飲めていないことや、インスリンを打っていないことは指摘せず、3ヶ月ほど経過しました。

できることを一緒に探す
とはいえ、対象者さんは口癖のように、「無理です」と言っていました。
訪問当初は、その言葉を鵜呑みにし、どうしたらいいのかと悩んでいました。
ですが、だんだんと本当は「なんとかしたい!」という思いがあることが、分かってきました。
そこで、「野菜から食べることはできますか?」と聞いてみました。
返事は「無理です」でした。
では、「豆腐とかゆで卵とかはどうですか?」と聞いてみました。
いつも通り、「無理です」と返されました。
ずっとこんな会話が続いていました。

そんな中、対象者さんが血液検査の結果を報告してくれました。
なんと、HbA1cの値が良くなっていました。
その時は本当に嬉しそうでした。
実は、「無理です」と言いながらも、自身でできることを実行してくれていたんです。
毎回、その方のできること探しを、めげずに行っていて良かったと思いました。

とにかく「聴く」ことを続けた結果、共感してもらい、対象者の行動が変わるきっかけを作ることができた事例でした。
まとめ
- 間違いを指摘しない
- 対象者ができていることに目を向け、賞賛する
- できることを一緒に探す

以上、「困難事例 ~食事指導実践編~ 」についてでした。
ありがとうございました。
ぜひ、動画の方もご覧ください。




















みなさん、こんにちは!看護師の藤井美幸です。
今回は、食事療法の13回目となります。
「困難事例 食事指導実践編」についてお話したいと思います。
今回のキーワードは「聴く」です。