「利用者さんが特養に入所することになったが、契約中の訪問看護は続けられるのか」「グループホームの入居者から訪問看護の依頼があったが、介護保険で入っていいのか」——訪問看護ステーションの管理者やケアマネジャーから、こうした相談は絶えません。
結論から言うと、施設への訪問看護は「施設の種類」と「使う保険(介護保険・医療保険)」の組み合わせで可否が決まるため、思い込みで判断すると算定誤りや返戻の原因になります。この記事では、介護老人保健施設・介護医療院・特別養護老人ホーム・グループホーム・小規模多機能型居宅介護・ショートステイ・特定施設という7つの施設タイプについて、厚生労働省の資料をもとに可否と条件を整理し、一覧表でいつでも確認できる形にまとめました。
- 施設への訪問看護が「原則不可」になる仕組みと、その例外パターン
- 特養・グループホーム・特定施設など施設タイプ別の可否と適用保険
- 「厚生労働大臣が定める疾病等」「特別訪問看護指示書」という2つの例外条件
- 施設タイプ別の可否・適用保険が一目でわかる比較表
- 訪問看護ステーションが契約・算定でつまずかないための実務ポイント
目次
訪問看護は施設に入れる?可否を決める「給付調整」の基本ルール
訪問看護は本来、自宅で暮らす利用者を対象にした制度です。特養・老健・グループホームなどの施設は、施設の介護報酬の中に看護ケアの体制がすでに組み込まれている(あるいは施設内に看護職員が配置されている)ため、そこに訪問看護ステーションが別途訪問して介護保険を算定すると、同じ看護ケアに対して報酬が二重に支払われてしまうことになります。これを避けるための仕組みが「給付調整」です。
ただし、末期がんなど状態が重く、施設の体制だけでは対応が難しいケースについては、例外的に医療保険での訪問看護が認められています。つまり、施設への訪問看護を考えるときは「①その施設は住まいの種類として何か(施設サービスか、住宅系サービスか)」「②介護保険の対象になるか」「③医療保険の例外条件(厚生労働大臣が定める疾病等・特別訪問看護指示書など)に当たるか」の3段階で確認するのが基本です。
施設サービス(特養・老健・介護医療院など)は看護体制が施設報酬に含まれるため、訪問看護は原則不可。住宅系サービス(グループホーム・特定施設など)は施設によって扱いが分かれる——まずこの大枠を押さえておくと、個別の施設の可否が理解しやすくなります。
介護老人保健施設・介護医療院|訪問看護は原則利用できない
介護老人保健施設(老健)と介護医療院は、施設内に医師・看護職員が配置され、医療的な管理を含めた包括的なケアを提供する施設です。そのため、訪問看護ステーションが別途訪問して訪問看護(介護保険・医療保険とも)を提供することはできません。末期がんなど重篤な状態であっても、この2つの施設については訪問看護の例外規定は設けられていない点が、特養やグループホームとの大きな違いです。

「入所したから訪問看護は終了」と単純に切り替えるのではなく、施設側の看護体制で対応が難しい場面がないか、退所後の在宅復帰も見据えて、施設のケアマネ・相談員と情報共有を続けておくと、退所後の再開がスムーズになりますよ。

特別養護老人ホーム(特養)|末期がんに限り医療保険で訪問看護が可能
特別養護老人ホーム(特養)は、原則として介護保険・医療保険どちらの訪問看護も算定できません。ただし末期の悪性腫瘍(がん末期)の利用者に限り、医療保険での訪問看護基本療養費の算定が可能という例外があります。これは「厚生労働大臣が定める者」に関する告示に基づく取り扱いです。
この例外には条件があります。サービス提供前30日以内に、その訪問看護ステーションの看護師等が利用者宅を訪問し、訪問看護療養費を算定していたことが必要です。施設入所前から関わりのあった訪問看護ステーションでなければ算定できないため、新規の依頼では対象にならないケースが多い点に注意してください。
特養における訪問看護の算定条件や、施設側との連携の実務については、下記の記事でさらに詳しく解説しています。
グループホーム(認知症対応型共同生活介護)|原則不可、例外は3パターン
グループホーム(認知症対応型共同生活介護)の入居者に対して、介護保険での訪問看護は原則認められていません。一方で、医療保険であれば次の3つのパターンのいずれかに当たる場合に訪問看護が可能です。
- 厚生労働大臣が定める疾病等(別表第7)に該当する末期の悪性腫瘍、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、人工呼吸器を装着している状態など、約20の疾病・状態のいずれかに該当し、その疾患名が明記された訪問看護指示書が交付されている場合。
- 特別訪問看護指示書が交付されている急性増悪等により、主治医が「週4日以上の頻回の訪問看護が必要」と判断し、特別訪問看護指示書を交付した場合。交付日を含め、原則14日間が対象です。
- グループホームと訪問看護ステーションの契約による訪問上記2パターンに当たらない場合でも、グループホームが訪問看護ステーションと直接契約を結び、費用をグループホーム側が負担する形での訪問は可能です。この場合、グループホームには「医療連携体制加算」が別途算定される仕組みになっています。
「厚生労働大臣が定める疾病等(別表第7)」の全20項目や、「特別訪問看護指示書」の交付要件・記載方法は、単独記事で詳しく解説しています。あわせて確認しておくと、算定の判断に迷いにくくなります。
小規模多機能型居宅介護|「自宅にいる時」と「宿泊時」で扱いが変わる
小規模多機能型居宅介護は「通い」「宿泊」「訪問」を柔軟に組み合わせるサービスのため、訪問看護の可否も利用者が今どこにいるかで変わります。
| 利用者の状況 | 介護保険の訪問看護 | 医療保険の訪問看護 |
|---|---|---|
| 自宅にいる時 | 可能 | 可能 |
| 宿泊サービス利用中 | 原則不可(事業所との契約による訪問は可) | 厚生労働大臣が定める疾病等・特別訪問看護指示書のいずれかに該当する場合のみ可能 |
小規模多機能型居宅介護と看護小規模多機能型居宅介護(看多機)は名前が似ていますが別のサービスです。看多機は訪問看護の機能をサービス自体に内包しているため、この記事で扱う「外部の訪問看護ステーションが訪問できるか」という論点はそもそも生じません。両者の違いと併用可否については、下記の記事で解説しています。

ショートステイ(短期入所生活介護・短期入所療養介護)|原則不可、末期がんのみ例外
ショートステイ利用中も、特養と同じ考え方が適用されます。介護保険での訪問看護は認められていませんが、末期がんの利用者に限り、医療保険での訪問看護基本療養費の算定が可能です。特養のケースと同様、サービス提供前30日以内に、その訪問看護ステーションの看護師等が利用者宅を訪問し、訪問看護療養費を算定していたことが条件になります。
入所日・退所日など「日をまたぐタイミング」の算定は特に問い合わせが多いポイントです。入院・退院日や、ショートステイの入退所日に訪問看護を算定できるかどうかは、下記の記事で個別に整理しています。
特定施設(有料老人ホーム・サ高住・ケアハウス)|「指定の有無」で対象が変わる
有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅・ケアハウスは、「特定施設入居者生活介護」の指定を受けているかどうかで扱いがまったく変わります。この違いを取り違えると算定ミスにつながるため、契約前に必ず確認しておきたいポイントです。
特定施設入居者生活介護の指定を受けている場合
介護保険での訪問看護は原則認められません。ただし、訪問看護ステーションが施設と委託契約を結び、施設側が訪問看護の必要性を認めて費用を負担する形での訪問は可能です。また、医療保険については、グループホームと同様に次のいずれかに該当する場合に算定できます。
- 厚生労働大臣が定める疾病等(別表第7)に該当する場合
- 急性増悪等により特別訪問看護指示書が交付された場合
- 精神科訪問看護基本療養費(Ⅰ)・(Ⅲ)の対象となる場合
特定施設入居者生活介護の指定を受けていない場合
指定を受けていない有料老人ホーム・サ高住・ケアハウス等は、制度上「居宅(自宅と同じ扱い)」となるため、介護保険・医療保険のどちらでも通常どおり訪問看護を提供できます。入居前に、対象施設が特定施設の指定を受けているかどうかを、施設のパンフレットや自治体の指定事業者一覧で確認しておくと安心です。

「有料老人ホーム」という名前だけでは指定の有無は判断できません。同じ「有料老人ホーム」でも特定施設の指定を受けている施設と受けていない施設が混在しているので、新規依頼を受けたら必ず施設側に確認する、というルールをステーション内で徹底しておくのがおすすめです。
【一覧表】施設タイプ別・訪問看護の可否と適用保険まとめ
ここまでの内容を、施設タイプ別に一覧表で整理しました。実務で確認する際は、まずこの表で当たりをつけてから、該当する見出しの詳細条件を確認する使い方がおすすめです。
| 施設タイプ | 介護保険 | 医療保険 |
|---|---|---|
| 介護老人保健施設 | 不可 | 不可 |
| 介護医療院 | 不可 | 不可 |
| 特別養護老人ホーム | 不可 | 末期がんのみ可 |
| グループホーム | 不可 | 別表第7・特別訪問看護指示書のいずれかに該当すれば可(他に施設契約による訪問も可) |
| 小規模多機能(自宅にいる時) | 可 | 可 |
| 小規模多機能(宿泊中) | 原則不可(契約による訪問は可) | 別表第7・特別訪問看護指示書のいずれかに該当すれば可 |
| ショートステイ | 不可 | 末期がんのみ可 |
| 特定施設(指定あり) | 原則不可(委託契約による訪問は可) | 別表第7・特別訪問看護指示書・精神科訪問看護のいずれかに該当すれば可 |
| 特定施設(指定なし) | 可(居宅扱い) | 可(居宅扱い) |
訪問看護ステーションが実務で確認しておきたいポイント
施設への訪問看護は、制度上の可否だけでなく、実務での確認漏れが算定誤りの原因になりやすい領域です。依頼を受けた際は、次の点を必ず確認しましょう。

私がステーションで新規依頼を受けたときにまず確認するのは、①施設の種類と特定施設の指定有無、②利用者が別表第7の疾病に該当するか、③特別訪問看護指示書の有無、④特養・ショートステイなら30日以内訪問の実績があるか、の4点です。この順番で確認していけば、算定できるかどうかの判断がぶれません。
- 依頼元の施設が、施設サービス(老健・介護医療院・特養)か住宅系サービス(グループホーム・特定施設等)かを確認する
- 住宅系サービスの場合、特定施設入居者生活介護の指定を受けているかを施設に確認する
- 利用者が「厚生労働大臣が定める疾病等(別表第7)」に該当するか、主治医・訪問看護指示書の記載を確認する
- 急性増悪等がある場合は、特別訪問看護指示書の交付を主治医に相談する
- 施設との契約による訪問の場合は、費用負担の主体(施設か利用者か)を契約書で明確にする
医療保険の例外条件の核となる「厚生労働大臣が定める疾病等(別表第7)」は、施設への訪問看護だけでなく週4日以上の訪問回数制限にも関わる重要な規定です。全項目を確認しておきましょう。
別表第7の全項目を確認するまとめ|施設への訪問看護は「施設の種類」×「保険の例外条件」で判断する
施設への訪問看護は、一律に「できる」「できない」で覚えるのではなく、施設サービスか住宅系サービスかという性質の違いと、末期がん・別表第7・特別訪問看護指示書といった例外条件の有無をセットで確認することが欠かせません。

よくある質問(FAQ)
訪問看護は施設に入所していても利用できますか?
施設の種類によって異なります。介護老人保健施設・介護医療院では原則利用できません。特別養護老人ホームやショートステイでは末期がんの場合に限り医療保険で利用できます。グループホームや特定施設では、厚生労働大臣が定める疾病等や特別訪問看護指示書などの条件を満たせば医療保険で利用できます。
介護老人保健施設や介護医療院に入所していても訪問看護は使えますか?
使えません。介護老人保健施設と介護医療院は施設内に医師・看護職員が配置され、看護ケアの体制が施設報酬に含まれているため、訪問看護ステーションによる訪問看護は介護保険・医療保険とも認められていません。末期がんなどの例外規定もこの2施設には設けられていません。
グループホーム入居者が訪問看護を利用できる条件は何ですか?
介護保険での訪問看護は原則認められていません。医療保険であれば、厚生労働大臣が定める疾病等(別表第7)に該当する場合、または急性増悪等により特別訪問看護指示書が交付された場合に利用できます。これらに当たらなくても、グループホームが訪問看護ステーションと契約を結び、施設側が費用を負担する形での訪問は可能です。
有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅で訪問看護は使えますか?
「特定施設入居者生活介護」の指定を受けているかどうかで変わります。指定を受けていない場合は居宅扱いとなり、介護保険・医療保険のどちらでも通常どおり利用できます。指定を受けている場合は、グループホームと同様に医療保険の例外条件を満たす場合のみ利用できます。
ショートステイ利用中に訪問看護を入れることはできますか?
介護保険での訪問看護は認められていません。末期がんの利用者に限り、医療保険での訪問看護基本療養費が算定できます。ただし、サービス提供前30日以内にその訪問看護ステーションの看護師等が利用者宅を訪問し、訪問看護療養費を算定していたことが条件です。
- 介護老人保健施設・介護医療院への訪問看護は、介護保険・医療保険とも例外なく不可
- 特養・ショートステイは、末期がんの利用者に限り医療保険で訪問看護が可能(サービス提供前30日以内の訪問実績が条件)
- グループホーム・特定施設(指定あり)は、別表第7の疾病等または特別訪問看護指示書に該当すれば医療保険で可能。施設との契約による訪問という選択肢もある
- 特定施設の指定を受けていない有料老人ホーム等は「居宅」扱いとなり、介護保険・医療保険どちらでも通常どおり利用できる
- 依頼を受けたら、施設の種類・特定施設の指定有無・疾病の該当性・指示書の有無を順に確認する運用を徹底する
制度は複雑に見えますが、「施設の種類」と「例外条件」の2軸で整理すれば判断はシンプルになります。個別の疑問点は、各施設タイプの詳細記事もあわせて確認してください。
急性増悪時の医療保険適用のカギとなる「特別訪問看護指示書」は、交付できる回数や記載方法に細かいルールがあります。実務でつまずきやすいポイントを次の記事で確認しておきましょう。
特別訪問看護指示書の交付要件を確認する










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