終末期訪問看護の提供内容を分かりやすく紹介します

最期を自宅で過ごしたいと望む人に訪問看護師が出来ることってなんだろう

 

現在日本では、多くの人が病院で最期を過ごし亡くなっています。

2020年の人口動態統計によると、死亡場所の構成割合は病院68.3%、自宅15.7%です。

病院で亡くなる人が大半ですが、最期まで自宅で過ごしたいと希望する人も少なくありません。

終末期を自宅で過ごす人をサポートすることは訪問看護師の役割の1つです。

今回は、終末期における訪問看護の提供内容を分かりやすく説明します

 

終末期訪問看護の提供内容

 

終末期訪問看護の提供内容は、ケアを提供する相手、ケアの内容によって以下のように分類できます。

 

終末期の訪問看護

①本人に対する支援

・身体的なケア

・精神的なケア

②家族(身近な人)に対する支援

③看取りとエンゼルケアの実施

 

利用者さんへの支援はもちろん、同居・別居や血縁を問わず利用者さんの周囲を取り巻く人も支援の対象になります。

そして、身体的な支援のみではなく、精神的な支援も重要です。

いよいよ看取りの時期が近づいたときは、穏やかに最期の時を迎えることが出来るようにより細やかな支援が必要です。

以下に、具体的な内容を説明していきます。

 

本人に対する支援

身体的なケア

身体的なケアとは以下のような内容です。

 

身体的なケア

・苦痛を緩和する

・清潔を保つ

・環境を整える

 

苦痛を緩和する

疼痛や発熱、呼吸困難など様々な身体的苦痛症状を取り除くことが出来るようにケアを提供します。

具体的には医師の指示で鎮痛剤などの薬剤を投与したり、酸素の投与を行います。

安楽な姿勢を整えたり、マッサージなどをすることも苦痛の緩和に繋がります。

 

清潔を保つ

利用者さんの身体状況と希望に合わせて、清拭やシャワーなどを行い清潔を保つための支援をします。

終末期は日ごとに体調が変化することもあるので、ケアを予定通りに行うことができないこともあります。

その日の状況でケア内容を変更することや、利用者さんの体調や気分がすぐれないときはケアを強要せず、体力を消耗しないように最小限にする配慮も必要です。

 

環境を整える

臥床して過ごす時間が長くなるにつれて、利用者さんが生活をするスペースが限られます。

その状況でも、快適に過ごすことが出来るように、部屋の環境やベッド周囲の環境の整備を行います。

1日の時間の流れや天候の変化が分かるように、カーテンの開け閉めや部屋の明かりの調整などを行います。

トイレまで歩行することが困難になると、ベッドの近くで排泄をすることも多くなるため、こまめに換気を行うことも環境整備の一環です。

よく使用するものをベッドの近くに設置することも、快適に過ごすための支援になります。

 

精神的なケア

 

精神的なケアとは以下のような内容です。

 

精神的なケア

・揺れ動く気持ちを受け止める

・気持ちを家族に伝える手助けをする

 

揺れ動く気持ちを受け止める

最期を自宅で過ごすことを決め、死期が近づいていることを理解していても、利用者さんの気持ちは常に揺れ動きます。

気持ちが揺れ動くことは当然であることを理解し、利用者さんの気持ちを否定せずに受け止めます。

利用者さんの訴えに訪問看護師が返答に困ったり、考えが理解が出来ないときもあるかもしれません。

その時は、否定をしたり無理に意見を合わせるのではなく、利用者さんはそう考えているということを受け止めましょう。

そうすることで、利用者さんとの信頼関係を築きより良いケアを提供することが出来るようになるかもしれません。

 

気持ちを家族に伝える手助けをする

最期を自宅で過ごす上で、利用者さんと家族が互いの気持ちや希望を理解することはとても大切です。

ですが、利用者さんの希望や気持ちを、家族が率直に質問することは困難な場合も多いです。

そこで、利用者さんと家族の間を繋ぎ、気持ちや考えを伝えるサポートをすることも訪問看護師の大切な仕事です。

終末期は、日々状態が変化するため、急に状態が悪くなり意志の確認が出来なくなってしまうという可能性もあります。

早い時期から利用者さんの気持ちを確認し、家族との間を繋ぐことができるように関わることが大切です。

 

家族に対する支援

 

家族に対する支援とは以下のような内容です。

 

家族に対する支援

・家族の身体的・精神的負担への配慮

 

家族の身体的・精神的負担への配慮

在宅で最期を過ごす利用者さんをサポートすることは、家族の心身にも大きな負担をかけます。

仕事や家事に加えて、介護による身体的な負荷がかかったり、休息をとる時間が減ることにより疲労がたまることもあるでしょう。

また、自宅で家族を看取ると決めても、「本当にこれでよいのか」「何かあったときはどうしたら良いのか」など、家族の精神的負担は計り知れません。

訪問時には家族をケアするための時間も作り、心配なことはないか、休む時間は取ることができているかなど家族の負担への配慮も行います。

 

看取りとエンゼルケアの実施

 

利用者さんのバイタルサインが変化し、看取りが近づくにつれ、家族への精神的ケアの重要性が増していきます。

家族の動揺を最小限にできるように、利用者さんの予測される身体的な変化を事前にお伝えし、緊急時の連絡先(訪問看護師や主治医)を明確にして伝えます。

利用者さんの変化に慌てて救急車を呼ばないように説明することも重要です。

そして利用者さんが、最期までなるべく苦痛を感じることがないようにケアを行います。

死亡が確認された後は、エンゼルケアを行います。

エンゼルケアは、利用者さんの身体を清潔にすること、死後の身体の変化を防ぎ整えることを目的としています。

希望があれば家族もともに行うことで、家族の心のケアにも繋がります。

 

まとめ

終末期訪問看護の提供内容を解説しました。

ですが、記載した内容は終末期看護の全てではありません。

比較的体調が安定して過ごすことができる時期から、終末期の前半~後半、看取り期にかけてそれぞれの時期に沿った、より細やかな関わりがあります。

人の死に触れる機会が減っている現代では、「看取り」は特別なものと考えられています。

最期を自宅で過ごすと考えたとき、希望する本人も家族も大きな不安を抱えるのではないでしょうか。

利用者さんと家族を支え、最期まで自宅で過ごすことをサポートできるのは、訪問看護師ならではの仕事です。

多死社会を迎えると言われているこれからの時代に、訪問看護師が担う役割は大きいと考えられます。

最期まで自宅で過ごしたいと望む、すべての人の願いを叶えられるように皆で頑張っていきましょう。

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ABOUT US
清水 千夏ライター
東京都在住/看護師・保健師/ 卒業後大学病院9年勤務 その後、派遣看護師としてクリニックやデイサービス、訪問入浴などを経験。 現在は訪問看護ステーションの立ち上げメンバーとして奮闘中です。