専門管理加算とは?【医療保険】算定要件・対象者・点数を解説

「専門管理加算という名前は聞いたことがあるけれど、算定要件のイ・ロの違いがよく分からない」「特定行為研修を修了した看護師がいるのに、届出をしていないため算定できていないかもしれない」——令和4年度診療報酬改定で新設された専門管理加算(医療保険)について、こうした疑問を持つ訪問看護ステーションの経営者・管理者は少なくありません。

この記事では、専門管理加算の算定要件・対象患者・施設基準・届出方法を整理し、混同されやすい介護保険版の専門管理加算との違いや、実務上のつまずきポイントまで現役看護師の視点で解説します。

この記事でわかること
  • 専門管理加算(医療保険)とはどんな制度か
  • 算定要件イ・ロの違いと、それぞれの対象患者
  • 算定対象となる特定行為の具体例
  • 施設基準・届出方法(届出様式・受理番号)
  • 介護保険版の専門管理加算との違い

専門管理加算とは?【医療保険】制度の概要

専門管理加算は、令和4年度診療報酬改定で新設された加算で、緩和ケア・褥瘡ケア・人工肛門ケア及び人工膀胱ケアに関する専門の研修を受けた看護師、または特定行為研修を修了した看護師が、指定訪問看護の実施に関する計画的な管理を行った場合に算定できます。専門性の高い看護師による訪問看護を評価する加算として位置づけられています。

算定できるのは、あらかじめ厚生労働大臣が定める基準に適合しているものとして地方厚生(支)局長に届出を行った訪問看護ステーションに限られます。届出を行わずに専門研修修了看護師や特定行為研修修了看護師が管理を行っていても、加算は算定できません。

看護師 上妻
看護師 上妻

せっかく特定行為研修を修了した看護師がステーションにいても、届出をしていないために算定できていないケースを見かけます。まずは自ステーションの届出状況を確認してみてください。

専門管理加算の算定要件(イ・ロ)

専門管理加算の算定要件は、担当する看護師の研修内容によって「イ」と「ロ」の2つに分かれます。

イ:専門研修修了看護師による管理

緩和ケア、褥瘡ケアまたは人工肛門ケア及び人工膀胱ケアに係る専門の研修を受けた看護師が、計画的な管理を行った場合に算定します。

ロ:特定行為研修修了看護師による管理

特定行為研修を修了した看護師が、手順書加算を算定する利用者に対して計画的な管理を行った場合に算定します。特定行為研修とは、保健師助産師看護師法第37条の2第2項第5号に規定する指定研修機関で行われる研修で、「呼吸器(長期呼吸療法に係るもの)関連」「ろう孔管理関連」「創傷管理関連」「栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連」の各区分や、「在宅・慢性期領域パッケージ研修」などが該当します(確度中・複数の専門メディアで一致確認。研修区分の網羅的な一次確認までは行っていません)。

POINT

イとロは「どんな研修を受けた看護師か」で区分が決まる点がポイントです。同じ利用者でもイの対象患者要件を満たすかロの対象患者要件(手順書加算算定者)を満たすかで、どちらの区分で算定するかが変わります。

専門管理加算の対象患者・対象となる特定行為

イの対象患者

  • 悪性腫瘍の鎮痛療法もしくは化学療法を行っている利用者
  • 真皮を越える褥瘡の状態にある利用者
  • 人工肛門もしくは人工膀胱を造設しているもので、管理が困難な利用者

ロの対象となる特定行為

ロで算定する場合の対象となる特定行為は、次のとおりです。

  • 気管カニューレの交換
  • 胃ろうまたは腸ろうカテーテル、もしくは胃ろうボタンの交換
  • 膀胱ろうカテーテルの交換
  • 褥瘡または慢性創傷の治療における血流のない壊死組織の除去
  • 創傷に対する陰圧閉鎖療法
  • 持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整
  • 脱水症状に対する輸液による補正

ロを算定する前提として、医師または歯科医師が交付する「手順書」が必要です。手順書には、①患者の病状の範囲、②診療の補助の内容、③対象となる患者、④特定行為を行う際に確認すべき事項、⑤医療機関との連絡体制、⑥特定行為実施後の医師・歯科医師への報告方法の6項目が記載されます。

看護師 上妻
看護師 上妻

ロの対象となる特定行為は7項目に限定されています。特定行為研修を修了していても、この7項目以外の行為だけを行っている利用者では専門管理加算ロの対象にならない点に注意してください。

専門管理加算の施設基準と届出方法

施設基準は、次のいずれかに該当することです。

  • 緩和ケア、褥瘡ケアまたは人工肛門ケア及び人工膀胱ケアに係る専門の研修を受けた看護師が配置されていること
  • 特定行為研修のうち、訪問看護において専門の管理を必要とするものに係る研修を修了した看護師が配置されていること

届出は、訪問看護ステーションの所在地を管轄する地方厚生(支)局に対して行います。近畿厚生局の届出案内ページでは、専門管理加算の届出様式は「別紙様式7」、受理番号は「訪看32」とされており、添付書類として「専門の研修を修了したことが確認できる文書」が必要とされています(確度高・近畿厚生局の届出様式一覧ページで確認済み)。また、専門管理加算の要件に関わる担当看護師の異動・退職などがあった場合は、変更の届出が必要とされています。

注意

加算額(点数)は複数の専門メディアで「2,500円(月1回)」との記載が一致していますが、今回参照した近畿厚生局の届出案内ページ自体には具体的な点数の記載はありませんでした。正確な点数は診療報酬点数表の原文、または管轄の地方厚生(支)局で最終確認してください。

介護保険版の専門管理加算との違い

専門管理加算は、令和6年度介護報酬改定で介護保険の訪問看護にも新設されており、医療保険版と混同しやすい制度です。両者の主な違いは次のとおりです。

項目医療保険(本記事)介護保険
根拠制度診療報酬(令和4年度改定で新設)介護報酬(令和6年度改定で新設)
加算額2,500円/月(複数の専門メディアで一致確認。一次情報での直接照合は未実施)250単位/月(複数の専門メディアで一致確認。一次情報での直接照合は未実施)
算定対象イ悪性腫瘍の鎮痛・化学療法中、真皮を越える褥瘡、管理困難な人工肛門・膀胱造設者医療保険と同様の対象患者類型
算定対象ロ手順書加算算定者(特定行為7項目が対象)特定行為研修修了看護師による管理(対象行為は医療保険に準じる整理がされることが多い)
届出先地方厚生(支)局(別紙様式7)都道府県・市町村等の指定権者

利用者が医療保険と介護保険のどちらの訪問看護を利用しているかによって、算定できる専門管理加算の区分が変わります。両方の制度を扱うステーションでは、利用者ごとの適用保険を正しく把握したうえで、どちらの届出・算定要件に基づくかを確認することが欠かせません。

専門管理加算の算定における実務ポイント

専門管理加算の算定でつまずきやすいポイントを整理します。

  1. 届出の有無を確認する専門研修や特定行為研修を修了した看護師が在籍していても、地方厚生局への届出が済んでいなければ算定できません。
  2. 対象患者要件を都度確認するイ・ロそれぞれの対象患者要件に該当するかを、訪問看護計画書・記録に明記しておきます。
  3. 手順書の整備状況を確認するロを算定する場合は、医師・歯科医師が交付した手順書が最新の内容で整備されているかを定期的に確認します。
  4. 異動・退職時の変更届出を忘れない専門管理加算の要件に関わる看護師が異動・退職した場合は、速やかに変更の届出を行います。

よくある質問

専門管理加算は誰が算定できますか?

緩和ケア・褥瘡ケア・人工肛門ケア及び人工膀胱ケアに関する専門の研修を受けた看護師、または特定行為研修を修了した看護師が計画的な管理を行った場合に算定できます。ただし、地方厚生(支)局への届出を行った訪問看護ステーションであることが前提です。

専門管理加算は月に何回算定できますか?

専門管理加算は月1回に限り算定できる加算です。

専門管理加算(イ)と(ロ)の違いは何ですか?

イは緩和ケア・褥瘡ケア・人工肛門ケア及び人工膀胱ケアの専門研修を修了した看護師による管理、ロは特定行為研修を修了した看護師による管理です。対象となる患者要件もそれぞれ異なります。

専門管理加算を算定するにはどんな届出が必要ですか?

訪問看護ステーションの所在地を管轄する地方厚生(支)局に、届出様式(別紙様式7)と、専門の研修を修了したことが確認できる文書を添えて届出を行う必要があります。

専門管理加算と特別管理加算はどう違いますか?

専門管理加算は担当する看護師の専門研修・特定行為研修の修了状況を評価する加算であるのに対し、特別管理加算は利用者の病状・医療処置の内容(重症度)を評価する加算です。着目する対象が「看護師の専門性」か「利用者の状態」かという点で異なります。

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まとめ|専門管理加算は「看護師の専門性」を評価する届出制の加算

専門管理加算(医療保険)は、緩和ケア・褥瘡ケア・人工肛門ケア及び人工膀胱ケアの専門研修、または特定行為研修を修了した看護師による計画的な管理を評価する加算です。算定には地方厚生(支)局への届出が必須であり、イ・ロで対象患者要件も異なります。介護保険にも同名の加算が別途存在するため、利用者がどちらの保険を使っているかを踏まえて要件を確認することが大切です。

この記事のまとめ
  • 専門管理加算は令和4年度診療報酬改定で新設、月1回算定できる
  • イ(専門研修修了看護師)とロ(特定行為研修修了看護師)で対象患者要件が異なる
  • ロの対象となる特定行為は7項目に限定され、医師の手順書が前提
  • 算定には地方厚生(支)局への届出(別紙様式7・受理番号訪看32)が必須
  • 介護保険版の専門管理加算とは根拠制度・届出先が異なる別制度

自ステーションに専門研修・特定行為研修修了看護師が在籍している場合は、まず届出状況を確認するところから始めてみてください。

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