「退院前カンファレンスに出席したのに、加算を算定し忘れていた」「電話で指導内容を伝えたけれど、これで算定できるのか分からない」——退院時共同指導加算は、算定できる場面自体は多いのに、記録の残し方や算定タイミングを誤ると請求できなくなってしまう、見落としの多い加算です。令和6年度介護報酬改定では指導内容の提供方法にも変更が加わり、最新のルールを正しく理解しておく必要があります。
この記事では、介護保険の退院時共同指導加算について、単位数・算定要件・留意点・実地指導対策・医療保険との違いまで、訪問看護ステーションの経営者・管理者向けに整理して解説します。令和6年度改定で認められた「文書以外の方法」による指導内容の提供についても、厚生労働省のQ&Aに基づいて具体的に説明します。
- 退院時共同指導加算(介護保険)の単位数と算定できるタイミング
- 算定要件と、算定できない・してはいけないケース
- 令和6年度改定で追加された「電磁的方法」による指導内容の提供ルール
- 実地指導で確認される記録・書類のポイント
- 医療保険版の退院時共同指導加算との違い
目次
退院時共同指導加算とは?(介護保険の概要)
退院時共同指導加算は、病院・診療所・介護老人保健施設・介護医療院に入院(入所)している利用者が退院(退所)するにあたり、訪問看護ステーションの看護師等が、入院先の主治医やその他の従業者と共同して在宅での療養上必要な指導を行った場合に算定できる加算です。いわゆる「退院前カンファレンス」に出席し、退院後の処置やケアについて医療機関側と話し合うことは多くの訪問看護ステーションで日常的に行われていますが、単に出席するだけでは算定できません。指導した内容を利用者本人やその看護に当たる人に提供し、その内容を記録として残すことが条件になります。
なお、対象となる看護師等には准看護師は含まれません。また、退院時共同指導加算には医療保険(訪問看護療養費)にも同名の加算があり、単位数や算定できる回数の考え方が一部異なります。この記事では介護保険版を中心に解説し、後半で医療保険版との違いを整理します。

「退院前カンファレンスに参加した」という事実だけでは加算の対象になりません。指導した内容を利用者さんや家族に提供し、その内容を記録に残すところまでがワンセットだと考えてください。
退院時共同指導加算の単位数(介護保険)
介護保険における退院時共同指導加算の単位数は、次のとおりです。
600単位/回
この600単位は、厚生労働省の指定居宅サービス介護給付費単位数の算定構造(令和6年4月改定)に「ホ 退院時共同指導加算 (1回につき+600単位)」と明記されており、一次資料で確認できています(確度高)。あわせて、退院時共同指導加算を算定する場合は算定できない「ニ 初回加算(1月につき+300単位)」も同資料に記載があり、この2つの加算の優先順位を考えるうえでの根拠になります。

退院時共同指導加算の算定要件
算定要件は、大きく分けて次の4点です。
- 入院(入所)中の利用者が退院(退所)するにあたり、訪問看護ステーションの看護師等(准看護師を除く)が、利用者本人またはその看護に当たる者に対し、病院・診療所・介護老人保健施設・介護医療院の主治医やその他の従業者と共同して在宅での療養上必要な指導を行うこと
- 指導内容を文書により提供すること(令和6年6月1日から、文書以外の方法での提供も可能。詳しくは後述)
- 退院時共同指導の内容を訪問看護記録書に記録すること
- 退院時共同指導日が、退院後初回訪問看護の前月もしくは同一月であること
また、他の訪問看護ステーションで既に算定していないことも要件です(後述する特別管理加算の対象者を除く)。

「退院時共同指導日が初回訪問看護の前月もしくは同一月」という要件は見落としやすいポイントです。退院時共同指導を行ってから2ヶ月後に初回訪問看護を実施した、というケースでは算定できません。
令和6年度改定のポイント|電磁的方法による指導内容の提供
令和6年度介護報酬改定により、令和6年6月1日から指導内容を文書以外の方法で提供することが可能になりました。厚生労働省「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)」(介護保険最新情報Vol.1225)では、この点について次のように示されています。
電話での伝達は不可:「電話による伝達ではなく、履歴が残る電子メール等の電磁的方法により指導内容を提供することが想定される」とされています。
利用者・家族の同意が必要:文書による提供を希望する利用者・家族もいるため、その希望に基づいて対応することが求められます。
送信しただけでは算定不可:電子メールで送信できたことの確認だけでは算定できません。利用者または家族が受け取ったことを確認し、その確認結果を訪問看護記録書に記録しておく必要があります。

退院時共同指導加算の留意点
算定要件を満たしていても、次のようなケースでは算定できない、あるいは算定してはいけないため注意が必要です。
次のケースは算定不可・注意が必要なケースにあたります。
- 初回加算(300単位)を算定する場合は、退院時共同指導加算は算定しない(600単位の方が高いため、優先した方が有利)
- 医療保険で退院時共同指導加算を算定した場合、同月に介護保険で算定することはできない
- 退院時共同指導を行った月の2ヶ月後に初回訪問看護を実施した場合は算定できない(前月または同一月に限る)
- 原則、1回の入院について1ヵ所の訪問看護ステーションしか算定できない(2ヵ所が関わる場合は要事前確認)
- 介護保険で算定した場合、同月の定期巡回・随時対応サービス・看護小規模多機能居宅介護における当該加算、および医療保険の訪問看護における当該加算は算定できない
一方で、特別管理加算を算定できる状態の利用者については、別の日に退院時共同指導を行った場合に限り月2回の算定が可能です。この場合、2ヵ所の訪問看護ステーションがそれぞれ別の日に指導を行えば、1回ずつ算定することもできます。複数の訪問看護ステーションが関わる可能性がある場合は、入院(入所)先に他のステーションの実施状況を確認しておくとトラブルを防げます。
退院時共同指導加算の実地指導で用意しておく書類
実地指導では、算定要件を満たしていることを記録で説明できるかどうかが確認されます。次の書類・記録を整えておきましょう。
- 共同指導にかかる文書指導内容を記載した文書を保管します。文書以外の電磁的方法で提供した場合は、メールなどのやり取りの履歴も記録として保管できます。
- 利用者・家族の同意の記録電磁的方法で提供する場合、文書ではなく電磁的方法での提供に同意を得たことが分かる記録を残します。
- 訪問看護記録書への記録退院時共同指導を実施した日付・内容に加え、電磁的方法で提供した場合は利用者または家族が受け取ったことを確認した旨を記録します。
退院時共同指導加算の医療保険版との違い
退院時共同指導加算は、医療保険(訪問看護療養費)にも同名の加算があります。介護保険版と医療保険版の主な違いを整理すると、次のようになります。
| 項目 | 介護保険 | 医療保険 |
|---|---|---|
| 単位数・点数 | 600単位/回 | 8,000円/回 |
| 複数回算定できる利用者 | 特別管理加算を算定できる状態の利用者は月2回可 | 別表7・別表8該当者は退院・退所につき2回まで可 |
| 加算の重複 | 初回加算(300単位)とは同時算定不可 | 訪問看護初回加算とは同時算定不可 |
| 保険間の重複 | 医療保険で算定した場合は算定不可 | 介護保険で算定した場合は算定不可 |
医療保険版の8,000円という点数は、静岡県看護協会の研修資料をはじめ複数の専門メディアで一致していますが、この記事の執筆時点では診療報酬点数表の原文への直接照合までは行っていません(確度中)。医療保険での算定を検討する際は、最新の診療報酬点数表でご確認ください。介護保険と医療保険のどちらで算定するかは、その利用者が介護保険の訪問看護を利用しているか、医療保険の訪問看護を利用しているかで決まり、同じ入院について両方から重複して算定することはできません。医療保険版の詳しい算定要件については、別記事「退院時共同指導加算、特別管理指導加算とは?【医療保険】」で解説しています。
退院時共同指導加算のQ&A
退院時共同指導を実施した2ヶ月後に退院後初回の訪問看護を行った場合、退院時共同指導加算を算定できますか?
算定できません。退院時共同指導から2ヶ月後では要件を満たさず、退院後初回の訪問看護を行った月の同一月もしくは前月に退院時共同指導を実施した場合に算定できます。
退院時共同指導加算は、2ヵ所の訪問看護ステーションでそれぞれ算定できますか?
原則、1回の入院について1回に限り算定可能なため、1ヵ所の訪問看護ステーションのみで算定できます。ただし、特別管理加算を算定している状態の利用者(1回の入院につき2回算定可能な利用者)の場合は、2ヵ所の訪問看護ステーションがそれぞれ別の日に退院時共同指導を行えば、1回ずつ算定することも可能です。
利用者が1ヶ月に入退院を繰り返した場合、退院時共同指導加算は複数回算定できますか?
条件を満たせば算定できます。2回の入退院の間に訪問看護を1回でも実施していれば2回算定できますが、退院時共同指導を2回行った場合でも、その間に訪問看護を1度も実施せず再入院した場合は1回のみの算定となります。
退院時共同指導の内容を電話で伝達してもよいですか?
想定されていません。厚生労働省のQ&Aでは、電話による伝達ではなく、履歴が残る電子メール等の電磁的方法により指導内容を提供することが想定されるとされています。
指導内容を電磁的方法で提供する場合、利用者や家族の同意は必要ですか?
必要です。利用者やその家族によっては、文書による指導内容の提供を希望する場合も考えられるため、希望に基づいて対応できるよう同意を得る必要があります。
退院時共同指導の内容を電子メールで送信できたことが確認できれば、加算を算定できますか?
できません。電子メールで送信した後に利用者またはその家族が受け取ったことを確認するとともに、確認したことを訪問看護記録書に記録しておく必要があります。

- 厚生労働省「指定居宅サービス介護給付費単位数の算定構造(令和6年4月改定)」(退院時共同指導加算600単位・初回加算300単位を一次資料で確認済み)
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)」(介護保険最新情報Vol.1225・令和6年3月15日)(問48〜問50:電磁的方法による指導内容の提供に関するQ&Aを一次資料で確認済み)
まとめ|退院時共同指導加算(介護保険)は記録とタイミングの管理が鍵
退院時共同指導加算は、退院前カンファレンス等での医療機関との連携を評価する加算です。令和6年度改定で電磁的方法による提供も認められ、運用の幅は広がりましたが、算定要件・記録のポイントを正しく理解していないと、せっかくの共同指導が算定につながらないこともあります。
- 介護保険の退院時共同指導加算は600単位/回、初回訪問看護の前月または同一月の実施が要件
- 指導内容は文書または電磁的方法(電話は不可)で提供し、訪問看護記録書に記録する
- 電磁的方法で提供する場合は利用者・家族の同意と受領確認の記録が必須
- 原則1事業所のみ算定可。特別管理加算対象者は月2回・2事業所での算定も可能
- 初回加算・医療保険の同加算とは同時算定できない
算定要件を満たしているか不安な場合は、まず訪問看護記録書に「指導日・指導内容・提供方法・受領確認」が具体的に記録されているかを見直してみてください。























