訪問看護では、服薬管理の看護介入の依頼が多くあります。
在宅療養では服薬での病状コントロールを行うため、規則的に服薬することが重要です。
疾患や認知力、身体機能、療養環境により服薬管理の方法は様々です。
今回は、訪問看護で実際に行っている服薬状況と工夫についてお伝えします。
ぜひ訪問看護の現場で役立てていただければ幸いです。
目次
在宅での服薬管理の実際
ケアマネジャーから服薬管理目的で訪問看護の依頼をいただくのは、どんな時でしょう。
上記のような理由で定期的な服薬ができていない利用者さんに対し、訪問看護師が訪問して服薬管理を行うことがあります。
「服薬ができているか」を確認することは訪問介護事業所の介入でも可能です。
しかし、内服薬をセットすることや服薬による体調変化の観察を行うことは看護師の介入が必要となります。
訪問看護での服薬管理で大切なこととは?
服薬の自己管理が困難である事実がある上で依頼に至るため、初回訪問の際にはたくさんの残薬を所持していることがあります。
初回訪問の際には残薬の確認に時間を要する場合もあるため、十分に時間を確保できるよう調整します。
また、訪問看護の利用を同意しているものの、今まで自己管理をしてきた経緯を否定されている気持ちになる利用者さんもいらっしゃいます。
服薬は治療に必要なものではありますが、利用者さんの私物のひとつでもあります。
私物を管理する支援をさせていただくということを忘れず、丁寧に取り扱い、利用者さんのお気持ちにも寄り添えるよう配慮しましょう。
処方をしている主治医と、現状の服薬状況を共有することも重要です。
主治医は定期的な服薬をしていることを前提に診察しており、在宅での状況を正確に把握するには利用者さん本人からの聴取では情報が少ないこともあります。
そのため、診察に訪れた利用者さんが在宅でどの程度服薬ができているか知ることも、治療方針を決定する際の重要な情報になります。
訪問看護での服薬管理での工夫とは?
では、訪問看護で行う服薬管理の工夫について、以下の4つの項目に分けてご紹介します。
- 残薬は輪ゴムやジッパーバッグで整理する
- 個別性に合ったセット方法で過剰内服を防ぐ
- 服薬状況の報告をして主治医に処方調整を依頼する
- 利用者さんと共に服薬管理を行う
以下で、一つずつ解説していきます。
残薬は輪ゴムやジッパーバッグで整理する
訪問開始時、利用者さんは多くの残薬をお持ちになっていることがあります。
まずは、現在服薬治療に必要な薬と、中止になっている薬とを分けておきます。
次回受診までに不足がないか、残数確認をしましょう。
薬の種類が多く、受診が数ヶ月ごとの場合は、手持ちの薬がとても多くなります。
訪問看護の介入時に、正確かつスムーズに服薬のセットを行うには、残薬の整理整頓が必須です。
ジップロックの大袋や、輪ゴム、付箋などを使用して1週間分や10ヒートずつの束にまとめることをお勧めします。
また、何年も前に処方された薬や、ヒートが破れてしまっている薬がある場合があります。
その場合には、利用者さんやご家族、ケアマネジャーの同意を得て処分することも検討します。
使用できる状態の残薬が多い場合には、主治医や薬剤師に相談し一時的に処方をストップして残薬から使用させてもらうこともあります。
個別性に合ったセット方法で過剰内服を防ぐ
在宅での服薬管理でのセット方法がいくつかあります。
- 服薬カレンダーへのセットする
- 一週間分の服薬ケースへのセットする
- 一日分の服薬ケースへのセットする
- 一日分の内服薬を卓上へセットする
一週間分のカレンダーへのセットをすることで、ご本人だけでなくご家族やそのほか訪問サービス関係者が目視で飲み忘れを確認できる利点があります。
しかし、ご本人が取り出す場合には、生活環境によっては転倒リスクを引き起こすことも考えられます。
状態に応じてカレンダーをセッティングする場所を検討する必要があります。
服薬ケースへのセットでは、コンパクトにまとまる反面、高齢や疾患による指先の機能によって取り出しにくいこともあります。
それぞれのセット方法が、利用者さんにとって適切であるのか十分にアセスメントが必要です。
また、認知症のある利用者さんの場合、セット方法の変更により混乱をきたすことがあります。
服薬管理で最も避けなければいけないのが、過剰内服です。
特に麻薬など取り扱いに注意が必要な薬剤を内服している場合には、より慎重に行う必要があります。
セット方法の変更時には、訪問頻度を一時的に増やして服薬状況を評価するなど安全に配慮した対策を検討しましょう。
厚生労働省の薬物乱用防止に関する情報より
服薬状況の報告をして主治医に処方調整を依頼する
服薬の自己管理が困難な要因の一つに、服薬の種類や服薬タイミングが多いこともあります。
特に高齢になると複数の疾患を抱え、服薬する量が増えていることがよくあります。
それまで処方薬を飲むことができていない現状が明らかになっておらず、そのため症状の改善していないとの見解で追加処方となることもあります。
訪問看護の介入で服薬の飲み忘れがあることが明らかになり、原因として服薬の種類が多いことや服薬のタイミングが生活に組み込めていないことが考えられる場合、積極的に主治医やかかりつけ医に相談してみましょう。
生活状況から、朝薬は確実に飲める、夕薬は飲み忘れが多い、などの在宅での現状を情報提供すると、先生は処方内容を検討してくださいます。
必要があれば、一包化にしていただくことで、服薬がしやすくなります。
利用者さんと共に服薬管理を行う
訪問看護師の訪問が始まり、一切の服薬管理を看護師が行うことになると、利用者さんは「自分が今までできていたこと」を他人に任せることになり喪失感を感じる方もいます。
全ての服薬管理を看護師が行うのではなく、利用者さんと一緒に服薬管理を行なっていくことで、自尊心を守ることにもつながります。
ヒートの薬の場合には、1個ずつの薬に切り分ける作業や、一包化薬を切り分ける作業など一緒に行うと手指のリハビリにもなります。
まとめ
今回は、訪問看護での服薬管理についての工夫をお伝えしました。
- 残薬は整理整頓して作業効率U P
- 残薬が多い場合には医師や薬剤師に相談し、在庫から使用する
- セット方法は利用者さんにあった方法を検討する
- セット方法を変更する際には短期間で評価をしていく
- 生活状況を観察し、飲み忘れが多い理由をアセスメントする
- 利用者さんとともに服薬管理を進めていく
服薬管理を行うことで、利用者さんの体調を維持し在宅生活を続けることができます。
効果的な服薬管理を行い、利用者さんがより長く安定して生活できるよう支援していきましょう。
服薬の内容が複雑で自己管理が困難
服薬の薬効が強く定期的な体調確認が必要
認知力や身体面の影響により自己管理に支援が必要