訪問看護における個人情報保護とSNS・生成AI活用の注意点

今度、採用強化目的にて、自事業所のSNSをはじめようと思っています。
気をつけたほうがいい情報管理と運用ルールを教えてもらえますか?

近年、訪問看護ステーションでも採用活動や広報のためにSNSを活用する事業所が増えています。

InstagramやXなどを通じて職場の雰囲気を発信することは、人材確保の観点でも有効な取り組みです。

しかし、医療・介護の現場では個人情報やプライバシーの保護が非常に重要です。

何気ない写真や投稿、会話の内容が個人情報の漏えいにつながる可能性もあります。

また、事業所内の業務の効率化を図るためには、生成AIの利用も欠かせなくなっています。

この記事では、訪問看護の現場で押さえておきたい個人情報保護の基本と、SNS・生成AI活用時の注意点について解説します。

 

個人情報とは何か

個人情報とは、次のような情報を指します。

「個人に関する情報であって、氏名、生年月日その他の記述などにより特定の個人を識別できるもの(他の情報と照合することで個人を識別できるものを含む)」

つまり、名前が書かれていなくても、他の情報と組み合わせることで個人が特定できる場合は個人情報に該当します。

個人情報の例
  • 名刺
  • 年賀状の住所録
  • 利用者の連絡先
  • 匿名化したケース記録(条件によって個人が推測できる場合)など

 

訪問看護ステーションに存在する個人情報

 

訪問看護の業務では、日常的に多くの個人情報を扱います。

例えば次のような書類です。

 

  • 紹介状
  • 訪問看護申込書
  • 診療録や処方箋の写し
  • 検査結果報告書
  • 訪問看護記録
  • 請求書や領収書
  • 薬歴情報
  • 行政への届出書類など

 

これらはすべて厳重に管理すべき個人情報です。

また、個人情報とは別に機密情報という概念もあります。

機密情報とは、企業や組織が外部に公表せず内部で管理する重要情報を指します。

例えば組織図や施設の電話番号一覧などが該当します。

個人情報でなくても、漏えいすると法人の信用に影響するため適切な管理が必要です。

 

個人情報漏えいが起きる主な原因

 

実際の漏えい事故の多くは、悪意ではなく職員の不注意や管理体制の不備によって起こります。

主な原因には次のようなものがあります。

  • ノートパソコンの置き忘れ
  • 車上盗難
  • 私用PCからの不用意な接続
  • アクセス権限の管理不足
  • 委託業者の管理体制の不備

 

特に医療・介護分野では、利用者の生活や健康に関する情報を扱うため、より厳格な管理が求められます。

 

個人情報の利用と第三者提供

 

個人情報は利用目的の範囲内でのみ利用することが原則です。

例えば、利用者の事例を研修や論文に使用する場合は、必ず匿名化し、個人が特定されないようにする必要があります。

また、公共の場での会話にも注意が必要です。

例えば

  • カフェで職場で知った利用者さんの状況を話す
  • 家族に知人の利用者さんの状況の話をする

 

このような行為も個人情報漏えいにつながる可能性があります。

以下の記事もいっしょに読むことをおすすめします。

 

SNS・生成AI活用時の注意点について

SNSや生成AI活用時には以下の点に注意が必要です。

SNS利用には法人ルールが必要

訪問看護ステーションがSNSを活用する場合、法人としてのSNS運用ルールを整備することが重要です。

SNS投稿時に起きやすい個人情報漏えいは、次のような何気ない行動から起こります。

  • 写真の投稿
  • ちょっとしたエピソードの紹介
  • 何気ないコメント

大切なのは「その情報から個人が特定できる可能性があるか」という視点です。

 

SNS・生成AIは「私用」でも注意が必要

SNS・生成AIは私用であっても、仕事と完全に切り離すことは難しい時代です。

例えば次のような投稿や入力には「私用」であっても注意が必要です。

  • 職業がわかる
  • 勤務先が推測できる
  • 現場が想像できる投稿

これらは法人の信用問題につながる可能性があります。

 

生成AI利用時の注意点

近年は生成AIを業務に活用する場面も増えてきました。

しかし重要なのは「生成AIへの入力は外部提供である」という認識です。

利用者情報や具体的な事例をそのまま入力してはいけません。

生成AIを利用する場合は

  • 架空設定にする
  • 内容を抽象化する
  • 個人が想像できない形に変換する

といった配慮が必要です。

 

写真・動画投稿のリスク

SNSで最もリスクが高いのが写真や動画です。

顔が写っていない場合でも

  • 服装
  • 日付
  • 場所
  • 背景の掲示物

などから個人が特定される可能性があります。

「少しくらいなら」は一番事故につながる可能性があります。

「撮らない・載せない」ことが最も安全なリスク管理です。

 

迷ったら投稿しない

SNS投稿や生成AI入力で迷った場合は、その時点でリスクがある可能性があります。

判断に迷った場合は

  • 投稿しない
  • 入力しない
  • 一人で判断しない

という対応が重要です。

個人情報を守ることは、利用者だけでなく自分自身と法人を守ることにもつながります。

SNSや生成AIを活用する時代だからこそ、組織としてのルール整備と職員一人ひとりの意識が重要です。

 

訪問看護ステーション向けSNS運用ルール

以下は事業所で活用できる簡易テンプレートです。

1 運用目的
□採用活動
□法人広報
□地域への情報発信
※利用者情報の発信は禁止

2 投稿内容の基本ルール
投稿してよい内容
□職場の雰囲気
□スタッフ紹介
□研修や勉強会
□採用情報
投稿禁止内容
□利用者が特定できる情報
□訪問先が推測できる内容
□利用者の写真や音声
□医療情報やケース内容

3 写真・動画の取り扱い
次の内容が写り込まないよう確認する
□利用者(同意なしの場合)
□住所や表札
□カルテや書類
□ホワイトボード
□掲示物

4 投稿前チェック
投稿前に次を確認する
□ 個人が特定されないか
□ 利用者情報が含まれていないか
□ 訪問先が特定されないか
□ 法人の信用を損なう内容ではないか

5 判断に迷った場合
□迷った場合は投稿しない
□管理者に相談する

まとめ

  1. 個人情報・プライバシーは「特定できる可能性があるか」を常に基準に考える
    ・何気ない会話
    ・ちょっとした写真
    ・SNSや生成AIへの入力
  2. 私用SNS・私用生成AIでも投稿・入力前に必ず「これは第三者・家族・行政がみたらどう感じるか」を考える
  3. 生成AIは便利だが「入力=外部提供」という意識を持つこと
    ・AIはメモ帳ではない
  4. 写真・動画・一言コメントが一番危険である
    ・「少しくらいなら」は一番事故につながる
    ・服装、声、日付、場所、背景の掲示物からも特定できる
  5. 迷ったら「出さない・一人で決めない」こと
    ・個人を守ることは、結果的に自分と法人を守ることになる

 

2026年診療報酬改定には、ICTを用いた訪問看護医療情報連携加算が新設します。

訪問看護の現場でもICTを用いての連携が必須となります。

またSNS運用や生成AIの利用はかかせなくなっています。

「良かれと思って」「勉強のために」は言い訳にはなりません。

私自身も事故につながらないように気をつけていきたいと思っています。

訪問看護をおこなう中で誰もが不安や疑問に思ったりすることが解決できるような記事の作成を心がけています。

この記事が皆さんの業務のお役に立てれば幸いです。

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