訪問看護の現場において、新人看護師の育成は非常に重要な業務のひとつです。
経験豊富なベテラン看護師であっても、病院と在宅では看護の視点や求められる力が大きく異なるため、現場での丁寧な指導が欠かせません。
指導においては技術だけでなく、アセスメント力、利用者や家族との関わり方、記録や報告の仕方など、幅広い視点から段階的に教えていく必要があります。
本記事では、訪問看護の現場で新人看護師に対して行うべき6つの指導ポイントをわかりやすく解説します。
目次
訪問看護における新人看護師への指導ポイント6つ
新人訪問看護師がスムーズに現場に馴染み、自信を持って業務を行えるようにするためには、以下の6つの観点で段階的な指導が必要です。
1. 訪問前の準備・移動・持ち物の確認を丁寧に教える
訪問看護では、1日に複数の利用者宅を訪問するため、事前の準備が仕事の質を左右します。新人にはまず、「誰の訪問か」「何を持っていくか」「どんな注意点があるか」といった訪問前の段取りや準備の重要性を徹底して伝える必要があります。
また、移動中の安全確保や訪問先の場所の確認、駐車場所の配慮といった現場特有の気配りも実際に同行して一緒に確認するとよいでしょう。経験者にとっては当たり前の行動でも、新人には初めてのことばかりです。一つひとつのプロセスを見える化して教えることが、事故やトラブルの防止につながります。
2. 訪問中のマナー・言葉遣い・接遇姿勢を教える
訪問看護では、利用者の生活空間に入るという意識が大切です。そのため、挨拶の仕方や靴の脱ぎ方、声のかけ方、立ち位置など、マナーや礼儀の基本的な部分を細かく指導することが求められます。
また、精神的に不安定な方や認知症のある方も多いため、言葉の選び方や表情、態度一つで相手の気持ちを大きく左右します。自分では丁寧にしているつもりでも、指導者が同行して観察し、フィードバックすることが重要です。「生活の中に入る支援者」としての姿勢を意識づけましょう。
3. アセスメントの視点と記録方法を段階的に教える
訪問看護では、短時間で多くの情報を観察・収集し、的確な判断をする能力が求められます。しかし、新人の多くは「どこを見ていいか分からない」「何を記録に書けばいいのか分からない」と悩みがちです。
まずはバイタル測定や観察ポイントを整理し、具体的な例を交えてアセスメントの視点を教えましょう。例えば「顔色」「呼吸」「体位」「表情」「会話内容」など、五感を使った気づきを積み重ねていく習慣を身につけさせることが大切です。
記録指導についても、SOAP形式の使い方や主観・客観の分け方、報告に必要な文脈の作り方など、OJTで何度も練習を重ねながら習得を支援する姿勢が求められます。
4. 緊急時やイレギュラー対応の流れをシミュレーションする
訪問看護では、突発的な状態変化や予期せぬ対応が必要な場面が少なくありません。新人がそうした場面に出くわした際、パニックにならずに動けるように、あらかじめケーススタディやシミュレーションを通じた準備をしておくことが重要です。
たとえば「訪問先で意識が急にもうろうとした場合」「発熱・感染兆候があった場合」「家族から急にクレームを受けた場合」など、実際の現場で起こり得る場面を想定し、判断の優先順位や報連相の手順を体で覚えることが新人の安心につながります。
5. オンコール業務について段階的に理解させる
訪問看護ステーションの多くでは、オンコール体制を導入していますが、新人看護師にいきなり対応を任せるのは不安が大きいものです。指導においては、オンコール対応の基本的な流れを少しずつ理解させることが必要です。
最初はベテラン看護師と一緒に電話対応の録音や記録を見せ、シチュエーション別に「どう対応するか」を考えさせる機会を設けましょう。慣れてきたら模擬対応、先輩と同行訪問、徐々に一人で対応と、段階的に経験を積ませるとよいでしょう。
また、オンコールに不安があることを言い出せるような雰囲気作りも、指導者の重要な役割です。
6. 指導の中でフィードバックを習慣化し、心理的安全性を確保する
新人指導において最も重要なのは、「失敗しても学べる環境づくり」です。自分の行動や言葉に対して、適切なタイミングでポジティブなフィードバックと建設的なアドバイスを行うことが、成長を加速させます。
例えば、「今日の声かけ、すごくよかったよ。でも次はこの部分にも気を配れるともっと良くなるね」といった形で、良い点と改善点をセットで伝えるのが効果的です。
また、「報告が遅れた」「記録に抜けがあった」といったミスも、責めるのではなく、「次はどうすればいいか」を一緒に考える姿勢を持つことで、新人の不安を和らげることができます。
まとめ
訪問看護の現場では、新人看護師がスムーズに成長できるよう、丁寧な指導と段階的な経験の積み重ねが重要です。
訪問前の準備からアセスメント、記録、緊急時対応、オンコール、フィードバックまで、指導者は多角的な視点で支援する必要があります。
また、ただ教えるのではなく、「共に考える姿勢」や「安心して質問できる環境」を整えることが、長期的な定着にもつながります。
新人の力を育てることは、訪問看護ステーションの未来をつくる大切な一歩。現場全体で育成に取り組んでいきましょう。




















