病院や施設では職場内に医師がいる場合も多く、報告はしやすいと思います。
しかし、訪問看護では医師が近くにいる環境ではないため、報告の手段やタイミングがわからないという方もいるのではないでしょうか。
今回は、訪問看護における医師への報告方法とタイミングを解説していきます。
また、報告する際のポイントも合わせて紹介します。
- 医師への報告が緊張する
- 要点をスムーズに伝えられない
このような悩みをもっているあなたに役立つ内容となっていますので、ぜひ参考にしてください。
目次
訪問看護における医師への報告方法を6つ紹介
医師への報告には、以下のようにさまざまな方法があります。
- 報告書
- 電話
- メール
- SNS
- FAX
- 診察同行
それぞれの特徴とメリット・デメリットを解説しますので、どの方法を採用するか参考にしてみてください。
報告書
訪問看護では、主治医から交付される訪問看護指示書に従って、訪問看護計画書を立案してから看護サービスを実施します。
そのため、利用者さんの病状や実施したケアの内容などを主治医に書面で報告する必要があります。
報告書を作成するタイミングに明確な定めはありませんが、1ヶ月に一回ほどの頻度で送付している訪問看護ステーションが多いのではないでしょうか。
報告書のメリット・デメリットは以下のとおりです。
- 一定期間の経過を報告できる
- 緊急の報告には向かない
電話
迅速に共有すべき情報や、口頭で報告した方がよい内容には、電話を使うことがあります。
電話のメリット・デメリットを見てみましょう。
- 緊急を要するときでも迅速に伝えられる
- 文字ではわかりにくいニュアンスを伝えられる
- 名前や声を覚えてもらいやすい
- 電話が繋がらない場合がある
- 伝え漏れがあると手間がかかり、時間のロスになる
メール
急ぎではない内容を報告する際に適しています。
訪問時に気になったこと、相談したいことを文章や添付ファイルで送っておけば、医師からの指示を仰ぐことができます。
メールのメリット・デメリットは次のとおりです。
- 写真や音声データなどのファイルを添付して送れる
- インターネット環境と端末があれば、その場で報告できる
- 確認が相手のタイミングであったり、気づかなかったりするため、緊急の報告には向かない
SNS
MCS(メディカルケアステーション)などの機能を使った連携方法もあります。
利用者さんごとに医師や他職種とのメッセージグループを作成し、グループ内で報告や指示を仰げます。
SNSのメリット・デメリットを見てみましょう。
- 手軽に連携をとれる
- 外でも連絡をとれる
- 連携しているクリニックがSNSを使用していない場合がある
- 通知に気づかないことがある
FAX
ペーパーレスが推進されているとはいえ、FAXで情報伝達をしている医療機関や事業所はまだ多くあるため、有効な方法と考えられます。
FAXを使うメリットは、以下のとおりです。
- 送信者と受信者の双方に書面が残る
- IT機器が苦手な方でも使いやすい
- 緊急の場合には向かない
- 文書の作成、送信など手順が多い
- 消耗品があり、コストがかかる
診察同行
医師の診察に訪問看護師が同行し、報告する場合もあります。
診察同行のメリット・デメリットも見ていきましょう。
- 直接顔を見て報告できるため、電話よりも伝わりやすい
- 利用者さんの状態を一緒に見て、その場で方向性の擦り合わせができる
- 日程調整に手間がかかる
- 訪問する人数が多くなるため、利用者さんやご家族の負担になる場合がある
訪問看護で医師に報告するタイミング
このような疑問にもお答えします。
医師へ報告するタイミングは、主に次のような場合です。
- 指示が必要なとき
- 処方を依頼したいとき
- 事業所ごとに定めたタイミング
それぞれ解説していきます。
指示が必要なとき
以下のような場合は指示が必要になる可能性がありますので、医師に報告と相談をしてください。
- 病状に変化がある場合:降圧剤で安定していた方の血圧が高くなってしまったので指示が欲しい
- 同じ治療を継続するか確認したい場合:点滴投与の指示が終了する際に、継続するかどうか確認したい
このように、医師からの指示がないと看護師が動けない場合は、報告と相談をして指示を仰ぎましょう。
処方を依頼したいとき
点滴や薬剤の処方を依頼したいときは、利用者さんの状態の報告と合わせて連絡しましょう。
処方には医師の診察が必要になるため、急ぎの場合は電話で連絡し、急を要しない場合はメールやFAXを使うなど、状況に応じて連絡手段を選ぶことがポイントです。
事業所ごとに定めたタイミング
医師へ報告するタイミングや頻度は特に定められていないため、事業所ごとに決めておきましょう。
状態変化の有無にかかわらず、訪問時の様子を書面で伝えておくと、医師から普段の様子を聞かれてもすぐ答えられますし、共有もしやすくなります。
先述したとおり、月に1回ほど書面を送付する事業所が多いため、その際に状態をこまかく報告しておきましょう。
医師に報告する際のポイント
このように悩む方もいるのではないでしょうか。
実は、私も報告は苦手です。
特に電話での報告は緊張し、うまく伝えられないことがあります。
そこで、私が実践してうまくいった報告のポイントを以下で紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
医師への報告だけでなく、他職種への報告の際にも役立つ方法です。
報告の前に一呼吸おく
忙しい状況であっても、報告の前には一呼吸おきましょう。
慌てて連絡すると早口で焦って話してしまい、相手に「この人大丈夫かな?」と思われてしまいます。
また、伝えるべきことを忘れてしまうこともあるでしょう。
そのため忙しいときこそ、一呼吸おいて気持ちを落ち着かせることが大切です。
要点をメモしてから報告する
伝え忘れを防ぐためにも、連絡する前には要点をメモにまとめておきましょう。
伝えた情報をもとに、医師からどのような質問をされるか予測し、必要になりそうな事柄も一緒にまとめておくのがおすすめです。
何度も連絡することは相手の時間を奪うことになりかねませんので、一度で必要な情報を伝えられるように、要点をメモしておくことが大切です。
急ぎではない場合には、FAXやメール等も活用しましょう。
情報は具体的に伝える
状態を報告する日や時間帯によっては、利用者さんの診察に対応する方が主治医であるとは限りません。
そのため、普段の状態がわからない医師にも詳しく伝わるように配慮しましょう。
たとえば、以下のような伝え方は、情報が不足しているNGな例です。
具体的に伝えるのであれば、以下のような情報を盛り込みましょう。
- 利用者さんの住まい
- バイタルサイン
- 特別に伝えるべき所見
- 訪問看護師としての見立て
- 対応してもらいたいこと
これらを踏まえて報告すると、以下のようになります。
⬜︎⬜︎区△町にお住まいの〇〇さんが、昨日から38度台の発熱があります。
現在訪問中で、バイタルは体温38.2度、呼吸数18回、脈拍93回、血圧140/72です。
湿性咳嗽あり、右肺副雑音を聴取します。
活気はなく、水分と食事が摂取できていない状況です。
以前、誤嚥性肺炎を起こした際にも今回と似た症状がありました。
今回も誤嚥性肺炎かもしれません。
本日臨時で診察をお願いすることは可能でしょうか?
このように、医師が知りたいと思う情報を報告時に伝え、相手が対応に困らないようにしましょう。
医師へ報告すべきか迷ったときは念のため一報入れる
このように迷うこともあるのではないでしょうか。
結論として、報告すべきか迷ったときは、報告書、メール、FAXなどの急を要さない場合の手段で一報入れておきましょう。
「こんなことで報告してもいいかな?」と思うかもしれませんが、連絡をしなかったがために利用者さんに不利益が生じたら大変ですよね。
「なんとなく違和感を覚えたときは報告する」くらいの感覚でいた方が、大事に至る可能性を下げられると思います。
とはいえ、どんなに些細なことでも報告していたら迷惑になりますので、報告すべき判断基準を医師に確認したり、自分の中で報告する判断基準を設けたりしておきましょう。
訪問看護での医師への報告は過度に心配しなくてOK
今回は、訪問看護における医師への報告方法とタイミングについて解説しました。
医師への報告は難しいと感じている方も多いと思いますが、状況に応じた適切な手段やタイミング、報告するポイントなどを押さえれば、過度に心配する必要はありません。
病院や施設などの看護師にも参考になる内容ですので、ぜひ普段のお仕事で活かしてみてください!