訪問看護で意外と多い疾患!進行性核上性麻痺について症状や分類、リハビリを解説

訪問看護の現場で意外と多く出会う疾患のひとつが「進行性核上性麻痺(PSP)」です。

名前は聞いたことがあっても、症状や分類、リハビリの方法までは詳しく知られていないことも多い疾患です。

しかし、認知症との誤診や転倒による大けがに繋がる可能性もあるため、早期に正しい知識を持ち、適切な支援が求められます。

本記事では、訪問看護師が知っておくべき進行性核上性麻痺(PSP)の基礎知識、症状、分類、リハビリのポイントをわかりやすく解説します。

 

進行性核上性麻痺(PSP)とは?

進行性核上性麻痺(PSP:Progressive Supranuclear Palsy)は、神経細胞内にタウ蛋白が異常に蓄積することで起こる進行性の神経変性疾患です。

パーキンソン病と類似した症状を示すことが多く、初期には誤診されることも少なくありません。

発症年齢は60歳以降が多く、平均発症年齢は65歳前後。進行が早く、数年で寝たきりになるケースもあるため、早期発見と在宅支援が重要になります。

 

PSPの主な症状と経過

初期症状の特徴

  • 転倒を繰り返す(特に後ろに倒れやすい)

  • 眼球運動障害(特に上下方向の眼球運動の障害)

  • 無表情・感情表現の減少

  • パーキンソニズム(動作緩慢・筋固縮など)

  • 構音障害・嚥下障害

転倒を契機に訪問看護の対象となることも多く、「なぜこんなに何度も後ろに転ぶのだろう?」という視点からPSPが疑われることもあります。

中期以降に見られる症状

  • 首下がり(頸部後屈)

  • 記憶障害、判断力低下

  • 表情の乏しさ、うつ症状

  • 嚥下障害の進行による誤嚥性肺炎リスク

  • 認知機能低下(パーキンソン病性認知症とは異なる特徴)

 

PSPの分類(表現型)

PSPは一つの病型ではなく、症状の現れ方によっていくつかの分類があります。

訪問看護で関わる際には、どのタイプかを把握することでアプローチが変わる場合もあります。

1. PSP-RS(Richardson症候群)

  • 最も代表的なタイプ

  • 転倒、眼球運動障害、認知機能低下が早期に出現

  • 多くの症例がこのタイプ

2. PSP-P(パーキンソン型)

  • パーキンソン病と酷似した症状を呈しやすい

  • 初期は薬が効きやすいこともあるが、進行すると無効に

  • 眼球運動障害は比較的後期に出る

3. PSP-CBS(皮質基底核症候群型)

  • 片側の運動障害、異常な筋緊張、失行が目立つ

  • 日常生活動作が片麻痺のように見える場合もある

4. PSP-F(前頭葉型)

  • 行動異常や性格変化、脱抑制などが前面に出る

  • 高齢者の「人格変化」で疑われることも

 

訪問看護での対応ポイント

転倒・骨折予防が最優先

PSPの最大の特徴の一つが「後方への転倒」。

パーキンソン病では前のめりになる転倒が多いのに対し、PSPは後ろに倒れることで重度の骨折や頭部外傷につながるリスクがあります。

  • 廊下やトイレ、玄関での手すり・滑り止めマットの設置

  • 車椅子や歩行器の早期導入も検討

  • ベッド周囲の環境整備(ベッドガードや離床センサーの活用)

嚥下障害への早期介入

PSPでは嚥下障害が進行しやすく、誤嚥性肺炎での入院リスクが高いことも重要です。

  • 訪問時に「むせ・咳込み」「食事中の疲労」などの変化に注意

  • 言語聴覚士(ST)と連携し、VF検査や食事形態の見直し

  • 家族への指導と支援(調理方法、姿勢保持の工夫など)

 

PSPの訪問リハビリのポイント

訪問リハビリでは、過剰な運動負荷をかけず、安全性を重視したアプローチが求められます。

理学療法(PT)

  • 姿勢保持訓練(座位・立位の安定性向上)

  • 下肢筋力維持訓練(スクワットなどは危険)

  • 移乗・移動動作の反復練習

作業療法(OT)

  • 日常生活動作(ADL)の補助具提案(自助具、スプーンなど)

  • 衣類着脱やトイレ動作の工夫

言語聴覚療法(ST)

  • 嚥下機能評価と嚥下訓練

  • 構音障害に対する発声訓練

  • 家族へのコミュニケーション支援

 

訪問看護でよくある相談・家族の不安

「パーキンソン病だと思っていたけど違うと言われた」

訪問時に、家族が「薬が効かない」「すぐ転ぶ」「急に認知が落ちた」と感じて受診した結果、PSPと診断されることもあります。

  • 病気の違いや進行性について説明

  • 専門医療機関への情報提供・同行受診のサポート

「保険だけで足りるのか不安」

進行が速いため、早期に難病医療費助成制度の利用も検討します。

  • 介護支援専門員と連携し、地域資源の活用

  • 訪問診療、訪問看護、訪問リハビリの多職種連携が重要

 

まとめ

進行性核上性麻痺(PSP)は、訪問看護の現場でも出会うことの多い神経変性疾患の一つです。

パーキンソン病と混同されがちですが、転倒・眼球運動障害・認知変化といった特徴を理解することで、より適切なケアが可能となります。

特に嚥下障害と転倒リスクに早期から注意し、家族と多職種との連携を深めることが重要です。

訪問リハビリや環境整備も含めた支援を通じて、患者さんの生活の質を維持することが訪問看護師の大きな役割です。

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