日本の高齢化が進む中、訪問看護師不足が深刻です。
もしあなたが訪問看護に転職を考えている場合、「訪問看護師が不足している」と聞くと、その理由が気になるのではないでしょうか。
「訪問看護はきついからかな」
「人気がないのかな」
上記のような不安が頭をよぎる方もいらっしゃるかもしれません。
当記事では、訪問看護師が不足している主な原因を3つ解説します。
- 訪問看護師が不足している原因
- 訪問看護業界の現状
- 訪問看護師不足に対する解決策
当記事を読めば、訪問看護師が不足している原因や現状がわかります。
ここでひとつ、記事を読み進めていただく前にお伝えしたいことがあります。
それは、「訪問看護に興味のある方は、ぜひ恐れすぎず訪問看護の世界へ飛び込んでみてほしい」ということです。
それを念頭におきながら最後まで読んでいただけると幸いです。
ではさっそく解説します。
目次
訪問看護師が不足している原因3選
訪問看護師が不足している主な原因は以下の3つです。
- 高齢化社会が進み訪問看護の需要が増加していること
- 訪問看護に踏み込むまでの心理的な壁が高いこと
- 人材が定着しないこと
順番に解説します。
高齢化社会が進み訪問看護の需要が増加していること
日本は現在、少子高齢化社会となっています。
日本は、諸外国に例をみないスピードで高齢化が進行しています。
65歳以上の人口は、現在3,500万人を超えており、2042年の約3,900万人でピークを迎えますが、その後も、75歳以上の人口割合は増加し続けることが予想されています。
日本は2065年には約2.6人に1人が65歳以上、約3.9人に1人が75歳以上という超高齢化社会を迎えようとしています。
この状況を受け、「地域包括ケアシステム」という制度が整備されています。
団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を実現していきます。
今後、認知症高齢者の増加が見込まれることから、認知症高齢者の地域での生活を支えるためにも、地域包括ケアシステムの構築が重要です。
この「地域包括ケアシステム」の一部を担うのが訪問看護です。
このように需要が高まる訪問看護ですが、厚生労働省が下記のデータを公表しています。
訪問看護事業所の看護職員需給見通し試算では、一人の看護師が超過勤務10時間以内/月、有給休暇5日/年を取得する場合、2025年までに必要な訪問看護師の数は12万人とされています。
ワークライフバランスを考えるなど有給休暇20日以上とした場合は13万人必要と推計されています。
引用:日本訪問看護財団「訪問看護の現状とこれから2022年版」
これから必要となる訪問看護師の人数が、12〜13万人とされているのです。
しかし、現状の訪問看護師の人数は以下のように公表されています。
2020年末時点で、訪問看護ステーションに勤務する看護師の人数は62,157人という数字が出ています。
引用:厚生労働省「令和2年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」
12〜13万人必要と言われている中、約6万人しかいない現状があり、訪問看護師の人数がまったく足りていないことがわかります。
急速に進む高齢化社会による需要増加のための訪問看護師不足があります。
訪問看護に踏み込むまでの心理的な壁が高いこと
訪問看護に踏み込むまでの看護師の心理的な壁が高いことも訪問看護師不足の原因のひとつと考えられます。
訪問看護に興味があっても不安が大きく踏み込めない看護師が多くいます。
- ひとりで訪問することへの不安
- 経験不足からの不安
- 難しそうというイメージからの不安
- 在宅という特殊な環境への不安
- 待遇処遇面(給料・休暇)への不安
さまざまな不安があり、訪問看護に従事する看護師が増えない現状があります。
レバレジーズ株式会社の調査によると、看護師957名に訪問看護の仕事に関する意識調査を実施した結果は以下のようになりました。
■調査結果の概要
訪問看護に興味を示す看護師は3割強
訪問看護に興味がある看護師のうち「実際に働いてみたいと思う」看護師は半分以下
訪問看護師として働くことに9割が不安
経験者から情報を得ているのは6割のみ。二次情報で不安感じる看護師も
引用:PR TIMES
訪問看護に興味がある看護師は約3割、その中でも実際に働いてみたいと思う看護師は半分以下であり、さらに訪問看護師として働くことに対し9割の看護師が不安を感じているという結果になっています。
訪問看護に踏み込むまでの看護師の心理的な壁の高さが伺えます。
訪問看護師が不足する要因のひとつと言えるでしょう。
人材が定着しない
訪問看護師として働き始めても結局辞めてしまい、なかなか人材が定着しないことも訪問看護師が増えない原因のひとつです。
少し古いですが、以下のようなデータがあります。
●訪問看護業界全体でみた離職率は15.0%。
※【参考】病院の離職率(平成19年度)12.6%
人材が定着しない理由もいくつかあります。
- 人手不足による現場の忙しさ
- 教育体制の不十分さ
- 病棟看護とのギャップの大きさ
- スタッフ間のコミュニケーション不足
- 訪問看護の楽しさややりがいに辿り着く前の挫折
- 在宅という分野が合わなかった
このような状況が相まって離職につながることが多いです。
訪問看護ステーションは中小規模で運営している場合も多く、マンパワー不足による忙しさが散見されます。
忙しさがあると、教育やコミュニケーションなどさまざまなことに支障が出ます。
結果、心身の疲労や訪問看護の楽しさに辿り着く前の挫折につながってしまい、離職という選択をする看護師が少なくありません。
人材がなかなか定着しないことも訪問看護師不足の一因となっていると考えられます。
訪問看護師不足に対する解決策|訪問看護は決してひとりではない
訪問看護師不足に対する解決策は複数あると思います。
特に、主な原因3つのうち、「訪問看護に踏み込むまでの心理的な壁が高いこと」「人材が定着しないこと」に関するアプローチは、さまざまな方向から検討していくべきです。
- 教育サポート体制の確立
- 安心して働ける職場風土
- スタッフの負担を軽減できる体制作り
- 訪問看護の周辺業務の改善
- 休暇が取れる体制作り
- 子育て・介護支援
- 給与・諸手当の改善 など
- 業務内容に見合った報酬制度の改善
- 訪問看護ステーションの設置基準の緩和
- 訪問看護のPR
- 訪問看護の社会的評価
- 潜在看護職員の復職支援
- 訪問看護師確保対策の強化
- 24時間体制を可能にするサポート など
参考:訪問看護ステーションにおける人材確保・定着に関する実態調査報告書
上記のような内容の検討が必要であることが考えられています。
このように、訪問看護師不足の解決策は多岐にわたりますが、そのひとつとして当記事ではこれをお伝えさせてください。
訪問看護はひとりで訪問しますが、決してひとりではありません。
訪問看護に踏み込むまでの心理的な壁の高さの中に「ひとりで訪問する不安」が恐らくあるかと思います。
しかし、繰り返しますが訪問看護は決してひとりですべてを抱え込む必要はありません。
上司や仲間、多職種等と助け合い、知恵を出し合い、お互いの専門性を発揮しながら利用者さんを支えていきます。
看護師としての経験が浅く不安があったとしても、困ったり悩んだりした時にすぐ相談ができる体制の整っている訪問看護ステーションで働くことができれば、日々学びながら訪問看護師として必ず成長していけます。
働く訪問看護ステーション選びは重要です。
ビジケアでは、訪問看護にまつわる疑問や不安を解決できる記事を多数準備しています。
ぜひ参考にしていただき、訪問看護の道へ進みたい看護師さんの背中を押すお手伝いができれば大変嬉しく思います。
これからの訪問看護を担う看護師さんが少しでも増えることを願っています。
訪問看護師が不足しているってほんと?訪問看護に興味があるけど人気がないのかな…?なぜ不足しているのか理由が知りたいな。