訪問看護の対象者は、年齢や疾患を問わないため小児も対象となります。
ですが、一般的に訪問看護の利用者の割合は、介護保険を利用した高齢の方が多く、小児への訪問看護は少ないのが実際です。
また、訪問看護師の中でも小児科の経験がある看護師は限られています。
私自身、病院勤務時代に小児科経験はなく、訪問看護師に転職してから小児の訪問看護を担当するようになりました。
経験を積む中で、小児の訪問看護に特徴的な訪問看護師の役割があることが分かりました。
この記事では、小児への訪問看護の役割を分かりやすく解説します。
小児への訪問看護に興味がある方は、ぜひ最後まで読んでみて下さい。
目次
小児の訪問看護の現状
医療の進歩とともに、過去には命を落としていた多くの子どもの命が助かるようになりました。
同時に、医療的ケア児と呼ばれる、日常的に医療ケアを受けることが不可欠な子どもの数も増加しています。
医学の進歩を背景として、NICU等に長期入院した後、引き続き人工呼吸器や胃ろう等を使用し、たんの吸引等の医療的ケアが日常的に必要な子どもたち
厚生労働省の発表によると、自宅で生活する医療的ケア児は令和3年の時点で約2万人と推計されています。
平成17年には約1万人であったため、約15年の間で約1万人増加し2倍になっています。
医療的ケア児の増加とともに、小児訪問看護の利用者数も増加しています。
生活の中で医療を必要とする子どもを支援する、小児訪問看護の役割を解説します。
小児訪問看護の役割
小児への訪問看護の役割は以下の5つです。
- 医療的ケア
- 生活の支援
- 家族の支援
- 発達・成長の支援
- 多職種との連携
詳しく説明します。
医療的ケア
小児訪問看護の対象者の中には、医療機器(人工呼吸器、在宅酸素、経管栄養、点滴など)を使用しながら生活する医療的ケア児がいます。
訪問看護師は、全身状態の観察とともに医療機器の取り扱いと管理を行います。
医療機器を取り扱う家族への指導をすることも医療的ケアの1つです。
医療的ケア児は体調が変化する可能性も高いため、24時間の電話対応や緊急時の訪問も行います。
生活の支援
食事や排泄、入浴などの日常生活の支援を行います。
なかでも入浴の支援を行うことが多くあります。
呼吸器などの医療機器を装着して生活している子どもたちは、入浴時も医療機器の管理が必要な場合が多くあります。
入浴は体調変化のきっかけになる可能性も高いため、医療機器を装着しながらの入浴は細心の注意が必要です。
訪問看護師が入浴支援を行うことで、安全に入浴ができるだけでなく、家族の負担の軽減にもつながります。
家族の支援
小児の訪問看護は利用者本人だけではなく、主な介護者である親や、きょうだいなども支援の対象者と考えます。
日々の生活の中で親が休息を取ることができているか、きょうだい児がいれば、きょうだいが親と過ごす時間を取ることができているかという視点で家族の支援を行うことも訪問看護師の役割です。
長時間の訪問看護や自費の訪問看護を利用して、親が自分のための時間を過ごす、他のきょうだいと出かける時間を作るという支援を行うこともあります。
成長・発達の支援
子どもの疾患や特徴に応じて、成長発達を促していくことも小児の訪問看護の役割の1つです。
子どもによっては、標準的な成長曲線と異なる経過をたどることもあります。
親や主治医と状況を共有しながら、1人1人に合ったペースで成長発達ができるよう支援します。
例えば、生活の支援を行う際は年齢や身体の成長に合わせて、ケアの方法を変更します。
身体動作や機能獲得の支援は、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士など分野ごとの専門職が関わることもあります。
社会的な支援に関しては、年齢に応じて通所や通学など生活範囲を広げることができるように、地域の保健師や学校・施設などと連携をして行います。
多職種との連携
子どもとその家族の一番身近にいる医療者の1人として、多職種チームと連携するためのキーパーソンとなることも訪問看護師の役割の1つです。
小児を取り巻く環境は、成長に応じて変化し、医療者だけでなく福祉や教育に関わる非医療職もチームの一員となります。
訪問看護師は退院前カンファレンスなどに参加することで、訪問を開始する前から主治医や病院看護師と連携をすることができます。
退院後は状況に応じて、理学療法士など他の医療者や地域の保健師とも関わります。
また、成長に合わせて学校などの教育機関とも連携を行います。
訪問看護師は、様々なタイミングで幅広い分野の多職種と連携を取ることができます。
その立場を生かし、多職種チームがスムーズに連携できるようサポートします。
小児訪問看護は、小児と家族を支える大切な役割を担っている
小児への訪問看護の役割を5つ解説しました。
- 医療的ケア
- 生活の支援
- 家族の支援
- 発達・成長の支援
- 多職種との連携
小児訪問看護は、利用者である子どもだけでなく親や共に暮らすきょうだいなど「家族」をまるごと支援する役割を担います。
そのため、医療的な処置の技術・医療機器への対応・小児の発達や発育などの知識・ご家族やきょうだいへの配慮など様々な視点を持つ必要があり、大変だと感じるかもしれません。
しかし、お子さんが日々成長していく様子を間近で見られることは、とても感慨深く、やりがいを感じることができます。
医学の進歩と社会的な医療の流れから、今後も小児の訪問看護を必要とするお子さんは増え、小児訪問看護の役割はますます重要となるでしょう。
この記事を通して、小児訪問看護に少しでも興味を持つ方が増えたら嬉しいです。
小児科の経験がなく小児の訪問看護のイメージがわきません。
小児の訪問看護ってどんな支援をするのでしょうか。
どんな役割がありますか?