精神科訪問看護は、精神科疾患に特化した訪問看護のことを指します。
精神科疾患を抱える利用者さんに対し、在宅生活を継続できるよう主治医と連携を図り訪問看護師が居宅に伺って支援を行います。
今回は、精神科訪問看護の仕事内容について詳しく解説します。
初めて精神科訪問看護に関わる看護師さんや作業療法士さんは、ぜひ参考にしてください。
目次
精神科訪問看護とは?
精神科訪問看護とは、精神疾患を抱えながら在宅で生活を継続する利用者さんに対し行う訪問看護のことを言います。
精神科訪問看護を行う際には、通常の訪問看護指示書とは異なり、「精神科訪問看護指示書」の交付が必要です。
精神科訪問看護指示書が交付できる主治医は、「精神科を標榜する保険医療機関において精神科を担当する医師に限る」とされています。
また、精神科訪問看護を実施できる職種も限られており、精神疾患を有するものに対する相当の経験を有する看護師、准看護師、作業療法士が訪問看護を提供すること(理学療法士や言語聴覚士は算定できない)とされています。
精神科訪問看護の仕事内容とは?
では、精神科訪問看護の仕事内容について詳しく解説していきます。
厚生労働省の調査によると、精神科訪問看護を利用する患者さんの多くは、過去に入退院を繰り返している経緯があることがわかります。
病状の悪化を早期に発見することや、精神症状の自己管理を継続して行うことを目的に訪問看護が導入されることが多いです。
このように、精神科訪問看護では精神症状の安定を図り、自立して生活できるよう支援しています。
上記のように、精神科訪問看護では精神症状を含む体調観察や服薬に関する援助を行います。
次の項目では、精神科訪問看護で実際に行われている具体的な仕事内容について解説します。
精神面を含む体調観察
精神科訪問看護では、通常の訪問看護と同様に身体面の観察を行います。
それに加えて、精神面の観察も行いましょう。
睡眠状況や食事摂取状況により身体症状が生じている場合もあります。
精神面の変化によるバイタルサインへの影響も考慮して観察をします。
精神科訪問看護では、定期的な精神面の評価が必要となります。
定期的な評価には、GAF尺度を用いて行い、結果を精神科訪問看護報告書に記載する必要があります。
精神症状に対する自己管理
定期的な訪問時には、疾患により生じる恐れのある精神症状を把握し、利用者さんと共に症状の自己管理方法を検討します。
クライシスプランを用いて症状に対しての対応を共有しておくことで、病状悪化の早期発見、早期対応に役立ちます。
病状の重篤な悪化が生じる前に対応することで、入院に至らず過ごすことが可能な場合もあります。
また、精神症状の自己管理を実施する際には、利用者さんが実際に行った対処による評価を行うことが重要です。
精神科訪問看護を行う際には、自己管理の方法の検討と評価、修正を繰り返し一人一人の利用者さんに合った自己管理方法を提案していきます。
クライシスプランとは「安定した状態の維持、また病状悪化の兆候がみられた際の自己対処と支援者の対応について病状が安定している時に合意に基づき作成する計画」と表現されます。
精神科訪問看護で使用されるクライシスプランとは、利用者さん本人が、自身の病状悪化時の対処法を考えるものです。
例えば、精神症状の悪化をきたす際に現れやすい症状として「夜間の不眠」がある場合には、自己対処法として「頓服薬の使用やリラックスできる環境設定、他者への相談を行う」と不眠を回避できる、というように不調の早期発見•早期対応に役立ちます。
参考資料 厚生労働省 令和元年度生活困窮者就労準備支援事業費等補助金社会福祉推進事業 「地域生活定着支援センターにおける質の高い実践を担う人材を全国的に育成するための、 研修カリキュラム及び効果的な業務サポートツール等の検討・開発に係る研究事業」
服薬管理・助言
精神科訪問看護では、服薬の管理や頓服の使用方法の助言を行います。
精神症状をコントロールするためには規則正しい生活を行うことと、適切に服薬を行うことが重要です。
通常の訪問看護でもあることですが、精神科訪問看護の利用者さんも服薬を自己中断してしまうことや、過剰内服をしてしまうことがあります。
処方されている薬剤によっては、命に関わる場合もあるため注意が必要です。
在宅での生活を継続するためには、安全で適切な服薬を継続できるよう支援しています。
清潔ケア
通常の訪問看護では、身体症状により清潔の保持が困難となり、看護師による清潔ケアが必要になります。
精神科訪問看護では、精神症状により清潔の保持が困難な場合に、看護師による保清の介入を行うことがあります。
精神科訪問看護では、日常生活の自立を促す関わりを行います。
そのため、清潔ケアを行う際にも利用者さんが日常生活で取り入れられる方法を一緒に検討して実施しましょう。
緊急時の対応
精神科訪問看護でも、24時間対応体制加算を算定する場合には、緊急時の対応を行います。
精神疾患を抱える利用者さんは、在宅での生活の中で様々なストレスや不安を感じています。
クライシスプランを設定していても、症状が強く自己コントロールが困難なことがあります。
その際には訪問看護に相談することで、重篤な悪化を防ぐことも可能です。
また、緊急対応を要するような症状の出現があった際には、主治医への報告や利用者さんに関わる他職種と情報共有を行うことで状況に応じた対応を行うことができます。
このように精神科訪問看護では、日々の定期訪問で安定した生活を継続できるように介入し、生活の中で生じる症状の悪化時には緊急での対応を行うことで利用者さんの在宅生活を支えています。
まとめ
今回は、精神科訪問看護の仕事内容について解説しました。
精神科訪問看護は通常の訪問看護と比較すると、専門性が高く知識や技術を要します。
在宅という環境から病院や施設での精神科看護とも異なる場面があり、悩んでしまうこともあると思います。
そんな時にはぜひビジケアにご相談ください!
精神科訪問看護について経験豊富な看護師、作業療法士、精神看護専門看護師が支援させていただきます。
精神科訪問看護の利用者は、過去に3回以上の入院を経験している人が多く、再入院につながる病状悪化を防ぐために訪問看護が導入されることが多いことがわかった。そのため、訪問時に実施した援助については、 GAF40未満では「精神症状に関する援助」「服薬行動援助」をはじめとする病状悪化を防ぐ援助が重点的に行われていた。利用者全体を見ると「精神症状に関する援助」「活動性・生活リズムに関する援助」「服薬行動援助」が高い割合で実施されており、病状の安定だけでなく、QOLの向上や社会参加に向けた援助も精神科訪問看護で行われている実態が明らかになった。
引用 厚生労働省 令和2年度 障害者総合福祉推進事業「精神科訪問看護に係る実態及び精神障害にも対応した地域包括ケアシステムにおける役割に関する調査研究報告書」