訪問看護を運営していくためには、職員が安心して働くために定められている労働関連法令を知っておく必要があります。
今回は、訪問看護における労務関連法令について解説します。
初めて事業主になる経営者の方だけでなく、雇用されている管理者の方や一般職員のように労働者としても知識として持っておくことをお勧めしたい内容です。
目次
労働関連法令とは?
労働関連法令とは、労働に関する法律をひとまとめにした呼び名です。
労働関連法令の中には、私たちがよく耳にする「労働基準法」や「育児介護休業法」などをはじめ、さまざまな法律が含まれています。
労働関連法令は、事業主と労働者の雇用契約を結ぶ際に、労働者の権利を守る法律です。
事業主は労働関連法令を違反せずに、正しい知識を持って事業の運営をしていく必要があります。
労働関連法令に該当する法律とは?
では、労働関連法令の中にはどのような法律が存在するのでしょうか。
労働関連法令は、以下の法律が該当します。
- 労働基準法
- 労働組合法
- 労働契約法
- 労働関係調整法
- 労働安全衛生法
- 職業安定法
- 最低賃金法
- 障害者基本法
- 障害者の雇用の促進等に関する法律
- 高齢者等の雇用の安定等に関する法律
- 雇用保険法
- 健康保険法
- 厚生年金保険法
- 国民健康保険法
- 国民年金法
- 介護保険法
- 男女雇用機会均等法
- 労働者派遣法
- パートタイム労働法
- 育児介護休業法
- 労働者災害補償保険法
聞いたことはある法律もありますね。
上記の中でも重要な法律について、簡単に解説します。
詳細については、厚生労働省「労働基準情報:労働基準に関する法制度」でご確認ください。
労働基準法
労働基準法は、労働者を守るため事業主が守る必要のある労働条件の最低基準を定めた法律で、「労基法」と略されることもあります。
正社員、パートなどの雇用形態を問わず労働者に適用される法律です。
労働基準法では、労働契約や賃金、労働時間、休暇、就業規則などの最低基準を定めており、大まかな内容は以下の通りです。
- 賃金の支払の原則・・・直接払、通貨払、金額払、毎月払、一定期日払
- 労働時間の原則・・・1週40時間、1日8時間
- 時間外・休日労働・・・労使協定の締結
- 割増賃金・・・時間外・深夜2割5分以上、休日3割5分以上
- 解雇予告・・・労働者を解雇しようとするときは30日以上前の予告または30日分以上の平均賃金の支払
- 有期労働契約・・・原則3年、専門的労働者は5年
この他、年次有給休暇、就業規則などについて規定しています。
厚生労働省 労働基準行政の主な法制度より引用
労働組合法
労働組合法も労基法と同じく、労働者を守るための法律です。
労働者は、労働三権という権利を持っています。
- 団結権:自由に労働組合を結成することができる権利
- 団体交渉権:労働における内容を会社と交渉できる権利
- 団体行動権:交渉により改善されない場合にストライキを起こす権利
労働組合法とは、上記の労働三権を労働者の権利として保障するものです。
事業主である会社側が労働者の組合活動に対して不利益な対応を行うことは、労働組合法により禁止されています。
労働契約法
労働契約法は平成20年に施行された、労働契約のルールについて定めた法律です。
就業形態の多様化にともない増加傾向にある労働紛争を防ぐことや、労働者と事業主との関係の安定を図ることを目的として作られました。
労働契約法では、以下のような内容が定められています。
労働契約の締結
労働契約を締結する際には、労働者に対し労働条件を記した「労働条件通知書」の交付を義務としています。
① 労働契約の期間に関する事項
② 有期労働契約の更新の基準に関する事項
③ 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
④ 始業・終業時刻、所定労働時間超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、2交代制等に就業させる場合に関する事項
⑤ 賃金の決定・計算・支払い方法、賃金の締め切り、支払い時期、昇給に関する事項(退職手当及び臨時の賃金は除く)
⑥ 退職に関する事項(解雇を含む)
労働契約の変更
労働条件は事業主である会社側の都合で一方的に変更することはできません。
労働条件を変更する場合には、以下の方法で行います。
- 労働条件変更について従業員それぞれ個別に同意を得て、労働条件通知書を明示する。
- 労働条件変更について従業員それぞれ個別に同意を得て、雇用契約書を締結する。
- 就業規則を変更する。
労働契約の継続・終了
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない場合、権利を濫用したものとして無効となります。
契約期間に定めのある労働者については、やむを得ない事由がある場合でなければ、契約期間が満了するまでの間において労働者を解雇することができません。
有期労働契約
雇用の期間のある労働者に対しては、事業主は契約の締結時にその契約の更新の有無を明示しなければなりません。
また、事業主は有期労働契約を更新する場合があると明示したときは、労働者に対して契約を更新する場合又はしない場合の判断の基準を明示する必要があります。
労働安全衛生法
労働安全衛生法は、職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境を形成することを目的として制定された法律です。
事業主は業務上安全で快適な職場を提供することに加え、労働者の心身の健康を維持するために定期的な健康診断を実施するなどの義務を守る必要があります。
最低賃金法
最低賃金法は、労働者に対し最低賃金額以上の賃金を支払うことを事業主に義務付ける法律です。
最低賃金には以下の2種類あります。
地域別最低賃金
都道府県ごとに定められており、産業や業種に関わりなく全ての労働者に適応される。
特定(産業別)最低賃金
特定の産業について、事業主と労働者が基幹的労働者として、地域別最低賃金より金額水準の高い最低賃金を定めることが必要と認めるものについて設定されている。
なお、特定(産業別)最低賃金は、地域別最低賃金を上回らなければいけません。
ご自身の事業所のある地域の最低賃金について、各都道府県のホームページにてご確認ください。
育児介護休業法
育児介護休業法とは、育児又は家族の介護を行う労働者等に対する支援措置を講ずることにより、労働者が退職せずに一時的な休業で雇用を継続できることを目的とした法律です。
子育て世代の看護師さんの就職も多い訪問看護ステーションでは、この法律をよく理解しておく必要があります。
また、女性の育児休暇だけでなく男性の労働者が育児に参加するため、令和4年10月より「産後パパ育休」という制度が注目されています。
労働者災害補償保険法
「労災」と呼ばれることの多いこの法律は、労働中や通勤中のけがや病気をした場合や、死亡した場合に保険給付が行われる社会保険制度です。
業務上および通勤時に起こったけがや病気に対して迅速かつ公正な保護をするために保険給付を行い、適正な労働条件の確保等を図ることにより、 労働者の福祉の増進に寄与しようとすること目的としています。
労災は、健康保険などの社会保険と異なり、労災での保険料を全額事業主が負担します。
労働関連法令に違反するとどうなるの?

例えば、労働基準監督署による調査や労働者が労働基準監督署への通報をするなどにより、労働基準法違反が発覚したとします。
その場合、通常は「是正勧告書」により現状の改善を求められることになります。
事業主は改善を行った旨を、労働基準監督署に報告します。
このように、すぐに罰則を受けることは多くありません。
しかし、是正勧告書に従わない場合や違反を繰り返す場合には、罰則が適用されるため注意が必要です。
まとめ
今回は、訪問看護の運営における労務に関する法律について解説しました。
訪問看護事業で初めて経営を学ぶ看護師さんや療法士さんも少なくないと思います。
ぜひこの機会に経営に必要な法律を学び、訪問看護事業の運営に役立ててください!
参考
- 厚生労働省「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準について」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoukeiyaku01/dl/14.pdf - 厚生労働省「労働基準情報:労働基準に関する法制度」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/kijyungaiyou01.html - 厚生労働省 育児・介護休業法について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html - 厚生労働省 育児・介護休業法の改正について
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000851662.pdf - 安曇出版 佐藤広一著「図解でシッカリ!よくわかる労働法」
- あさ出版 みらい総合法律事務所著「90分でわかる 社長が知らないとヤバい労働法」
























労働関連法令とは?
労働関連法令に該当する法律とは?
労働基準法
労働組合法
労働契約法
労働契約の締結
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労働契約の継続・終了
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労働安全衛生法
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育児介護休業法
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労働関連法令に違反するとどうなるの?