「口腔連携強化加算」という名前は聞いたことがあっても、「単位数は分かるけど、実際にどんな体制を整えればいいのか分からない」という管理者の方は多いのではないでしょうか。令和6年度介護報酬改定で新設されたばかりの加算で、歯科専門職との連携体制づくりが必須になる点が、これまでの加算とは少し毛色が違います。
この記事では、介護保険における口腔連携強化加算の単位数・算定要件・留意点を、歯科医療機関との連携体制の作り方や運営指導での確認ポイントまで含めて整理します。訪問看護ステーションでこれから算定を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
- 口腔連携強化加算の単位数・対象サービスと算定要件
- 歯科専門職との連携体制をどう作ればよいか
- 口腔の健康状態評価で確認すべき項目と情報提供の実務
- 他の加算との重複算定NGケースと運営指導でのチェックポイント
目次
口腔連携強化加算とは?介護保険における位置づけ
口腔連携強化加算とは、職員による利用者の口腔の状態の確認によって、歯科専門職による適切な口腔管理の実施につなげる観点から、事業所と歯科専門職の連携の下、介護職員等による口腔衛生状態及び口腔機能の評価の実施並びに利用者の同意の下の歯科医療機関及び介護支援専門員への情報提供を評価する加算です。令和6年度介護報酬改定で新設されました。

ポイントは、歯科の専門的な処置をするわけではなく、事業所の職員が口腔の状態を「気づいて」歯科専門職につなぐ役割を評価する加算だという点です。看護師や介護職員が日々の訪問の中で見ている口腔の変化を、歯科医療機関やケアマネジャーにきちんと橋渡しできているかが問われます。
口腔連携強化加算の対象サービスと単位数
口腔連携強化加算は、訪問看護のほか、訪問介護・訪問リハビリテーション・短期入所生活介護・短期入所療養介護・定期巡回随時対応型訪問介護看護など、複数の訪問系・短期入所系サービスが対象になっています。単位数は次の通りです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 口腔連携強化加算 | 50単位/月 |
| 算定回数 | 1月に1回に限り算定可能 |
次に、具体的にどのような要件を満たせば算定できるのか見ていきましょう。
口腔連携強化加算の算定要件
口腔連携強化加算の算定要件は、大きく分けて次の2点です。
- 事業所の従業者が、口腔の健康状態の評価を実施すること
- 利用者の同意を得て、歯科医療機関及び介護支援専門員に対し、当該評価の結果を情報提供すること
さらに、歯科専門職との連携体制の確保も必須要件です。
事業所は、利用者の口腔の健康状態に係る評価を行うにあたって、診療報酬の歯科点数表区分番号C000に掲げる歯科訪問診療料の算定実績がある歯科医療機関の歯科医師、又はその歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が、事業所の従業者からの相談等に対応できる体制を確保し、その旨を文書等で取り決めておく必要があります。

口腔の健康状態評価と歯科医療機関への情報提供の実務
口腔の健康状態の評価は、利用者ごとに行われるケアマネジメントの一環として実施することに留意する必要があります。評価にあたっては、必要に応じて連携歯科医療機関の歯科医師又は歯科衛生士に評価の方法や在宅歯科医療の提供等について相談すること、とされています。連携歯科医療機関は複数でも差し支えありません。
評価では、次の項目を確認します(利用者の状態に応じて確認可能な場合に限る項目もあります)。
- 開口の状態
- 歯の汚れの有無
- 舌の汚れの有無
- 歯肉の腫れ、出血の有無
- 左右両方の奥歯のかみ合わせの状態
- むせの有無
- ぶくぶくうがいの状態(状態に応じて)
- 食物のため込み、残留の有無(状態に応じて)
評価した情報は、歯科医療機関及び当該利用者を担当する介護支援専門員に対し、別紙様式6等により提供します。歯科医療機関への情報提供にあたっては、利用者又は家族等の意向及び担当ケアマネジャーの意見等を踏まえ、連携歯科医療機関・かかりつけ歯科医等のいずれか又は両方に情報提供を行います。
口腔の健康状態によっては主治医の対応を要する場合もあるため、必要に応じて介護支援専門員を通じて主治医にも情報提供等の適切な措置を講じましょう。評価の実施にあたっては、別途通知(「リハビリテーション・個別機能訓練、栄養、口腔の実施及び一体的取組について」)や「入院(所)中及び在宅等における療養中の患者に対する口腔の健康状態の確認に関する基本的な考え方」(令和6年3月 日本歯科医学会)等も参考にしてください。

他の加算・サービスとの重複算定に関する注意点
口腔連携強化加算には、算定できない・重複できないケースがいくつかあります。
- 一人の利用者に対しては、訪問看護・訪問リハビリテーション・訪問介護・短期入所生活介護・短期入所療養介護・定期巡回随時対応型訪問介護看護のうち、一つの事業所しか口腔連携強化加算を算定できません
- 他の介護事業所が同一利用者に対して口腔・栄養スクリーニング加算を算定している場合は算定できません(栄養状態のスクリーニングを行い、口腔・栄養スクリーニング加算(Ⅱ)を算定している場合を除く)
- 指定居宅療養管理指導事業所が、歯科医師・歯科衛生士による居宅療養管理指導費を算定している場合は算定できません(初回の居宅療養管理指導を行った月を除く)

一人の利用者に複数の事業所が関わっているケースでは、どの事業所が口腔連携強化加算を算定するか、サービス担当者会議で決めておくことが大切です。決めた事業所が継続的に評価を実施するのが原則です。
口腔連携強化加算の運営指導でチェックされるポイント
運営指導では、次の書類が準備できているか確認されます。
- 口腔連携強化加算に係る口腔の健康状態の評価及び情報提供書
- ケアプランへ位置付けられているか
- 歯科医療機関との連携体制を取り決めた文書(歯科訪問診療料の算定実績がある歯科医師等との体制確保について)
「評価はしているが、様式6等での情報提供の記録が残っていない」という指摘は起こりやすいパターンです。評価結果と情報提供の記録は必ずセットで保管しておきましょう。
現場で気をつけたい運用のポイント

歯科専門職との連携体制は、加算を算定してから慌てて作るのではなく、算定を始める前に「どの歯科医療機関と組むか」「相談の連絡手段はどうするか」を文書で決めておくとスムーズです。地域の訪問歯科診療を行っている歯科医院に、日頃から相談しておくとよいですね。
また、口腔の健康状態評価は一度きりで終わらせず、利用者ごとのケアマネジメントの一環として、定期的な訪問看護の中に組み込んでおくと、月1回の算定タイミングを逃しにくくなります。
口腔連携強化加算のQ&A
一人の利用者に対して、訪問看護・訪問リハビリテーション・訪問介護・短期入所生活介護・短期入所療養介護・定期巡回随時対応型訪問介護看護がそれぞれ口腔連携強化加算を算定することはできますか?
できません。一人の利用者に対しては、一つの事業所しか口腔連携強化加算は算定できません。ケアマネジャーを中心に、どの事業所が算定するか話し合って決めましょう。
他に算定できない場合はありますか?
次の場合も算定できません。①他の介護事業所が同一利用者に対して口腔・栄養スクリーニング加算を算定している場合(栄養状態のスクリーニングを行い、口腔・栄養スクリーニング加算(Ⅱ)を算定している場合を除く)。②指定居宅療養管理指導事業所が、歯科医師・歯科衛生士による居宅療養管理指導費を算定している場合(初回の居宅療養管理指導を行った月を除く)。
口腔の健康状態の評価は、どの職種が行いますか?
歯科専門職ではなく、事業所の従業者(訪問看護であれば看護師等)が評価を実施します。評価にあたっては、歯科訪問診療料の算定実績がある歯科医療機関の歯科医師又は歯科衛生士に、必要に応じて評価の方法などを相談できる体制を確保しておく必要があります。
連携する歯科医療機関は、どのように選べばよいですか?
診療報酬の歯科点数表区分番号C000に掲げる歯科訪問診療料の算定実績がある歯科医療機関の歯科医師、又はその指示を受けた歯科衛生士との間で、相談等に対応する体制を確保し、その旨を文書等で取り決めます。連携する歯科医療機関は複数でも差し支えありません。
口腔の健康状態の評価は、どのタイミングで行えばよいですか?
利用者ごとに行われるケアマネジメントの一環として実施することとされています。日々の訪問看護の中に組み込み、月1回の算定タイミングを逃さないよう定期的に行うとよいでしょう。
※ 単位数(50単位/月)・算定要件は複数の専門メディアの解説記事でも一致が確認できていますが、本記事作成時点で厚生労働省の告示原文そのものへの直接照合までは行えていません。算定にあたっては、必ず最新の告示・通知でご確認ください。

まとめ|口腔連携強化加算は「気づき」と「情報提供」をセットで整える
口腔連携強化加算は、事業所の職員が利用者の口腔状態の変化に気づき、歯科専門職や介護支援専門員へきちんと情報をつなぐ体制を評価する加算です。単位数自体は50単位/月と大きくありませんが、歯科医療機関との連携体制づくりや評価・情報提供の記録整備が算定のカギになります。
- 口腔連携強化加算は50単位/月、月1回に限り算定可能。令和6年度改定で新設
- 算定には、口腔の健康状態評価の実施と、歯科医療機関・ケアマネジャーへの情報提供の両方が必要
- 歯科訪問診療料の算定実績がある歯科医師等との連携体制を、文書で取り決めておく必要がある
- 1人の利用者につき1事業所のみ算定可能。口腔・栄養スクリーニング加算や居宅療養管理指導費との重複に注意
算定を検討する際は、まず地域の訪問歯科診療を行う歯科医療機関との連携体制づくりから始めてみましょう。



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