訪問看護のターミナルケア加算とは?【介護保険・令和6年度改定対応】算定要件を徹底解説

訪問看護のターミナルケア加算を算定しようとしたとき、「算定要件を正しく満たせているか」「記録書には何を書けばいいのか」「医療保険に切り替わったらどうなるか」など、判断に迷う場面は少なくありません。在宅看取りの件数が年々増加するなか、ターミナルケア加算の算定漏れや誤算定は事業所の運営に直接影響します。

この記事では、令和6年度介護報酬改定後の最新の単位数・算定要件をはじめ、医療保険との使い分け、運営指導対策に必要な書類、訪問看護記録書の記載ポイント、よくある疑義解釈まで、実務で必要な情報をまとめて解説します。

この記事でわかること
  • 令和6年度介護報酬改定後のターミナルケア加算の単位数(2,500単位)と概要
  • 算定要件4つの具体的な内容と押さえるべきポイント
  • 介護保険・医療保険の違いと保険の使い分けの判断基準
  • 運営指導で指摘されないための必要書類と記録のポイント
  • 看護体制強化加算との関係と算定管理の実務
  • 実務でよく出る疑義解釈Q&A(6問)

ターミナルケア加算とは?令和6年度改定後の概要

ターミナルケア加算は、介護保険の訪問看護を利用している要介護者に対して、死亡日および死亡日前14日以内に2日以上ターミナルケアを行った場合に算定できる加算です。在宅で亡くなった方(ターミナルケア実施後24時間以内に在宅以外で亡くなった方を含む)が対象となります。

近年、在宅医療の推進と訪問看護事業所数の増加にともない、在宅看取りの件数は右肩上がりで増えています。ターミナルケア加算を算定する機会が増えているからこそ、算定要件を正確に理解し、漏れなく・正しく算定することが事業所の経営を守ることにもつながります。

令和6年度改定後の単位数

ターミナルケア加算:2,500単位(死亡月に算定)

令和6年度介護報酬改定(2024年6月1日施行)で、従来の2,000単位から2,500単位へ引き上げられました。医療保険のターミナルケア療養費との評価の均衡を図る観点から単位数が引き上げられています。

看護師 上妻
看護師 上妻

令和6年度改定(2024年6月施行)で2,000単位から2,500単位へ引き上げられましたが、システムの設定が改定前のままになっていないか確認しておくと安心です。また、要介護者のみが対象で、要支援者(介護予防訪問看護)はターミナルケア加算の対象外です。この点もよく間違えやすいポイントですね。

ターミナルケア加算の算定要件4つを詳しく解説

ターミナルケア加算を算定するためには、以下4つの要件をすべて満たす必要があります。一つでも欠けると算定できませんので、実務のチェックリストとして活用してください。

①24時間連絡・訪問できる体制を整備していること

事業所として24時間連絡体制を確保し、かつ必要に応じて訪問できる体制を整備していることが前提です。利用者・家族が「いつでも連絡できる」と安心できる環境を整えることが求められます。具体的には、夜間・休日でも対応できる緊急連絡先を書面で利用者・家族に案内しておくことが必要です。

②主治医と連携のもと、計画・支援体制を説明し同意を得ていること

主治医との連携を前提として、訪問看護におけるターミナルケアに係る計画および支援体制について、利用者・家族に説明を行い、同意を得た上でターミナルケアを実施していることが必要です。この説明と同意の内容は訪問看護計画書等に記録として残しておく必要があります。

なお、ターミナルケアの実施にあたっては、厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」の内容を踏まえ、利用者本人の意思決定を基本に対応することが求められます。このガイドライン以外にも、日本老年医学会の「高齢者ケアの意思決定プロセスに関するガイドライン 人工的水分・栄養補給の導入を中心として」等も参考となります。

③ターミナルケアの提供について訪問看護記録書に記録されていること

ターミナルケアの各プロセスにおいて、利用者および家族の意向を把握し、アセスメントおよび対応の経過が訪問看護記録書に記録されていることが要件です。単に「ターミナルケアを実施した」という記載では不十分で、利用者の身体状況の変化、本人・家族の意向、他職種との連携内容なども含めて記録する必要があります。

④他の医療・介護関係者と十分な連携を図るよう努めること

ターミナルケアの実施にあたっては、他の医療・介護関係者と十分な連携を図ることが求められます。具体的には、サービス担当者会議等における情報共有が想定されます。例えば、居宅介護支援事業者との連携の方法については、「訪問看護の情報共有・情報提供の手引き~質の高い看取りに向けて~」(厚生労働省老人保健健康増進等事業)が参考になります。

看護師 上妻
看護師 上妻

4つの要件のなかでも③の「記録」がポイントです。運営指導でよく指摘されるのが、訪問看護記録書の記載が薄いケース。「呼吸状態の変化あり、家族に説明・同意確認」といった具体的な記録を毎回残すことが大切です。記録の質がそのまま算定の根拠になりますよ。

訪問看護師が利用者宅でターミナルケアを行い家族に寄り添っている様子

介護保険と医療保険の違い・ターミナルケア加算の使い分け

訪問看護のターミナルケア加算は、介護保険と医療保険でそれぞれ別の仕組みがあります。在宅看取りの現場では途中で保険が切り替わることも多いため、どちらの保険でターミナルケア加算(療養費)を算定するかの判断は特に重要です。

比較項目介護保険(ターミナルケア加算)医療保険(ターミナルケア療養費)
単位数・点数2,500単位(令和6年度改定後)訪問看護ターミナルケア療養費1・2(区分あり)
対象要介護者(要支援者は対象外)医療保険の訪問看護利用者
算定条件(日数)死亡日および死亡日前14日以内に2日以上死亡日および死亡日前14日以内に2回以上
算定月死亡月に算定死亡月に算定
区分支給限度基準額算定対象外(限度額に含まれない)
同時算定の可否1利用者につき1事業所のみ算定可同左

同一期間に介護・医療保険の両方で訪問した場合の取り扱い

同一の訪問看護ステーションにおいて、死亡日および死亡日前14日以内に介護保険・医療保険それぞれ1日以上の訪問を実施した場合は、最後に実施した保険制度においてターミナルケア加算(療養費)を算定します。

たとえば、死亡日の前日まで介護保険で訪問し、死亡日に医療保険(特別訪問看護指示書)で訪問した場合は、最後の訪問が医療保険になるため、医療保険のターミナルケア療養費として算定します。この場合、介護保険でのターミナルケア加算は算定できません。

注意:特別訪問看護指示書が交付された場合

急性増悪等で特別訪問看護指示書が交付され、医療保険で訪問看護を行っていた期間に死亡した場合は、死亡前24時間以内の訪問が医療保険の給付対象であれば、ターミナルケア療養費として医療保険で算定します。介護保険でのターミナルケア加算と混同しやすいため注意が必要です。

看護師 上妻
看護師 上妻

「最後に実施した保険制度で算定」というルールは、実務でよく引っかかるところです。看取りの直前に医療保険に切り替わることは珍しくありませんから、死亡後に保険の確認を必ず行いましょう。算定する前にサービス提供票やケア記録で最終訪問の保険種別を確認する習慣をつけておくとよいですね。

ターミナルケア加算の留意点(6つ)

算定要件を満たしていても、以下の留意点を見落とすと正しく算定できないケースがあります。事業所内で共有・確認しておきましょう。

  • 死亡月に算定する。ターミナルケアを最後に行った日が属する月と死亡月が異なる場合でも、死亡月に算定します。
  • 1利用者につき1事業所のみ算定できる。同一の利用者に対して、他の訪問看護ステーション・定期巡回・随時対応サービス・看護小規模多機能型居宅介護でターミナルケア加算が算定されている場合は算定できません。他事業所での算定の有無を確認することが必要です。
  • 区分支給限度基準額の算定対象外。ターミナルケア加算は支給限度額管理の対象外のため、限度額を超えていても算定できます。
  • 医療機関に搬送後24時間以内に死亡した場合も算定可能。ターミナルケアを実施中に死亡診断を目的として医療機関に搬送し、搬送後24時間以内に死亡が確認された場合もターミナルケア加算を算定できます。
  • 介護予防訪問看護(要支援者)は算定対象外。本加算は要介護者(介護保険の訪問看護)のみが対象です。
  • 介護保険・医療保険の両方でのターミナルケア加算(療養費)の同時算定は不可。最後に実施した保険制度の一方でのみ算定します。
訪問看護管理者が事務所で書類を確認している様子

看護体制強化加算との関係

ターミナルケア加算は、看護体制強化加算(Ⅰ)・(Ⅱ)の算定要件に含まれています。具体的には、看護体制強化加算の要件として「ターミナルケア加算の算定者数が一定数以上であること」が求められます。

看護体制強化加算(Ⅰ)は月550単位、(Ⅱ)は月200単位と継続的な収入増につながるため、ターミナルケア加算の算定管理は事業所経営においても重要です。在宅看取りの事例が一定数ある事業所では、ターミナルケア加算の算定漏れが看護体制強化加算の取得可否にも影響する点を意識しておく必要があります。

POINT:ターミナルケア加算の算定管理が看護体制強化加算に直結

ターミナルケア加算の算定実績は6か月間の累積で評価されます。算定漏れや記録不備による未算定が続くと、看護体制強化加算の算定要件を満たせなくなるリスクがあります。月次で算定状況を確認する仕組みを整えておきましょう。

運営指導で指摘されやすいポイントと必要書類

ターミナルケア加算は運営指導(実地指導)で確認されることが多い加算です。以下の書類・記録が整っているかを事前にチェックしておきましょう。

必要書類チェックリスト

  • 緊急連絡先を案内する書面(24時間連絡・訪問体制の確認用)
  • 訪問看護計画書(主治医と連携のもとターミナルケア計画・支援体制を記載し、利用者・家族への説明と同意を確認できること)
  • 訪問看護記録書(ターミナルケア提供の身体状況の変化・利用者/家族の意向・アセスメント・対応経過を記録)
  • サービス提供票(死亡日および死亡前14日以内に2日以上のターミナルケアを実施したことが確認できること。ターミナルケア後24時間以内に在宅以外で死亡した場合を含む)
  • 他の訪問看護ステーション等での当該加算の算定有無の確認記録

訪問看護記録書の記載ポイント

運営指導で最も確認されるのが訪問看護記録書です。「ターミナルケアを行った」という一行だけでは不十分で、以下の内容を具体的に記録することが求められます。

記載すべき項目記載例
身体状況の変化呼吸状態の変化(チェーンストークス呼吸出現)、血圧低下(90/60mmHg)、四肢チアノーゼ出現
利用者・家族の意向ご本人「自宅で最期を迎えたい」と以前より意思表示あり。ご家族も在宅での看取りを希望されている。
アセスメント死亡前数日以内の可能性が高い状態。主治医に状態報告・指示確認済み。
対応経過・他職種連携居宅介護支援事業者のケアマネジャーへ状態変化を報告。主治医と訪問タイミングを調整。
家族へのケア・説明家族に今後の経過について説明し、不安の傾聴を行う。緊急連絡先・対応方法を再確認。
看護師 上妻
看護師 上妻

「記録書に書いたことが算定の根拠になる」と思って書くといいですよ。運営指導では記録書を見て「この日はターミナルケアとして算定できる内容か」を確認されます。毎回の訪問で少しずつでも具体的な記録を残すことが、算定漏れを防ぐだけでなく、利用者・家族への質の高いケアにもつながりますね。

ターミナルケア加算のよくある疑義解釈Q&A

介護保険の訪問看護対象者が特別訪問看護指示書の交付を受けて医療保険で訪問していた期間に死亡した場合、どちらの保険で算定しますか?

死亡前24時間以内の訪問看護が医療保険の給付対象となる場合は、「ターミナルケア療養費」として医療保険で算定します。介護保険でのターミナルケア加算は算定できません。最後に実施した保険制度での算定が原則です。

死亡日前14日以内に介護保険・医療保険でそれぞれ1回ずつ、合計2回ターミナルケアを実施した場合、算定できますか?

算定できます。最後に実施した保険制度においてターミナルケア加算(療養費)を算定してください。介護保険・医療保険の訪問を合わせてカウントすることが認められており、「2日以上」の要件は保険の種別をまたいで満たすことができます。

死亡前14日以内に2回以上ターミナルケアを実施していた場合、医療機関に搬送され24時間以内に死亡した場合も算定できますか?

はい、算定できます。ターミナルケアを実施中に死亡診断を目的として医療機関に搬送し、搬送後24時間以内に死亡が確認された場合に算定することができます。搬送後は医療機関との情報共有を必ず行い、記録に残してください。

ターミナルケアの実施にあたって踏まえるべきガイドラインとして、厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」以外にはどのようなものがありますか?

当該ガイドライン以外の例として、日本老年医学会「高齢者ケアの意思決定プロセスに関するガイドライン 人工的水分・栄養補給の導入を中心として」(平成23年度老人保健健康増進等事業)等が挙げられます。いずれのガイドラインも、利用者本人の意思決定を基本に、家族・他の関係者と連携して対応することを求めています。

他の訪問看護ステーションと同一の利用者に関わっている場合、どちらの事業所がターミナルケア加算を算定できますか?

1人の利用者に対して算定できるのは1か所の事業所のみです。他事業所での算定の有無を事前に確認し、重複算定にならないよう注意が必要です。算定する場合は、他事業所での算定がないことを確認した記録を残しておくことを推奨します。

ターミナルケア加算は区分支給限度基準額に含まれますか?

含まれません。ターミナルケア加算は区分支給限度基準額の算定対象外です。利用者が限度額いっぱいまで他のサービスを利用していても、ターミナルケア加算は算定できます。緊急時訪問看護加算や特別管理加算と同様に、限度額管理の対象外として扱われます。

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看護体制強化加算の算定要件とターミナルケア加算の関係をさらに詳しく知りたい方は、訪問看護の加算体系まとめもあわせてご覧ください。

区分支給限度基準額の対象外となる加算を確認する
訪問看護ターミナルケア加算の要点まとめ図解

まとめ|ターミナルケア加算は正確な知識と記録が算定の要

令和6年度介護報酬改定によって単位数が2,500単位に変更されたターミナルケア加算。在宅看取りが増えるなかで算定機会も増えていますが、算定要件・保険の使い分け・記録書の記載まで、正確に理解して実務に臨むことが重要です。

この記事のまとめ
  • ターミナルケア加算は令和6年度改定後2,500単位(死亡月算定)。要介護者のみが対象で、介護予防訪問看護(要支援者)は対象外。
  • 算定要件は①24時間連絡・訪問体制、②主治医連携のもとの計画・説明・同意、③訪問看護記録書への記録、④他職種との連携—の4つ。
  • 同一期間に介護・医療保険の両方で訪問した場合は、最後に実施した保険制度でターミナルケア加算(療養費)を算定する。
  • 区分支給限度基準額の対象外のため、限度額を超えていても算定可能。1利用者・1事業所のみ算定できる。
  • ターミナルケア加算の算定実績は看護体制強化加算の要件にも影響するため、算定漏れなく管理することが重要。
  • 運営指導対策として、訪問看護記録書に利用者・家族の意向・アセスメント・対応経過を具体的に記録することが必須。

算定漏れや誤算定を防ぐため、事業所内でのチェック体制を整え、在宅看取りの件数が増えても確実に算定できる体制を整えましょう。

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