令和8年9月16日、第267回社会保障審議会介護給付費分科会が開催され、公益財団法人日本訪問看護財団と一般社団法人全国訪問看護事業協会が連名で「令和9年度介護報酬改定に向けた意見」を提出しました。柱となるのは、訪問看護師の処遇改善を本体報酬に組み込む要望、夜間帯の緊急訪問に対する加算算定要件の緩和、特別地域加算の見直しなど、経営に直結する内容です。
2日前の9月14日に開催された第266回分科会は「居住系・施設系サービス等」がテーマで訪問看護への直接言及は限定的でしたが、第267回は〈医療系サービス〉の意見交換会として訪問看護がメインテーマの一つになりました。令和9年度改定に向けた要望の全体像を、経営者・管理者目線で整理します。
- 第267回介護給付費分科会(令和8年9月16日)で訪問看護財団・事業協会が提出した要望の全体像
- 処遇改善加算の「本体報酬への組み込み」要望の背景にある病院との賃金格差データ
- 特別地域加算の見直し・夜間帯緊急訪問の加算要件緩和など、経営に直結する論点
- 第266回(令和8年9月14日)の議論内容と、今後ウォッチすべきポイント
目次
何が決まったのか(ニュースの概要)
令和8年9月16日(水)13:00〜15:00、社会保障審議会介護給付費分科会の第267回会合が「令和9年度介護報酬改定に関する意見交換会〔医療系サービス〕」として開催されました。資料2として、公益財団法人日本訪問看護財団・一般社団法人全国訪問看護事業協会が連名の意見書『令和9年度介護報酬改定に向けた意見』を提出しています。
意見書は処遇改善・特別地域加算・夜間対応の評価・情報連携の評価・看多機の短期利用評価・専門管理加算の対象拡大という6項目を、実態調査のデータとともに示しています。なお2日前の9月14日開催の第266回分科会は「居住系・施設系サービス等」がテーマで、訪問看護への直接的な言及は限定的でした。

介護給付費分科会は、テーマごとにサービス種別を分けて関係団体からヒアリングをする回があります。今回は「医療系サービス」の回で、訪問看護財団と事業協会が意見書を出す番でした。まだ意見聴取の段階で、単位数や要件が決まったわけではない点は押さえておきましょう。
要望内容の詳細
意見書で示された主な要望と、その根拠として提示されたデータを整理しました。
| 要望項目 | 要望内容 | 根拠データ(意見書より) |
|---|---|---|
| 意見1-1 処遇の確保 | 処遇改善加算等による賃金上昇分を本体報酬に組み込み、経済状況に応じた柔軟な加算対応を可能に | 35〜54歳の税込給与総額は、訪問看護ステーション勤務が病院勤務より年34万〜10万円超低い(日本看護協会調査) |
| 意見1-2 特別地域加算等の見直し | 非効率なサービス提供の実態に沿って、特別地域・中山間地域の加算率を見直す | 人口2万人未満の自治体では赤字事業所が51.4%。過疎地域を有する自治体7,035に対し、特別地域加算算定事業所は377にとどまる |
| 意見1-3 夜間等訪問の評価充実 | 緊急時訪問看護加算について、月の初回訪問から夜間・早朝・深夜加算を算定できるよう要件を緩和 | 夜間帯(午後6〜10時)に緊急訪問を行った913事業所のうち570事業所で、初回訪問のため加算算定できないケースが発生 |
| 意見2 情報連携の評価 | 入院・入所時のサマリー等文書提供を、診療報酬の情報提供療養費3と同水準(150単位)で評価 | サマリー等を提供する事業所は66.2%に増加。依頼元の52.1%は入院予定の病院等 |
| 意見3 看多機の短期利用評価 | 基礎疾患・認知症を有する中重度者の短期利用居宅介護費を、小多機並みの水準に見直す | 短期利用者の主傷病は認知症18.0%・心臓病16.4%など中重度者が多いが、算定件数は伸び悩み |
| 意見4 専門管理加算の対象拡大 | 認知症看護等の専門性の高い看護師による関与を、専門管理加算の対象分野に追加 | 訪問看護ステーション在籍の認定看護師は1,260名(うち認知症看護103名)。BPSD25Qスコアの改善事例も報告 |
訪問看護ステーションへの影響
これらはあくまで業界団体からの「要望」であり、実際に反映されるかは今後の審議次第です。そのうえで押さえておきたい影響は次のとおりです。
- 処遇改善の本体報酬組み込みが実現すれば、加算算定にまつわる事務負担が軽減される可能性がある
- 特別地域加算の見直しは、中山間・人口減少地域の小規模事業所ほど収支改善のインパクトが大きい
- 夜間等加算の要件緩和が実現すれば、独居・医療ニーズの高い利用者への緊急対応が収益化しやすくなる
- 入院・入所時の情報提供評価が新設されれば、退院支援・地域連携に積極的な事業所ほど恩恵を受けやすい
本記事で紹介した内容は、日本訪問看護財団・全国訪問看護事業協会からの要望段階のものです。実際の単位数・算定要件は、今後の分科会での審議やパブリックコメント等を経て決定されます。数値をそのまま経営計画に織り込むのではなく、今後の続報にあわせて情報を更新してください。
今からやるべき実務対応
- 夜間帯の緊急訪問実態を記録する「初回訪問のため加算算定できなかった件数」を月次で集計しておくと、経営分析にも動向把握にも役立ちます。
- 処遇改善加算の算定状況を棚卸しする本体報酬への組み込みに備え、現行の加算区分・キャリアパス要件の充足状況を確認しましょう。
- 入院・入所時のサマリー提供実績を記録する評価が新設された際にすぐ対応できるよう、提供の実施率・依頼元を体制化しておきます。
- 分科会の今後の議論を継続ウォッチする次回以降「医療・介護連携」等のテーマで訪問看護が扱われる見込みです。
第267回介護給付費分科会で、訪問看護の報酬は具体的にいくら上がりますか?
現時点では具体的な単位数の変更は決まっていません。今回提出されたのは日本訪問看護財団・全国訪問看護事業協会からの「要望」であり、実際の単位数や算定要件は、今後の分科会での審議を経て決定されます。
第266回と第267回の違いは何ですか?
第266回(令和8年9月14日開催)は「居住系・施設系サービス等」をテーマに、サービス付き高齢者向け住宅等に関する意見交換が行われ、訪問看護への直接言及は限定的でした。第267回(令和8年9月16日開催)は〈医療系サービス〉がテーマで、日本訪問看護財団・全国訪問看護事業協会が訪問看護に特化した要望書を提出しています。
令和9年度介護報酬改定はいつから施行されますか?
施行時期は本記事執筆時点で正式決定していません。通常の介護報酬改定サイクル(3年に1度)に沿えば令和9年度からの適用が見込まれますが、正式な施行日は今後の審議報告・告示を待つ必要があります。
まとめ|第267回分科会は「処遇・夜間対応・特別地域」が争点に
第267回介護給付費分科会では、日本訪問看護財団・全国訪問看護事業協会から令和9年度介護報酬改定に向けた要望書が提出され、処遇改善の本体報酬組み込み、特別地域加算の見直し、夜間等緊急訪問の加算要件緩和などが論点として示されました。
- 第267回(令和8年9月16日)で訪問看護財団・事業協会が令和9年度改定に向けた意見書を提出
- 処遇改善の本体報酬組み込み、特別地域加算の見直し、夜間等緊急訪問の加算要件緩和が主な要望
- いずれも要望段階であり、実際の改定内容は今後の審議次第
- 次回以降は「医療・介護連携」等のテーマで訪問看護が扱われる見込みのため、継続的なウォッチが必要
自事業所の夜間対応実態や処遇改善加算の算定状況を今のうちに棚卸ししておくと、今後の制度変更にもスムーズに対応できます。






















