厚生労働省は2026年7月23日、社会保障審議会介護給付費分科会(第261回)をWeb会議形式で開催し、「人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築」をテーマに議論しました。中山間・人口減少地域における新たなサービス類型の創設や、既存の中山間地域等加算の見直しが主な論点で、訪問看護ステーションにも一部関係する内容が含まれています。
今回はまだ制度の詳細を詰める議論の段階であり、結論が出たものではありません。ただし、令和9年度介護報酬改定(2027年度改定)に向けた重要な検討テーマのため、経営者・管理者は継続的にウォッチしておくとよいでしょう。
- 第261回介護給付費分科会(2026年7月23日)で議論された内容の全体像
- 「中山間・人口減少地域」の考え方と対象地域の基準案
- 新設される「特定地域サービス」「特定地域居宅サービス等事業」の対象範囲(訪問看護の扱いを含む)
- 訪問看護に関係する既存の中山間地域等加算の見直し論点
- 訪問看護ステーションが今からウォッチすべきポイント
目次
何が議論されたのか(会議の概要)
今回の会議は、令和7年12月25日の社会保障審議会介護保険部会「介護保険制度の見直しに関する意見」や、令和8年の社会福祉法等改正法(令和8年法律第51号)を受けて、具体的な報酬・基準の設計を介護給付費分科会で検討する初回に近い回にあたります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 開催日 | 令和8(2026)年7月23日(木)14:00〜16:00 |
| 開催形式 | Web会議・一部会場(AP赤坂グリーンクロス)とのハイブリッド |
| 会議体 | 社会保障審議会介護給付費分科会(第261回) |
| 主な資料 | 資料1「人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築」 |
| 主な議題 | ①地域における介護サービスを取り巻く状況 ②中山間・人口減少地域の考え方 ③配置基準の弾力化 ④包括的な評価の仕組み ⑤中山間地域等に対する加算 |

令和9年4月1日に施行される「特定地域サービス」等の制度の土台となる部分の議論ですね。細かい報酬水準はこれから決まっていく段階です。
内容の詳細|中山間・人口減少地域への新しい枠組み
資料では、2040年に向けて全国を「大都市部」「一般市等」「中山間・人口減少地域」の3類型に分け、地域ごとにサービス提供体制を検討する方針が示されています。「中山間・人口減少地域」は「高齢者人口が減少し、サービス需要が減少する地域」と定義され、対象地域の基準案として、特別地域加算の対象地域に加え、「75歳以上人口密度が5人/㎢未満」または「75歳以上人口1,000人未満かつ減少」という指標が検討されています。
| 新設される枠組み | 内容 | 対象サービス(資料上の例示) |
|---|---|---|
| 特定地域サービス (介護(予防)給付) | 中山間・人口減少地域の事業所について、包括的な評価(月単位の定額報酬)の選択や、管理者・専門職の常勤・専従要件、夜勤要件等の人員配置基準の弾力化を可能にする | 訪問介護、訪問入浴介護、通所介護、短期入所生活介護、福祉用具貸与、居宅介護支援、施設サービス、特定施設入居者生活介護 |
| 特定地域居宅サービス等事業 (地域支援事業) | 市町村が給付に代えて、介護保険財源を活用し、移動経費等を含めた事業費で居宅介護サービス等を委託できる仕組み | 居宅サービス等 |
今回の資料で示された「特定地域サービス」「特定地域居宅サービス等事業」の対象サービス例示には、訪問看護は明記されていません。既存の基準該当サービス・離島等相当サービスの対象(訪問介護、訪問入浴介護、通所介護、短期入所生活介護、福祉用具貸与、居宅介護支援)をベースに検討が進められているためとみられますが、資料上に除外の明確な理由は記載されていません。今後の議論で対象範囲が変わる可能性もあるため、断定はできず、継続的な確認が必要です。
訪問看護に関係する既存加算の見直し論点
一方で、既存の「中山間地域等に対する加算」は訪問看護も対象に含まれており、今回の資料では見直しに向けた基礎データが示されています。
- 特別地域加算(所定単位数の15/100):訪問看護の算定事業所458(全体の2.6%)
- 中山間地域等における小規模事業所加算(10/100):訪問看護の算定事業所123(0.7%)
- 中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算(5/100):訪問看護の算定事業所416(2.4%)
(いずれも介護給付費等実態統計・令和7年11月審査分に基づく数値)
資料では、令和6年度介護報酬改定に関する審議報告で「サービス類型ごとに利用者数・移動距離・移動手段・移動時間等のサービス提供状況や収支状況を把握した上で、評価の在り方を含め検討していくべき」とされていた経緯を踏まえ、令和8年度に予定される各種実態調査(介護事業経営実態調査、離島・中山間地域・豪雪地帯等における各種加算等の在り方の調査研究事業など)の結果も踏まえて、引き続き検討するとされています。

新しい枠組み(特定地域サービス等)よりも、既にある特別地域加算などの見直しの方が、多くの訪問看護ステーションにとっては当面の実務的な関心事になりそうですね。
訪問看護ステーションへの影響
現時点の議論を踏まえると、訪問看護ステーション経営への影響は次のように整理できます。
- 特別地域加算・中山間地域等の小規模事業所加算・中山間地域等居住者へのサービス提供加算を算定している(または対象地域に所在する)ステーションは、加算率・対象地域の見直し議論の直接の当事者になる
- 新設される「特定地域サービス」「特定地域居宅サービス等事業」については、現時点の資料上は訪問看護が対象例示に含まれていないため、直接的な人員基準弾力化・包括報酬選択の対象になるかは今後の議論次第
- 同一法人・同一エリアで訪問介護等の他サービスも運営している場合、それらのサービスが先行して新制度の対象となる可能性があり、経営全体としては影響が及びうる
今からやるべきこと
- 自事業所の対象地域該当性を確認する特別地域加算・中山間地域等加算を現在算定しているか、また所在地が特別地域加算の対象地域や「75歳以上人口密度5人/㎢未満」等の基準案に該当しそうかを確認しておきましょう。
- グループ内の他サービスの動向もあわせて追う訪問介護・通所介護等を併設運営している法人は、「特定地域サービス」等の新制度がまず適用される可能性がある点を踏まえ、グループ全体で議論の推移を追いましょう。
- 令和8年度の各種実態調査の対象になった場合は積極的に協力する介護事業経営実態調査や中山間地域等の調査研究事業の調査対象になった場合、回答することが今後の加算見直しの基礎データ充実につながります。
まとめ|制度設計はこれから、対象地域の該当性確認が第一歩
今回の介護給付費分科会は、中山間・人口減少地域における新たなサービス提供体制の検討を本格化させる議論でした。訪問看護は新設の「特定地域サービス」等の対象例示には含まれていない一方、既存の中山間地域等加算(特別地域加算等)の見直しは訪問看護にも関係する論点です。
- 2026年7月23日、介護給付費分科会(第261回)で人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制が議論された
- 中山間・人口減少地域の基準案として「75歳以上人口密度5人/㎢未満」等が示された
- 新設の「特定地域サービス」「特定地域居宅サービス等事業」の対象例示に訪問看護は含まれていない(今後変わる可能性はある)
- 訪問看護も対象となる既存の中山間地域等加算(特別地域加算等)は、見直しに向けたデータ収集・検討が進行中
- 令和9年度介護報酬改定に向け、今後も分科会での議論が続く見込み
まずは自事業所が対象地域や既存加算の該当状況にあるかを確認し、今後の分科会の続報をチェックしていきましょう。
「特定地域サービス」はいつから始まりますか?
根拠となる社会福祉法等の一部を改正する法律(令和8年法律第51号)による特定地域サービス・特定地域居宅サービス等事業の創設は、令和9年4月1日施行予定です。ただし、具体的な報酬水準や対象サービスの詳細は、今後も介護給付費分科会・介護保険部会で継続して議論される予定です。
訪問看護ステーションは「特定地域サービス」の対象になりますか?
2026年7月23日時点の資料では、対象サービスの例示に訪問看護は含まれていません(訪問介護、訪問入浴介護、通所介護、短期入所生活介護、福祉用具貸与、居宅介護支援、施設サービス、特定施設入居者生活介護が例示されています)。ただし今後の議論で対象範囲が変わる可能性もあるため、断定はできません。
今回の議論で介護報酬はどう変わりますか?
今回の会議では具体的な報酬額は決まっていません。中山間・人口減少地域の対象地域の基準案や、既存の中山間地域等加算(特別地域加算等)の見直しに向けた考え方が示された段階です。今後、令和8年度に実施される実態調査等を踏まえ、令和9年度介護報酬改定に向けて具体的な内容が固まっていく見込みです。


















