施設内訪問看護と在宅(自宅)での看取りの違いを説明します

 

悩む看護師

施設内訪問看護と在宅での看取りの違いってどんなことがあるのかな?

利用者さんや家族にとってはどっちがいいのかな…。

 

看護師さんで、このような疑問を抱いている方もいるのではないでしょうか。

当記事では、訪問看護ステーションでの看取り期に参考になるよう、施設内訪問看護と在宅での看取りの違いについてわかりやすく解説します。

改めて訪問看護の看取りの違いを確認したい看護師さんは、ぜひ参考にしてみてください!

 

施設内訪問看護と在宅訪問看護の違い

まずは、施設内訪問看護と在宅訪問看護の違いを簡単にご説明します。

 

施設内訪問看護とは

施設内訪問看護は、利用者さんが住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などの居住系施設に入居している場合に、訪問看護ステーションから看護師が出向いて行う看護サービスです。

あくまで「施設内に住んでいる個人宅への訪問」として扱われるため、在宅扱いで訪問看護指示書が必要です。

施設には介護職員が常駐していることが多く、訪問看護は医療面のケアに特化して連携を取ることになります。

複数の利用者が同一建物内にいるため、訪問の効率性は高いものの、施設のルールや体制に応じた調整も必要です。

 

在宅訪問看護とは

在宅訪問看護は、利用者が自宅(一般住宅)で生活している場合に提供される看護サービスです。

医師の訪問看護指示書に基づき、訪問看護師が定期的に自宅を訪問し、医療的ケアや生活支援を行います。

対象者は高齢者だけでなく、障がい児者、がん末期患者、医療的ケア児など多岐にわたります。

家族が主な介護者となることが多く、生活環境や家族の介護力をふまえた柔軟な支援が求められます。

 

施設内訪問看護と在宅(自宅)での看取りの違い

 

終末期ケアにおける看取りの場としても、「施設」での看取りと「在宅」での看取りが存在します。

どちらも訪問看護師が深く関与する現場ですが、環境や関係者の構造が異なるため、看護の流れや判断のタイミングに違いが生じます。

本稿では、看護師が理解しておくべき両者の違いを、事例を交えながら解説します。

 

1.  共通する基本の流れ

施設内訪問看護と在宅(自宅)訪問看護に共通する基本の看取りの流れは以下の通りです。

 

  1. 看取り期への移行の判断
  2. ケア方針の再確認(ACP)と家族説明
  3. 苦痛緩和・緩和ケアの実施
  4. 最期の時の対応
  5. 死後ケア(エンゼルケア)と家族支援

 

ただし、この一連の流れの中で、環境や支援体制の違いからアプローチや役割分担が変化します。

 

2. 事例からみた環境の違いと看取りの雰囲気

 

【在宅での事例】

終末期に入った段階で、本人と妻から「できる限り自宅で最期を迎えたい」という強い希望がありました。

主治医・訪問看護・ケアマネジャーによる事前カンファレンスを実施し、急変時も入院せず在宅で対応する方針を確認しました。

症状としては、痛み・呼吸困難・全身倦怠感が強く、訪問看護師が中心となって日々の症状緩和にあたりました。

妻は強い不安を訴えていたため、訪問時には心理的サポートや介護技術の説明を丁寧に行い、夜間の緊急連絡の手順も一緒に確認しました。

看取りの2日前からは食事摂取が困難となり、意識レベルも低下傾向に。

訪問診療医とともに看取り期に入ったことを説明し、家族にそばで過ごすようお伝えしました。

看取り当日、妻から「呼吸が変わった気がする」と深夜に連絡があり、訪問看護師が駆けつけました。

最期の呼吸を看取り、静かに息を引き取られました。

死後の処置(エンゼルケア)を行いながら、妻とご本人の思い出や療養生活を振り返る時間を共有しました。

翌朝、訪問診療医が死亡確認を行い、看取りが完了しました。

 

【施設での事例】

慢性心不全の増悪を繰り返しており、半年ほど前から食事量の低下、浮腫の増加、夜間の呼吸困難がみられていました。

訪問診療医と施設スタッフ、訪問看護師とのカンファレンスにより、延命治療を行わず、自然な経過を見守る方針が家族とともに確認されました。

看取り期に入ってからは、訪問看護の頻度を毎日に増やし、夜間もオンコール対応を実施。

施設スタッフにはバイタルの簡易チェックと症状の観察を依頼し、随時情報共有を行いました。

不安感に対しては、アロマや口腔ケアを併用し、苦痛の緩和に努めました。

家族には「今の状態」「できること」「最期に間に合う可能性」などを具体的に説明し、来訪を促しました。

看取り当日、施設スタッフが早朝の巡視で状態変化を発見し、訪問看護師が駆けつけました。

家族も短時間で到着し、穏やかな環境の中でご本人は息を引き取りました。

死後の処置(エンゼルケア)は看護師と施設スタッフが協力して行い、家族とともに静かに最期の時間を過ごすことができました。

 

3.  家族の関わり方

 

在宅の場合

在宅看取りでは、家族がケアの主な担い手となることが多く、訪問看護師は医療支援だけでなく、介護方法の指導や精神的サポートも行います。

看取り期には不安や疲労が蓄積しやすいため、頻回な声かけや休息の提案が重要です。

家族と共に利用者の変化を見守りながら、最期の時間を支える協働関係が築かれます。

 

施設の場合

施設看取りでは、ケアの主体は施設スタッフと訪問看護師であり、家族は精神的な支えとして関わります。

看取り期には連絡・面会・最期の別れの場面が中心となり、事前に状態や流れを丁寧に説明し、心の準備を促すことが求められます。

限られた時間でも家族が納得できる関わりを支援する姿勢が大切です。

 

4.  チーム連携とケアの深さ

 

在宅の場合

主治医・訪問看護師・訪問介護員・ケアマネジャーなど、多職種が連携して支えます。

訪問タイミングの調整や記録の共有、緊急時の役割分担など、密なチームワークが求められます。

医師・看護師・家族の信頼関係が、看取りの安心感を高めます。

 

施設の場合

訪問看護師と施設職員の連携が中心です。

施設スタッフは24時間体制であるため、看護師が不在時も基本的な観察やケアが行われますが、医療的判断は看護師や医師に委ねられます。

看護師は、施設職員へのアドバイスや教育的支援を行い、チームの質を保つ役割も担います。

 

5.  両者の違いの項目別表

項目

施設内訪問看護での看取り

在宅(自宅)での看取り

主なケア提供者

施設職員(介護職・施設看護師 不在のこともあり)+訪問看護師

家族が主体、訪問看護師・医師が支援

情報共有

日常的な職員間の情報共有があり、変化の発見が早い

家族の気づきや訪問時の観察が重要

看取り期の気づきと対応

介護職の観察訪問看護師が判断施設チームでケア開始

家族の連絡訪問看護師が訪問判断ケア開始

ACPの進め方

施設入所時の意向確認を基に、定期的に再確認・調整する

本人・家族と時間をかけて話し合いながら意向を明確化する

臨終時の流れ

施設職員と連携してスムーズに対応。往診医または当直医が到着し死亡診断(遠隔診断もあり)。葬儀社連絡まで対応することも可能

家族が看護師・医師に連絡し、訪問して死後処置・診断を行う

エンゼルケア

訪問看護師と施設スタッフで実施(職員の補助が可能)。希望があれば家族も参加可能

看護師が主に実施(家族の参加を支援する)

グリーフケア

短時間の関わり(面談・手紙などが多い)

継続的な関わりが可能(訪問時や電話などで寄り添える)

緊急時の対応体制

施設内で対応、オンコール・主治医との連携体制が比較的整っている

家族からの連絡で訪問、訪問可能時間外の対応調整が課題

環境整備の工夫

施設の設備・ルールに準じたケアの提供

自宅の空間を活かし、好みの音楽や香りなど柔軟に対応可能

※事業所や施設での決まり等により例外もあります。

 

まとめ

 

施設内訪問看護と在宅訪問看護では、看取りに関わる環境・家族の関与・チーム体制・緊急対応・死後の支援に至るまで、それぞれに特徴と違いがあります。

主な違いは、“誰がどのように支えているか”になります。

施設内では、介護職とのチームワークが看護の要であり、情報共有の精度が質を左右します。

在宅では、家族の感情と負担の波を受けとめながら、臨機応変な対応力が求められます。

どちらの形であっても、本人の意思を尊重し、穏やかな最期を迎えられるよう支える姿勢が最も重要です。

 

先輩訪問看護師
看取りの形に正解はありませんが、関わる私たち看護師がその人と家族にとっての最良の選択肢を共に見つけ、安心のなかでその時を迎えられるよう努めていけるといいですね。

 

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