訪問看護の需要は高まっており、訪問看護ステーションの採用の実情として有効求人倍率は4.18倍「ナースセンター登録データに基づく看護職の求職・求人・就職に関する分析」と高く、「売り手(求職者)市場」であり求職者が働き先を選ぶ時代といえます。
またせっかく採用ができたとしても、訪問看護師の離職率は15.0%となっており、病棟看護職員の離職率12.6%と比べると高いようです。「訪問看護に関する伸び悩みに関するデータ」
この背景には、個別訪問による孤独感や責任の重さ、オンコール対応などが大きな要因として挙げられます。
この記事では、訪問看護ステーションの採用から定着まで成功するためのポイントを解説したいと思います。
目次
訪問看護師・リハビリ職の採用で重要なポイント
訪問看護ステーションの方針に基づいた採用戦略
- どのような人材が必要かを明確にする
- 応募者の不安解消に務める
どのような人材が必要かを明確化
採用時には、ステーションの理念や事業計画を踏まえ、必要な人物像を明確にします。
たとえば、オンコール対応が求められる場合は、電話相談だけでなく対応出勤が可能であるかどうか、末期がんの方や看取り対応を充実させる場合は、緩和ケアの経験が必要など、事業所の中で採用の優先順位を定めます。
経営者と管理者がちがう場合は、経営者と事前に話し合っておきましょう。
応募者の不安解消
特に訪問看護未経験者やブランクのある看護師に対しては、以下のサポートが重要です。
- 研修・同行訪問の充実
経験豊富なスタッフの同行訪問を最初の3~6ヶ月間行い、安心感を提供します。
必要に応じて「マナビジ」e-Laningなどを活用し学習の機会を設けます。
- 緊急対応やオンコール体制の明確化
応募者が特に不安を抱える緊急対応やオンコール対応について、具体的な事例やバックアップ体制を説明し、心理的負担を軽減します。
ICTや社内チャットなどを活用できることで一人で抱え込まなくてよいようにします。
- 柔軟な働き方の提案など
子育てや介護との両立が可能なシフト制度や時短勤務制度を取り入れることで、多様なライフスタイルに対応し、できるだけ応募してもらえるようにします。
採用プロセスのポイント
求人情報の魅力的な表現
WebページやSNSの活用
ステーションの理念や管理者の考えなどを伝える、ステーションの雰囲気やスタッフの笑顔を伝える写真、スタッフインタビューなどを掲載します。
これにより、「一緒に働きたい」と思ってもらえる印象を与えます。
応募者は必ず、ホームページやSNSを見て応募しています。
給料や福利厚生の明示
給与の基準値や休日、有給取得率、残業の有無などを具体的に記載し、透明性を高めます。
職場見学・体験の提供
応募者が職場の雰囲気を直接感じられる機会を設け、入職後のギャップを減らします。
面接・選考の工夫
履歴書の読み解き
直近の勤務経験や役割、リーダー業務経験の有無、医療処置のスキルチェックなどを確認します。
特に、病棟で5年以上勤務する中で、役割業務を経験している場合はマネジメント経験もあると思われ、高く評価できます。
ステーション内では、訪問看護業務以外に、委員会業務や多職種との連携などが必要になるため、マネジメントできるかどうかは重要です。
また、フットケアやリンパ浮腫のケアはステーションの強みとして活かすこともできます。
人間性とコミュニケーション能力を確認
面接では、応募者の人間性や他のスタッフとの協調性、利用者への対応力を見極めます。
また、採用しないタイプは経営者と管理者とであらかじめ決めておきます。
利用者さんや家族とのトラブル、ケアマネジャーや多職種とのトラブルをおこす原因となると、後々大変になります。
一度の面接では見極めはむずかしいと思われます。
できる限り職場見学や体験をすすめて、求職者側だけでなく採用者側にも良い機会になると考えます。
採用後のミスマッチを防ぐ質問
なぜ訪問看護を選んだのか、どうして訪問看護をやりたいのかを聞きます。
訪問看護はいろいろなストレスがある環境での仕事となります。
その方の根っこになる、私はなぜ訪問看護をやりたいのかは支えになると思います。
求める働き方について具体的に質問します。
採用側は、オンコールや訪問件数などは必ず伝えるようにしておきます。
定着率を高めるためのポイント
働きやすい環境の整備
ノンコア業務の効率化
訪問業務以外の毎月の訪問看護報告書やレセプト作業などの事務業務は、効率化を図ることができる部分です。
ICTの活用や事務員の採用、レセプトの外部委託など、訪問看護師がケアに専念できる環境を整え、管理者が訪問看護師の教育やサポート環境につなげます。
訪問スケジュール管理を整える
1日8件以上の訪問を強いると、利用者主体のケアが難しくなるため、現実的なスケジュールを組むことが重要です。
また、訪問先への移動が体力を消耗し、休憩がとれないといったことにつながります。
入浴介助や体格の大きい利用者さんの体位変換などの業務は訪問看護師の体力を大きく消耗するため、スタッフ間の不満につながらないよう、公平な訪問スケジュール管理は、重要であるといえます。
有給取得や休みやすい体制づくり
受け持ち制や担当制にすると休みにくいことが考えられます。
チーム制や複数名で担当するなど休みやすさ、働きやすさをアピールします。
チームの雰囲気づくり
コミュニケーションの促進
スタッフ間の情報共有や意見交換が活発になるよう、定期的なミーティングを実施します。
多職種連携の際には、役割分担を明確にし、視点の違いによる摩擦を防ぎます。
理念の浸透
ステーションが目指すべき方向性を全スタッフで共有し、同じゴールを目指す意識を高めます。
適正なリーダーシップの発揮
リーダーシップとメンバーシップが発揮できる風土づくりを意識します。
新しいスタッフの提案や意見が尊重される環境を作りましょう。
採用・定着を成功させるためにできること
- 魅力的な職場環境をアピール
働きやすさやスキルアップ環境を求人サイトやSNSで積極的に伝えます。
- スタッフ紹介制度の活用
スタッフの知人や過去に一緒に働いたことのある方を紹介してもらう制度を導入することで、採用費用を抑えつつ、信頼性の高い採用が可能です。
- 理念を大切にした採用活動
応募者の「なぜ訪問看護をしたいのか」という動機を引き出し、理念に共感する人材を採用します。
まとめ
訪問看護ステーションでの採用と定着は、採用プロセスだけでなく、入職後のフォローや働きやすい環境づくりが鍵となります。
これらを実践し、利用者にもスタッフにも満足度の高い職場を目指しましょう。
訪問看護をおこなう中で誰もが不安や疑問に思ったりすることを解決できるような記事の作成を心がけています。
この記事がみなさんの日々の業務に役立ってもらえると幸いです。