このような疑問を解決する記事です。
訪問看護で行う医療処置のひとつに摘便があります。
訪問看護の場面でよく行う処置であるため、訪問看護師として摘便に対する正しい知識を持っておくことは非常に大切です。
当記事では、訪問看護における摘便について具体的に解説していきたいと思います!
- 訪問看護を始めて間もない方
- 訪問看護で行う摘便についてきちんと知りたい方
上記のような方はぜひ最後まで読んでみてくださいね。
ではさっそく解説します。
目次
そもそも摘便とは?
「そもそも摘便とは?」について簡単に説明したいと思います。
肛門から直腸に指を入れて、便を掻き出す医療行為
直腸内に便がたまっていて、自力で排便できないときに行うと有効な医療行為です。
訪問看護の場面ではよく行う処置であり、慣れておられる訪問看護師も多いと思いますが、改めてになりますが摘便は医療行為となります。
医療行為(医師法に基づく相対的医行為)は、医師の指示が必要です。
訪問看護で摘便を行うことはよくある?
訪問看護で摘便を行う頻度は多いと言えます。
下記の図は、訪問看護の医療処置にかかる看護内容を示しています。
引用:第182回(R2.8.19)社保審-介護給付費分科会 訪問看護
利用者さんの介護度が高くなるに連れて、「摘便・浣腸」の実施割合が高くなっています。
実際の訪問看護の場面でも、摘便を必要とし、実施することは多いと感じます。
データからも、現場の肌感からも、摘便は訪問看護の場面でよく行われる処置だと言えると思います。
訪問看護で安全に摘便を実施するために必要なこと3つ
訪問看護で実施することが多く、かつ医療行為である摘便ですが、利用者さんにとってより良い排便コントロールとなり、安全に実施していくためには以下のことを考えていく必要があります。
- それぞれの利用者さんに合わせた排便コントロール方法を適宜考える
- 安全で正しい摘便の実施方法を理解・習得する
- 訪問看護指示書に摘便について医師の指示を書いてもらう
順番に解説します。
それぞれの利用者さんに合わせた排便コントロール方法を適宜考える
まずは、便秘になっている背景をしっかりアセスメントし、それぞれの利用者さんの状況に応じたアプローチ方法を適宜考えていくことが大切です。
- 排便パターンの把握
- 食事・水分摂取量の把握
- 十分な水分摂取と、排便を促す食品の摂取の勧め
- トイレに座るタイミング
- 排便に適した姿勢の工夫
- 下剤の使用 など
必要時に摘便を実施することはもちろんあると思いますが、まずは訪問看護師としてでき得る排便コントロール手段を利用者さんやご家族と一緒に考え、的確な対応をしていけるとよいでしょう。
安全で正しい摘便の実施方法を理解・習得する
いろいろな方法を試しても、やはり摘便が必要な状況はあります。
摘便を実施するに当たり、安全で正しい実施方法を理解・習得しておくことは大切です。
- 摘便を実施する示指に潤滑剤を十分に塗布し、肛門周囲を刺激していく(肛門周囲を押したり円を描くようにマッサージする)。
- 肛門が開いてきたら、肛門内に示指を入れ、肛門管(肛門から3cm程度の管状器官)を内側からマッサージしながら指を進める。
- ゆっくり指を動かしながら少しずつ便を出す。
- 大きな便塊は崩して肛門から出せる大きさにしてからかき出す。便をほぐすときは利用者さんの背中側に圧をかけてほぐす。腹側へ圧をかけると穿孔しやすい直腸前壁に圧がかかるため行わない。
日本看護技術学会で紹介されている動画もとても参考になりますので、ぜひ合わせて見てみてください。
訪問看護指示書に摘便について医師の指示を書いてもらう
訪問看護指示書に、摘便について医師の指示を書いてもらうことも大切です。
摘便は医療行為であるため、医療行為(医師法に基づく相対的医行為)を行う際は医師の指示が必要であると法律でも定められています。
定期的に摘便が必要な利用者さんについては、主治医に訪問看護指示書にその旨を指示として記載していただくことが望ましいです。
訪問看護の場面では、訪問時に急きょ摘便が必要で実施することもあるかと思います。
以下の看護研究でもそれを示唆する結果が出ています。
参考:訪問看護師を対象とした安全に摘便を実施するための手技と知識に関する実態調査
急きょ摘便が必要な状況で、毎回医師に指示を確認することは、在宅では現実的ではありません。
では、どうすればよいかですが、臨時で行う摘便は看護師の判断で行っても大丈夫です。
保健師、助産師、看護師又は准看護師は、主治の医師又は歯科医師の指示があつた場合を除くほか、診療機械を使用し、医薬品を授与し、医薬品について指示をしその他医師又は歯科医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずるおそれのある行為をしてはならない。
ただし、臨時応急の手当をし、又は助産師がへその緒を切り、浣かん腸を施しその他助産師の業務に当然に付随する行為をする場合は、この限りでない。
保助看法でも、「臨時応急の手当などはこの限りでない」と謳われています。
基本的には医師の指示が必要な相対的医行為である摘便ですが、臨時で実施が必要と判断される場合には安全に実施できるよう努め、定期的に摘便が必要となりそうなときは、必ず医師に指示を出していただくということをやっていけるとよいでしょう。
訪問看護での摘便|ルールに基づいた上で安全に実施していこう
筆者も長年訪問看護をやっていますが、摘便を実施する利用者さんは本当に多くいらっしゃいます。
改めて、ルールに基づき安全な摘便を実施していけるよう精進していきたいと思います。
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