「医師から膀胱洗浄の指示が出たけれど、持続的と手動式のどちらで対応すべきか迷う」「感染予防のために続けたほうがいいのか、それとも不要なのか判断がつかない」——訪問看護の現場では、こうした戸惑いを抱えたまま膀胱留置カテーテルの管理にあたっている方が少なくありません。
膀胱洗浄は在宅の現場で決して珍しい処置ではない一方、目的を誤解したまま「とりあえず洗浄」を続けてしまうケースも見られます。この記事では、膀胱洗浄の種類・目的・在宅での具体的な手順から、感染予防との関係、実施を回避するための日常的なケアまで、訪問看護師が押さえておきたいポイントを整理して解説します。
- 持続的膀胱洗浄と手動式膀胱洗浄の違いと使い分け
- 膀胱洗浄を行う4つの目的と、感染予防に対する現在の考え方
- 在宅で行う手動式膀胱洗浄の具体的な手順
- 実施時に注意すべきリスクと、洗浄を回避するための予防的ケア
目次
膀胱洗浄とは?2つの方法と使い分け
膀胱洗浄とは、膀胱留置カテーテル(フォーリーカテーテル)や膀胱瘻カテーテルを使い、生理食塩水などの洗浄液で膀胱内を洗浄する処置です。訪問看護では、医師の指示のもとで看護師が実施します。方法は大きく2種類に分けられます。
| 方法 | 使用カテーテル | 特徴・主な適応 |
|---|---|---|
| 持続的膀胱洗浄 | 3wayカテーテル | 洗浄液を持続的に注入し続ける方法。血尿があり、凝血によるカテーテル閉塞のリスクが高い場合などに選択される |
| 手動式膀胱洗浄 | 2wayカテーテル | シリンジで洗浄液を注入・排液させる方法。在宅の訪問看護では、こちらが選択されることが多い |
在宅療養の場では2wayカテーテルを使用しているケースが大半を占めるため、訪問看護師が実施するのは手動式膀胱洗浄であることがほとんどです。以降は、この手動式膀胱洗浄を中心に解説します。

持続的膀胱洗浄が必要になるような血尿のケースは、在宅よりも入院管理になっていることが多い印象です。訪問看護では「手動式で大丈夫か」「病院での対応が必要な状態ではないか」を、まず見極める視点が大切ですね。
膀胱洗浄を行う目的と、感染予防との関係
膀胱洗浄には、主に次のような目的があります。
- 慢性炎症の治療として、膀胱内の細菌・分泌物・粘膜片を除去する
- 膀胱留置カテーテルの閉塞を解除する、または予防する
- 膀胱内に生じた凝血を除去する
- 膀胱結石の溶解を促す

ここで押さえておきたいのが、膀胱洗浄は尿路感染症の「予防」には寄与しないという点です。かつては感染予防目的で定期的に膀胱洗浄が行われていた時期もありましたが、洗浄によって細菌数が減少するという明確な根拠は確認されておらず、現在は感染予防を目的とした定期的な膀胱洗浄は推奨されていません。日本泌尿器科学会が作成したガイドラインでも、尿道カテーテル留置患者における適正な膀胱洗浄のあり方が検討課題として取り上げられており、感染予防目的の実施には慎重な立場が示されています(出典は記事末尾を参照)。
膀胱洗浄はカテーテルと導尿バッグの接続部を一時的に外す処置のため、実施のたびに閉鎖式ドレナージが崩れ、逆行性感染のリスクが高まるという側面があります。感染予防を目的に「念のため」定期的に洗浄する、という判断は避け、血尿や結石・浮遊物による閉塞など、洗浄が必要な明確な理由があるかどうかを都度アセスメントすることが重要です。
一方で、閉塞を繰り返す利用者さんに対しては、洗浄の手間を惜しまず適切に実施することが症状の悪化を防ぐことにつながります。実施の要否や頻度は医師の指示に基づきますが、尿の混濁や浮遊物の状態に応じて週1〜2回程度の頻度で指示が出ることが多いとされています。個々の利用者さんの状態を踏まえ、医師・訪問看護ステーション内で情報共有しながら判断しましょう。
在宅における手動式膀胱洗浄の手順
ここでは、訪問看護の現場で実施することの多い手動式膀胱洗浄の手順を紹介します。事業所によって手順書の細部は異なるため、必ず所属先の手順・医師の指示内容に沿って実施してください。
準備するもの
- 生理食塩水(指示量)
- アルコール消毒綿
- カテーテルチップ(洗浄用シリンジ)
- ゴム製手袋
- 滅菌カップ
- 排液を受ける容器(バケツ・尿器など)
- 尿とりパッド

- 手指衛生・説明石けんで手を洗い、利用者さんに膀胱洗浄を行うことを説明する。
- 洗浄液の準備生理食塩水が冷たい場合は、ボトルごと湯煎するなどして人肌程度に温める。
- 物品・手袋の準備排液用の容器を準備し、ゴム手袋を装着する。滅菌カップに指示量の生理食塩水を注ぐ。
- カテーテルの接続を外す膀胱留置カテーテルと導尿バッグの接続部を外し、導尿バッグ側の先端はアルコール綿で包むなどして不潔にならないよう保護する。
- 排液口の消毒カテーテルの排液口をアルコール綿で消毒する。
- 洗浄液の注入カテーテルチップで生理食塩水を30〜50ml吸い上げ、カテーテルから静かに注入する。
- 洗浄液の吸引・観察カテーテルチップの内筒をゆっくり引き、注入した量を吸い上げる。排液の性状に異常がないか、利用者さんに苦痛がないかを観察しながら行う。注入量をすべて吸引できなくても、自然に流出することが多いため無理に吸い上げなくてよい。
- 沈殿物への対応膀胱内にカスが沈殿していることがあるため、カテーテルチップを数回ピストンさせて乱流を起こし、巻き上げてから吸引すると効果的な場合がある。
- 排液の廃棄吸い上げた液は排液用容器に捨てる(パッドに染み込ませる方法でもよい)。
- 繰り返し洗浄排液がきれいになるまで、注入と吸引を繰り返す。
- 接続の再開終了後、カテーテルと導尿バッグそれぞれの先端をアルコール綿で消毒し、接続する。
- 最終観察・後片付け尿の流出状況と利用者さんの状態を観察し、寝衣を整え、物品を片付けて終了する。
洗浄液の注入・吸引はいずれも「静かに・ゆっくり」が基本です。急速に注入すると膀胱内圧が急激に上がり、利用者さんに痛みや不快感を与えるだけでなく、粘膜を傷つけるおそれもあります。
膀胱洗浄実施時に気をつけたいリスク
膀胱洗浄は、手順どおりに行えば大きな合併症は少ない処置ですが、在宅特有の注意点もあります。
- 接続部を外す操作のたびに、閉鎖式ドレナージが破綻し、逆行性感染のリスクが生じる
- 洗浄液の急速な注入・吸引による膀胱粘膜の損傷、疼痛
- 排液の性状(血性・混濁の程度など)の見落とし
- 物品の清潔操作が不十分になることによる感染リスク

洗浄のたびに接続部を外すという行為そのものが感染リスクになる、という点は見落とされがちです。「洗浄すれば清潔になる」という思い込みではなく、「本当に今、洗浄が必要な状態か」を毎回アセスメントする習慣をつけたいですね。
膀胱洗浄を回避するための日常的な予防策
膀胱洗浄をルーティンで継続するのではなく、そもそも洗浄が必要になる状態を避けるための日常的なケアも、訪問看護師の重要な役割です。
- 飲水を促し、尿量を確保することで沈殿物・浮遊物がたまりにくくする
- カテーテルのねじれ・圧迫がないか確認し、適宜ミルキングを行って尿の流出を促す
- 陰部の清潔を保ち、カテーテル挿入部からの汚染を防ぐ
- 採尿バッグの位置(膀胱より低い位置を保つ)や固定状態を定期的に確認する
これらの日常的なケアを積み重ねることで、閉塞や感染のリスクを下げ、結果として膀胱洗浄そのものの実施頻度を減らせるケースも少なくありません。
よくある質問
膀胱洗浄はなぜ尿路感染症の予防にならないのですか?
膀胱洗浄によって膀胱内の細菌数が減少するという明確な根拠が確認されていないためです。むしろ、洗浄のたびにカテーテルと導尿バッグの接続を外すことで閉鎖式ドレナージが崩れ、逆行性感染のリスクが高まる可能性が指摘されています。そのため、感染予防を目的とした定期的な膀胱洗浄は推奨されていません。
訪問看護で行う膀胱洗浄は持続的と手動式のどちらが多いですか?
在宅療養では2wayカテーテルを使用しているケースが多く、訪問看護師が実施するのは手動式膀胱洗浄であることがほとんどです。3wayカテーテルによる持続的膀胱洗浄が必要な血尿などの状態は、入院管理となっているケースが多い傾向にあります。
膀胱洗浄の頻度はどのくらいが目安ですか?
実施の要否・頻度は医師の指示に基づきますが、尿の混濁や浮遊物の状態に応じて週1〜2回程度の頻度で指示が出ることが多いとされています。利用者さんごとに状態が異なるため、画一的な頻度で継続するのではなく、都度の状態を踏まえて医師と相談することが大切です。
膀胱洗浄で注入した洗浄液がすべて吸引できないときはどうすればよいですか?
注入した量をすべて吸い上げられなくても、多くの場合は自然に流出するため、無理に吸引する必要はありません。排液の性状や利用者さんの様子を観察しながら、無理のない範囲で手技を進めましょう。
膀胱洗浄を減らすためにできる日常的なケアはありますか?
飲水を促して尿量を確保すること、カテーテルのねじれ・圧迫を防いで尿の流出を保つこと、陰部の清潔を保つことなどが挙げられます。こうした日常的なケアの積み重ねが、閉塞や感染のリスクを下げ、結果として洗浄の実施頻度を抑えることにつながります。
記事中の手技・目的・頻度に関する記述は、上記ガイドラインの考え方や訪問看護の実務における一般的な整理を踏まえたものです。実際の実施にあたっては、必ず医師の指示および所属事業所の手順書に従ってください。
まとめ|膀胱洗浄は「目的」を理解したうえで正しく実施しよう
膀胱洗浄は、訪問看護の現場で医師の指示のもと実施することの多い処置です。感染予防のためではなく、閉塞の解除・予防や凝血・結石への対応といった明確な目的のもとで行うものだと理解しておくことが、正しい判断につながります。
- 在宅では2wayカテーテルを使った手動式膀胱洗浄が中心
- 膀胱洗浄は尿路感染症の予防には寄与せず、感染予防目的の定期実施は推奨されていない
- 閉塞解除・凝血除去・結石溶解など、明確な目的があるときに医師の指示のもとで実施する
- 飲水促進・ミルキング・清潔保持など、洗浄を回避するための日常ケアも重要な役割
正しい知識を持って膀胱洗浄に向き合うことは、利用者さんの安全と快適な在宅療養を支えることにつながります。
























