訪問看護ステーションを開設したものの、思うように利用者さんの依頼が来ない――そんな悩みを抱えている経営者・管理者の方は少なくありません。人員も体制も整えているのに依頼が入らないと、経営面でも不安が大きくなります。
訪問看護は医師の指示書とケアマネジャーからの紹介で成り立つビジネスモデルであるため、一般消費者向けのビジネスとは集客の仕組みが根本的に異なります。この記事では、依頼が来ない原因を整理したうえで、今日から取り組める具体的な改善策を解説します。
- 訪問看護の依頼が来ない主な原因5つ
- 訪問看護ステーション数の増加と競争環境の実態
- 依頼を増やすための具体的な改善策
- 依頼が来た後に信頼を積み重ねるための対応
目次
訪問看護の依頼が来ない…まず整理したい5つの原因
依頼が来ない状態が続いているとき、闇雲に営業を強化する前に、まずは自事業所がどの原因に当てはまっているのかを整理することが大切です。
①医療機関やケアマネとの関係性が築けていない
訪問看護の依頼の多くは、在宅医・クリニックの医師や、居宅介護支援事業所のケアマネジャーからの紹介によって発生します。開設して間もない事業所は、そもそも地域の医療機関やケアマネジャーに存在を知られていないことが最大のボトルネックになりがちです。
②地域のニーズに合っていない
地域によって、需要が高い疾患や年齢層、看取り対応の必要性などは異なります。自事業所の強み(精神科訪問看護、小児訪問看護、リハビリ特化など)が、その地域のニーズとかみ合っていない場合、紹介が集まりにくくなります。
③訪問エリアや対応時間に制限が多すぎる
対応エリアが狭い、土日祝日や夜間の対応ができない、といった制限が多いと、ケアマネジャーが紹介先を選ぶ際に候補から外れやすくなります。特に24時間対応の可否は、重症度の高い利用者さんの紹介において重視されるポイントです。
④ホームページやSNSの活用が不十分
ケアマネジャーや医療機関の担当者は、紹介を検討する際に事業所名で検索し、ホームページの情報を確認することが多くあります。対応可能な疾患やエリア、スタッフ体制などの情報が整理されていないと、比較検討の段階で候補から漏れてしまいます。
⑤開業直後で実績・認知が少ない
開設したばかりの事業所は、実績も口コミもまだない状態です。この段階では焦らず、次章で解説する営業活動を地道に積み重ね、最初の紹介実績を確実に信頼につなげていく姿勢が重要になります。

開設直後は「良いケアをしていれば自然と依頼が来る」と考えがちですが、まずは地域の医療・介護関係者に「この事業所がある」と知ってもらうことが先決です。

訪問看護ステーション数の増加と競争環境の実態
「依頼が来ない」原因は、自事業所側の課題だけとは限りません。近年、訪問看護ステーションの数そのものが全国的に増加しており、地域によっては競争が激しくなっていることも背景にあります。
一般社団法人全国訪問看護事業協会の調査によると、指定訪問看護ステーションの稼働数は2025年時点で18,754か所となっており、前年から1,425か所増加しています。事業所数が右肩上がりで増え続けている以上、「待っているだけで依頼が来る」状況は今後さらに難しくなると考えておく必要があります。
依頼を増やすための具体的な改善策
原因を整理できたら、次は改善策です。すべてを一度に実行する必要はありません。自事業所の課題に合わせて優先順位をつけて取り組みましょう。
- ケアマネ事業所への訪問営業を仕組み化する単発の挨拶回りで終わらせず、定期訪問のスケジュールを組み、対応可能な疾患・エリア・空き状況を最新の状態で伝え続けることが重要です。
- 在宅医・クリニックとの連携体制を構築する訪問診療医との情報共有を密にし、指示書のやり取りがスムーズであることをアピールすると、継続的な紹介につながりやすくなります。
- 地域包括支援センターや行政との接点を増やす地域ケア会議や研修会などの機会を活用し、行政や地域包括支援センターの職員にも事業所の存在と強みを知ってもらいましょう。
- 自社メディアやSNSを活用して発信する対応可能な疾患・エリア・実績などをホームページやSNSで定期的に発信し、検索された際に情報が見つかる状態を整えます。
- 受け入れ体制(対応エリア・時間・疾患)を見直す可能な範囲で対応エリアや緊急時対応の体制を拡充できないか、スタッフの負担とのバランスを見ながら検討します。
受け入れ体制の拡充は、スタッフの労働環境を犠牲にしてまで行うものではありません。無理な拡大は離職につながり、結果的にケアの質の低下やさらなる紹介減につながる恐れがあります。

紹介元別に見る、依頼を増やすアプローチの違い
訪問看護への依頼は、複数の紹介元から発生します。紹介元ごとに重視するポイントが異なるため、画一的な営業ではなく、相手に合わせたアプローチを意識すると効果が上がりやすくなります。
| 紹介元 | 重視されやすいポイント | アプローチのヒント |
|---|---|---|
| 居宅介護支援事業所(ケアマネジャー) | 対応エリア・空き状況・対応疾患の幅 | 定期訪問で最新の受け入れ状況を伝える |
| 在宅医・クリニック | 指示書対応のスピード・報告連絡の質 | 報告書のフォーマットや連絡手段をすり合わせる |
| 病院の退院支援部門 | 退院直後の重症度への対応力 | 退院前カンファレンスへの参加を積極的に行う |
| 地域包括支援センター | 地域とのつながり・相談対応の柔軟さ | 地域ケア会議や研修会での接点づくり |
すべての紹介元に同じ営業トークで臨むのではなく、相手が何を判断材料にしているかを意識するだけでも、紹介につながる確率は変わってきます。
特に病院の退院支援部門とのつながりは見落とされがちですが、医療依存度の高い利用者さんの在宅移行を担うため、早期からの関係構築が中長期的な紹介数の安定につながります。
依頼が来た時の対応も重要
営業活動によって最初の依頼が来たあと、その対応の質が次の紹介につながるかどうかを左右します。
- 問い合わせへの返答は可能な限り迅速に行う
- 受け入れ可否の回答をあいまいにせず、明確に伝える
- 訪問開始後の状況報告をケアマネジャーや主治医にこまめに行う
- 断らざるを得ない場合も、理由を丁寧に説明し関係を悪化させない

1件1件の依頼への対応が、次の紹介につながる「信頼の積み重ね」になります。忙しいときほど、報告・連絡・相談を丁寧に行うことを意識しています。
営業活動を支える資料・ツールの準備
訪問営業や情報発信の効果を高めるには、伝える内容を毎回口頭で説明するのではなく、あらかじめ資料として整えておくことが有効です。準備しておきたい資料の例を挙げます。
- 対応エリア・対応時間・受け入れ可能な疾患をまとめた一覧表
- スタッフの職種構成・人数・専門性がわかる紹介シート
- 指示書・報告書のやり取りの流れをまとめたフロー資料
- 直近の空き状況をすぐに伝えられる簡易な連絡手段(電話・FAX・オンラインフォームなど)
これらの資料は一度作って終わりにせず、対応可能な状況が変わるたびに更新し、常に最新の情報をケアマネジャーや医療機関に届けられる状態にしておきましょう。

紹介シートを1枚用意しておくだけで、初対面のケアマネジャーにも自事業所の強みが端的に伝わりやすくなります。口頭説明だけに頼らない工夫は、地味ですが効果を実感しやすいです。
まとめ|依頼が来ない状況は原因の整理と地道な改善で変えられる
訪問看護の依頼が来ない状況は、事業所数の増加という外部環境の変化と、関係構築・情報発信といった自事業所の課題が組み合わさって生まれています。原因を正しく整理し、優先順位をつけて改善に取り組めば、着実に紹介数を増やしていくことができます。
- 依頼が来ない原因は「関係構築不足」「ニーズのミスマッチ」「対応体制の制限」「発信不足」「実績の少なさ」の5つに整理できる
- 訪問看護ステーション数は全国的に増加しており、競争環境は年々厳しくなっている
- ケアマネ・医療機関・行政との接点づくりと情報発信を仕組み化することが改善の近道
- 依頼が来たあとの丁寧な対応が、次の紹介につながる信頼を生む
すべてを一気に行う必要はありません。できるところから一つずつ、継続的に取り組んでいきましょう。地域の医療・介護関係者との信頼は一朝一夕には築けませんが、日々の小さな積み重ねが、数か月後、数年後の紹介数の安定につながっていきます。

よくある質問
開設したばかりで実績がなくても依頼は来ますか?
実績がない開設直後は依頼が来にくいのが実情ですが、ケアマネジャーや在宅医への地道な訪問営業と丁寧な対応を積み重ねることで、最初の紹介実績を作ることができます。焦らず継続することが大切です。
ケアマネジャーへの営業はどのくらいの頻度で行うべきですか?
明確な正解はありませんが、単発の挨拶で終わらせず、定期的な訪問スケジュールを組んで継続的に接点を持つことが重要とされています。空き状況や対応可能な疾患の最新情報を伝え続けることがポイントです。
24時間対応をしていないと依頼は来にくくなりますか?
24時間対応の可否は、重症度の高い利用者さんの紹介を検討する際にケアマネジャーが重視するポイントの一つです。ただし、無理な体制拡充はスタッフの負担増につながるため、事業所の状況に合わせて慎重に検討する必要があります。
ホームページがなくても依頼は来ますか?
紹介元がホームページで情報を確認して比較検討することも多いため、対応エリアや疾患、スタッフ体制などの情報が整理されたホームページがあると、比較検討の段階で候補に残りやすくなります。
訪問看護ステーションの数は今後も増え続けますか?
近年は右肩上がりで増加が続いています。今後の推移について断定はできませんが、地域によって競争環境が厳しくなる可能性を踏まえ、関係構築や情報発信に早めに取り組んでおくことが望ましいといえます。
一度紹介が途絶えたケアマネ事業所とは、どう関係を立て直せばよいですか?
紹介が途絶えた背景には、対応可否の連絡が遅れた、報告が不足していたなど、何らかのきっかけがある場合が多いです。まずは直接訪問して現状の受け入れ体制を改めて伝え、過去のやり取りで至らなかった点があれば率直に確認し、改善の姿勢を示すことが関係の立て直しにつながります。























