このような疑問を解決する記事です。
認知症は、在宅において出会うことが多い病気の一つです。
認知症を患っている方は、分からないことやできないことが増え、不安な気持ちを抱えながら過ごされています。
看護に当たるご家族や訪問看護師なども、少なからず関わり方に悩みながら過ごしているのではないでしょうか。
当記事では、認知症の方の在宅看護の大切なポイントをあらためてお伝えしようと思います。
- 認知症の方の在宅看護に行き詰まっている方
- どうしてよいかわからず悩んでいる方
- ストレスを抱えている方
このような方はぜひ最後まで読んでみてくださいね。
少しでもお力になれるよう解説してまいります。
目次
認知症とは?在宅看護とは?基本的な知識について
在宅看護とは、病気や障害を持ちながらも自宅で療養している方に対して行う看護のことを言います。
現在日本は超高齢化社会を迎えており、病気を持ちながらも在宅で療養する高齢の方が増えています。
病気を持ちながらも住み慣れた我が家で療養される方を支える看護が「在宅看護」です。
在宅看護を行う者としては、以下のような方がいらっしゃいます。
- 家族
- 親類
- 介護サービス提供者(訪問看護、訪問介護など)など
さまざまな人々が、在宅で療養される方を支えています。
在宅看護の対象者が抱える疾患で多いものの一つに「認知症」があります。
いろいろな原因で脳の細胞が死んでしまったり、働きが悪くなったためにさまざまな障害が起こり、生活するうえで支障が出ている状態(およそ6ヵ月以上継続)を指します。
認知症を引き起こす病気のうち、もっとも多いのは、脳の神経細胞がゆっくりと死んでいく「変性疾患」と呼ばれる病気です。
アルツハイマー病、前頭・側頭型認知症、レビー型小体病などがこの「変性疾患」にあたります。
続いて多いのが、脳梗塞、脳出血、脳動脈硬化などのために、神経の細胞に栄養や酸素が行き渡らなくなり、その結果その部分の神経細胞が死んだり、神経のネットワークが壊れてしまう脳血管性認知症です。
認知症の症状としては以下があります。
- 中核症状
- 周辺症状
脳の細胞が壊れることによって直接起こる症状です。
- 記憶障害
- 見当識障害
- 理解・判断力の低下
- 実行機能の低下など
これらの中核症状のため周囲で起こっている現実を正しく認識できなくなります。
本人がもともと持っている性格、環境、人間関係などさまざまな要因がからみ合って、うつ状態や妄想のような精神症状や、日常生活への適応を困難にする行動上の問題が起こってきます。
これらを周辺症状と呼ぶことがあります。
認知症を患うと、中核症状や周辺症状のため、日々の生活において困難なできごとが増えます。
認知症が疑われる場合には早めに専門医を受診することも大切です。
認知症の方に対する在宅看護のポイント6つ
認知症の方に対する在宅看護のポイントを6つ紹介します。
- 認知症の病態や症状を正しく理解する
- 体調の確認を意識的に行う
- コミュニケーションを工夫する
- その人を知り、支援につなげる
- 残っている身体的・精神的機能を維持していく
- 看護者もしっかり休息を取る
順番に解説します。
認知症の病態や症状を正しく理解する
認知症の病態や症状を正しく理解することは非常に大切です。
認知症への正しい理解ができていると、より良い関わりやケアができるためです。
前述したように、認知症には中核症状と周辺症状があり、認知症を患っている方は日常生活にさまざまな困難を覚えます。
時には、その症状に対して看護者も困難を覚えます。
しかし、認知症に対する正しい理解ができていると、「病気のためにこの様になっている」現状を受け止め、受け入れていくことが可能になる基盤となります。
認知症のある方は、中核症状の不安を周辺症状として表出することもあります。
なぜ周辺症状が起こっているのか、その方に共感し寄り添いながら探り、 合わせてできることを見つけていくことで周辺症状が落ちつくこともあります。
大切な人の病気を受け止め、受け入れていくことは簡単なことではありませんが、その方をより良くサポートしていくためにも認知症に対する正しい理解は大切です。
体調の確認を意識的に行う
認知症を患う方に対して、意識的に体調の確認を行うことも重要です。
認知機能が低下すると、自身の体調の変化に気づくことが遅れたり、気がついても周囲に伝わるように表出できないことがあるためです。
ご本人の訴えだけでなく、なにか普段と違う様子はないか、食事や排泄、睡眠などはどうか、気をつけて確認していくことが大切です。
体調不良が周辺症状として表出されることもあるので、日々の体調をしっかり確認していきましょう。
コミュニケーションを工夫する
コミュニケーションを工夫することも、認知症の方と関わる上で大切なポイントの一つです。
認知症の方にとっては、接し方自体が状態の安定や向上に向けた重要なケアとなり得るからです。
- 否定や訂正はせず共感的態度で対応する
- わかる言葉で簡潔に話す
- スキンシップを取り入れる
- 一つひとつの動作に対して声かけをする
- 相手のペースを守る
- ゆったり楽しく接する など
ぜひ意識してより良いコミュニケーションを取りましょう。
認知症の方との関わり方で「ユマニチュード」というものがあります。
ユマニチュードに関しては、下記記事で詳しく解説しています。
ビジケア有料会員になると、こちらの記事をはじめ、専門職(認定看護師など)の講師が教える記事や動画で学びを深めることができます。
詳しくはこちらをご確認ください。
その人を知り、支援につなげる
認知症を患う方の在宅看護において、その人を知り、支援につなげるという考え方も非常に重要です。
その人を知ることで、その人らしい尊厳の保たれた生活を送る一歩になるからです。
- 趣味や好み
- 昔の思い出
- どのような人生を送ってきたのか
その人らしさを大切にして、その人らしくいられるような支援を意識していきましょう。
残っている身体的・精神的機能を維持していく
認知症の方との関わりにおいて、残っている身体的・精神的機能を維持していくことも非常に大切なことです。
認知症の方には、残されている身体的・精神的機能があります。
- 積極的に運動(体を動かす)機会を作る
- 五感や情緒を刺激することに取り組む
- 昔よくしていたことをしてもらう
- できることをしてもらう
「病気だから」と消極的な過ごし方をするのではなく、残存能力を生かしたケアの方法や関わりを意識できるとよいでしょう。
看護者もしっかり休息を取る
認知症の方の在宅看護において、看護に当たる方もしっかり休息を取ることが非常に大切です。
認知症の方の看護を、24時間365日行うご家族等の身体的・精神的負担は非常に大きいものと想像できます。
- 目が離せない
- 話をしても理解してもらえない
- 食事・排泄・家事など、介護の負担が増える
- 毎日の看護での疲労の蓄積
- 自身の生活への影響や変化
- 大切な家族が認知症になってしまった悲嘆 など
看護に当たる方の思いや悩みをよく傾聴し、状況に応じて社会資源や介護サービスの活用も必要かと思います。
看護をする側が心身ともに整っていなければ、長く在宅看護をサポートしていくことは難しいです。
誰かが抱え込んでしまうような状況にならないよう、ぜひ配慮していきたいですね。
認知症の在宅看護|皆が笑顔で過ごせますように
認知症ケアの理念について、厚生労働省の資料では以下のように述べられています。
認知症のために見失われがちなその人の尊厳、個性、可能性、求めていること(願い、希望)を見い出して、本人がその人らしい生(生命、生活、人生)をまっとうできるよう支えていく。
認知症の方の在宅看護においても、上記の理念を心に置き、皆が笑顔で過ごせるよう日々を大切にしていけるとよいのではないでしょうか。
そして、認知症の方の在宅看護にたずさわる機会がある訪問看護師も、ぜひその人その人に合わせた笑顔になれる関わりができるとよいですね。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
訪問看護師です。このたび認知症を患っている方を担当させていただく予定です。認知症の方の在宅看護を行う上で大切なポイントを教えてほしいです。