訪問看護をはじめてみたけれど、所属の異なる多職種との関わりにとまどうことはありませんか?
この記事は、そう悩む訪問看護師にちょっとした秘訣をお伝えしたいと思います。
在宅という現場は、自分と利用者さん以外に関わっている職種が多く、多職種で一人の利用者さんに関わります。
それぞれの役割も専門性も違うものです。
それぞれの立場で目の前の業務だけに集中してしまうと、なんだかかみ合わないといったことが起こり得ます。
会話も成立しないことがあるかもしれません。
これではチームで協調・協同することが難しいです。
信頼される訪問看護師になるためには、全体を見る力を身につけることが必要です。
これを「俯瞰的」「俯瞰力」と言います。
この「俯瞰力」の高い人がチームにひとりでもいると、業務をスムーズにまわすことができます。
そして、多職種で複雑に絡み合っているような現場においては、非常に大きな力を発揮することになります。
仕事ができ、信頼される訪問看護師になるためには「俯瞰力」を身につけることをおすすめします。
目次
客観的と俯瞰的の違い
客観的とは
学生の頃に「客観的に」と言われたことはありませんか?
この「客観的」は、第三者の立場に立って物事を見たり考えてみるということです。
たとえば、訪問看護師としてこう行動をしてみたけれど、利用者さんの立場からはどう見られているのだろうか?という考え方です。
しかし、これではどうしても目の前のことだけが中心になってしまいがちです。
俯瞰的とは
一方、「俯瞰的」とは、全体を見て考える・全体像を把握するということを言います。
自分の立場でもなく、第三者の立場でもなく、高い位置から全体を見渡すイメージです。
訪問看護師の思い、利用者さんの思い、ケアマネジャーの思い、主治医の考えと、どんどん広い範囲を見渡していきます。
そして、誰の立場にも立たずに物ごとをとらえ、考察します。
「俯瞰的」は「客観的」に比べ、物ごとを広い範囲でとらえることができます。
「俯瞰力」の高い訪問看護師の仕事とは
この「俯瞰力」が高い訪問看護師は、自分の業務を進めつつ、周りも見渡しながら仕事を進めていきます。
- ケアマネジャーは何を見ているのか
- 主治医は何を考えているのか
- 利用者さんやご家族はどんな状況か
- ヘルパーは今何をしているのか など
その結果、自分の偏った経験や価値観にとらわれない、的確な判断・適切な行動ができます。
訪問看護の現場では、常に訪問看護師である自分の思い、利用者さんのニーズやご家族の思い、主治医の治療方針、そしてケアマネジャーのケアプランなどをふまえて連携しなくてはなりません。
この「俯瞰力」のある・なしによって、訪問看護師の仕事は左右されると言えます。
俯瞰力を身につけると良い点2つ
- 視野が広がり、的確な判断が可能になる
「俯瞰力」を身につけると、たくさんの情報や知識を自分の中に取り入れることができるため、物事の全体を把握できるようになり、結果、いつも冷静に的確な判断・対応が可能になってきます。 - 自分の感情や行動を冷静にコントロールできる
この「俯瞰力」で自分自身を見ることができるようになると、自分自身の感情や行動をちょっと離れて上から見下ろして分析してみたり、適切な行動や発言を選べるようになると言われています。
しかし、良いところばかりではなく、無難な判断をしてしまいチャレンジできなくなってしまうということが起こり得ます。
常に冷静に的確に判断しようとしてしまうため、正解を求めすぎて正解がないような課題に対して決断が遅くなってしまうことも考えられます。
俯瞰力の身につけ方3つ
目の前のことからいっぱいになる自分から抜け出す
日常生活の中で、ちょっと左右を見てみる。
今の自分の行動はこれで最適なのかと考えることをしていきます。
たとえば、会社の宴会のときに全員にグラスは行き渡っているだろうかとか、私がこうすることは誰かが困ることはないだろうかと考えることです。
視点を一つずつ増やす
まずは、身近な人の視点に立って考えてみます。
いきなり全体を見渡すことは難しいと思うので、ひとつずつ順番にその人の視点に立って考えてみます。
そうすれば、一人ひとりの視点を獲得していって最終的には全体を見渡せるようになってきます。
このやりかたは1日や2日では無理とは思いますが、実用的で一番近道のような気がします。
一見意味がわからないものの意味を考えたり、考えても仕方のないものを考えてみる
「俯瞰力」には、思考の量や幅をたくさん持っているほうがより全体を見渡せるようになることがあります。
思考を寄り道させて探検させるということを、おもしろくやっていけるような人は、思考の量や思考の幅を日常から広げることができ、「俯瞰力」を磨き上げることができます。
趣味であったり、看護とは関係のない本を読んでみたり、日常的な行動の中から思考の量を増やし、幅を磨いていくことを意識してみてください。
まとめ
- 訪問看護師は多職種で関わっていく業務のため、全体を見て考える・全体像を把握するという能力が必要であり、「俯瞰力」のある・なしによって訪問看護の仕事は左右される
- 「俯瞰力」を身につけると、多職種で複雑に絡み合っていくような現場において非常に大きな力を発揮することができ、信頼される訪問看護師になれる
- 「俯瞰力」を身につけるためには、視点を一つずつ増やしたり、日常的な行動の中から思考の量を増やしたり、幅を磨いていくということを意識してみる
- 正解を求めすぎて決断が遅くなってしまうというデメリットも知っておく
私は、個人的にはこの俯瞰力が高い訪問看護師が集まっている事業所こそ、チーム力・組織力の強い職場ではないかと思っています。
この記事がみなさんの日々の業務に役立ってもらえると幸いです。