「訪問看護を利用したいけれど、うちの家族は対象になるのだろうか」「介護保険と医療保険、どちらが使えるのかわからない」——訪問看護の利用を検討し始めた方から、こうした疑問をよく聞きます。
結論から言うと、訪問看護は年齢や疾患による利用そのものの制限はほとんどありません。乳幼児から高齢者まで、医師が「訪問看護が必要」と判断すれば利用できます。ただし、どちらの保険(介護保険・医療保険)が適用されるかによって、利用できる回数や1回あたりの時間、自己負担額が変わってきます。この記事では、訪問看護を受けられる人の条件と、保険の使い分けの仕組みを、制度の一次情報に基づいて整理します。
- 訪問看護を受けられる人の基本条件(年齢・疾患を問わない仕組み)
- 介護保険で訪問看護を受けられる人の条件(16特定疾病を含む)
- 医療保険で訪問看護を受けられる人の条件(別表7・特別訪問看護指示書など)
- 保険の種類によって変わる訪問回数・時間のルール
- 保険を使わず自費で利用する選択肢
目次
訪問看護を受けられる人とは?年齢・疾患を問わないのが原則
訪問看護は、生まれたばかりの新生児から100歳を超える高齢者まで、あらゆる年代の方が対象になり得るサービスです。がんや難病、精神疾患、医療的ケアが必要な小児、要介護状態の高齢者など、対象となる疾患・状態にも原則として制限がありません。
ただし、誰でも自由に利用を開始できるわけではなく、主治医が交付する「訪問看護指示書」が必要です。訪問看護ステーションは、この指示書に基づいて看護計画を立て、サービスを提供します。指示書がなければ、たとえ本人や家族が希望しても訪問看護は開始できません。

「訪問看護=高齢者向け」というイメージを持たれがちですが、実際には小児から精神科領域まで幅広い方が利用しています。まずは主治医に「訪問看護を利用したい」と相談することが最初の一歩です。
訪問看護で使える2つの保険|介護保険と医療保険の基本
訪問看護には「介護保険」と「医療保険」の2つの適用ルートがあり、利用者ごとにどちらか一方が適用されます(併用はできません)。どちらが適用されるかは、年齢・要介護認定の有無・疾患の種類によって、下記のように決まります。

介護保険で訪問看護を受けられる人の条件
介護保険で訪問看護を利用できるのは、次のいずれかに該当する方です。
| 区分 | 条件 |
|---|---|
| 第1号被保険者 | 65歳以上で、要支援1・2または要介護1〜5の認定を受けている方 |
| 第2号被保険者 | 40歳以上65歳未満で、医療保険に加入しており、老化に起因する「16特定疾病」のいずれかにより要支援・要介護認定を受けている方 |
「16特定疾病」は、厚生労働省が介護保険法施行令で定めているもので、以下の16疾病を指します。
| No. | 特定疾病 |
|---|---|
| 1 | がん(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る=末期がん) |
| 2 | 関節リウマチ |
| 3 | 筋萎縮性側索硬化症 |
| 4 | 後縦靱帯骨化症 |
| 5 | 骨折を伴う骨粗鬆症 |
| 6 | 初老期における認知症(アルツハイマー病、脳血管性認知症等) |
| 7 | 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病(パーキンソン病関連疾患) |
| 8 | 脊髄小脳変性症 |
| 9 | 脊柱管狭窄症 |
| 10 | 早老症(ウェルナー症候群等) |
| 11 | 多系統萎縮症 |
| 12 | 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症 |
| 13 | 脳血管疾患(脳出血、脳梗塞等) |
| 14 | 閉塞性動脈硬化症 |
| 15 | 慢性閉塞性肺疾患(肺気腫、慢性気管支炎等) |
| 16 | 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症 |
※上記は厚生労働省の公表資料に基づく正式な一覧です(記事末尾の出典を参照)。
医療保険で訪問看護を受けられる人の条件
介護保険の対象にならない方は、原則として医療保険で訪問看護を利用します。具体的には次のような方です。
「厚生労働大臣が定める疾病等」(別表7)は、末期の悪性腫瘍、多発性硬化症、重症筋無力症、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病関連疾患、後天性免疫不全症候群、人工呼吸器を使用している状態など、長期的・頻回なケアが必要とされる疾病等をまとめたものです。この疾病等に該当する方は、要介護認定の有無にかかわらず医療保険の訪問看護が適用され、週4日以上の頻回な訪問も可能になります(詳しい病名の一覧は記事末尾の出典をご確認ください)。
病状が急激に悪化した場合など、主治医が「一時的に頻回な訪問看護が必要」と判断したときに交付されるのが特別訪問看護指示書です。交付から14日を限度に、週4日以上の訪問が可能になりますが、あくまで一時的な措置であり、原則として月1回までの交付とされています(該当する利用者に限り月2回まで交付できる場合があります)。

保険によって訪問回数・時間はどう変わる?
介護保険と医療保険では、利用できる回数や1回あたりの訪問時間の考え方が異なります。
| 項目 | 介護保険 | 医療保険 |
|---|---|---|
| 利用回数 | ケアプランに基づき設定(原則として回数の上限規定なし) | 原則として週3日を限度。別表7該当者・特別訪問看護指示書該当者は週4日以上も可 |
| 1回の訪問時間 | ケアプランに応じて設定(20分未満〜90分程度など複数の時間区分あり) | 1回30分〜90分程度が目安とされる |
| 複数ステーションの利用 | ケアプランの範囲内で調整 | 原則1か所。別表7該当者や週4日以上の指示がある場合は、条件付きで複数ステーションの利用が認められることがある |
介護保険は要介護度ごとの支給限度額の範囲内で、ケアマネジャーが作成するケアプランに沿って回数・時間を組み立てます。一方、医療保険は診療報酬上のルールで「週3日を限度」という原則があり、別表7該当者や特別訪問看護指示書の交付を受けた方だけが、その原則の例外として週4日以上の頻回な訪問を利用できる、という構造になっています。

「今の状態だと週何回訪問してもらえるの?」という疑問は、ケアマネジャーや訪問看護ステーションに相談するのが一番確実です。制度は複雑なので、ご自身での判断より専門職への相談をおすすめします。
保険を使わず自費で訪問看護を受ける選択肢
介護保険・医療保険のいずれにも該当しない場合や、保険の範囲を超えたケアを希望する場合は、自費(保険外・全額自己負担)で訪問看護を利用することもできます。
自費利用の料金は訪問看護ステーションごとに異なるため、利用を検討する場合は事前に見積もりを確認することが大切です。
訪問看護を利用するまでの流れ
- 主治医または地域包括支援センターに相談する現在治療中の医師や、市区町村の地域包括支援センター、居宅介護支援事業所(ケアマネジャー)に相談します。
- 訪問看護ステーションを選ぶ対応可能な疾患・エリア・曜日などを確認し、希望に合うステーションを探します。
- 訪問看護指示書を発行してもらう主治医に依頼し、訪問看護指示書を訪問看護ステーションへ交付してもらいます。
- 訪問看護計画書を作成する訪問看護ステーションの看護師が自宅を訪問し、心身の状態を確認したうえで看護計画を立てます。
- 訪問看護がスタートする計画に沿って、定期的な訪問看護が始まります。
よくある質問
訪問看護は何歳から利用できますか?
年齢の下限は定められておらず、新生児や乳幼児でも医師が訪問看護の必要性を認め、訪問看護指示書を交付すれば利用できます。医療的ケアが必要な小児(医療的ケア児)への訪問看護も広がっています。
要介護認定を受けていなくても訪問看護は利用できますか?
利用できます。要介護認定を受けていない方は、介護保険ではなく医療保険での訪問看護が適用されます。40歳未満の方や、要介護認定の申請をしていない65歳以上の方も同様です。
医療保険と介護保険はどちらが優先されますか?
65歳以上で要支援・要介護認定を受けている方、または40〜64歳で16特定疾病に該当する方は、原則として介護保険が優先されます。ただし、別表7に該当する疾病等がある場合は、要介護認定の有無にかかわらず医療保険が適用されます。
訪問看護を利用するにはどうすればいいですか?
まずは主治医または地域包括支援センター、ケアマネジャーに相談してください。訪問看護指示書の交付を受けたうえで、訪問看護ステーションと契約し、看護計画を立ててから訪問が始まります。
精神科の訪問看護も対象になりますか?
対象になります。精神科訪問看護指示書の交付を受けた方は医療保険での訪問看護が可能です。ただし、病名が認知症の場合は、原則として介護保険の訪問看護が優先されます。
訪問看護は保険が使えない場合もありますか?
保険の対象外となるサービス(外出の付き添いなど)や、保険の回数・時間の上限を超える利用については、自費(全額自己負担)での対応となります。料金は訪問看護ステーションごとに異なります。

- 厚生労働省「特定疾病 第二号被保険者の『特定疾病』に関する確認」(要介護認定における16特定疾病の一覧)
- 厚生労働省近畿厚生局「訪問看護療養費の取扱いの理解のために(令和3年度)」(週3日限度の原則、別表7該当者・特別訪問看護指示書の週4日以上算定の仕組み)
別表7(厚生労働大臣が定める疾病等)の詳しい病名一覧や、制度の最新の適用条件については、主治医または訪問看護ステーションに直接ご確認いただくことをおすすめします。
まとめ|訪問看護は年齢・疾患を問わず利用できる。鍵は「保険の使い分け」
訪問看護は、対象となる年齢や疾患そのものにはほとんど制限がなく、主治医が必要と判断すれば誰でも利用を検討できるサービスです。一方で、実際に利用する際は「介護保険」と「医療保険」のどちらが適用されるかによって、訪問回数や時間、負担のルールが変わってきます。
- 訪問看護は年齢・疾患を問わず利用でき、必要なのは主治医の訪問看護指示書
- 65歳以上の要支援・要介護者と、40〜64歳で16特定疾病に該当する方は介護保険が適用される
- それ以外の方や、別表7該当者・特別訪問看護指示書の交付を受けた方は医療保険が適用される
- 医療保険は原則週3日限度だが、別表7該当者等は週4日以上の頻回な訪問も可能
- 保険の対象外のケアは自費での利用も選択肢になる
制度は複雑に見えますが、まずは主治医やケアマネジャー、訪問看護ステーションに相談すれば、自分や家族がどの条件に当てはまるかを整理してもらえます。「使えるかどうかわからない」と迷ったときこそ、早めの相談が安心につながります。




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