小児の訪問看護に力を入れたいとお考えの訪問看護ステーション経営者・管理者の皆さん、乳幼児加算の算定要件や令和8年度改定での変更内容をしっかり把握できていますか?算定漏れはもちろん、誤算定も許されない加算だからこそ、正確な知識が欠かせません。
この記事では、訪問看護における乳幼児加算の基本から、令和8年度(2026年)診療報酬改定での変更点、超重症児・準超重症児を含む「厚生労働大臣が定める者」の詳細、算定時の留意点まで、実務で役立つ情報を網羅的に解説します。小児の訪問看護に取り組む事業所の方はぜひ参考にしてください。
- 訪問看護の乳幼児加算の基本的な仕組みと算定要件
- 令和8年度診療報酬改定(令和8年6月施行)での変更点
- 「厚生労働大臣が定める者」(超重症児・別表第7・別表第8)の具体的な内容
- 算定時の落とし穴と実務上の注意点
- よくある質問とその回答
目次
訪問看護の乳幼児加算とは?基本をおさらい
乳幼児加算とは、6歳未満の利用者に対して訪問看護ステーションの看護師等が指定訪問看護を実施した場合に、1日につき1回に限り算定できる加算です。医療保険(訪問看護療養費)の枠組みで設けられており、介護保険の訪問看護には設定されていません。
小児の訪問看護は、成人に比べて疾患の複雑さや家族への支援の必要性が高く、ケアの難度が上がりやすい傾向があります。乳幼児加算は、こうした小児特有の手厚いケアに対する評価として位置づけられています。

乳幼児加算は医療保険の加算です。介護保険を使っている利用者には算定できないので、保険の種別を必ず確認しましょう。
算定できる訪問看護基本療養費の種別
乳幼児加算は、以下の訪問看護基本療養費を算定する日に合わせて算定できます。
- 訪問看護基本療養費(Ⅰ)(ハを除く)
- 訪問看護基本療養費(Ⅱ)(ハを除く)
- 精神科訪問看護基本療養費(Ⅰ)
- 精神科訪問看護基本療養費(Ⅲ)
なお、同一建物居住者への訪問を評価する「ハ」については対象外となっていることに注意が必要です。
令和8年度診療報酬改定で何が変わった?
令和8年度診療報酬改定(令和8年6月施行)において、乳幼児加算の評価が見直されました。具体的には、「厚生労働大臣が定める者以外」の加算額が引き上げられました。以下の表で改定前後を確認しましょう。
| 対象区分 | 改定前(令和6年度) | 改定後(令和8年度・令和8年6月〜) |
|---|---|---|
| 厚生労働大臣が定める者(超重症児等) | 1,800円 | 1,800円(据え置き) |
| 上記以外の6歳未満の乳幼児 | 1,300円 | 1,400円(100円引き上げ) |
今回の改定では、重症度の高い「厚生労働大臣が定める者」の金額は据え置きとなる一方で、それ以外の一般的な乳幼児への加算が1,300円から1,400円へ100円引き上げられました。これは、乳幼児の訪問看護全般について、状態に応じた質の高いケア提供を推進する観点から行われた見直しです。
令和8年6月以降は「厚生労働大臣が定める者以外」の乳幼児への乳幼児加算は1,400円が正しい金額です。改定前の1,300円のまま請求しないよう、レセプトソフトの設定確認を行いましょう。

改定のタイミングでレセプトソフトが自動更新されない場合もあります。令和8年6月以降の請求内容を必ず確認しておきましょう。
「厚生労働大臣が定める者」とは?超重症児・別表第7・第8を解説
乳幼児加算で1,800円を算定できる「厚生労働大臣が定める者」には、以下の3つの区分があります。それぞれの内容を正しく理解することが、適切な算定につながります。
① 超重症児または準超重症児
超重症児・準超重症児は、医療的ケアの必要度をスコアで評価し、一定の基準を超えた状態にある小児を指します。スコアは人工呼吸器の使用・気管切開・経管栄養・定期的な吸引など、医療処置の種類と頻度によって算出されます。
| 区分 | スコアの基準 | 主な対象のイメージ |
|---|---|---|
| 超重症児 | 25点以上 | 人工呼吸器管理+複数の医療処置が必要な児 |
| 準超重症児 | 10点以上25点未満 | 気管切開・頻回吸引等が必要な児 |
具体的なスコア項目には、レスピレーター管理(10点)、気管内挿管・気管切開(8点)、1時間に1回以上の頻回吸引(8点)、中心静脈栄養(10点)などが含まれます。主治医が判断し診療録に記載することで、該当区分が確認されます。
② 特掲診療料の施設基準等別表第7に掲げる疾病等の者
別表第7は、主に医療保険で週4日以上の訪問看護が認められる疾病・状態の一覧です。6歳未満でこれらに該当する場合は、乳幼児加算の高い区分(1,800円)が算定できます。
主な対象疾病としては、末期の悪性腫瘍、多発性硬化症、重症筋無力症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄小脳変性症、進行性筋ジストロフィー症、パーキンソン病関連疾患(ホーエン・ヤールの重症度分類がステージ3以上)、多系統萎縮症、プリオン病、後天性免疫不全症候群(AIDS)、人工呼吸器を使用している状態などが含まれます。
別表第7・別表第8の対象者は、今後の診療報酬改定によって追加・変更される場合があります。最新の厚生労働省告示を定期的に確認するようにしましょう。令和8年度改定では、別表第8に「在宅難治性皮膚疾患処置指導管理を受けている状態にある者」が追加されました。
③ 特掲診療料の施設基準等別表第8に掲げる者
別表第8は、週4日以上の訪問看護や退院時共同指導などで特別な管理が必要な状態の一覧です。令和8年度改定では新たに「在宅難治性皮膚疾患処置指導管理を受けている状態にある者」が追加されました。主な対象状態は以下のとおりです。
- 在宅麻薬等注射指導管理・在宅腫瘍化学療法注射指導管理・在宅強心剤持続投与指導管理を受けている者、または気管カニューレ・留置カテーテルを使用している者
- 在宅自己腹膜灌流指導管理・在宅血液透析指導管理・在宅酸素療法指導管理・在宅中心静脈栄養法指導管理・在宅成分栄養経管栄養法指導管理・在宅自己導尿指導管理・在宅人工呼吸指導管理・在宅持続陽圧呼吸療法指導管理・在宅自己疼痛管理指導管理・在宅肺高血圧症患者指導管理・在宅難治性皮膚疾患処置指導管理を受けている状態にある者
- 人工肛門または人工膀胱を設置している状態にある者
- 真皮を超える褥瘡の状態にある者
- 在宅患者訪問点滴注射管理指導料を算定している者

小児の利用者が別表第7・第8に該当するかどうかは、主治医の指示書や診療情報提供書でしっかり確認するのがポイントです。「どちらの区分か」によって算定額が異なりますからね。
乳幼児加算の算定要件まとめ
乳幼児加算を正しく算定するために、要件を一覧表で整理します。算定に迷ったときはこの表を参照してください。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 対象年齢 | 6歳未満(6歳の誕生日の前日まで) |
| 算定単位 | 1日につき1回 |
| 算定額(令和8年6月〜) | 厚生労働大臣が定める者:1,800円 / それ以外:1,400円 |
| 対象保険 | 医療保険(訪問看護療養費)のみ ※介護保険は対象外 |
| 算定できる基本療養費 | 訪問看護基本療養費(Ⅰ)(ハを除く)、(Ⅱ)(ハを除く)、精神科訪問看護基本療養費(Ⅰ)、(Ⅲ) |
算定時の留意点と落とし穴
乳幼児加算を算定する際には、いくつかの重要な留意点があります。現場でよくある誤りを事前に把握しておきましょう。
① 6歳の誕生日当日は算定不可
乳幼児加算は「6歳の誕生日前日まで」が算定期間です。6歳の誕生日当日からは算定できません。これは、健康保険法上「6歳未満」とは「6歳の誕生日の前日まで」を指すためです。
利用者の誕生日を把握していても、「誕生日前日まで」というルールを見落として誕生日当日も算定してしまうケースが散見されます。誕生日が近い利用者については、前もってスケジュールと算定の可否を確認する習慣をつけましょう。
② 週3日を超える訪問時の取り扱い
乳幼児加算は、訪問看護基本療養費(Ⅱ)(ハを除く)および精神科訪問看護基本療養費(Ⅰ)・(Ⅲ)を算定する日と合わせて、利用者1人につき週3日を限度として算定します。ただし、「厚生労働大臣が定める者(別表第7・第8)」については週4日以上の訪問看護が認められるケースもあるため、それぞれの算定日に乳幼児加算が適用されます。
③ 同日複数回訪問での取り扱い
同一日に複数回訪問した場合でも、乳幼児加算は1日につき1回のみの算定です。2回目以降の訪問時には算定できません。
④ 介護保険適用時は算定不可
乳幼児加算は医療保険の加算であるため、介護保険で訪問看護を実施している場合は算定できません。6歳未満であっても、介護保険が適用されているケースでは注意が必要です(実際には6歳未満で介護保険が適用されるケースは少ないですが、制度上の確認は必要です)。

誕生日の管理は、ケアシートや訪問スケジュール表に「乳幼児加算期限:○○年○月○日(誕生日前日)」と明記しておくとわかりやすいですよ。算定漏れ・誤算定の防止につながります。
小児の訪問看護を提供する事業所が押さえておくべき実務ポイント
乳幼児加算を適切に算定し続けるために、事業所として取り組んでおきたいポイントを整理します。
- 利用者情報の管理:生年月日と加算対象期限を一元管理各利用者の生年月日を電子台帳やケア管理システムに登録し、乳幼児加算が算定できる期限(誕生日前日)をアラート設定しておくと確実です。突然の算定漏れを防げます。
- 区分の確認:「厚生労働大臣が定める者」かどうかを定期的に見直す超重症児・準超重症児の状態、別表第7・第8の該当状況は、利用者の病状変化によって変わることがあります。訪問看護指示書の更新時に主治医と連携して区分を確認しましょう。
- レセプト点検:改定後の金額に対応しているか確認令和8年6月以降は「厚生労働大臣が定める者以外」の乳幼児加算が1,400円になります。レセプトソフトのマスタが正しく更新されているか、実際の請求額を目視で確認することをおすすめします。
- スタッフへの周知:算定ルールを定期的に共有乳幼児加算の算定ルール(対象年齢の上限、1日1回の制限、誕生日前日の扱いなど)を、事業所内の勉強会や申し送りで定期的に共有しましょう。新人スタッフへの教育も忘れずに。
小児の訪問看護は家族支援も重要です。乳幼児加算の算定だけでなく、小児の在宅医療に関する加算(たとえば訪問看護情報提供療養費など)も活用できる場面があります。制度全体を把握して、適切な収益確保と質の高いケア提供を両立しましょう。
乳幼児加算のよくある質問(FAQ)
6歳の誕生日に訪問看護を行った場合、乳幼児加算は算定できますか?
算定できません。乳幼児加算は「6歳未満」の利用者が対象であり、これは「6歳の誕生日の前日まで」を指します。6歳の誕生日当日は「6歳以上」となるため、乳幼児加算は算定できません。誕生日前日が最後の算定日となります。
同じ日に2回訪問した場合、乳幼児加算は2回算定できますか?
算定できません。乳幼児加算は1日につき1回のみの算定です。同一日に複数回訪問した場合でも、乳幼児加算は1回分しか算定できません。
乳幼児加算は介護保険の訪問看護でも算定できますか?
算定できません。乳幼児加算は医療保険(訪問看護療養費)の加算です。介護保険で訪問看護を提供している場合には対象外となります。
超重症児かどうかはどのように確認すればよいですか?
超重症児・準超重症児の判定は主治医が行います。スコア表をもとに医療的ケアの必要度を点数化し、25点以上が超重症児、10点以上25点未満が準超重症児となります。主治医が作成する診療録や指示書で該当状況を確認し、必要に応じて主治医に問い合わせましょう。
令和8年度改定で1,400円になるのはいつから適用ですか?
令和8年(2026年)6月1日以降の指定訪問看護から適用されます。令和8年5月31日までは改定前の金額(1,300円)が適用されます。6月以降の請求からは1,400円で算定してください。
小児の訪問看護では、乳幼児加算以外にも算定できる加算・療養費があります。訪問看護情報提供療養費の概要と算定要件もあわせて確認しておきましょう。
訪問看護情報提供療養費1・2・3とは?を読む
まとめ|乳幼児加算は令和8年6月改定で「1,400円」に引き上げ
訪問看護における乳幼児加算は、6歳未満の利用者に対して手厚いケアを提供する訪問看護ステーションに欠かせない加算です。令和8年度診療報酬改定(令和8年6月施行)で「厚生労働大臣が定める者以外」の加算額が1,300円から1,400円に引き上げられました。改定内容を正確に把握し、算定漏れや誤算定のない適切な請求につなげましょう。
- 乳幼児加算は6歳未満(6歳の誕生日前日まで)の利用者に対し、医療保険で1日1回算定できる加算
- 令和8年6月以降、「厚生労働大臣が定める者(超重症児等)以外」の加算額が1,300円→1,400円に引き上げ。超重症児等は1,800円(据え置き)
- 「厚生労働大臣が定める者」は、①超重症児・準超重症児、②別表第7の疾病等、③別表第8の状態にある者の3区分
- 6歳の誕生日当日は算定不可(前日まで)。同日複数回訪問でも1日1回のみ算定
- 利用者の誕生日管理とレセプトソフトの設定確認を徹底して、適正算定を維持しよう
小児の訪問看護は医療的ニーズが高く、適切な加算算定が事業所の安定経営につながります。制度改定情報を継続的にキャッチアップし、質の高いケアと適正な収益確保を両立させていきましょう。
小児の訪問看護が担う役割や対象となる子どもの状態について、もう少し詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。現場のイメージがつかみやすくなります。
小児の訪問看護の役割を5つ紹介を読む


















