新たに訪問看護ステーションを開設したいけど、申請には準備や書類がたくさん必要みたい。
何から始めればいいんだろう?
訪問看護ステーション新規開設をお考えの方にはこんな悩みがあるのではないでしょうか?
・訪問看護ステーション開設に必要な申請の流れ
・訪問看護ステーション開設の申請書類
目次
訪問看護ステーションの申請に必要なこと
介護保険法と健康保険法
まずはじめに、以下の点を確認しておきましょう。
訪問看護は2種類の保険で提供されるサービスです。
- 介護保険
- 医療保険
訪問看護サービスは、公的保険制度である介護保険または医療保険が適応されます。
対象者の年齢や要介護度、疾患により、利用できる内容や時間数等が定められています。
介護保険は介護保険法に基づくサービス
介護保険は介護保険制度の運営を行っている全国の市町村及び特別区により提供されます。
40歳以上の被保険者から納付された保険料を財源として、被保険者に介護が必要になった場合にサービスが受けられるようになっています。
要介護1~5では「訪問看護」、要支援1~2では「介護予防訪問看護」の対象となり、要介護(要支援)認定を受けていなければ、介護保険の対象にはなりません。
医療保険は健康保険法に基づくサービス
医療保険は健康保険法により提供されます。
公的医療保険の運営者は、政府、企業、市町村など複数ありますが、どの保険に加入していても平等にサービスが受けられます。
医療保険は健康保険法に要支援・要介護認定を受けていない方、赤ちゃんから高齢者までが医療保険での訪問看護サービスを利用できます。
ただし、65歳以上で介護保険が利用できる方でも、厚生労働省が指定した難病をお持ちの場合は医療保険が適応になります。
その他がん末期や人工呼吸器の方、毎日処置が必要な深い褥瘡の方も医療保険対象になります。
また、介護保険の支給限度額を超えたサービス利用の場合には、医療保険が適用されます。
訪問看護指定申請とは?
健康保険法に基づく訪問看護事業を行うためには、あらかじめ地方厚生(支)局長による指定訪問看護事業者の指定を受ける必要があります。
ただし、介護保険法に基づく都道府知事(指定都市、中核市、区市町村)による指定居宅サービス事業者・指定介護予防サービス事業者の指定を受けた場合、健康保険法に基づく指定訪問看護事業者の指定もなされたことになりますので、申請は不要となります。
指定を受けるためには、 まずは以下の指定基準を満たす必要があります。
基準を満たした状態になると、指定申請をすることができます。
- 運営基準
- 人員基準
- 設備基準
上記についてはこちらの記事を参考にしてください。
指定申請の流れ
この記事では、例として大阪市で介護保険法に基づく指定基準を満たし、指定を受けるまでのを流れを説明していきます。
申請をする内容が、各都道府県・市町村によって若干異なる場合がありますので、ご注意ください。
大阪市ではこのように介護保険事業の指定申請が進んでいきます。
①法人格の取得
指定を受けるためには法人格が必要なので、事業を一から立ち上げる場合には、まず法人格の取得が必要です。
申請する種類の事業目的が記載された登記簿謄本を準備しておきましょう。
②申請先の確認
申請先が都道府県、指定都市、中核市、区市町村などになるのかを確認します。
事業の種類によって管轄が異なっていることや、都道府県によっては市区町村に権限が委譲されている場合があるためです。
申請書類提出の担当を確認しておくことで、質問等があった場合にも該当部署への問い合わせがスムーズにできます。
この記事では大阪市が申請先となりますので大阪市の申請方法に則って進めていきます。
③指定申請予約申込の入力・通知
介護保険事業を始めようとする際には大阪市行政オンラインシステムより「指定申請予約申込」を入力します。
申し込みをすると、指定申請初回受付日の通知が送られてきます。
※令和2年3月までは大阪市の申請には「指定前研修」の受講が必要でしたが、新型コロナウイルスの関係上対面の回数を減らすために現在は廃止となっています。
④納入通知書の交付
納入通知書の交付がされたら手数料を支払いましょう。
大阪市の訪問看護事業の新規申請事務審査手数料は30000円です。
※未納の場合、指定がされませんので間違いなく納めてください。
⑤指定申請
指定申請予約申込締切後の翌月 1~8 日頃までが初回の申請受付となり、受付月末日までに申請書類を漏れなく提出する必要があります。
必要書類は大阪市介護保険事業に関するホームページでダウンロードすることが可能です。
また、以下の書類が添付書類として必要となります。
指定申請に必要な書類
- 指定居宅サービス事業者・指定介護予防サービス事業者申請書
- 指定に係る記載事項(付表、付表別紙)
- 添付書類
ア 申請者の登記事項証明書又は条例等
イ 当該申請に係る事業に係る従業者の勤務の体制及び勤務形態を記載した書類
ウ 事業所の管理者等の経歴を記載した書類
エ 事業所の平面図並びに設備の概要を記載した書類
オ 運営規程
カ 利用者からの苦情を処理するために講ずる措置の概要を記載した書類
キ 介護保険法 70 条第2項の各号等に該当しない旨の誓約書
ク その他必要な書類
・介護給付費算定に係る体制等に関する届出書
・損害賠償発生時に対応できることが確認できる書類
・社会保険及び労働保険の加入状況にかかる確認書類 など
申請書類作成にあたっての留意事項
- 使用する印鑑は、すべて法務局に登録された法人の代表者印を使用する。
- 提出の際には、申請者控えを1部用意する。
参考)大阪市ホームページ 事業者指定申請の手引き 訪問看護ステーション用
⑥指定申請の審査
人員基準、設備基準及び運営基準等を満たしているかの審査が行われます。
申請時点で、建物・備品等が使用可能な状態になっている必要があります。
原則として、指定日以後3か月以内に、申請内容と相違がないか確認するため現地確認が行われます。
⑦指定時研修
大阪市や東京都では、管理者または法人格代表者による、事前相談や新規指定前研修の受講が必要となります。
開業前月の25日ごろに行われ、研修では指定後の各種手続きについてや、加算に関する届け出について、廃止・休業時の手続きなど運営に関する情報が得られます。
内容に問題がなければ、指定居宅サービス事業所の指定がなされ、指定1カ月前末日までに指定通知書が発送されます。
⑧地方厚生局へ医療保険の加算申請をする
介護保険法に基づく指定申請により、健康保険法上の指定訪問看護事業者とみなされている場合であっても、算定要件において届出が必要とされる24時間対応体制加算、特別管理加算、個別管理加算申請、精神科訪問看護基本療養費等の項目を算定する場合は、介護保険法に関する届出とは別に、地方厚生(支)局への届出が必要です。
届出先は、訪問看護ステーションが所在する府県を管轄する事務所(大阪府にあっては指導監査課)となります。
⑨事業開始(指定時研修後翌月の1日)
指定されると、通知書に記載されている日時から、事業を開始する必要があります。
※準備段階の途中で先に指定を受けておき、用意が整ってからサービス提供を開始するということはできません。
訪問看護の指定申請をする上での注意点
都道府県により申請手順に違いがある
申請より前に相談や指定前研修が必要な都道府県もあり、申請手順に違いがあります。
詳しくは指定を受ける都道府県、区市町村にご確認ください。
事前の相談が必要な場合もありますのでしっかり確認しておきましょう。
指定までに時間がかかる
書類の準備・申請等には時間がかかります。
そのため、指定を受ける際には時間的な余裕をもって行動する必要があります。
基準を満たす事務所・物品の準備等もありますし、申請が下りたとしてもすぐに安定した収入が得られるとは限りませんので、計画的に準備・申請等が必要です。
変更があった場合には、届け出が必要
指定申請書を提出し、事業開始までに配置予定であった職員に変更が生じた場合は、必ず申請書受付機関にその旨を文書により報告してください。
また、必要職員の配置が困難となった場合は、申請の取り下げをする必要があります。
取り下げをしない場合でも、その事実が確認されている場合は、指定時の人員基準を満たしていないため指定できません。
指定申請審査中は利用者契約をしてはいけない
指定申請書受理後、指定月まで約1か月ありますが、その間も指定申請書等の審査期間です。
あくまでも指定予定であり、指定されるまでの間は利用予定者との契約はできませんので御注意ください
まとめ
以上のように、指定申請時には提出書類、添付書類が多く、注意しておかなければならない点も多いです。
よく管轄部署に確認しながら、開設時期に合わせて早めに行動しましょう。
訪問看護ステーションの開設時には様々な準備が必要です。
この記事では、訪問看護事業を開設する際に必要な申請にフォーカスを当ててご説明していきます。