精神科訪問看護でできることとは?クライシスプランの活用も解説!

精神科訪問看護でできることって、なんですか?

精神科訪問看護というと、実際の看護師の関わりが想像できないという方も多いのではないでしょうか。

今回は、精神科訪問看護で行うことができる関わりについて、詳しく解説していきます。

精神科訪問看護にチャレンジしたいと考えている看護師さんや、これから精神科訪問看護を始める訪問看護師さんはぜひ参考にしてください!

 

精神科訪問看護とは?

 

精神科訪問看護の目的とは?

精神科訪問看護は、精神疾患をもった利用者さんが、自立した在宅生活を継続するための支援です。

しかし、精神疾患を抱える利用者さんに対し看護師が不適切な対応を行うと、看護師に対し極端に依存的になることや反対に強い不信感につながることがあります。

つまり、近すぎても遠すぎても良好な関係性を保てず、結果的に精神症状の悪化をきたす場合もあります。

精神科訪問看護では、利用者さんとの適切な距離感を保ち、自立に向けた関わりをしていくことが重要です。

 

精神科訪問看護を行うことができる職種は?

 

精神科訪問看護を行うことができる職種は、保健師、看護師(准看護師)、作業療法士です。

精神科訪問看護を行うことができる看護師や作業療法士は、必要な知識や経験を持ち、適切な対応を行うことが求められます。

そのため、精神科訪問看護を行うためには一定の基準を満たした職員において地方厚生局(長)への届出が必要です。

 

精神科訪問看護は自立支援医療制度で利用できる

自立支援医療受給者の認定を受けている利用者さんについては、精神科訪問看護を公費で利用することができます。

自立支援医療制度は、心身の障害がある対象者の医療費自己負担を軽減するための公費負担医療制度です。

精神科訪問看護を実施する際には、自立支援医療受給者証の認定を受けているかを確認しましょう。

 

では、精神科訪問看護でできることとは、どのようなものがあるでしょうか。

 

 

精神科訪問看護でできることとは?

 

通常の訪問看護と同様、身体面の観察や看護に加え、精神疾患による不調や困りごとに対応していく必要があります。

精神科訪問看護では、実際に下記のような介入を行っています。(令和元年7月の厚生労働省による資料より抜粋)

 

 

 

では、具体的な介入内容についてご紹介します。

 

精神症状をメインとした病状観察

精神疾患を抱える利用者さんの場合、身体症状の増悪により精神症状の悪化をきたす場合があります。

また、その逆の場合も考えられます。

身体面、精神面の両側面がリンクするようにアセスメントを行い、心身の病状の観察をします。

精神面の評価方法は全国で統一されており、毎月GAF尺度を用いた評価を行います。

 

 

服薬管理

精神疾患を抱える利用者さんの中には、服薬の自己管理が困難な場合があります。

また、症状の一時的な安定が見られた場合、服薬の自己中断をしてしまうこともあります。

訪問看護師は在宅で精神疾患を抱え療養する利用者さんの服薬管理が適切に行えるよう、支援していく必要があります。

一番恐れることは、命に直結する可能性がある過剰内服です。

過剰内服に至る前に受診に繋げられるように、心身の状態を十分に観察することも精神科訪問看護師の大切な役割です。

 

クライシスプランを用いた思考の整理、症状悪化時の対応

在宅療養を行う利用者さんは、家族や友人、通所や就労の現場で多くの人と関わることになります。

他者との関わりで適切な対応ができなかったり、場合によっては症状の悪化を伴うこともあります。

訪問看護の介入時には、他者との関わりについて振り返りを行い、適切な対応について検討する機会を設けます。

また、精神症状の悪化時にセルフコントロールが行えるように利用者さんとともにクライシスプランを立案することもあります。

こうした関わりの繰り返しにより、在宅生活をよりスムーズに行えるように支援します。

 

クライシスプランとは?

クライシスプランとは「安定した状態の維持、また病状悪化の兆候がみられた際 の自己対処と支援者の対応について病状が安定している時に合意に基づき作成する計画」と表現されます。

精神科訪問看護で使用されるクライシスプランとは、利用者さん本人が、自身の病状悪化時の対処法を考えるものです。

例えば、精神症状の悪化をきたす際に現れやすい症状として「夜間の不眠」がある場合には、自己対処法として「頓服薬の使用やリラックスできる環境設定、他者への相談を行う」と不眠を回避できる、というように不調の早期発見•早期対応に役立ちます。

参考資料
厚生労働省 令和元年度生活困窮者就労準備支援事業費等補助金 社会福祉推進事業 「地域生活定着支援センターにおける質の高い実践を担う人材を全国的に育成するための、 研修カリキュラム及び効果的な業務サポートツール等の検討・開発に係る研究事業

 

 

他職種連携

精神科訪問看護では、主治医や他のサービス、担当相談員との連携が重要です。

在宅での状態を情報共有することで、状態悪化の早期発見につながります。

また、対応の統一を図る必要がある場合は十分に情報共有をする必要があります。

訪問介護士さんとの情報共有では、利用者さんへの個別性を重視した対応など具体的でより良い対応を検討していきましょう。

 

家族支援

精神疾患を抱える利用者さんのご家族の中には、利用者さんの症状にどう対応していいのか戸惑ってしまう方がいます。

精神科訪問看護では、通常の訪問看護と同様にご家族への支援も重要です。

ご家族の協力を得られるのであれば、利用者さんの病状の理解や症状に対する対応方法を共有し、無理のない範囲での支援をお願いします。

また、ご家族とのクライシスプランの共有も行うと良いでしょう。

精神科疾患を抱える利用者さんの中には、危機的状況となった際に自身で看護師への助けを求められない方もいます。

そんな時にご家族とクライシスプランを共有しておくことで、「このような症状が出現している様子が見られたらオンコールへの連絡をする」といった連絡の基準を保つことができます。

ご家族からの連絡で症状悪化を予防することも可能です。

 

リハビリテーション

精神疾患を抱える利用者さんは、疾患や治療薬の影響によりセルフケア能力の低下が生じることがあります。

精神科訪問看護では、在宅での自立した生活を目標にリハビリテーションを計画していく必要があります。

保健師、看護師、作業療法士が精神科訪問看護を提供できるため、看護職とリハビリ職が連携を図りセルフケア能力の維持向上に向けて介入します。

リハビリテーションは自立に向けた前向きな取り組みである反面、利用者さんが受け入れるまでの時間を要することが多く、生活の一部として習慣づけることは簡単ではありません。

根気強く利用者さんと向き合うことが重要です。

 

まとめ

 

今回は、精神科訪問看護でできることについて以下の内容を解説しました。

  • 精神症状をメインとした病状観察
  • 服薬管理
  • クライシスプランを用いた思考の整理、症状悪化時の対応
  • 他職種連携
  • 家族支援
  • リハビリテーション

 

精神科訪問看護で関わる利用者さんの多くは、「穏やかに自分の家で生活したい」と望んでいます。

自立への第一歩は、「穏やかに生活する」ために必要なことを、利用者さん自身が把握することです。

利用者さんが自分自身の目標に向かって自己コントロールができるように、精神科訪問看護師として支援を続けていきましょう。

身近な症例でお困りのことがあれば、ビジケアまでお問い合わせください。

ビジケアでは、会員限定で精神看護専門看護師による相談業務や動画研修を配信しています。

ぜひ日々の業務にお役立てください!

 

ビジケア公式LINEに登録すると、訪問看護に関する最新情報(診療報酬や介護報酬改定を中心とした内容)が月に2回無料で配信されます。

最新セミナー情報やお得なご案内も配信していますので、よろしければ登録をお願いします。

友だち追加

 

ABOUT US
石澤 明日香
埼玉県在住/看護師/急性期総合病院にて6年勤務後、訪問看護ステーションで5年半勤務。令和4年9月に訪問看護ステーションアスエイドを開設、代表取締役兼管理者を務める。そのほか重度訪問介護事業所にも所属し介護士として障害を抱える方への支援や訪問看護に特化したブログ「ウチくる看護」の運営を行う。/趣味は料理とホームパーティ