「看護小規模多機能型居宅介護(看多機)」という名前を聞いたことはあっても、通常の訪問看護や小規模多機能型居宅介護と何が違うのか、正確に説明できる方は意外と多くありません。医療ニーズの高い利用者さんを支えたいと考える看護師さんにとっても、開業・多角化を検討する経営者にとっても、その仕組みを正しく理解しておくことは欠かせません。
この記事では、看護小規模多機能型居宅介護とはどのようなサービスなのか、4つのサービス内容・対象者・定員や人員配置の基準を、厚生労働省の資料に基づいて整理して解説します。
- 看護小規模多機能型居宅介護(看多機)とは何か・創設の経緯
- 看多機で受けられる4つのサービス内容
- 利用できる対象者の条件
- 登録定員・通い/宿泊の利用定員・人員配置の基準
- 小規模多機能型居宅介護との違い
- 開業・指定を検討する際の大まかな流れ
目次
看護小規模多機能型居宅介護(看多機)とは?
看護小規模多機能型居宅介護は、「訪問看護」と「小規模多機能型居宅介護(通い・訪問・宿泊を組み合わせたサービス)」の機能を一体的に提供する、地域密着型サービスの一つです。介護保険法上は「複合型サービス」として平成24年度の介護保険法改正で創設され、平成27年度に現在の「看護小規模多機能型居宅介護」という名称へ変更されたとされています。
医療的なケアと生活支援の両方を、同一の事業所が一体的に提供できるのが最大の特徴です。医療依存度が高く、これまでは入院や施設入所を選ばざるを得なかった利用者さんでも、住み慣れた自宅での生活を続けやすくなります。

「施設サービス」というイメージを持たれがちですが、看多機はあくまで居宅(在宅)サービスです。ご自宅を拠点にしながら、必要なときに通いや宿泊を組み合わせて使える仕組みだと理解するとわかりやすいですよ。

看護小規模多機能型居宅介護の4つのサービス内容
看多機では、1つの事業所が次の4つのサービスを状況に応じて柔軟に組み合わせて提供します。
①訪問看護
看護師・准看護師・保健師・助産師に加え、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が医師の指示のもとで医療処置や療養上の世話を行います。サービス内容は、一般的な訪問看護ステーションが提供するものとほぼ同じです。
②訪問介護
介護職員が利用者さんの自宅を訪問し、食事・入浴・排せつなどの身体介護や、調理・洗濯・掃除といった生活援助を行います。事業所によっては、看護職員が訪問介護的な支援を兼ねて行う場面もあります。
③通いサービス
日中、事業所に通って入浴・食事・レクリエーション・リハビリなどを受けられるサービスです。通常のデイサービスと異なり、看護職員が常駐しているため、医療的なケアが必要な方でも通いを利用しやすいのが特徴です。
④宿泊サービス
短期的に事業所へ宿泊できるサービスです。家族のレスパイト(介護休息)や、体調変化時の一時的な医療管理の場としても活用されます。
4つのサービスを「登録制」で一体的に利用できるのが看多機の強みです。利用者さんの状態やご家族の状況に応じて、訪問中心の週もあれば、通いや宿泊を組み合わせる週もある、というように柔軟に使い分けられます。
看護小規模多機能型居宅介護を利用できる対象者
看多機は、要介護1〜5の認定を受けた方が対象です。小規模多機能型居宅介護と異なり、要支援1・2の方は対象になりません。
また、看多機は地域密着型サービスに分類されるため、原則として事業所と同じ市区町村に住民票がある方が対象です。近隣市区町村に住んでいるという理由だけで自由に選べるわけではない点に注意が必要です。
看多機を登録して利用する場合、それまで担当していたケアマネジャーから、事業所専従のケアマネジャーへ変更になります。長く付き合ってきた担当者が変わることに不安を感じる利用者さん・ご家族もいるため、事前の丁寧な説明が欠かせません。

登録定員・利用定員・人員配置の基準
看多機は事業所の規模が法令で細かく定められています。厚生労働省の資料をもとに、主な基準を整理します。
| 項目 | 基準 |
|---|---|
| 登録定員 | 29人以下 |
| 通いサービスの利用定員 | 登録定員の2分の1〜15人まで(登録定員が26〜29人で、居間・食堂の面積要件を満たす場合は18人まで拡大可) |
| 宿泊サービスの利用定員 | 通いサービス利用定員の3分の1〜9人まで |
| ケアマネジャー | 研修修了済みの専従の介護支援専門員を配置(非常勤・管理者との兼務可) |
| 看護職員 | 保健師・看護師・准看護師を常勤換算2.5人以上(訪問看護ステーションの人員基準を満たす一体運営であれば、これをもって代えることが可能) |
旧記事などでは「通いサービスの利用定員は最大18名」と紹介されることがありますが、正確には登録定員の2分の1〜15人までが原則で、要件を満たす一部の事業所のみ18人まで拡大できるという段階的な基準です。開業や増床を検討する際は、必ず最新の指定基準を所管の自治体に確認してください。

人員基準は他にも細かい規定がたくさんあります。より詳しく知りたい方は、専用の解説記事もあわせてチェックしてみてください。
小規模多機能型居宅介護との違い
看多機と混同されやすいのが、「訪問看護」を含まない「小規模多機能型居宅介護」です。両者の違いを整理します。
| 項目 | 看護小規模多機能型居宅介護 | 小規模多機能型居宅介護 |
|---|---|---|
| 対象者 | 要介護1〜5のみ | 要支援1・2、要介護1〜5 |
| 訪問看護 | サービスに含まれる | 含まれない(外部の訪問看護と別途契約) |
| 主な利用者像 | 医療依存度が高い方(看取り期・難病等) | 比較的医療ニーズが低い方 |
| サービス類型 | 複合型サービス | 小規模多機能型居宅介護 |
すでに小規模多機能型居宅介護を利用している方が訪問看護を別契約で併用するケースもありますが、医療ニーズが高まってきた場合は、看多機への切り替えを検討することもあります。
看護小規模多機能型居宅介護のメリットと運営上の課題
看多機は、利用者さん・ご家族にとって「医療と生活支援をワンストップで受けられる」という大きなメリットがあります。急な体調変化があっても、同じ事業所の看護職員がすぐに状況を把握できるため、入院を回避できるケースも少なくありません。
一方で、事業所側には運営上の課題もあります。24時間対応が前提となるため職員の負担が大きいこと、通い・宿泊・訪問すべてに対応できる多能な人材の確保が必要なこと、住所地の制限がある地域密着型サービスのため利用者確保のハードルがあることなどです。
看多機の開業・指定を検討する際の大まかな流れ
訪問看護ステーションの多角化として看多機の開業を検討する経営者の方に向けて、指定を受けるまでの一般的な流れを整理します。手続きの詳細や必要書類は自治体によって異なるため、あくまで全体像の把握として参考にしてください。
- 事業計画・収支計画の策定登録定員29人以下という規模の制約の中で、看護・介護職員の配置人数や、通い・宿泊にかかる設備投資、想定利用者数をもとに収支計画を立てます。
- 物件・立地の選定地域密着型サービスであるため、想定する市区町村内で、住宅地等に立地し、居間・食堂・宿泊室の面積要件を満たせる物件を探します。
- 市区町村(指定権者)への事前相談看多機は市区町村が指定権者となる地域密着型サービスです。事業計画の段階から所管窓口に相談し、地域の整備計画(公募枠の有無等)を確認します。
- 人員体制の確保常勤の保健師または看護師1名以上、看護職員の常勤換算2.5人以上、専従の介護支援専門員など、必要な人員体制を整えます。
- 指定申請書類の提出・実地確認人員・設備・運営に関する基準を満たしていることを示す書類を提出し、自治体の実地確認等を経て指定を受けます。
看多機は24時間対応が前提となる事業のため、通常の訪問看護ステーション以上に夜間・オンコール体制の構築が重要になります。開業前に、職員のシフト体制や負担分散の仕組みまで具体的に設計しておくことをおすすめします。
よくある質問
看護小規模多機能型居宅介護(看多機)とは何ですか?
訪問看護と小規模多機能型居宅介護(通い・訪問・宿泊)の機能を一体的に提供する、地域密着型の介護保険サービスです。介護保険法上は「複合型サービス」として平成24年度の制度改正で創設され、平成27年度に現在の名称に変更されたとされています。
看護小規模多機能型居宅介護は誰でも利用できますか?
要介護1〜5の認定を受けた方が対象で、要支援1・2の方は利用できません。また地域密着型サービスのため、原則として事業所と同じ市区町村に住民票がある方が対象です。
小規模多機能型居宅介護と何が違いますか?
最大の違いは訪問看護が含まれるかどうかです。看多機は訪問看護がサービスに含まれるため、医療依存度が高い方でも利用しやすい設計になっています。対象者も看多機は要介護1〜5のみに限られます。
登録定員や利用定員に上限はありますか?
登録定員は29人以下と定められています。通いサービスの利用定員は登録定員の2分の1〜15人まで(一定の要件を満たす場合は18人まで)、宿泊サービスの利用定員は通いサービス利用定員の3分の1〜9人までが基準です。
看多機を利用するとケアマネジャーは変更になりますか?
はい。看多機を登録して利用する場合、それまで担当していたケアマネジャーから、事業所に専従する介護支援専門員へ担当が変更になります。
- 厚生労働省「看護小規模多機能型居宅介護の基準等」(登録定員・通い/宿泊の利用定員・人員配置の基準を確認)
- 厚生労働省「看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)について」
制度の詳細は改正により変更される場合があります。実際の指定・運営にあたっては、事業所所在地の自治体・指定権者に最新情報をご確認ください。
まとめ|看多機は医療と生活支援を一体的に受けられる地域密着型サービス
看護小規模多機能型居宅介護(看多機)は、訪問看護と小規模多機能型居宅介護の機能をあわせ持つ、医療依存度が高い方でも自宅での生活を続けやすくする地域密着型サービスです。
- 看多機は「複合型サービス」として平成24年度の制度改正で創設され、平成27年度に現在の名称に変更されたとされている
- 訪問看護・訪問介護・通い・宿泊の4サービスを一体的に組み合わせて利用できる
- 対象は要介護1〜5のみ、地域密着型サービスのため原則同一市区町村の住民が対象
- 登録定員は29人以下、通い定員は登録定員の2分の1〜15人(要件を満たせば18人)まで、宿泊定員は通い定員の3分の1〜9人まで
- 利用開始時はケアマネジャーが事業所専従の担当者に変更になる
訪問看護ステーションの多角化・開業を検討する経営者の方は、看多機ならではの人員基準や運営体制も踏まえたうえで、事業計画を検討してみてください。
























