現在指定難病とされる疾患は、何種類あるかご存知でしょうか。
難病情報センターによると、令和3年時点で333種類の指定難病が存在します。
専門の病院やレスパイト入院を受け入れる病棟では出会うことのある難病患者さんですが、訪問看護ステーションで働くようになって始めて出会ったという方も少なくありません。
今回は、訪問看護で難病を抱える利用者さんへの支援を行う際の大切なポイントを4つお伝えします。
治療期を過ぎ、在宅での療養期間となる利用者さんが、疾患を抱えながらも希望する生活ができるように訪問看護師としてどのような支援をしていくことができるのでしょうか。
ぜひ一緒に考えましょう!
- 訪問看護における難病の概要
- 難病の利用者さんへの訪問看護でのポイント
- 1.進行する病状に合わせたケアを提供する
- 2.意思決定の支援をする
- 3.介護状況を支援する
- 4,他職種連携を図る
目次
訪問看護における難病とは?
前述の通り、現在指定難病は333疾病あります。
まず、難病とはどのような定義があるかご存知ですか?
この定義を満たした333疾病の中で、厚生労働省が定める疾病等(別表第7)に該当する場合、訪問看護は介護保険を有していても医療保険を優先して利用することになります。
- 末期の悪性腫瘍
- 多発性硬化症
- 重症筋無力症
- スモン
- 筋萎縮性側索硬化症
- 脊髄小脳変性症
- ハンチントン病
- 進行性筋ジストロフィー症
- パーキンソン病関連疾患(※1)
- 多系統萎縮症(※2)
- プリオン病
- 亜急性硬化性全脳炎
- ライソゾーム病
- 副腎白質ジストロフィー
- 脊髄性筋萎縮症
- 球脊髄性筋萎縮症
- 慢性炎症性脱髄性多発神経炎
- 後天性免疫不全症候群
- 頸髄損傷
- 人工呼吸器を使用している状態(夜間無呼吸のマスク換気は除く)
※1:進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、パーキンソン病
(ホーエンヤールの重症度分類がステージ3以上であって、生活機能障害度がⅡ度またはⅢ度のものに限る。)
※2:線条体黒質変性症、オリーブ橋小脳委縮症、シャイドレーガー症候群
また、この別表7に該当しない指定難病の利用者さんで、医療費助成制度の申請をしている場合には、介護保険での訪問看護利用でも公費を使うことができます。
難病の利用者さんへの訪問看護のポイントとは?
難病を抱える利用者さんへの訪問看護を行う場合、次のような4点に着目して看護を展開することをお勧めします。
1.進行する病状に合わせたケアを提供する
難病は定義の通り、現状では治療法がなく病状が進行していくことがほとんどです。
また、長期的な関わりとなることが多く、生活していく上で訪問看護での支援が重要となります。
訪問看護では、日々の心身の状態を観察し、日々変わりゆく病状を的確に捉えることが重要です。
人工呼吸器や胃ろうの増設、膀胱留置カテーテルの使用など医療依存度の高いことが多く、病状や生活環境によりケアの内容が異なります。
主治医と密に連携を図り、その時の病状に合った医療を提供していく必要があります。
例えば人工呼吸器を使用している場合、呼吸状態や痰の性状により人工呼吸器の設定や水分量、服薬などの調整が必要となります。
日々の状況を正確に主治医に報告することで、利用者さんの過ごしやすさは格段に上がります。
2.意思決定の支援をする
難病は現状では治療法のない疾患です。
今は治療がないと言われた利用者さんは、病気を抱えながらも在宅で療養生活をしていきます。
きっと心身ともに以前の自分とは異なり、どうやって生活していけばいいのか悩む利用者さんも多いでしょう。
長い療養期間の中で、利用者さんは何度も人生の選択を迫られます。
- 体が動かなくなったら?
- 食事が口から摂れなくなったら?
- 排泄ができなくなったら?
- 呼吸ができなくなったら?
- 言葉を伝えられなくなったら?
難病を抱える利用者さんは、今までの生活から一変し、精神的にもかなり堪えます。
訪問看護師は、疾患から考えられる症状やその対策、緊急時の対応などを予測しながら、利用者さんの意思決定を支えます。
時々、家族や医療従事者がどんどんと話を進め、当の難病を抱える本人が置いてきぼりになっているケースがあります。
利用者さん本人が、どのように生活することを望むのか、現状ではどんな情報を必要としているのかをしっかりと把握し、利用者さんを主体とした意思決定支援を行うようにしましょう。
3.介護状況を支援する
難病の支援は、本人への支援のみでなく、介護者への支援も重要となります。
利用者さんの身体機能の低下に伴い介護量は増大しますが、長期的な療養となると介護者も年齢を重ねます。
昨年できた介護は、今年は難しいかもしれません。
利用者さんとともに家族の役割も変わり、協力者や主介護者の変更もあり得ます。
介護者の介護力に合わせた説明や助言が必要となります。
訪問看護師は、利用者さんの身体状況と介護者のステージに合わせた介護方法を検討し、柔軟で幅広い介護指導を行う必要があります。
4,他職種連携を図る
難病を抱える利用者さんは、訪問看護師の力だけでは100%支援しきれません。
他職種との連携が必須と言えます。
難病患者さんを在宅で支援する主なメンバーは、医師(地域医療機関の専門医、往診医)、医療相談員、保健所の担当者、生活相談員、ケアマネジャー、ヘルパー(居宅訪問介護、重度訪問介護)、福祉用具、リハビリ(通所リハビリ、訪問リハビリ)、そして訪問看護師です。
訪問看護師だけでなく、他職種から見た視点を知ることでアセスメントの重要な情報になり得ます。
訪問看護師が難病の利用者さんへ訪問する場合には、1回30〜90分、1日3回までの訪問を予定することがほとんどです。
利用者さんの24時間を支えるそのほかの職種と連携を図ることで、利用者さんはより安心して在宅生活を継続することができます。
本人も交えて他職種の支援者と共通の認識を持つことも重要です。
定期的に本人の思いや希望を共有し、それぞれがどのような支援ができるのか見直すことをお勧めします。
本人の希望する療養を支援するためには、医療職だけでなく介護職の方の支援が必要なことも多くあります。
介護職の方ができる業務とできない行為については、訪問看護に勤める看護師さんも知っておく必要があります。
また、利用者さんが安全に過ごすために、介護職の方にも吸引や経管栄養などの手技を獲得していただく場合があります。
必要時には、訪問看護が主体となり介護職の方の手技確認や緊急時の対応方法の周知を行います。
日頃から他職種間での円滑なコミュニケーションを図り、利用者さんだけでなく利用者さんを支援する他職種の状況も把握していきましょう。
まとめ
今回は、難病に利用者さんへの訪問看護について4つのポイントをお伝えしました。
- 進行する病状を十分に観察し、状態に合わせた看護を提供する
- 本人の望む意思決定を支援する
- 介護者の状況に応じて柔軟な介護指導を行う
- 他職種間でも本人の希望や思いを共有し、それぞれができる支援を検討する
難病の訪問看護は長期的な関わりになることが多く、訪問看護師も悩みを抱えることが多くあります。
「こんな時にはどうしたらいいの?」
「ステーション内でのカンファレンスでは行き詰まってしまった。」
そのような場合、他の地域の訪問看護師や認定看護師の考えを聞いてみることも解決の糸口となることがあります。
ビジケアでは、全国の訪問看護師、管理者、経営者の方々が相談したり意見交換を行っています。
認定看護師や専門看護師、経験を詰んだ訪問看護管理者から具体的なアドバイスをもらうことができますよ。
1人で悩まず、ぜひ一度ご相談くださいね。