「利用者の自宅でひどい暴言を受けたが、どう対応すればよかったのかわからない」「家族から過剰な要求を繰り返され、スタッフが疲弊している」——訪問看護の現場でこうした声は珍しくありません。利用者や家族との信頼関係を大切にするあまり、無理な要求や暴力的な言動を「仕方のないこと」として飲み込んできた管理者・看護師も多いのではないでしょうか。
2026年10月1日から、労働施策総合推進法の改正により、カスタマーハラスメント(カスハラ)対策がすべての事業主に義務付けられます。訪問看護ステーションも例外ではありません。この記事では、法改正の内容をわかりやすく解説するとともに、訪問看護特有のカスハラリスクと、今すぐ着手できる対策・マニュアル整備の方法を徹底的にまとめました。義務化まで残り数か月、今が準備のラストチャンスです。
- 2026年10月義務化・法改正の概要と訪問看護への影響
- カスタマーハラスメントの定義と「普通のクレーム」との違い
- 訪問看護で多いカスハラの具体的な事例・類型
- 事業主が講じなければならない5つの対策措置の内容
- マニュアル作成・スタッフ研修・サービス提供停止判断の実務ポイント
目次
カスタマーハラスメントとは?訪問看護における定義
カスタマーハラスメント(カスハラ)とは、顧客・利用者・家族等からの言動のうち、社会通念上許容される範囲を超えたものによって、労働者の就業環境が害されることを指します。令和8年(2026年)2月26日に厚生労働省が公表した指針(「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」令和8年厚生労働省告示第51号)では、次の3つの要素をすべて満たすものをカスタマーハラスメントとしています。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| ①顧客等の言動 | 利用者・利用者家族・ケアマネジャー等からの言動が対象 |
| ②社会通念上許容される範囲を超えている | 要求内容や手段・態様が著しく不相当な場合 |
| ③就業環境が害される | スタッフが業務を適切に遂行できない状態になっている |
訪問看護の文脈で「顧客等」にあたるのは、利用者本人・利用者の家族・代理人・ケアマネジャーなど、サービスに関わる周辺の人物すべてが含まれます。「正当なクレーム」との違いは、要求内容や手段・態様が著しく不相当かどうかです。例えば「ケアの質が低い」という申し出は正当な苦情ですが、「スタッフを変えないと殺す」「毎日30回電話をかけ続ける」といった言動はカスハラに該当します。

「利用者さんからの要求だから断れない」と思い込みがちですが、それは違いますよね。正当な苦情・要望には真摯に応える一方で、社会通念上許容される範囲を超えた言動は、毅然とした態度で対応することが大切です。スタッフを守ることも管理者の重要な役割なんです。
なぜ訪問看護はカスハラリスクが特に高いのか
訪問看護は、その業務の性格上、カスタマーハラスメントが起きやすい特殊な環境にあります。病院や施設と異なり、利用者の自宅という「密室」で1対1のケアを行うため、スタッフが助けを求めにくく、ハラスメントが表面化しにくい構造を持っています。
訪問看護特有のリスク要因
- 密室性の高さ:利用者宅に1人で訪問するため、第三者の目が届かない
- 長期的な関係性:数か月・数年にわたって同じ利用者・家族に対応するため「我慢するしかない」という心理が生まれやすい
- ケア提供者としての立場:「利用者さんのために」という使命感が、理不尽な要求を受け入れる方向に作用してしまう
- 報告・相談のしにくさ:「自分の対応が悪かったのでは」という自責から管理者に相談できないスタッフが多い
- 認知症・精神疾患のある利用者:疾患に起因する暴力・暴言の場合、対応方針が曖昧になりやすい
厚生労働省の研究事業でも、訪問看護・訪問介護など在宅系サービスのスタッフは、施設サービスのスタッフに比べてハラスメント被害を受けた割合が高い傾向にあることが報告されています。組織的な防衛ラインが薄い在宅現場だからこそ、ステーション単位での体制整備が不可欠です。
【2026年10月義務化】改正法のポイントと訪問看護への影響
令和7年(2025年)6月4日、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律」(令和7年法律第63号)が参議院本会議で可決・成立し、同6月11日に公布されました。この改正法により、カスタマーハラスメント防止のための雇用管理上の措置が、すべての事業主の法的義務となります。施行日は令和8年(2026年)10月1日です。
法改正の主なポイント
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 施行日 | 令和8年(2026年)10月1日 |
| 義務の主体 | すべての事業主(労働者が1人以上いれば対象) |
| 義務の内容 | カスタマーハラスメント防止のための雇用管理上の措置 |
| 指針 | 令和8年厚生労働省告示第51号(2026年2月26日公布) |
| 違反した場合 | 報告徴求命令・助言・指導・勧告・公表の対象となる |
「努力義務」ではありません。今回の法改正は「義務」です。措置を講じていない事業主には、報告徴求命令・勧告・最終的には公表(いわゆる社名公表)という行政上の制裁が科される可能性があります。義務化まで数か月を切った今、対応を先送りにすることは大きなリスクです。
訪問看護ステーションへの具体的な影響
訪問看護ステーションは「医療機関」「介護保険事業者」「医療保険事業者」としての義務だけでなく、今回の改正により「雇用主」としてのカスハラ対策義務も追加されます。スタッフが1人でも雇用されていれば、管理者・経営者問わず対象です。
また、介護保険分野では令和6年度介護報酬改定においてもハラスメント対策の取り組みが評価の対象とされており、今後の指定基準・報酬改定でもハラスメント対策の体制整備が要件化される方向性にあります。早期対応はリスク管理だけでなく、スタッフの定着・採用力強化にも直結します。

「うちはそんなひどい利用者はいないから大丈夫」という管理者の方もいますが、カスハラは起きてからでは遅いんです。「こういう言動があったらこう対応する」という体制を事前に整えておくことが、スタッフの安心感につながりますよ。
訪問看護で多いカスハラの具体的事例と類型
カスタマーハラスメントには複数の類型があります。訪問看護の現場でとくに報告が多い事例を整理します。
①身体的暴力
利用者から叩かれる、蹴られる、物を投げつけられるなどの行為です。認知症による暴力はその最たる例ですが、疾患に起因するかどうかに関わらず、スタッフの身体の安全を守る観点から適切な対応が必要です。「認知症だから仕方ない」と放置することはケアの質低下とスタッフ離職につながります。
②精神的暴力(言葉の暴力・威圧)
「このへたくそ!」「役立たず!」といった罵倒、怒鳴り声での威圧、「クビにしてやる」といった脅迫的な言動が含まれます。精神的暴力は身体的暴力と比べて可視化されにくく、スタッフが「自分の対応が悪かったせい」と思い込みやすい点が問題です。
③セクシャルハラスメント
性的な発言・冗談、身体への不適切な接触、個人的な連絡先を強要するなどの行為です。女性スタッフの割合が高い訪問看護現場で深刻なケースが報告されています。「高齢者だから」「病気だから」という理由で許容してはなりません。
④過剰・不当な要求
契約内容に含まれないサービスを繰り返し求める、「毎日来い」「他のスタッフはやってくれた」と契約外のケアを強要するなどのケースです。これは悪意がない場合もありますが、サービスの範囲を超えた要求が継続・繰り返される場合はカスハラに該当します。
⑤継続的な嫌がらせ・業務妨害
長時間の電話、同じ苦情の繰り返し、SNSへの虚偽投稿・誹謗中傷、ステーションに押しかけるなどの行為です。精神的消耗が大きく、特定のスタッフが狙われるケースでは早急な組織的対応が必要です。
事業主が講じなければならない5つの措置(指針の内容)
令和8年厚生労働省告示第51号の指針では、事業主が職場においてカスタマーハラスメントを防止するために講ずべき雇用管理上の措置が定められています。具体的には以下の5点が柱となります。
- 事業主の方針の明確化・周知・啓発カスタマーハラスメントを許容しないという方針を就業規則・内部規程・マニュアル等に明記し、スタッフ全員に周知する。また、カスタマーハラスメントの定義・対象行為・対応方針をスタッフが理解できるよう啓発する。
- 相談に応じ、適切に対応するための体制の整備スタッフがカスタマーハラスメントを受けた際に相談できる窓口(担当者・電話・メール等)を設置する。相談窓口の担当者は相談内容に応じて適切に対応できる体制を整える。
- 事後の適切な対応カスタマーハラスメントが発生した場合は、被害を受けたスタッフへのメンタルケア・業務上の配慮(担当替えや同行訪問への切り替えなど)を迅速に行う。必要に応じて法的措置(警告・サービス解除・警察への相談等)を検討する。
- 当該労働者の就業環境が害されることのないよう配慮する被害スタッフを孤立させず、組織として問題を共有・解決する体制を維持する。一人のスタッフに負担が集中しないよう担当ローテーションを適切に行う。
- プライバシー保護・不利益取り扱いの禁止相談したスタッフのプライバシーを保護し、相談したことを理由に不利益な取り扱いを行ってはならない。
これらは「やっておくと望ましい取り組み」ではなく、法律上の義務です。5つの措置すべてに対応できているかを、今すぐ自ステーションで確認しましょう。特に「相談窓口の設置」「方針の文書化・周知」は整備されていないステーションが多い項目です。

5つの措置はセットで機能します。「方針は決めたけど周知していない」「相談窓口はあるけど担当者が何も対応できない」では義務を果たしたとは言えません。形だけ整えるのではなく、実際にスタッフが使える仕組みにすることが大切です。
訪問看護ステーションのカスハラ対策マニュアルの作り方
义务化への対応として、まず着手すべきはカスタマーハラスメント対策マニュアルの整備です。厚生労働省は「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を公表しており、これを参考にしながら訪問看護ステーション向けにカスタマイズします。
マニュアルに盛り込む7つの要素
| 項目 | 記載内容の例 |
|---|---|
| ① 基本方針 | 「当ステーションはスタッフをカスタマーハラスメントから守ります」という明文化されたコミットメント |
| ② カスハラの定義・類型 | 身体的暴力・精神的暴力・セクハラ・過剰要求・業務妨害の具体例を列挙 |
| ③ 発生時の報告フロー | スタッフ→管理者への報告手順・記録書式・相談窓口の連絡先 |
| ④ 対応手順 | 初回対応・継続対応・サービス継続判断・解除手順 |
| ⑤ スタッフへのケア | 被害スタッフへの担当替え・同行訪問・メンタルケア・産業医相談の手順 |
| ⑥ 関係機関との連携 | ケアマネジャー・医師・行政(市区町村)・警察・弁護士への連絡基準 |
| ⑦ 研修計画 | 新人研修・年1回以上の定期研修の実施計画 |
就業規則・契約書への反映
マニュアルの整備と並行して、就業規則にカスタマーハラスメントへの対応方針を明記することが必要です。また、利用者・家族との訪問看護契約書(重要事項説明書)に「ハラスメント行為があった場合にはサービス提供を中断・終了することがある旨」を盛り込むことで、契約段階での予防・啓発効果が生まれます。
既存の契約書に上記の記載がない場合は、契約更新のタイミングや定期的な重要事項説明書の見直しの際に追加しましょう。既存の利用者への変更については、契約書の変更説明が必要な場合があります。詳しくは自治体や訪問看護事業協会に確認することをお勧めします。
カスハラを受けたときの現場対応マニュアル
マニュアルが整備されていても、現場で咄嗟に使えなければ意味がありません。スタッフが一人で訪問中にカスハラに遭遇した際の対応手順を、明確に伝えておく必要があります。
その場での初期対応(スタッフ向け)
- 安全を確保する身体的な危険を感じた場合は、すぐにその場を離れる。「危険を感じたら逃げていい」ということを事前にスタッフに明確に伝えておくことが重要です。
- 毅然とした態度で境界線を伝える「その言葉は受け入れられません」「そのような行為はおやめください」と、感情的にならず冷静に伝える。言い争いにはならず、繰り返すようであれば一旦退出することも選択肢に入れる。
- ステーションへ報告する訪問終了後、または訪問を中断した場合は速やかに管理者・リーダーに連絡する。防犯ブザーや緊急呼び出し機能付き携帯電話を活用することも有効です(厚生労働省の地域医療介護総合確保基金による補助が活用できる場合があります)。
- 記録を残すいつ・どこで・誰から・どのような言動があったかを具体的に記録する。後のサービス解除・警察相談・法的対応の根拠となります。
管理者の対応手順
- 被害スタッフのケアまず被害スタッフの身体的・精神的状態を確認し、「あなたは何も悪くない」と明確に伝える。必要に応じて担当替えや一時休養を検討する。
- 事実確認と記録の整理被害スタッフからヒアリングし、日時・行為の内容・目撃者の有無などを記録にまとめる。
- 利用者・家族への対応管理者または複数人で対応し、「このような行為は受け入れられない」と書面または口頭で明確に伝える。電話でのやり取りは録音することも有効です。
- 関係機関との連携ケアマネジャー・主治医・行政(市区町村の介護保険担当)と状況を共有し、連携した対応を検討する。悪質な場合は警察への相談・弁護士への依頼も視野に入れる。
- 再発防止策の策定事案を整理し、次の同様のケースに備えた対応方針のアップデートを行う。

「報告が遅れた」「記録をつけていなかった」という後悔をよく聞きます。カスハラは発生してからの対応スピードが命取りになることもあるので、「何かあったらすぐ管理者に連絡」という文化を普段から作っておくことが大切です。
サービス提供を継続・中断・終了する判断基準
カスタマーハラスメントに対して最終的に取り得る手段が、サービス提供の中断・終了(契約解除)です。「利用者に迷惑をかけたくない」という心理から、この判断が遅れるケースがあります。しかし、スタッフへの継続的なハラスメントを放置することは、管理者・事業主としての法的義務(安全配慮義務・今回の義務化)への違反にもなり得ます。
サービス提供継続・中断・終了の判断フロー
| 段階 | 状況の目安 | 対応 |
|---|---|---|
| 継続(注意・改善要求) | 初回または軽度のハラスメント、改善の意思が見られる | 口頭・文書での注意、担当者変更、同行訪問への切り替え |
| 一時中断 | 繰り返し・継続するハラスメント、スタッフへの精神的影響が出始めている | 担当者全員を変更、管理者同行訪問で警告。市区町村・ケアマネへ連絡 |
| 契約終了 | 身体的暴力・深刻な精神的暴力・改善の意思がない・スタッフが複数名にわたる被害 | 文書での契約解除通知。ケアマネ・行政・主治医へ引き継ぎ。必要に応じ警察へ相談 |
契約を解除する際は、一定の期間(通常は30日前)の予告期間を設けることが求められます(訪問看護療養費の取扱い上の解除手続きについては、自治体・保険者の規定を確認してください)。また、「ハラスメントがあったため解除する」という事実を書面に残しておくことが、後のトラブル防止に重要です。
「スタッフが辞めたい」と言い始めてからでは遅い。スタッフから「あの家、ちょっと気になることがあって…」という声が上がった段階で管理者が動き始めることが早期解決の鍵です。ハラスメントの芽は早期に摘み取る体制を整えましょう。
スタッフ研修・啓発の進め方
マニュアルを作成するだけでなく、スタッフが実際に使いこなせるよう定期的な研修を実施することが義務化の要件として求められます。訪問看護ステーションでの研修計画の例を紹介します。
研修プログラムの例
| 実施時期 | 対象 | 内容 | 所要時間 |
|---|---|---|---|
| 入職時 | 新規採用スタッフ全員 | カスハラの定義・類型・報告手順・対応マニュアルの説明 | 30〜60分 |
| 年1回(定期) | 全スタッフ | 事例検討・ロールプレイ・マニュアルの改訂確認 | 60〜90分 |
| 事案発生後 | 関係スタッフ・管理者 | 振り返り・再発防止策の検討 | 適宜 |
研修には、厚生労働省が公表している「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」(無料・公開)や、日本看護協会・大阪府看護協会等が公表しているカスハラ対策資料を活用できます。事例ベースで「こういうときはどう動くか」をロールプレイ形式で練習することが効果的です。
管理者としてのスタッフマネジメント・職場環境整備の全体像を理解しておきましょう。カスハラ対策は「働き方改革」「スタッフ定着」の取り組みとも深くつながります。
訪問看護の働き方改革を実現するための3つのポイント
よくある質問(FAQ)
認知症や精神疾患が原因の暴力もカスハラとして対応してよいですか?
はい、対応すべきです。疾患に起因する暴力であっても、スタッフが受ける身体的・精神的な影響は同じです。「疾患だから仕方ない」と放置せず、主治医・ケアマネジャーと連携してケアプランの見直しや対応方針を検討しましょう。例えば、暴力リスクが高い訪問には複数人で対応する、訪問時間帯を変更するなどの措置を講じることが適切な対応です。
スタッフが「自分のせいかもしれない」と自責している場合、どう対応すべきですか?
まず「あなたは何も悪くない」と明確に伝えることが最優先です。カスタマーハラスメントは被害者であるスタッフの側に非があるものではありません。管理者が「そういう言動を許容しない」という姿勢を明確に示すことで、スタッフは安心して相談できるようになります。自責感が強い場合は、産業医や外部のメンタルヘルス相談を活用することも検討してください。
義務化対応のために、いつまでに何を準備しておけばよいですか?
2026年10月1日の施行に向け、遅くとも2026年9月末までに①カスハラ対策方針の文書化、②就業規則・マニュアルへの記載、③相談窓口の設置、④スタッフへの周知・研修実施、⑤契約書・重要事項説明書への追記(次回更新時)を完了させておくことが目標です。できることから順番に着手し、7〜8月を目途に体制を整えましょう。
カスハラを理由にサービスを断ることはできますか?正当な理由になりますか?
はい、スタッフへの継続的なハラスメントは正当なサービス解除事由となります。ただし、利用者の生命・安全に関わる場合は急な解除が難しいケースもあるため、市区町村の介護保険担当・ケアマネジャーと連携して代替サービスの確保を進めながら手続きを進めることが重要です。書面での警告・記録の保存を怠らないようにしましょう。
小規模な訪問看護ステーションでも義務化の対象になりますか?
はい、対象になります。労働者が1人でも雇用されていれば、規模にかかわらずすべての事業主に対してカスハラ対策措置の義務が生じます。「小さいステーションだから」という免除はありません。規模が小さいステーションほど個々のスタッフへの影響が大きくなりやすいため、早めの体制整備が重要です。
まとめ|2026年10月の義務化を、スタッフを守る仕組みづくりのきっかけに
カスタマーハラスメント対策の義務化は、訪問看護ステーションにとって「やらなければならないこと」である以上に、スタッフが安心して働き続けられる職場環境を整える絶好の機会です。スタッフが守られていると実感できる職場は、定着率・採用力・ケアの質のすべてにプラスの影響をもたらします。
- 2026年10月1日から、カスタマーハラスメント対策がすべての事業主の法的義務となる(労働施策総合推進法改正・令和8年厚生労働省告示第51号)
- 訪問看護は「密室性・長期関係・使命感」からカスハラリスクが特に高い業種。身体的暴力・精神的暴力・セクハラ・過剰要求・業務妨害の5類型に整理して把握することが重要
- 事業主が講じるべき5つの措置は、①方針の明確化・周知、②相談窓口の整備、③被害者へのケア、④就業環境の保護、⑤プライバシー保護・不利益取り扱い禁止
- マニュアルの整備・就業規則への明記・契約書への追記・スタッフ研修の実施を、2026年9月末までに完了させることを目標に進める
- サービス継続の可否は「継続→中断→終了」の判断フローを事前に整備し、ケアマネ・行政との連携体制を確認しておくこと
「スタッフを守ることがよいケアにつながる」——この認識を組織の文化として根付かせることが、義務化対応の本質です。今日から一つずつ、体制整備を進めていきましょう。
スタッフの定着と採用は、カスハラ対策と表裏一体の課題です。働きやすい職場づくりの全体像をこちらの記事で確認しましょう。
訪問看護の管理者の仕事内容を徹底解説!大切なのはチーム力!

















