
2025年12月2日より、現行の健康保険証の新規発行が終了し、2025年12月2日には健康保険証そのものが使えなくなります。
訪問看護でも、多くの利用者さんが医療保険を利用しており、現場に出る訪問看護師もマイナ保険証(マイナンバーカードの保険証機能)の基礎知識を理解しておくことが不可欠です。
この記事では、訪問看護の現場で役立つ「マイナ保険証の正しい基礎知識」と「実務で注意すべきポイント」をわかりやすく解説します。
目次
マイナ保険証とは?
マイナ保険証とは、マイナンバーカードに健康保険証の機能を紐づけたものです。
マイナンバーカードの基礎知識
- 公的な顔写真付きプラスチックカード
- 個人が申請して取得するもの
- ICチップを搭載し、安全に個人情報を扱える設計
- マイナンバーカード保有率は 80.0%(約9947万人)
- マイナ保険証の登録、健康保険証利用登録者:約8729万人(有効登録率87.8%)2025年10月31日時点 デジタル庁
注意すべき点は、マイナンバーカードを持っているだけでは保険証として使えないことです。
「健康保険証利用登録」を済ませる必要があります。
カード裏面の12桁のマイナンバー自体は、保険証利用では使用しません。
ICチップに入っている情報と有効期限
マイナンバーカードには、以下の 2種類の電子証明書が搭載されています。
- 署名用電子証明書
- 利用者証明用電子証明書(資格確認に使用)
マイナンバーカードには「カード本体」と「電子証明書」の2つの有効期限があります。
カード本体は発行から10回目の誕生日まで(18歳未満は5回目)有効です。
電子証明は発行から5回目の誕生日まで有効期限があります。
有効期限を過ぎると、e-Taxなどの電子申請やコンビニ交付、マイナポータルへのログインが利用できなくなります。
- 有効期限:発行日から5回目の誕生日まで
- 更新期限:有効期限の3か月前であれば更新手続きが可能
- 更新手続きはオンラインではできない
- マイナンバーカードを健康保険証として利用の場合、有効期限が3ヶ月を経過すると利用不可となる
健康保険証としての利用については、電子証明書の有効期限が切れた月の末日から3か月間はマイナ保険証として利用できます。
利用者証明用電子証明書が失効すると保険資格の確認ができなくなります。
また、3か月経過後の更新では、再度「マイナンバーカードの健康保険証利用」の登録が必要になる場合があります。
有効期限が近づいた人には、「マイナンバーカード・電子証明書有効期限通知書」が送付されます。
訪問看護の現場でも「マイナンバーカード・電子証明書有効期限通知書」が届いていれば、有効期限が近づいていることを利用者さんへ伝えられると親切です。
マイナ保険証の利用率は約3割
しかし医療機関でのマイナ保険証利用率は 30%前後と低い状況です。
「登録したけどうまく使えない」「カードリーダーで読み取れない」といった声が現場でも多いのも利用が進まない一因といわれています。
スマホ対応は2025年9月から開始
スマートフォンをマイナ保険証として2025年9月19日医療機関などで利用するサービスが開始されています。
こちらの注意点は1台のスマートフォンに1人分のみ登録など制限があります。
また医療機関や薬局側に専用のスマートフォンリーダーが必要となっており、順次準備中となっているようです。
訪問看護ステーションで使用している、訪問診療・訪問服薬指導等の「マイナ資格確認アプリ(居宅同意取得型)」では対応できていません。
オンライン資格確認とは?
オンライン資格確認は、医療機関や薬局がカードリーダーを用いて、その場で保険資格をオンライン照会できる仕組みです。
くわしくは、医療機関向け総合ポータルサイトで最新情報を確認してください。
- 保険資格の有無
- 被保険者情報
- 限度額適用認定証の情報
- 特定疾病療養受療証の情報
従来は利用者が個別に申請しなければいけなかったことが、マイナ保険証では自動で照会できます。
特定疾病療養受療証とは人工透析、血友病、後天性免疫不全症候群です。
訪問看護でよく利用される特定医療費受給者証(指定難病)はマイナ保険証と一体化されていません。
また自立支援医療受給者証(精神通院)も一部の自治体に限られています。
全国展開は2026年以降に予定されています。
現在は、紙の原本で確認する必要があります。
- 国民健康保険(国保)短期保険証の交付廃止
保険料滞納者などに発行されていた短期保険証は廃止され、「資格確認書」へ一本化 されています。 - 生活保護の取り扱い(2024年3月~)
生活保護はマイナ保険証に対応済み。ただし、医療券がない(未委託と表示される)場合は発行依頼をします。 - 公費負担(子ども医療証など)は自治体により対応が異なります。全国展開は2026年度以降に予定されています。
- 新生児のマイナンバーカード
出生届と同時申請で、写真なしのマイナンバーカードを1週間程度で発行可能です。医療機関等への受診時、子どもは顔認証ができないため利用時は保護者が4桁の暗証番号を入力します。それまでの間は「資格確認書」の交付を受けることができます。
よくあるマイナ保険証トラブル
医療機関等の約9割で何らかのトラブルが確認されています。
- 電子証明書の期限切れ
- 住所不一致
- カード読み取り不可
カード読み取りができない場合でも保険診療は可能となっています。
資格確認できなかった場合の方法
訪問看護師が知っておくと安心な手順は次の通りです。
- 従来の健康保険証を提示してもらう。(現在は移行期間中のため2026年3月末まで可能)
- マイナポータルで資格情報をご本人に表示してもらう。
スマホ+マイナンバーカードで資格が表示できます。 - 「資格情報のお知らせ」+マイナンバーカード ※「資格情報のお知らせ」単体では受診不可
- マイナンバーカード自体を見せてもらう。医療機関ではカード表面のコピーは許可されています(裏面のコピーは不可)。
- 最終手段、被保険者資格申立書を記入してもらうことで保険診療できます。
※「資格情報のお知らせ」とはマイナ保険証を保有する人が自身の健康保険の「記号・番号」などの資格情報を把握しやすくするために送付される書類
レセプト請求時に資格確認ができなかった場合には「被保険者資格申立書」を用いて請求対応が可能です。
また、こちらの記事も参考にしてください。
マイナ保険証を持たない利用者への対応
以下のケースでは「資格確認書」が交付されています。
- マイナンバーカードを持っていない
- マイナンバーカードの利用が難しい
- 高齢や障害などで利用が困難
マイナ保険証を持たない利用者さんには資格確認書にて確認します。
資格確認書でも保険診療は可能ですが、マイナ保険証とのちがいは、過去の薬剤情報などを医療機関と共有することができません。
マイナ保険証を利用すると、これらの情報が共有され、より適切な医療を受けられるメリットがあります。
訪問看護ステーションにおけるオンライン資格確認について
オンライン資格確認における本人確認方法は、患者の本人確認に用いる機器や認証方法に違いがあります。
訪問看護ステーションでは、訪問診療・訪問服薬指導等の「マイナ資格確認アプリ(居宅同意取得型)」を使用しモバイル端末で資格確認を実施します。
- 利用者とマイナンバーカードの顔写真を確認する
- 訪問診療等において令和6年10月より、目視確認することで資格確認ができるアプリケーション(マイナ資格確認アプリ(居宅同意取得型)利用します。
- 訪問看護師が持参したスマートフォン等のNFC機能を使ってマイナンバーカードにて読み取ります。
- 情報提供への同意ありか同意なしをご本人に確認し選択します。
- 問題なく読み取りできれば保険情報等が表示されます。
目視確認することで資格確認ができるアプリケーション(マイナ資格確認アプリ(居宅同意取得型)では4桁暗証番号入力は行いません。
マイナンバーカードの顔写真と本人の容貌の目視確認で本人確認を行うことになっています。
過去の診療情報・薬剤情報・健診情報などは、利用者が同意した場合にのみ閲覧可能です。
同意しない情報が勝手に閲覧されることはありません。
訪問看護における実務ポイント
- 電子証明書の有効期限に注意
期限切れは資格確認不可につながります。利用者さんへの声かけを習慣化するのが理想。 - 住所変更は必ず自治体で手続き
マイナ保険証の読み取りエラーの多くは「住所不一致」が原因です。 - 資格確認書の利用者も一定数いる
特に高齢者・認知症の方は、マイナンバーカードではなく資格確認書が主流。 - 救急時は「マイナ救急」が便利
2024年10月以降、救急車内で資格確認が可能に。事前に利用者の登録状況をメモしておくと医療連携がスムーズです。 - オンライン資格確認・電子請求は原則義務化
訪問看護でも導入が進んでおり、ステーション全体で運用ルールや勉強会に取り組んでいると安心です。
まとめ
マイナ保険証は、国をあげて進められている医療DXの基盤です。
しかし実際の現場では、読み取れない、期限が切れていた、住所が違う、スマホが使えないといったトラブルが多発しています。
訪問看護師が仕組みを理解し、利用者に正しく案内できることは、安心して医療を受けてもらうための重要な支援となります。
健康保険証廃止に向けて、今後は訪問看護の現場でもマイナ保険証への対応力がますます求められます。
訪問看護をおこなう中で誰もが不安や疑問に思ったりすることを解決できるような記事の作成を心がけています。
この記事がみなさんの日々の業務に役立ってもらえると幸いです。
























