訪問看護でよくあるハラスメント(職場内による)について解説

 

悩む看護師

訪問看護の職場内におけるハラスメントって実際にどんなことがあるのかな?

どんな解決策があるのかな…。

 

看護師さんで、このような疑問を抱いている方もいるのではないでしょうか。

訪問看護ステーションでのハラスメントは法定研修にも入っているように重要な内容です。

また、職場内でハラスメントが発生すると、心身の健康が損なわれ、離職やサービス低下につながります。

本記事では、実際に起こりやすい事例をもとに、原因を考え、予防と解決方法を整理しました。

今後の研修内容を検討している管理者さんや看護師さんは、ぜひ参考にしてみてください!

 

訪問看護の職場内でよくあるハラスメントの種類と特徴

 

種類

定義

訪問看護で起こりやすい状況

パワーハラスメント

立場や権限を利用し、相手の尊厳を傷つける行為

訪問ルートや記録方法に関する過度な叱責、過剰な業務割当

モラルハラスメント

継続的な無視や陰口、態度での精神的圧迫

会議での黙殺、情報共有からの除外

セクシャルハラスメント

性的な言動・行為で不快感を与える

性的冗談、容姿や服装へのコメント

マタニティハラスメント

妊娠・出産・育児を理由に不利益を与える

産休や時短勤務への否定的発言

アカデミックハラスメント

資格や知識を盾に相手を軽視

他職種の意見を排除する発言

事例と対応策

パワハラ型

事例

  • 状況

    新任訪問看護師Aさんが訪問の記録ソフトでの記録方法を覚えきれず、申し送り中に「こんな簡単なこともできないの?」と皆の前で叱責され続けた。

    Aさんは出勤前から胃痛が出るようになった。

  • 考えるポイント

    • 叱責と指導の違いは何か?

    • 公衆の面前での否定は必要か?

  • 解決対応策

    • 指摘は個別に行い、改善策を一緒に考える。

    • 進捗確認は短いサイクルで行い、不安があれば早期に聞き取る。

    • 管理者向けの「フィードバック技術研修」等を実施。

 

モラハラ型

事例

  • 状況

    会議で若手スタッフの意見に無反応、終了後に「あの子は使えない」と周囲に陰口を言うベテランスタッフ。

    若手スタッフは相談や提案を避けるようになった。

  • 考えるポイント

    • 無視や陰口はチームにどんな影響を与えるか?

    • 指導者としての役割をどう果たすべきか?

  • 解決対応策

    • 会議での発言は必ず肯定的なフィードバックを入れる。

    • 陰口が出やすい職場は「意見は場で伝える文化」を作る。

    • 定期的なチームミーティングで信頼関係を強化する。

 

セクハラ型

事例

  • 状況

男性スタッフが女性同僚に「今日はいい香りだね」と発言。また、男性スタッフが女性同僚に「LINE教えて」と繰り返し迫る。断ると「冷たいな」と言い、周囲にも話してプレッシャーをかける。女性は不快だが笑って受け流している。

  • 考えるポイント

• 本人が冗談でもハラスメントになる理由はないか?

• 受け手が声を上げられないとき、どう動くか?

  • 解決対応策

• 性的発言は一切控えるルールを文化とする。

• 不快感を受けた時は「やめてください」と直接伝えるトレーニングを導入。

• 第三者が介入できるよう、報告ルートを複数用意する。

• 個人SNSや連絡先交換は完全任意で、強要禁止と明記。

• 繰り返しの要求はハラスメントとして処理。

• 管理職がオンライン上の関係にも配慮する文化をつくる。

 

マタハラ型

事例

  • 状況

妊娠中の看護師が業務調整を依頼したところ、「そんなに配慮必要なら正社員は難しいね」と言われた。

本人は復職への不安から退職を選んだ。

  • 考えるポイント

• 妊娠・育児期の労働者の権利とは。

• 配慮を拒むと何が起きるか?

  • 解決対応策

• 法令(育児・介護休業法)に基づく勤務調整を行う。

• 復職プランを本人と事前に共有し安心感を与える。

• 職場全体でカバーし合える体制をつくる。

 

アカハラ型

事例

  • 状況

リハスタッフのケア提案に対し、看護師上司が「あなたは看護師じゃないから判断できないでしょ」と発言。

その後、発言を控えるようになった。

  • 考えるポイント

• 他職種の意見を否定するとチームにどう影響するか?

• 多職種連携の意義とは?

  • 解決対応策

• 意見は一度受け止め、根拠や視点を確認する。

• 職種ごとの専門性と役割を共有する場を設ける。

• 連携を評価する文化をつくる(報奨・表彰制度など)。

 

ハラスメント防止のための職場づくり

 

明確なルール化

就業規則やハンドブックに明記

 ハラスメントの定義、禁止行為の具体例、違反時の対応(口頭注意・書面注意・懲戒等)を明文化。

新入職員オリエンテーションで周知

 採用時にルールを説明し、サインをもらうことで「知らなかった」を防ぐ。

訪問看護特有の注意点も追加

 例:個別訪問後の報告時に感情的にならない、電話やLINEでの不適切な言動禁止など。

 

教育の継続

年1回以上の全職員研修

 事例紹介・ロールプレイ(不適切な対応→適切な対応への切り替え)を取り入れる。

管理職・リーダー向け研修

 フィードバックの技術、感情のコントロール法、注意の伝え方を習得させる。

新人フォローアップ研修

 入職後3か月・6か月時点で面談し、職場での違和感や困り事を確認。

 

相談ルートの複数化

直属上司以外への相談先

 同僚・他部署責任者・法人本部・外部相談窓口(産業医や労働局など)を明示。

匿名相談の仕組み

 意見箱、匿名メールフォーム、社外コールセンターなど。

相談しやすい雰囲気作り

 「困ったら早めに相談してほしい」という声かけを日常的に行う。

 

早期対応

兆候のキャッチ

 陰口、急な欠勤、スタッフの元気のなさは早めに上司が確認。

事実確認は速やかに

 聞き取りは複数人で行い、偏りを防ぐ。

話し合いと改善策の提示

 当事者間の直接対話が難しい場合は、第三者が仲介。

放置しない文化

 「時間が解決する」は通用しないことを全員で共有する。

 

記録の徹底

被害者・目撃者ともに記録

 日時、場所、状況、発言・行動の内容、関係者を詳細に残す。

記録様式の統一

 報告書テンプレートを全員に配布。

保存と管理

 記録は上長または外部相談窓口が保管し、漏洩防止を徹底。

 

まとめ

 

訪問看護における会社内ハラスメントは、職場の人間関係や権力構造の中で発生しやすく、精神的・身体的健康を損なう深刻な問題です。

パワハラ、セクハラ、マタハラなど形態は多様で、職員の離職や人材不足を招き、利用者ケアの質にも影響します。

医療・介護現場特有の閉鎖性や人員不足が背景にあり、社会全体での防止・是正が求められる重要な課題です。

組織は明確なルール、相談窓口、迅速な対応体制を整え、職員一人ひとりが安心して働ける環境づくりに取り組む必要があります

 

先輩訪問看護師

今回の事例と対応策を、明日からの現場に活かしていきましょう。 

 

 

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