交通事故等による訪問看護について解説します

 

訪問看護師
新規の依頼がありました。交通事故で要介護状態になり、退院後もリハビリは必要と言われたそうです。医療保険や介護保険での通常の訪問看護を行ってもいいでしょうか?

 

このような疑問を解決する記事です。

結論から言うと、健康保険や介護保険は通常使用できません。

理由は他人(=第三者)の行為によって起こった傷病の場合は、本来損害賠償として加害者が治療費を支払うべきであるというのが前提にあります。

依頼が来たときは、制度を理解してサービス提供をするようにしましょう。

当記事では、第三者行為(交通事故)」が原因で要介護状態になった場合の訪問看護について解説します。

ではさっそく解説します。

 

第三者行為とは

 

第三者行為とは
  • 相手のある交通事故(自分が加害者の場合は除く)
  • 他人のペットに噛まれた
  • スキーなどで他人とぶつかってケガをした
  • 外食や購入した食品等によって食中毒になった
  • 自損事故の同乗者(運転者が加害者にあたる)
  • 歩いていて、自転車にぶつけられた(自転車側に過失がある場合)など

 

他人(=第三者)の行為によって起こった傷病を「第三者行為による傷病」といいます。

 

制度の概要

第三者が起こした行為(交通事故等)が原因で要介護状態になった場合や要介護度が重度化し、被害者(被保険者)が介護保険給付を受けることになった場合は、加害者がその費用を負担するのが原則です。

そのため、第三者の行為により介護給付等を受けることになったときは、被害者の方は、必要書類を保険者や市区町村に提出する必要があります。

保険者や市区町村から委託された国民健康保険団体連合会は、第三者側(加害者・損害保険会社等)と損害賠償の交渉を行います。

要介護と認定されたので、ケアマネジャーからの新規依頼だとしても、ケアマネジャーも意外と知らないことが多いため第三者行為によるものと情報がありましたら、まずは情報共有をしてください。

 

【参考】-介護保険法・介護保険法施行規則抜粋-
〇介護保険法(抜粋)

(損害賠償請求権)
第21条
市町村は、給付事由が第三者の行為によって生じた場合において、保険給付を行ったときは、その給付の価額の限度において、被保険者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する。
2 .前項に規定する場合において、保険給付を受けるべき者が第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、市町村は、その価額の限度において、保険給付を行う責めを免れる。
3 .市町村は、第一項の規定により取得した請求権に係る損害賠償金の徴収又は収納の事務を国民健康保険法第45条第5項に規定する国民健康保険団体連合会であって厚生労働省令で定めるものに委託することができる。

〇介護保険法施行規則(抜粋)
(第三者の行為による被害の届出)
第33条の2
介護給付、予防給付又は市町村特別給付の支給に係る事由が第三者の行為によって生じたものであるときは、第一号被保険者は、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した届書を、市町村に提出しなければならない。
1.届出に係る事実
2.第三者の氏名及び住所又は居所(氏名又は住所若しくは居所が明らかでないときは、その旨)
3.被害の状況

 

第三者行為の届出の実際

 

被保険者の届出義務化について

介護保険法施行規則が改正され、平成28年4月1日から、第三者の行為により介護給付等を受けることとなった場合、第一号被保険者は、第三者の氏名や被害の状況等を記載した届出を保険者へ提出することが義務付けられていますので、ケアマネジャーに相談して保険者や市区町村の担当課に届出を行います。

 

届出の様式等について

第三者行為による被害の届出書(医療保険における「第三者行為による傷病届」と同様のもの)を被害者である第一号被保険者(利用者さん)から提出します。

また、上記に加え、必要に応じて以下の書類があります。

 

  1. 同意書
  2. 誓約書
  3. 事故発生状況報告書
  4. 交通事故証明書
  5. 交通事故証明書入手不能理由書

 

※「交通事故証明書」は、自動車安全運転センターでの有償発行になります。

※「誓約書」は相手方(加害者)が加入されている保険会社に記入していただく書類です。

※「交通事故証明入手不能書」は、事故に関する事故証明書が入手できない場合のみ提出が必要です。

 

これらは、市区町村のホームページからダウンロードが可能です。

以下のホームページで確認もできます。

制度説明:資料第三者行為の届出について(医療保険)

参考資料:介護保険最新情報

 

【注意】示談をしてしまうと・・・

被害者と加害者との話し合いがついて示談が成立してしまうと、その示談の内容が優先され、介護費用を加害者に請求できなくなることがあります。

示談成立後に利用したサービスについては、示談により受け取った介護費用に相当する額分は保険者から給付できなくなり、被保険者(被害者)の全額自己負担による利用となります。

このようなことから、仮に示談を行う場合であっても、これらのことを十分踏まえた上での示談を行わないと、被保険者(被害者)の方に多大な費用がかかる可能性があります。

利用者さんから示談をするなどの話があれば、事前に保険者に連絡しましょう。

 

損害賠償保険会社と交渉する方法

制度の概要から第三者が起こした行為(交通事故等)は、加害者がその費用を負担するのが原則となっていますので保険外、自費サービスの訪問看護として介入することもできます。

この場合は、保険者に届出を行わずに、第三者側(加害者・損害保険会社等)に連絡(家族を介しても可)をしてサービスをおこなった対価を請求することも可能です。

医師の指示書には、第三者行為によりその療養上訪問看護サービスを行うことを必要と認めたことを記載してもらうことや契約書が必要です。

場合によっては、損害保険会社から契約書や医師の指示書の提出を求められれば提出します。

「第三者行為による傷病」の治療が終了になれば自費訪問看護も終了になります。

 

しかし、居宅サービス計画上、ヘルパーなど他のサービスを利用する場合は、訪問看護だけ自費サービスというのは難しいかもしれません。

 

まとめ

 

  • 第三者行為(交通事故等)で介護サービスを行う時は市区町村への届出が必要
  • 届出の様式は市区町村のホームページからダウンロードできる
  • 場合によっては、第三者側(加害者・損害保険会社等)と保険外、自費サービスの訪問看護を行うこともできる

 

ビジケアでの有料会員さんは、こういったケースについて質問の場でリアルタイムで相談でき、保険外、自費サービスの契約書の雛形を入手することも可能です。

訪問看護をおこなう中で誰もが不安や疑問に思ったりすることを解決できるような記事の作成を心がけています。

この記事がみなさんの日々の業務に役立ってもらえると幸いです。

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