毎月発行する訪問看護計画書には、訪問看護における目標を記載する項目があります。
長期的な訪問看護利用になると、計画書の内容も画一的なものになりがちですよね。
訪問看護計画書は、訪問看護を提供する際に利用者さんに合わせた看護実施の計画を記載するものです。
毎月主治医に提出が必要であり、また利用者さんやご家族への説明をして同意を得るための書類でもあります。
そのため、具体的な訪問看護の内容や目標を記載する必要がありますね。
今回は訪問看護計画書における目標設定のポイントについて、生活を評価する専門家である作業療法士の視点から解説します。
目次
訪問看護計画書における目標設定のポイント3選
訪問看護計画書における目標設定には、以下の3つのポイントがあります。
- 利用者さんの希望や目標を踏まえる
- ケアプランや医師の指示、意向と相違がない
- SMARTに沿った目標設定
では、1つずつ解説していきます。
利用者さんの希望や目標を踏まえる
まずは、利用者さんの希望や目標を踏まえて訪問看護の目標を設定しましょう。
利用者さんからどうなりたいか、どうしたいかなどの希望や目標を聴取します。
出てこない場合は、不安なことや訪問看護に望んでいることなどを聞いても良いですね。
このように利用者さんの意向を踏まえて訪問看護の目標を設定する必要があります。
ここで注意することは、利用者さんの目標がそのまま訪問看護の目標になってしまうことです。
利用者さんが希望していること全てが、訪問看護で達成できるとは限りません。
訪問看護として実現可能な目標を設定する必要があります。
ケアプランや医師の指示、意向と相違がない
次は、ケアプランや医師の指示、意向と相違がないことです。
介護保険で介入の方であれば、ケアプランに訪問看護における役割や目標が設定されています。
必ずケアプランは、目を通すようにしましょう。
また、主治医からの指示や意向も確認しておくと、より精度の高い目標が設定できますね。
SMARTに沿った目標設定
SMARTは、目標設定の指標です。
リハビリにおいては、よく目標設定の考え方として使われるものになります。
以下、頭文字に沿って解説していきます。
Specific 具体的に
目標設定には具体性が必要です。
「着替えが一部自分でできるようになる」
「上着を脱ぐことが、介助なく一人で出来るようになる」
このように、具体性を出した方が目標が達成できたどうかの判断もつけやすいです。
Measurable 測定可能な
目標は測定ができる内容が望ましいです。
「屋外歩行を早く歩けるようになる」
「自宅の前の横断歩道を〇秒で渡り切れるようになる」
数値で表される方が、目標の達成に向けた変化を捉えやすくなります。
Achievable 達成可能な
目標は達成可能である必要があります。
利用者さんの希望を鵜呑みにすることは避け、医療者の知識をもって予後予測を立てましょう。
「電車にのって一人で出かけられるようになりたい」
「自宅から最寄りのバス停まで一人で歩いていけるようになる」
利用者さんの身体機能、今後の生命等の予後、家族のマンパワーなどを総合的に判断した上で、現実的に達成可能な目標を考える必要があります。
Related 関連のある
「筋力を向上する」など生活に関連性のない目標を立てることは避けなければなりません。
「足の筋力を向上する」
「買い物に行けるようになるために、屋外歩行を自立する」
目標の中に5W1H(いつ、どこで、だれが、なにを、なぜ、どのように)を入れることを意識すると、生活との関連性がでてきます。
Time bound 期間の決められた
目標には期間を定めましょう。
「(いつか)一人で近所のスーパーまで買い物に行けるようになる」
「3か月後に、一人で近所のスーパーまで買い物に行けるようになる」
いつまでに何を達成するのかを具体的に定めることが必要です。
特に期間の設定は目標を決めることにおいて重要なポイントになります。
訪問看護における目標設定の注意点
目標設定を行う上での注意点を2つ紹介します。
完璧な目標にこだわらない
1つ目の注意点は、完璧な目標にこだわらないことです。
先ほどのポイントを押さえた目標設定ができれば素晴らしいですが、現実的には難しい場面もあります。
利用者さんから希望など出てこず、スタッフが考えたありきたりな目標設定になることも少なくありません。
しかし、このような状況でも焦らずに、まずは抽象的な目標でもいいのでケアを進めていきましょう。
時間と共に利用者さんとの関係性が構築できれば、訪問看護目標に繋がる言葉がでてくるかもしれません。
ポイントはあくまで参考程度にして、完璧な訪問看護目標をはじめから目指す必要はありません。
目標の見直しを定期的にする
2つ目の注意点は、目標の見直しを定期的にすることです。
介入当初に立てた目標は、数ヶ月すれば変わってくることがあります。
目標を立てて変わってきやすいこととしては、期限です。
3ヶ月で立てた目標が、状態の変化によっては6ヶ月経っても達成できないことがあるかもしれません。
そこで重要なのは、常に目標達成に向けた進捗を利用者さんと確認し、利用者さんの意向を小まめに確認することです。
また、利用者さんの状態によっては変化があり、目標が変わってくる場合もあります。
このような変化にも柔軟に対応し、訪問看護計画書の目標も見直していくと良いですね。
利用者さんと目標に対して細かに振り返ることで、利用者さん自身が自分の体や生活を振り返る機会を作ることになり、自己理解を促す意味でも有効だと考えられます。
ポイントを押さえて目標を設定しよう!
訪問看護計画における目標設定のポイントについて、作業療法士の視点から解説させていただきました。
目標は利用者さんのやる気を持ち上げることもあれば、目標達成できず落ち込むこともあるなど諸刃の剣です。
しかし利用者さんと共に考えた目標を達成できたときの喜びはかけがえのない経験となります。
訪問看護への依存性を減らすことにも役立ちます。
先に述べた目標設定のポイントを参考にしつつ、利用者さんとの関係性を踏まえた、適切な訪問看護計画を立てていく上での参考になりますと幸いです。