このような疑問にお答えする記事です。
訪問看護で関わることの多い疾患の一つにパーキンソン病があります。
筆者もパーキンソン病の方の担当をさせていただいたことが多くありますが、パーキンソン病の方に訪問看護が介入することの大切さを強く感じています。
しかし、初めてパーキンソン病の方を受け持たせていただくときは、わからないことも多く不安ですよね。
ひとりで訪問する訪問看護だからこそ、不安はより強いと思います。
当記事では、パーキンソン病の方への訪問看護の内容について具体的に解説します。
初めてパーキンソン病の方を受け持つ方や、パーキンソン病の方の看護に自信がない方は、ぜひ最後まで読んでお役立てくださいね。
ではさっそく解説します。
目次
パーキンソン病とは?
まずはパーキンソン病について簡単にご説明します。
パーキンソン病とは、黒質のドパミン神経細胞の障害によって発症する神経変性疾患である。
パーキンソン病では、運動症状と非運動症状の2つの症状が認められます。
- 振戦
- 筋強剛
- 無動
- 動作緩慢
- 姿勢反射障害
- 自律神経兆候
- 睡眠障害
- 精神症状
- 認知機能障害
- 感覚障害
パーキンソン病の重症度の診断は、ホーン・ヤール(Hoehn&Yahr)分類で行われます。
【ホーン・ヤール分類】
分類 | 症状 |
Ⅰ度 | 症状は片方の手足に限局 |
Ⅱ度 | 症状は両方の手足に限局 |
Ⅲ度 | 姿勢反射障害を認めるがADL自立 |
Ⅳ度 | 日常生活に部分的な介助が必要 |
Ⅴ度 | ADLは全介助 |
パーキンソン病に伴う運動症状・非運動症状に対しては、適切な薬剤治療が必要不可欠です。
加えて、運動症状への介入や、発声練習・嚥下機能訓練等も非常に重要となります。
また、睡眠障害や排尿排便障害に対しても適切に支援していく必要があります。
パーキンソン病で訪問看護を利用する方はどのくらいいる?
パーキンソン病で訪問看護を利用する方は多くいらっしゃいます。
厚生労働省による以下のデータがあります。
医療保険で介入する訪問看護の場合は、神経系の疾患(パーキンソン病含む)の方が多くいらっしゃいます。
パーキンソン病の方が医療保険を利用し訪問看護を受ける場合、主治医が発行する訪問看護指示書に以下のことが記載されている必要があります。
- パーキンソン病の重症度の診断であるホーン・ヤール(Hoehn&Yahr)分類がステージⅢ以上
- 生活機能障害度がⅡ度又はⅢ度
また、ホーン・ヤールの重症度分類Ⅲ度以上で、生活機能障害度Ⅱ度以上の方は、難病医療費助成制度の対象となります。
経済的・精神的な負担を軽減するためにも、パーキンソン病の方が難病医療費助成制度と介護保険の申請を検討することは必須と言えます。
訪問看護師として介入する際には、上記のことを念頭に置き、医師・リハビリスタッフ・ケアマネジャー・その他関わるサービス関係者皆と協働しながら、サポートしていく必要があります。
パーキンソン病の訪問看護|具体的支援内容7つ
パーキンソン病の方の訪問看護では、おのおのの疾患の進行の程度によって支援内容が変わるのが実際ですが、主には以下のような支援を実施します。
- 状態観察
- 服薬管理
- 排便コントロール
- 清潔援助
- リハビリテーション
- 在宅サービスの調整
- 家族支援
順番に解説します。
状態観察
状態観察は必須です。
- 疾患の症状、on-off現象
- 食事(量、嚥下状態)
- 排便(回数、量、性状)
- 排尿(回数、量、夜間排尿の有無)
- 睡眠状況
- 運動症状(無動、歩行状態、入浴状況、更衣の状況など生活面も絡めながら)
- 困り事、変化があったこと など
観察した内容をもとに、必要な支援を考えていきます。
服薬管理
服薬管理も必ず行うことの一つです。
ドパミン欠乏は症状悪化につながってしまうためです。
- 服薬管理状況
- 残薬の確認
- 服用方法の検討(服薬ゼリー使用など)
- 飲みやすさの工夫(一包化の依頼など)
- 忘れない工夫(ウォールポケットの使用など)
できるだけ本人が服薬を管理できるようサポートしますが、一方で確実に内服できることも重要であり、その時々に合わせたベストな対応を利用者さんやご家族と考えていきます。
排便コントロール
パーキンソン病では排便障害が見られるため、排便コントロールの支援も重要です。
- 排便状況の確認
- 医師と連携しながら下剤の調整
- 食事内容のアドバイス
- 必要時は浣腸や摘便の実施 など
便秘は抗パーキンソン病薬の吸収にも関わるため、訪問看護で介入する際に必ず気を付けていきたいポイントの一つです。
清潔援助
パーキンソン病では運動障害により、ひとりで入浴するにはリスクがある場合があります。
そのような方には、訪問看護で入浴介助等の清潔援助を行うことも多いです。
パーキンソン病の方の中にはデイサービスを利用されている方もおられ、そちらで入浴を行う方もいます。
また、訪問入浴介護サービスを利用される方もいます。
利用者さんの身体状況やご希望、福祉サービス利用状況、ご家族の希望や状況等、さまざまな事柄を考慮しながら、必要な清潔援助があれば支援します。
リハビリテーション
パーキンソン病の方への訪問看護において、運動症状への介入は必須と言えます。
- 理学療法による運動症状への介入
- 作業療法による環境調整、装具の使用
- 言語聴覚療法による発声練習、嚥下機能訓練 など
パーキンソン病の方の在宅生活では、転倒のリスクもゼロではありません。
転倒を防げるようリハビリテーションを行い、福祉用具の活用等も提案します。
日常生活動作を維持し、安全に生活を営めるようリハビリテーションを行うことは非常に重要です。
在宅サービスの調整
在宅サービスの調整についても、訪問看護で介入させていただく中で考えていくべき事柄の一つです。
社会的な交流を維持したり、介護者の負担軽減にも目を向けていく必要があるためです。
- 訪問介護
- 訪問入浴介護
- 通所介護(デイサービス)
- 短期入所サービス(ショートステイ)
- 福祉用具貸与 など
利用者さんやご家族の希望や状況を踏まえながら、ケアマネジャーとも連携し、各々にとって必要と思われるサービスを調整していきます。
家族支援
毎日そばで利用者さんを支えるご家族に対するサポートも非常に重要です。
ご家族にとって介護は、終わりの見えないものである可能性があり、心身ともにさまざまな変化があります。
- 不安
- 戸惑い
- 疲労
- 不眠
- 自分の時間の確保困難 など
思いを傾聴し、介護をねぎらい、ご家族自身がリフレッシュできる時間を持つ工夫も必要です。
また、パーキンソン病は最終的には日常生活動作が全介助となる可能性がある疾患です。
自宅で最期まで過ごすのか、あるいは施設や病院で過ごすのか、ご家族間で相談していただく必要があります。
施設を利用する場合は、待機期間も長くなる可能性があるため、時間的余裕を持って見学・申請をする必要もあります。
難しい問題ではありますが、関わりの中で徐々に信頼関係を築き、今後についてもどのように考えるか誠意を持って対話していけるとよいと思います。
パーキンソン病|状況に合わせて必要なケアを実施していこう
パーキンソン病の方の訪問看護には、さまざまな重要な役割があります。
パーキンソン病の方は、疾患の進行の程度によって状況が違います。
個々の状況に合わせて必要なケアを見極め、しっかりサポートできるよう努めていきましょう。
ビジケアマガジンには、訪問看護にまつわるお悩み解決記事が当記事の他にもたくさんあります。
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訪問看護師です。今度パーキンソン病の方を受け持たせていただくことになりました。訪問看護師としてパーキンソン病の方と関わる上で必要な視点や援助があれば教えてほしいです!