訪問看護を経験する中で、こういったことに悩むことってありますよね。
私は、モヤモヤした気持ちを抱えながら訪問看護をしていました。
昨今、訪問看護の現場では、本人による意思決定を支援する「人生会議」アドバンス・ケア・プランニングが求められるようになっています。
利用者さんや家族さんと医療者や介護者があらかじめ話し合っておく自発的なプロセスですが、実際の訪問看護の現場では、私自身とても難しいと感じています。
そんな中、訪問看護師として介護に関する4つの権利を知っておくことでモヤモヤした気持ちを俯瞰的に見ることができるようになってきました。
それではさっそく解説していきます。
目次
人は誰でもケアに関して4つの権利をもっている
2011年、社会学者の上野千鶴子著「ケアの社会学―当事者主権の福祉社会へ」という10年間に渡る調査に基づいた上野社会学の集大成が出版されました。
上野千鶴子さんと言えば、シリーズ累計130万部ベストセラー「おひとりさまの老後」で、知恵と工夫さえあれば老後のひとり暮らしは怖くないとおひとりさまブームを巻き起こした方です。
この「ケアの社会学」の第2️章では、ケアの権利を社会権のひとつとして捉える説明がなされており、ケアの権利は以下の4つから成り立つとされています。
- 「ケアする権利」
- 「ケアされる権利」
- 「ケアすることを強制されない権利」
- 「ケアされることを強制されない権利」
ケアはそれ自体で常に「よきもの」なのではなく、過度のケア・不適切なケア・ケアされる者が望まないケアは「抑圧」や「強制」になると語ることが可能になったと表現されています。
介護に関する4つの権利について
この上野千鶴子さんが提唱するケアに関する4つの権利を私が具体的に知ることになったきっかけは、南杏子著「いのちの十字路」2023年初版という本でした。
吉永小百合主演映画「いのちの停車場」原作続編で、老老介護、ヤングケアラー、8050問題を題材にした物語です。
あらすじとしては悩んでばかりで自信が持てない、訪問診療所の新米医師がコロナ禍、在宅介護の現場で奮闘するストーリー。
上野千鶴子著のケアの権利を、ここでは介護の4つの権利として紹介されています。
介護の4つの権利とは以下のとおりです。
「介護を受ける権利」とは
「介護を受ける権利」とは「ケアされる権利」のことです。
具体的には高齢の親が息子や娘に介護してもらうことや、事故で障害を負った夫が妻の介護を受けるといったことです。
介護に関する権利で、一般に最も理解が得られやすい考え方であり、補足すると、この権利を社会全体で支えることを目指して2000年に介護保険が創設されました。
「介護を行う権利」とは
「介護を行う権利」とは「ケアする権利」のことです。
親の介護で、他人は勝手に手を出すことはできないけれど、家族は介護をする権利があるというものです。
「介護を受けるのを強制されない権利」とは
「介護を受けるのを強制されない権利」とは「ケアされることを強制されない権利」のことです。
誰もが介護を受けたいと願っているわけではないという、できる限りひとりで生きていきたいという気持ちも当然のこととして認められるとういうものです。
「介護を行うのを強制されない権利」とは
「介護を行うのを強制されない権利」とは「ケアすることを強制されない権利」のことです。
これは、たとえ同じ家に暮らしていたとしても、親の介護を子に強いることや家族の介護を強いることができないというものです。
そしてこの本には、あらたに5つめの権利として「介護を休む権利」が提唱されていました。
愛する家族に対して、最後まで愛情を維持するために、介護を休むことが互いの幸せにつながるということ。
訪問看護に携わっていると、これは必ず持っておくべき視点であると感じます。
当事者はなかなか気づくことができないため、こちらが意識して支援していく必要があると思います。
まとめ
介護に関する4つの権利
- 介護を受ける権利
- 介護を行う権利
- 介護を受けるのを強制されない権利
- 介護を行うのを強制されない権利
訪問看護の現場は、いろいろな事情が複雑に絡み合って成り立っているといえます。
私が訪問看護をはじめた頃は、介護保険が創設され、これから社会全体で介護をするという時代でした。
介護に関する4つの権利については、もちろん考えたこともありませんでした。
「介護の環境をよくしたい」という思いが常にありました。
介護を受ける方もする方も自分の意志があり、それを尊重する権利を意識することによって、自分のモヤモヤした気持ちがすっきりすることができたりしています。
そして、「次は絶対に同じ後悔をしない、何かあるたびに、そう決心して乗り越えてきた」という主人公の思いに共感して、正解がない現場でのモチベーションを維持することができています。
訪問看護をおこなう中で誰もが不安や疑問に思ったりすることを解決できるような記事の作成を心がけています。
この記事がみなさんの日々の業務に役立ってもらえると幸いです。
もっと深く学んでみたい方は、ぜひ本書を手にとって読んでみてくださいね。