一度は目にした事がある装具、皆さんはどのように提供されているかご存じですか?
装具が必要と感じた際に、利用者さんやケアマネージャーに作成方法をお伝えできるとよりスムーズに作成する事ができます。
今回は、訪問看護(リハビリ)での装具作成方法の一例として身体障害者手帳を活用した作成について解説していきたいと思います。
目次
装具とは?
まず、装具に関して簡単にご説明します。
装具とは身体の一部を外部から支えて関節の動きを制限したり、保護することで、変形の矯正、関節運動の補助、疼痛の軽減などを図る医療用具の事をいいます。
装具の中でも在宅で多く目にする3つの装具を消紹介します。
- オルトップAFO:主に片麻痺などからくる下垂足に用いられる足関節の補助装具
- シューホンブレイス:主に片麻痺などからくる下垂足や尖足に用いられる足関節の補助装具 (各種足関節継手のついたタイプもある)
- 足底装具:偏平足や外反母趾、変形性膝関節症などに用いられるインソールなど。
引用画像:泉ブレイス株式会社
装具にも様々な種類があり、下肢の状態や用途によって適応となる装具は異なります。
どのような種類の装具があるか把握していると、利用者さんの下肢状態が理解できるので参考程度で知っておきましょう。
装具の作成方法について
それでは装具の作成方法について紹介致します。
作成過程の種類を多々ありますが、在宅場面では以下の手続きが多く行われます。
- 医療保険での作成
- 身体障害者手帳を活用した作成
まず、医療保険での作成は治療を目的としており、治療過程で身体機能の改善に装具提供が必要であると医師が判断した場合に適応されます。
脳血管疾患や末梢神経障害により麻痺を呈した患者さんに対し、リハビリと並行して治療用装具を着用する事でより効果的なリハビリを提供する事ができます。
装具を作成する義肢装具士に患者さんの身体的特徴や障害部位の特徴の説明を担当療法士から伝達すると作成もよりスムーズに行われやすいです。
次に、身体障害者手帳を活用した作成は日常生活動作を援助する目的としており、長期間の使用が必要と判断された場合に適応されます。
治療終了後も障害が残り装具が必要とされた場合に更生用装具として利用者さんにあったものを作成する事ができます。装具の修理や部品の交換なども行う事が可能です。
装具を新しく・作り替えるといっても、手続きの方法が異なります。
担当者は利用者さんがどのような目的で装具を使用するのか、どのような補助を受けられるのか、活用できるサービスは何なのかを把握する事が重要です。
作成に入る前に確認すべき事
装具を作成する前に確認すべき事がいくつかあります。
今まで使用した事のない物を身につける事は、誰しもが抵抗を示すはずです。
そのため、まず装具作成にあたり利用者さんに最低限確認すべき項目を以下の4つ挙げました。
- 装具を使う事でどのようなメリットがあるのか
- 装具をどのような場面・場所で使用するのか
- どれくらいの金額が発生するのか
- 上記3つを説明した上で生活上装具を使用する意思はあるのか
まず、装具を使うメリットとして歩行時の転倒防止や関節変形や疼痛誘発の予防、またADLやQOLの向上を図る事ができます。
歩く際、患側下肢を動かす場面が多く見受けられ、下肢を振り出す時に床面に引っ掛かって転倒してしまう可能性があります。
また、膝折れといって患側下肢に体重をかけると大腿四頭筋の筋力低下にて膝を伸ばしたまま固定できず、バランスを崩して転倒してしまう事が起きます。
この2つを防ぎ、安全に移動できる目的として装具作成を提案しています。
装具使用の場面に関しては、ほとんどの利用者さんが歩行時に使用されています。
その他では関節変形を予防する目的で装具を装着されている方もいます。
場所に関しては、道に凸凹や傾斜があるか、砂利や段差の有無なども事前に確認すると良いと思います。
装具を装着した状態で靴を履くため、靴の大きさの確認も必要です。
足に丁度良いサイズの靴を選ぶと、装具を履いたまま靴を履く事が出来ないため、患側下肢側の靴は若干大きめの靴を着用する事をおすすめします。
金額は装具によって異なりますが、概ね3-4万円程度となります。自己負担額が何割かを自治体の障害福祉課に確認すると正確な情報を利用者さんに伝えられます。
最後に利用者さんの意志確認が必要です。
担当スタッフが装具を提案しますが、利用者さんの意思確認を行わずそのまま流れで作成してしまうと、金銭の事でトラブルになったり需要を感じられず装着しないといった結果を招く可能性があります。
まずは装具の説明を行い、利用者さん自身が本当に必要と感じられているのかを確認する事が大切です。
装具の説明に関して、適した装具はどのような物か、具体的な金額など療法士では十分に説明できない分野を、装具作成を専門とする義肢装具士に依頼する事も一つの手段です。
義肢装具士には、利用者さんの情報(関節可動域、筋力、身体部位の特徴や麻痺の程度など)を伝え装具の選定に役立ててもらう事も大切です。
従事者同士の連携も装具作成には必要な事となります。
では、あまり知られていない障害者手帳を活用した作成方法をご紹介したいと思います。
障害者総合福祉法に基づき身体障害者手帳を活用した作成
障害を負った方々の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律を障害者総合福祉法といい、その中で補装具費の支給という制度を活用する事で作成できます。
この制度を活用するために必要は条件は身体障害者手帳の交付を受けている事です。
身体障害者手帳は医療保険での作成時にも使用でき、その他でサービスや割引等の助成制度にも活用できるため、申請対象の方は主治医に相談する事をお勧めします。
それでは申請から支給までの一連の流れをご説明します。
- お住いの自治体(市区町村)の 障害福祉窓口 または 補装具相談窓口へ問い合わせ、下肢装具製作の申請手続きを行います。申請までに、医師に「補装具費支給意見書」の作成を依頼し交付を済ませておく。
- 自治体の相談窓口から自治体が管轄する自立支援相談機関*へ判定を依頼。
- 指定(予約)日時に申請者がお住いの管轄の自立支援相談機関を直接訪問し、支給可否の判定を受ける。(※ 申請時に提出する、医師による「補装具費支給意見書」により判断する書類判定もあります)
- 自立支援相談機関が 自治体の相談窓口へ判定書を交付。
- 自立支援相談機関が義肢装具製作会社へ判定通知と見積を依頼。
- 義肢装具製作会社から自治体の相談窓口宛てに見積書を発行。
- 自治体の相談窓口から申請者へ支給決定通知。
- 支給決定の内容に基づき、申請者と義肢装具製作会社が契約を結ぶ。
- 義肢装具製作会社が装具製作を開始(採型、採寸、仮合わせ、など)
- 指定(予約)日時に自立支援相談機関を直接訪問し、完成した下肢装具の適合判定を受ける。
- 下肢装具を義肢装具製作会社が申請者に引き渡し(納品)。申請者は義肢装具製作会社に購入費等を支払い、領収書を受け取る。
- 自己負担額: 原則、給付内容の1割
- 補装具費の支払い:装具購入または修理にかかる費用の原則1割を利用者負担金として申請者が義肢装具製作会社に支払い、残額を補装具費として市区町村が義肢装具製作会社に支払います。ただし、支給対象外の部品や製品は自費となる場合があります。
- 納期: 約2か月 程度
引用:脳梗塞リハビリセンター
この手順が基本の流れとなっています。
地域によって手順が異なる場合もあるので、まずは市町村の障害福祉課又は義肢装具製作所に確認すると良いでしょう。
まとめ
今回は、訪問看護(リハビリ)での装具作成の一例として身体障害者手帳を活用した作成の流れをご紹介致しました。
正直、訪問現場で装具を作成する機会は少ないです。
しかし日常生活動作を観察していると装具が適応となる方は比較的多い印象があります。
利用者さんの活動レベルが今より向上する方法として、装具作成が一つの選択肢になる事もあるので今回の作成過程を理解して、実際の現場で生かしてみてください。