訪問看護でリハビリ職として初めて働くセラピストさんは、上記のような疑問を抱く方が多いのではないでしょうか。
訪問看護(リハビリ)のリハビリ内容は病院と大きく異なりません。
しかし、必要とされる能力は多々あります。
『ただ、リハビリだけすればいい。』
このスタンスだと、せっかくサービスを受けて下さった利用者さんや事業所を紹介してくれたケアマネージャーからの信頼を失ってしまうかもしれません。
今回は、リハビリ職目線で必要な能力を5つお伝えし、明日からの訪問業務やこれから訪問サービスに挑戦してみようと考えている方々の参考になればと思っています。
目次
訪問看護(リハビリ)で必要な能力5つを紹介します!
私は理学療法士の臨床経験は10年目ですが、訪問看護歴は7年目となります。
病院で勤務していた時と異なり、訪問看護の現場では自分の知識や経験が通用しない事が多々あしました。
そんな私の経験上、訪問看護のリハビリで必要な能力は以下の5つです。
1)マナー力
2)コミュニケーション力
3)アセスメント力
4)リスク管理力
5)連携力
それでは能力別に分けて細かく説明していきます。
マナー力
訪問看護(リハビリ)で利用者さんのお宅に伺う事は、生活空間に入る事になります。
自分の家は大切なプライベート空間になるため、伺う以上は厳重な配慮が必要です。
まず、人として必要なマナーができているか確認してみましょう。
- 家に入る際、チャイムを鳴らし挨拶をして入っているか。
- ドアの開け閉めや靴の揃え方は正しく行えているか。
- 身だしなみ(清潔感のある髪型や服装)は整っているか。
- 表情良く返事や相槌が出来ているか。
- 交通マナーや時間を守って訪問業務を行っているか。
利用者さんとの信頼関係を構築していくために最低限必要なマナーを5つ紹介しました。
1つでも欠けてしまうと利用者さんが不信感を抱いてしまう可能性があるので、まず社会人として当然すべき対応はしっかり行う事が重要です。
コミュニケーション力
コミュニケーションは、対人関係の中で意見や情報の交換などが重要とされています。
利用者さんはもちろん、家族やケアマネージャー、他事業所のスタッフとコミュニケーションをとる事で良質なサービス提供に繋がります。
ここで、心理学者アルバート・メラビアンによる人の行動が他人へどのような影響を及ぼすかを調べ誕生した「メラビアンの法則」では、以下のような結果が出ました。
- 言語情報:7%(話の内容)
- 聴覚情報:38%(言葉遣い、声の大きさ、話の間など)
- 視覚情報:55%(身だしなみ、表情、ジェスチャー、位置関係、距離など)
話す内容も大切ですが、それ以上に話し方や見た目が初対面の相手から好感を持たれるのに重要な要素とされています。
また、相手に対しての態度や表情、会話時の位置や距離、目線の高さなどにより相手に与える印象が変わります。
真剣なまなざしで話すか、よそを向いて話すか、無表情で話すか笑顔で話すかによって印象は大きく変わります。
当たり前の事ですが、皆さんは意識して行えていますか?
また、利用者さんによって対応を変えたりはしていませんか?
もう一度振り返ってみましょう。
アセスメント力
アセスメント力とは主に利用者さんの身体を評価する事、利用者さんを知る事が重要とされています。
身体の評価に関してはフィジカルアセスメントを行い、心身の状態を確認し、日々の変化を把握する事が訪問看護には必要です。
疾患を抱える方が訪問看護を利用されているので、症状を理解しておく事も重要です。
例えば、急性心不全や急性心筋梗塞、脳出血や脳梗塞など血管系疾患は代表的です。
- 急性心不全:不整脈、起坐呼吸、頸静脈怒張、下腿の浮腫増悪、冷汗、酸素飽和度の低下、肺の水疱音
- 急性心筋梗塞:数分間持続する胸骨後面の不快感、圧迫感、頚・首・肩・背部に広がる胸部不快感やと疼痛、冷汗、吐き気、突然の息切れ
- 脳出血:高血圧、眩暈、嘔吐、手足の痺れや脱力感、頭痛、歩行障害
- 脳梗塞:運動障害、言語障害、視覚障害、バランス障害
疾患によって症状も異なるため、悪化時のサインをしっかり把握しておきましょう。
また、主治医からは中止基準(血圧の上下限や症状の有無、脈拍数など)を事前に確認しておく事も重要です。
利用者さんによって中止基準は異なります。
基準のみで判断するのではなく、利用者さんの特徴に応じた判断がとれるように事前に情報収集しましょう。
次にリハビリのアセスメントに関しては、まずは利用者さんの想い(困っている事、叶えたい事、やりたい事など)をしっかり聴取できているか、そこから課題を挙げ、具体的な目標が設定できているかが重要です。
曖昧な目標設定にするとリハビリの内容も漠然になってしまい、成果が得られず、訪問導入が無意味なものになってしまいます。
専門職として今後の見通しが出来た状態で目標設定をするように心掛けましょう。
リスク管理力
訪問看護(リハビリ)は基本1人で家に伺いサービス提供するため、リスク管理は重要とされています。
ここで重要なのが、転倒・転落による怪我を予防する事です。
リハビリは基本体を動かす事が多いので、転倒や転落のリスクは高くなります。
転倒リスクがある方の特徴をいくつか挙げてみます。
- 片麻痺や下肢の筋力差がありバランス不良の方
- パーキンソン病の方(姿勢反射障害や突進歩行を認める方)
- 動線上に荷物や家具が置かれている方
- 血圧の変動や三半規管の問題で目眩症状を生じる方
これらの要因がリハビリ場面で多く聞かれます。
内科的な疾患が原因の場合は動作開始前により注意が必要です。
いつ転倒する可能性があるが判断ができないため、療法士は支えられる場所に位置し、利用者さんや家族には転倒の危険性がある状況や場面を説明します。
また、住宅の環境によって転倒を引き起こす可能性がある場合は、可能な範囲で家具の配置変換や荷物の整理などを推進しなければいけません。
スタッフのリスク管理も大切ですが、1日でも長く在宅生活を続けるために利用者さん・家族にリスク管理を日頃から意識して頂く事が重要です。
連携力
「連携する」というのは相手から情報を引き出す事と自身の持っている情報を提供する事で成り立っています。
課題を明確化し目標を立てるために、利用者さんや家族を含めた他職種と意見交換を行う事が重要です。
病院だと医師や専門職にすぐ相談でき、その都度いろんなスタッフの目が入る環境ですが、訪問看護(リハビリ)はそうではありません。
1人で現場に入り判断しなければいけない事が多々あります。
ここで大切な事はどんな些細な事でも事業所内・外と連携し、相談する姿勢をとる事です。
『連携力』によって、利用者さんの状態変化や在宅生活継続が大きく影響していきます。
利用者さんの情報を具体的に伝える事で利用者さん・家族からの信頼度も高まり、事業所間の関係性も良質となります。
それでは、『連携力』を身につけるにはどのようにすると良いのでしょうか?
一般的に『報(告)・連(絡)・相(談)』を使い分け、緊急度に応じて直接の対話、電話やFAX、メールなどの伝達手段を活用し、適切なタイミングで適した手段を活用する事が効果的な連携となります。
また、情報整理の手順として『5W1H』を意識する事も重要です。
- 目的:Why 「なぜ」連絡しようと考えたの?
- 概要:What 「なに」を伝えるのか?
- 対象:Who 「誰」に連絡すべきか?
- 場所:Where 「どこで」行うべきか?
- 方法:How 「どのように」行動すべきか?
そして、連携先の役割を理解しておく事も重要です。
連携する内容も職種に応じて必要な情報だけを端的に伝える事が求められます。
まず連携先の大まかな紹介をすると、主な連携先は以下の通りです。
- 主治医
- 介護支援専門員(ケアマネージャー)
- 通所サービス
- 訪問看護
- 福祉用具専門相談員
その他で病院や教育機関など利用者さんの生活に必要な機関が連携先となります。
『訪問時に収集した情報をチームで共有したい』という気持ちで業務を取り組むと自然と行動にうつせると思うので、自分から動くよう意識してみましょう。
まとめ
今回、参考資料としてこちらを活用させて頂きました。
今回は訪問看護(リハビリ)で必要な必要な能力5選を挙げさせて頂きました。
臨床経験10年経ちますが、振り返ると全てを完璧にこなす事はできていません。
今回、『今自分はこれらの能力を活用して訪問業務を行えているか』『これから訪問業務に挑戦する上で必要な事はなんだろうか』といろんな立場から振り返って頂きながら読んで頂けると幸いです。