終末期訪問看護と聞いて、みなさんはどんな印象をもちますか?
難しそう、緊張する、怖そう、穏やかに過ごすことができる、家族と過ごす時間。
印象は人それぞれですよね。
私は、病院で勤務をしていたとき終末期の看護や看取りに関わることに苦手意識がありました。
ですが、訪問看護に転職し、家族に囲まれて穏やかに終末期を過ごす利用者さんに関わったことをきっかけに終末期看護についての考えが少しずつ変わっていきました。
今も、終末期訪問看護の難しさを感じることはありますが、苦手意識はなくなりました。
終末期を自宅で過ごすことが望ましく、病院で過ごすことは良くないということではありません。
ですが、自宅でしか実現できない終末期の過ごし方があり、そこに関わることで得られるやりがいもあります。
この記事では、私の経験から考える、終末期訪問看護のやりがいを説明します。
目次
終末期訪問看護のやりがい
私が考える、終末期訪問看護のやりがいは以下の5つです。
・利用者さんの希望を叶えることができる
・利用者さんや家族の歴史に触れることができる
・家族のケアをすることができる
・自分の死生観と向き合うことができる
・エンゼルケアや葬儀までの流れを学ぶことができる
以下で詳しく説明をしていきます。
利用者さんの希望を叶えることができる
訪問看護の主役は利用者さんです。
利用者さんの意志や希望を尊重して過ごすことができる、それを支える看護ができることが訪問看護の最大の魅力ではないでしょうか。
終末期を自宅で過ごすことで、人生の最期まで利用者さんの希望を叶えることができます。
希望は、大きいものから小さいものまで人によって様々です。
家でお風呂に入りたい、気が向いたときに外に出かけたい、自分の好みのパジャマを着たい、ペットに近くにいて欲しい、お気に入りの音楽を時間を気にせずに聞きたい、好きな時に好きなものを少しだけ食べたい。
自宅では簡単に叶えられる小さな希望でも、病院という多くの人が治療をするために過ごす場所では実現が難しいこともあります。
利用者さんが自分の思いを話しやすい場を整えたり、清潔ケアや環境整備、自宅周囲への外出に関することは訪問看護師が支援できることです。
利用者さんの希望を最期まで叶えることができるのは、終末期訪問看護のやりがいの1つです。
利用者さんや家族の歴史に触れることができる
訪問看護では、訪問中は利用者さんや家族との関わりに集中することができます。
ゆっくりと関わることが出来るため、利用者さんとお話をする時間も多く持つことができます。
お話をする中で、利用者さんの生きてきた歴史やご家族とのエピソードを聞くこともできます。
また、利用者さんが過ごす家には利用者さんの趣味や歴史、価値観がつまっています。
使っているもの、置いてある家具や、飾ってあるものからも利用者さんのこだわりや歴史を知ることができます。
実際に終末期の利用者さんと関わった際に、ご家族から色々な思い出話を聞いたことがありました。
利用者さんは意識レベルが下がっていて、コミュニケーションを取ることが出来ませんでしたが、ご家族から過去のエピソードを聞くことで、利用者さんに対する理解をより深められたような気がしました。
過去を知ることで、目の前にいる利用者さんや周りにいる人、家族の関係性などを改めて理解することができます。
利用者さんの人柄が鮮明になり、その方の人生の最期に関わることの有難さを感じることができます。
家族のケアをすることができる
利用者さんの周囲にいる家族は、利用者さんを支えるチームの一員でありケアの対象です。
終末期の家族を支える家族の身体的・精神的負荷が大きくなり過ぎないようにサポートすることも終末期訪問看護の大切な役割の1つです。
訪問時に声をかけることはもちろん、訪問時に会うことは出来なくても、利用者さんの状況が伝わるようにメモを残したり、何か困っていることはないか連絡をしてみるなど家族との接点を持つことができるように心がけます。
病院で勤務していたときは、家族とコミュニケーションを取りたくても、業務や勤務帯が様々な中で家族と話す時間がなかなか取れないと感じていました。
いざ、家族と話す時間を持つことができても緊張して何を話して良いのか分からない、ということも多かったように思います。
訪問看護でも、家族が不在で接点を持つことが難しいこともありますが、利用者さんから聞く家族のお話や自宅の様子などから家族の状況を想像することもできます。
自宅に訪問するからこそできるアプローチ方法で、家族の支援をすることができるのも終末期訪問看護のやりがいの1つです。
自分の死生観と向き合うことができる
多くの人の終末期に関わることで、自分の死生観を考える機会を持つことができます。
様々な人の人生観、家族関係に触れると、生き方や家族の形はそれぞれであり、正解はないというこを感じます。
その中で、自分にとって大切なものは何か、自分はどんな風に生きて人生の最期をどんな風に過ごしたいだろうかと自然と考えるようになりました。
仕事で人の最期に関わることで、自分の死生観と向き合うことが出来ます。
自分の死生観を考えることで、終末期の利用者さんと関わるときの気持ちも変わるかもしれません。
そんな自分の変化を感じられることも、終末期訪問看護のやりがいではないでしょうか。
エンゼルケアや葬儀までの流れを学ぶことができる
自宅で看取りをした場合、利用者さん、ご家族の希望があれば訪問看護師がエンゼルケア(死後の処置)を行います。
病院では複数名で行うことができますが、訪問看護では基本的に1人で行います。
そのため、訪問看護師1人1人がエンゼルケアについての技術や知識を持っておくことが大切です。
また、亡くなってから葬儀までの一連の流れをご家族に説明し必要な準備を整えてもらえるように支援することも訪問看護師の役割の1つです。
事前に情報提供をして準備をしておくことで、いざ看取りを迎えたときにも家族が取り乱すことなく行動することができます。
エンゼルケアなどについての知識は、葬儀会社が開催している勉強会などで学ぶことができます。
地域の葬儀会社とつながりを持つことで、困ったときに相談ができる関係を築いておくこともできます。
お看取りをした後の細やかなサポートができることも、終末期訪問看護のやりがいの1つです。
まとめ
終末期訪問看護のやりがいとして、以下の5つを紹介しました。
・利用者さんの希望を叶えることができる
・利用者さんや家族の歴史に触れることができる
・家族のケアをすることができる
・自分の死生観と向き合うことができる
・エンゼルケアや葬儀までの流れを学ぶことができる
自宅で終末期を過ごすことが必ずしも望ましいということではありません。
自宅で過ごすからこそ生じる問題や工夫しなければいけないこともあります。
それでも、最期を自宅で過ごしたいと希望する利用者さんを支えるために、チームの一員として関わることで経験したことをやりがいに変えることができると思います。
訪問看護師の皆さんや、訪問看護に興味がある方にこの記事が少しでも役に立ったら嬉しいです。
これからも一緒に訪問看護の世界を盛り上げていきましょう。
人生の最期の時間に関わるのは特別なことだと思います。
終末期訪問看護のやりがいってどんなところにあるのでしょうか。