訪問看護師が提供するケアの中の1つに、利用者さんのシャワー浴や入浴の介助があります。
高齢の方や、心臓や呼吸器などの持病を持っている方は、入浴時の温度変化やお湯の水圧の影響で体調変化を起こす可能性があります。
そのような方も、看護師が入浴介助をすることで、体調管理を行いながら入浴をすることができます。
そのためには、まずは入浴のために安全な環境を作ることが重要です。
安全な環境を作るために、味方になってくれるものが福祉用具です。
この記事では、訪問看護師が知っておきたい入浴でおすすめの福祉用具を説明します。
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目次
安全な入浴のために福祉用具を使おう
入浴は身体の清潔を保ち、お湯に浸かり温まることで血液循環を良くすることができます。
ですが、浴室や入浴中は、転倒や体調変化による事故が起こる可能性も高い場所です。
利用者さんと、利用者さんのお宅の浴室環境に合った福祉用具を使用することで、安全に入浴をする環境を作ることができます。
具体的におすすめの福祉用具を紹介していきます。
シャワーチェア
シャワーチェアとは、介護用のお風呂椅子です。
一般に売られているお風呂用の椅子より、座面の位置が高く、背もたれやひじ掛けが付いているものもあります。
筋力が低下すると座面が低い椅子に座ったり、座位で姿勢を保つことが難しいため、一般のお風呂椅子では座る際に転倒したり、椅子から転落するリスクがあります。
シャワーチェアを使用すると、安全に座位姿勢を保ちながら、洗体・洗髪を行うことができます。
そのため、入浴はせずシャワー浴のみ行う方も利用することが多い福祉用具です。
使用しないときは折りたたんでおくことができます。
浴槽台
浴槽台は、浴槽に入れて椅子として使用することで、浴槽内での立ち座りを行うことができるようにする、または浴槽の手前において階段として使用し浴槽への出入りを楽にするための物です。
浴槽の底面に直接お尻を付けて座った状態から立ち上がるよりも、椅子に座った状態から立ち上がる方が水圧による負荷が少なくスムーズに立ち上がることが出来ます。
また、疾患によっては、心臓や肺に負荷をかけ過ぎないように水位を調整する必要があります。
浴槽台は足の長さが調整できるものもあるため、水位の調整も容易に行うことができます。
浴槽台の底面には、滑り止めが付いているものが多く、浴槽から取り出す際にやや力が必要です。
浴槽用手すり・バスグリップ
浴槽用手すりは、浴槽の縁に挟み込んで使用する手すりです。
浴槽をまたぐ、浴槽から立ち上がるときの手すりとして使用します。
浴室に備え付けの手すりは直線のものがほとんどですが、バスグリップはループ状になっているものもあり両手で握りやすいように工夫されています。
浴槽の縁に挟んで固定するので、取付工事が不必要ですぐに使用することができます。
すべり止めマット
すべり止めマットは、浴室床や浴槽の底に敷き、浴槽に足を入れた際や、入浴時の座った姿勢を安定させる目的で使用します。
大きさや重さも様々で、浴室の広さや浴槽のサイズに合わせて選ぶことが出来ます。
すべり止めマットも、裏に吸盤がついているものもあり、剥がす際にやや力が必要です。
バスボード
バスボードは、座ったまま浴槽に入るために、浴槽に渡す板です。
ボードに座って、片足ずつ浴槽に入れることで、座った姿勢で浴槽の出入りをすることができます。
回転座面の付いたバスボードを使用すると、身体の向きを変えるときにお尻の皮膚が擦れずに、小さな力で回転することができます。
浴槽の外寸や内寸を調べて、そのサイズにあったものを選ぶ必要があります。
シャワーキャリー・シャワー車いす
シャワーキャリー、シャワー車いすは、脱衣所や浴室で使用できる防水の車いすです。
小回りが効くように、普通の車いすよりは小さめの作りになっています。
居室で服を脱ぎ、シャワーキャリーに座ったまま浴室に入り、洗体・洗髪を行って居室に戻ることができます。
シャワーキャリー自体が濡れてしまうので、居室が濡れないようにしっかりと拭く必要はありますが、途中で移乗をする必要がないため移動中の転倒のリスクが下がります。
脱衣所と浴室に段差がある場合は、すのこなどを使用し段差解消を行うとより安全に使用することができます。
福祉用具の片付けまでが入浴介助
浴槽内で使用する浴槽台や、滑り止めマットは滑り止めや吸盤がついているものもあり、浴槽から取り出すときや片付ける際に力が必要になる場合があります。
高齢者や力の弱い方にとっては、片付け自体が負担になったり、事故の原因になることもあるでしょう。
入浴介助後は、折りたためる福祉用具はたたむ、浴槽から取り出せるものは出しておくなどの配慮が必要です。
利用者さん、またはご家族にどこまで片付けをしたら良いか事前に相談をして浴室を入浴前の状態に戻すまでが入浴介助の支援です。
浴室用福祉用具をおすすめするときに知っておきたいこと
シャワーチェアなど直接肌に触れる、入浴用の福祉用具は特定福祉用具に分類され、レンタルではなく利用者さんが購入する必要があります。
利用者さんが、全額を支払い購入した後に、介護保険の負担割合に応じて返還されるシステムです。
以前、利用者さんにシャワーチェアの使用を勧めた時に、「そんなに長く使わないだろうから、買うのはもったいない。いらないよ。」と言われた経験があります。
その時は、福祉用具の業者さんに依頼し、お試し用のシャワーチェアを貸していただき実際に使用してみました。
そのうえで、費用に関して説明をすると、使い勝手の良さを利用者さんが気に入って下さり購入に繋がったことがありました。
サービスの組み立ては、ケアマネージャーさんの業務ですが、使用するためにかかる費用やシステムを知っておくと自信を持って利用者さんに提案をすることが出来ると思います。
まとめ
訪問看護師も知っておきたい入浴におすすめの福祉用具を6つ挙げました。
同じ種類の福祉用具でも、たくさんの商品があり、様々な特徴があります。
利用者さんの身体状況や疾患に合わせて選ぶことで、より安全な入浴介助をすることが出来ます。
理学療法士や作業療法士が介入している場合は、相談しアドバイスをもらうのも良いですね。
入浴し、お湯の温かさで心と身体が緩むと、普段は聞けない利用者さんの本音を聞くことができたり、普段見られない表情を見ることができることもあります。
福祉用具を効果的に利用して、安全で心地よい入浴の時間を提供していきましょう。
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利用者さんが安全にお風呂に入るために使える福祉用具って、どんなものがあるのかな?