在宅における作業療法士(OT)の役割とは?

在宅医療・在宅介護の現場では、多職種が連携して利用者の暮らしを支えています。

その中でも作業療法士(OT)は、「住み慣れた自宅で自分らしく生活する」という目標を実現するために、欠かせない専門職のひとつです。

この記事では、在宅分野における作業療法士の主な役割を4つに分けて詳しく解説し、訪問リハビリの現場で求められるスキルや家族支援、チーム連携の重要性についても触れていきます。

訪問看護・訪問リハビリに関心のある方はぜひ参考にしてください。

 

在宅での作業療法士(OT)の4つの基本的な役割

在宅における作業療法士の役割は多岐にわたりますが、大きく分類すると以下の4つに分けることができます。

1. 健康状態や生活全体のアセスメント

作業療法士は、利用者の身体機能の状態だけでなく、日常生活の様子、精神的な面、生活環境、さらには家族の介護力やストレス状況まで、幅広い観点から情報収集と評価(アセスメント)を行います。

週に数回の訪問の中でも、顔色や口調、部屋の様子など小さな変化に目を配り、早期にリスクを察知し、チームへ報告・提案することが求められます。医師や看護師、ケアマネジャーとの情報共有を通じて、重度化や急変の予防にも貢献する重要なポジションです。

2. 実践的なADL・IADL訓練の実施

ADL(基本的日常生活動作)やIADL(手段的日常生活動作)の訓練は、作業療法士の主な業務です。在宅では、ベッドからの起き上がり、トイレや入浴動作、調理や洗濯、買い物といった、実際の生活場面での訓練を行うことができます。

病院や施設でのリハビリとは異なり、在宅リハビリは「実際に生活する場」であることが大きな特長です。そのため、より具体的で個別性の高い支援が可能になります。自宅の動線や家具の配置、家族の協力状況なども含めて支援することで、効果的な自立支援につながります。

3. 環境整備・福祉用具の選定と活用支援

作業療法士は、住環境の調整や福祉用具の活用にも深く関わります。手すりの設置位置、車いすの種類やサイズ、ベッドの高さ調整、玄関や浴室の段差対応など、利用者の状態に応じた最適な環境を提案します。

単に「福祉用具を導入する」だけでなく、実際に使いやすいか、日常生活にどのように取り入れられるか、家族が扱えるかなど、多方面から検討してサポートします。時には導入後の再調整や訓練を重ねることで、生活の質(QOL)をより良い方向へ導くこともできます。

4. 家族・介護者への助言と精神的サポート

在宅介護においては、利用者本人だけでなく、介護を担う家族への支援も欠かせません。

作業療法士は、介助方法の具体的な指導や介護中の注意点を伝えるだけでなく、家族の不安や悩みに寄り添う精神的なサポートも行います。

例えば、「どのように声かけしたら良いか分からない」「トイレ介助の負担が大きい」といった日常的な悩みに対して、現実的かつ専門的なアドバイスを提供します。

家族のストレスを軽減することは、利用者の在宅生活の継続にも大きく関わってくるため、非常に重要な役割です。

OTが担う在宅リハビリの専門性

作業療法士は、単なる運動機能の改善だけでなく、「生活全体」を対象とする専門職です。趣味活動の再開支援や認知機能の訓練、社会参加を促す関わりなど、その支援の幅は非常に広く、在宅生活をより豊かにするサポートが可能です。

また、訪問リハビリでは一対一の関係性が深まるため、信頼関係を築きやすく、心理面への影響も大きいとされています。OTならではの「その人らしい暮らし」を実現する視点が、在宅分野では特に求められています。

多職種連携の中でのOTの役割

在宅医療では、医師、看護師、理学療法士、ケアマネジャー、ヘルパーなど、多くの職種がチームで関わります。作業療法士はその中で、「生活機能」に焦点を当て、他職種が気づきにくい課題やニーズを抽出し、連携の要としての役割を果たします。

例えば、ケアマネジャーが立てたケアプランをより実行可能な形に落とし込んだり、看護師と協力して排泄ケアの方法を検討したり、リハビリ以外の場面でも積極的に意見を交わすことで、より良い在宅支援体制が築かれます。

まとめ

在宅における作業療法士の役割は、単なるリハビリの実施にとどまりません。

生活全体の視点から利用者を支え、家族への支援や住環境の調整、さらにはチーム連携まで幅広く関与します。

まとめ
  • 身体機能と生活全体を総合的にアセスメントする

  • 実生活に即したADL・IADL訓練を行う

  • 家具配置や福祉用具など環境を整える

  • 介護者への支援や心のケアも含めて関わる

  • 多職種との連携の中で、チームの橋渡し役を担う

こうした多面的な関わりを通じて、作業療法士は「自宅で自分らしく暮らしたい」という利用者の想いを形にする重要な存在です。在宅リハビリに興味がある方、作業療法士として訪問分野にチャレンジしたい方は、ぜひその魅力を再認識してみてください。

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