このような疑問をもったことはありませんか?
ヘルパーの行為は介護保険制度によって制約されており、仕事内容には制限があります。
ヘルパーは何でもしてくれるという間違ったイメージをもたれることがありますが、ヘルパーは家政婦ではありませんので、訪問介護サービスでヘルパーがやっていい事やってはいけない事は法律で決められています。
訪問看護師は、利用者さんの支援をしていると「利用者さんはこういう時困ってるけど、これはヘルパーさんに入ってもらえるのかな?」という場面に出合うこともあると思います。
訪問看護師はヘルパーとの連携をとることも多く、ヘルパーがやってはいけない事やっていい事を知っていれば利用者さんやご家族にも助言もできますので、利用者さんの生活をよりよく支援できるように、訪問看護師も是非ヘルパーがやってはいけない事についても理解を深めておきましょう!
では、ヘルパーがやってはいけない事について解説していきます。
目次
ヘルパーがやってはいけない事
訪問介護のヘルパーの行為は、「身体介護」と「生活援助」と「通院等乗降介助」の3つに分けられます。
それぞれについて説明します。
- 身体に直接接触して行なう介助サービス
- 利用者さんの日常生活動作能力や意欲の向上のために利用者さんとともに行う自立支援のためのサービス
- その他専門的知識・技術をもって行う利用者さんの日常生活上・社会生活上のためのサービス
のことをいいます。食事や排泄、入浴などの介助がこれにあたります。
身体介護以外の訪問介護であって日常生活にかかわる家事全般のことであり、利用者さんがひとり暮らしの場合やご家族が障害や疾病などによりご本人やご家族が家事を行うことが困難な場合に行われるものです。
掃除や洗濯、食事の準備や調理などがこれにあたります。
利用者さんが通院等のための乗車または降車の介助を行うことです。
ヘルパーの行為の詳細については、厚生労働省 老計10号でご確認ください。
ヘルパーの行為でしてはいけない事は、大きく次の4つに分けられます。
- ケアマネジャーのケアプランに明記されていない事
- 医行為(ただし、例外はある)
- 身体介護、生活援助以外の事
- 利用者さん以外の家族等への援助
次に、ヘルパー行為でしてはいけない事について解説していきます。
ケアマネジャーのケアプランに明記されていない
ヘルパーが何をしてくれるのかは、介護保険の訪問看護と同じようにケアマネジャーが作成したケアプランで決まっており、ケアプランにないことは利用者さんやご家族から依頼があってもしてはいけない事になっています。
医行為
ヘルパーは、基本的に医行為はできません。
医師、歯科医師、看護師等の免許を有さない者による医業(歯科医業を含む。以下 同じ。)は、医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31 条その他の関係法規によって禁止されています。
医師、歯科医師、看護師等の免許を有さないものによる医業(歯科医業を含む。以下同じ。)は、医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条その他の関係法規によって禁止されている。ここにいう「医業」とは、当該行為を行うに当たり、医師の医学的判断および技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為(医行為)を、反復継続する意思をもって行うことであると解している。
ヘルパーは次のような医行為をやってはいけない事になっています。
- インスリンの注射
- 自己導尿
- 胃ろうチューブの挿入・洗浄
- 肌に密着したパウチの交換
- カテーテルの挿入・洗浄
- 褥瘡処置
- 摘便・浣腸
- 巻き爪等変形した爪の爪切り
- 医学的判断が必要な傷の処置
- 口を開けさせて服薬を手伝う
- 1回分の薬の取り分けや処方された薬の仕分け
なかには「医行為」なのか判断に迷う行為もあります。
「医行為」ではないとされているヘルパーが行える、やってもいいケアについて次に紹介していきます。
介護現場では医療行為の線引きの認識が認知されておらず、利用者とヘルパーの間に認識のズレがありトラブルになることも多かったようで、これを解消するために厚生労働省は2005年に一部の行為を医療行為から除外する改正をしました。
改正されたのち、ヘルパーもやってもいい行為は次の通りです。
- 爪に異常がなく、専門的な管理が必要でない場合の爪切り、爪やすり
- 耳垢の除去
- 重度の歯周病等がない場合において、歯ブラシや綿棒を使用した口腔ケア
- 一包化された内服薬の服薬介助
- 皮膚への軟膏の塗布(褥瘡除く)、湿布を貼布
- 点眼薬の点眼
- 座薬の挿入
- 鼻腔への薬剤噴射
- 軽微な切り傷、擦り傷、やけど当について専門的な判断や技術を必要としない処置
- ストマパウチに溜まった排泄物を捨てる
- 自己導尿補助するためのカテーテルの準備や体位の保持
- 市販のディスポーザブルグリセリン浣腸での浣腸
- 水銀体温計・電子体温計・耳式電子体温計による腋下・外耳道での体温測定
- 自動血圧測定器による血圧測定
- パルスオキシメーターの装着
例外に医行為でもヘルパーに許可されているものがあります。
2012年には一定の研修を受けたヘルパーは、定められた条件下においては「喀痰吸引」と「経管栄養」は実施できることになりました。
身体介護でやってはいけない事
ヘルパーの行為は、「身体介護」「生活援助」「通院等乗降介助」でありますが、「身体介護」や「生活援助」の中でもできないこと、制限されていることがあります。
「身体介護」でヘルパーがやってはいけない事は以下のとおりです。
- 散髪
- ヘルパーが運転する車での外出
- ご本人の代わりに医師に説明したり、説明を受ける
- 入院中の付き添い
- ご家族に代わり入院や手術の同意や手続き
- 娯楽・趣味・散策・地域の行事や冠婚葬祭への外出
等です。
生活援助でやってはいけない事
次に、「生活援助」でヘルパーがやってはいけない事は以下の通りになります。
- 利用者さん以外の食事を作る
- 正月や節句等の特別な季節料理や手の込んだ料理
- 本人が使わない部屋やベランダや庭の掃除
- 家電・家具の移動や修理
- 自家用車の洗車や清掃
- デパートなどへの付き添い
- 家族分の買い物
- 車の運転の代行
- 預貯金の引き下ろし代行
- 草むしり・植木や草花の手入れ
- ペットの世話や散歩
- 金銭や貴重品の管理
- 利用者さんが留守の状態でのサービス
- 利用者さん以外の洗濯
- 酒やたばこなどの嗜好品の買い物
- 電球の取り換え
等です。
利用者さんは、ヘルパーは何でもしてくれる人だと勘違いしている場合も多いので、ヘルパーの行為には制限があり、利用者さんに聞かれた時などにはやってはいけない事について助言できるといいですね!
ヘルパーがやってはいけない事やっていい事は、市区町村によって独自ルールがあり、ヘルパーの支援範囲が異なりますので、それぞれの市区町村に確認してみてください。
まとめ
今回は、ヘルパーのやってはいけない事について解説しました。
現在国が進めている、住み慣れた街で長く暮らすことを目的とした「地域包括ケア」がというものがあります。
介護が必要になった人たちを、住み慣れた家でサービス環境を整え今までと同じように生活できることを推進していますので、これからもっと将来的にも訪問看護、訪問介護は主流となってくると予測できます。
訪問看護師はヘルパーとの連携は欠かせないものとなりますので、ヘルパーのやってはいけない事やっていい事も知っておき、幅広い知識で利用者さんを多角的に支援していきましょう。