
「乳児と関わる時、どう対応するのが正解なのか分からない」
訪問の現場で、こんなお悩みを感じたことはありませんか?
乳児期は心も体もものすごいスピードで成長する時期であり、関わり方ひとつで発達に大きな影響を与えることがあります。
それだけに、どんな関わりが必要なのかを知っているかどうかが、とても重要になってきます。
そこで今回は、「子供の権利」と「乳児期」、さらに「どんな視点で関われば良いか」について、現場経験を交えて分かりやすくお伝えしていきます。
乳児との関わりに自信を持ちたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
子供とは?
皆様は「子供」と聞いて、どのようなイメージをお持ちでしょうか?
私が考える子供の特徴について、まずは4つ挙げさせていただきます。
1. 幅広い年齢層と発達段階・発達課題
子供は赤ちゃんから高校生までと非常に幅広い年齢層を含みます。
そのため、それぞれに発達段階や発達課題があるということです。
小児の対象年齢は一般的に0歳から15歳までとされていますが、赤ちゃんと高校生では当然ながら対応が全く異なります。
それぞれの発達段階や発達課題をしっかりと踏まえた上で関わる必要があります。
2. 親の付属物ではない、一人の人間
子供は「親の付属物ではない」ということです。
歴史的背景を辿ると、子供は親の所有物であるという認識が強かった時代もありました。
しかし、現代では子供自身の個人としての尊厳や人権が重視されるようになり、「親の付属物ではない」という考え方が主流になっています。
3. 様々な個性とニーズを持つ存在
健常児だけでなく、特別な医療的課題を持つ子供など、様々な子供たちがいます。
健常児とは、特に病気などがなく成長しているお子さんのことです。
一方、特別な医療的課題を持つ子供と聞いて、具体的にどんなお子さんを想像されるでしょうか。
最近では、気管切開をしていたり、胃ろうがついている「医療的ケア児」と呼ばれたりするお子さんたちがいます。
その他にも、発達障害を持つお子さんや、心に何らかの疾患を抱えるお子さんなど、本当に様々なお子さんがいらっしゃいます。
4. 著しい身体的・認知的発達
最後は、子供は身体的にも認知的にも発達が非常に著しい時期であるということです。
これは皆様もイメージしやすいかと思いますが、大人に比べて子供は身体の成長も、物事を理解し吸収する認知的な発達も非常にスピーディーです。
子供の人権を守るために
子供の権利に関する取り決めや子供憲章など、時代背景と共に様々なものが整備されてきました。
今回は、その中でも最も新しい日本の法律である「子供基本法」についてご紹介します。
子供基本法の目的
この法律は、令和5年4月1日に施行されたものです。
その目的を簡単にお伝えすると…
というものです。
少し難しい表現かもしれませんが、要するに、全ての子供たちが幸せに成長できる社会を作るための法律です。
もしお時間がある方やご興味のある方は、ぜひこの子供基本法について少し調べてみてください。
日本がどのように子供を守ろうとしているのか、児童福祉法などがどのように制定されてきたのか、その背景がより深く理解できるかと思います。
子供基本法の4つの基本理念(4原則)
子供基本法には、重要な4つの原則があります。
差別の禁止
肌の色、人種、病気や障害の有無などで子供を差別してはいけない、という原則です。
日本では人種差別はあまり馴染みがないかもしれませんが、海外では深刻な問題となることもあります。
どのような背景を持つ子供も差別されることなく、等しく尊重されるべきです。
生命、生存及び発達に対する権利
これは子供の「生きる権利」を保障するものです。
安全な環境で健やかに成長し、発達していく権利が含まれています。
児童の意見の尊重
子供が自分の意見を表明する権利、いわゆる「参加する権利」を大切にする考え方です。
例えば、病院での治療において、子供自身が治療を受けるかどうかの意思決定に参加できる、といったことが挙げられます。
少し前までは、子供に関する決定は家族が強く握っていましたが、今は子供自身の意見も尊重されるようになっています。
児童の最善の利益
子供がその子らしく幸せに生き、将来をより良く過ごせるために、何が最も良いのかを考えて行動するという原則です。
将来を見据えた視点が重要になります。
親子さんと一緒に、どうすればこの子にとって将来的に幸せな道が開けるのかを考えていくことが求められます。
発達段階別の特徴と関わり方
ここからは、具体的な発達段階別の特徴と関わり方について解説していきます。
今回は「乳児期」、つまり0歳から1歳までのお子さんについてです。
乳児期の発達課題
ピアジェの発達段階では「感覚運動期」にあたり、エリクソンの心理社会的発達段階では「基本的信頼 対 基本的不信」が発達課題として挙げられます。
この時期で最も大切なのは、「自分の欲求を満たし、応えてくれる存在がいるかどうか」ということです。
主に親との愛着関係、いわゆる「アタッチメント」が、子供が生きていく上での基礎となります。
身体的成長と運動機能の発達
乳児期には、1歳になる頃には出生時の体重の約3倍、身長は約1.5倍にまで著しく成長します。
例えば、出生時から1歳で体重3000gから約9kgに、身長50cmから約75cmにまで成長します。
中枢神経や筋肉、感覚機能の発達に伴い、運動機能も急速に発達します。
新生児期には仰向けの状態だったのが、首がすわり、寝返りができるようになり、お座りやハイハイへと進んでいきます。
さらに、自分の意思で手を伸ばしたり、物を握ったりつまんだりといった「微細運動」もできるようになります。
おもちゃを繰り返し落としたり叩いたりといった行動を通して、試行錯誤しながら様々なことを学んでいくのです。
認知発達
認知発達の面では、この時期は「対象の永続性(目の前にないものを認知する能力)」がまだ十分に獲得できていません。
そのため、触ったり、見たり、なめたりといった五感を通して、自分を取り巻く世界を認識していくのが特徴です。
心理社会的発達
心理社会的発達では、「基本的信頼」を獲得していくことが大きな課題です。
赤ちゃんは、泣いたり声を上げたりすることで、「お腹が空いたよ」「眠たいよ」といった自分の欲求を周囲に知らせます。
その欲求がタイミングよく満たされることで安心感を得て、人への信頼感、つまり基本的信頼を育んでいくのです。
親との愛着について
ここで重要になるのが、ボールビーが提唱した「愛着形成(アタッチメント)」です。
どんな時も自分の欲求を満たしてくれる親の存在や、安定した母子関係が築かれていれば、子供は安心して周囲の環境を探求し、他者との対人関係を広げていけるようになります。
訪問看護師として乳児期のお子さんと関わる際には、まず親子関係が安定しているかをアセスメントすることが非常に重要です。
もし「基本的不信」が上回ったら?
エリクソンの言う「基本的信頼」を獲得できず、「基本的不信」が上回ってしまった子供は、どのようになるのでしょうか。
乳児期にネグレクトを受けたお子さんなどで、基本的不信が優勢になっているケースもあります。
このようなお子さんの特徴として、
- 「泣かない」ことが多い
- 「抱っこを嫌がる」傾向
- 赤ちゃん特有の「おぎゃーおぎゃー」という泣き方ではなく、少し甲高い、キーキー声に近いような泣き方をするお子さんが多い
基本的不信が上回ってしまうと、自分の世界に閉じこもってしまうお子さんが多く、自閉的な傾向が見られると言われています。
こちらからあやしたり、抱っこしようとしたりといった外部からの介入を強く拒むような様子が見られることがあります。
このような状態になる前に、ネグレクトの疑いがあるお子さんには早期の介入が必要です。
エリクソンの理論では、この「基本的信頼」を獲得しないと、次の発達段階に進めないとされています。
つまり、基本的信頼が築かれないままでは、その後の自主性や自立性の発達も阻害されてしまう可能性があるのです。
乳児期のお子さんとの関わりの4つのポイント
では、乳児期のお子さんと関わる上で、具体的にどのような点に注意すれば良いのでしょうか。4つのポイントにまとめました。
親が最大限に子供と関われるように配慮する
お子さんに医療的なデバイス(チューブや機器など)がついていると、親御さんが「抱っこするのが怖い」「壊してしまうのではないか」と不安を感じ、関わることをためらってしまうことがあります。
在宅看護では、そのような親御さんの不安を理解し、どうすれば安全に、そして安心して子供と触れ合えるか、関われるようになるかを一緒に考え、支援していくことが大切です。
これが在宅看護の醍醐味の一つでもあります。
親の不安を軽減する
1つ目のポイントと関連しますが、親御さんが何に不安を感じているのか、何を心配しているのかを丁寧に聴き取り、その不安を解消できるよう働きかけることが重要です。
不安を軽減しつつ、子供との愛着形成(アタッチメント)が促されるように関わっていきましょう。
普段のルーティンを確認し最大限に継続できるようにする
訪問看護が入ることによって、ご家族の生活スケジュールに調整が必要になることがあります。
例えば、お子さんが寝ている時間に訪問してお風呂に入れる、といったことは避けたいですよね。
また、「この時間はお母さんと子供二人だけでゆっくり触れ合いたいから訪問を控えてほしい」といったご要望があれば、その時間は確保するように配慮しましょう。
ご家庭の普段のルーティンを最初にしっかりと確認し、それをできるだけ崩さないように、1日のスケジュールが円滑に進むように支援できると良いでしょう。
五感への刺激に配慮する
乳児期はピアジェの言う「感覚運動期」であり、子供は触れたもの、舐めたもの、見たものといった五感を通して世界を認識しています。
この感覚を大切にしてあげましょう。
視覚
明るすぎる、あるいは真っ暗すぎる部屋は子供にとって良くない場合があります。
訪問した際に、部屋の明るさが適切かどうかも確認しましょう。
聴覚
騒がしすぎないか、子供が心地よいと感じる音環境か(例えばオルゴールが鳴っていたり、安心するおもちゃの音があるかなど)も大切です。
味覚
この時期はミルクが主食ですが、離乳食が進めば子供の好きなものに配慮すると良いでしょう。
嗅覚
お家やお母さんの匂いは子供を安心させます。
敏感なお子さんだと、匂いが変わるだけで機嫌が悪くなったり、重症心身障害児のお子さんでは筋緊張が入ってしまったりすることもあります。
香水など、普段嗅ぎ慣れない強い匂いは避けるように配慮しましょう。
まとめ
今回は、「子供の権利」と「乳児期の発達と関わり」についてお話しさせていただきました。
第2弾では、幼児期から学童期のお子さんについてお話しさせていただく予定です。
何かご質問や、分からないケアなどがありましたら、お気軽にお寄せいただければと思います。
また次回、お会いしましょう。
ありがとうございました。
動画で勉強する



















