訪問看護ターミナルケア療養費とは?算定要件・料金・留意点を解説【医療保険】

「医療保険の訪問看護で看取りをした。でも、ターミナルケアに関する加算が取れているかどうかよくわからない」。そんな疑問を持つ訪問看護師・管理者は少なくありません。介護保険のターミナルケア加算はよく知られていますが、医療保険にも「訪問看護ターミナルケア療養費」という独自の評価があります。

この記事では、訪問看護ターミナルケア療養費の概要・1と2の違い・算定要件・料金・留意点を体系的に解説します。令和8年度診療報酬改定(令和8年6月施行)での変更点も含めて最新情報をお届けします。算定ミスをなくし、現場での看取りを正しく評価につなげるために、ぜひ最後までご確認ください。

この記事でわかること
  • 訪問看護ターミナルケア療養費(医療保険)の概要・目的
  • ターミナルケア療養費1と2の違いと、それぞれの算定対象
  • 料金・算定要件・留意点(令和8年度改定対応)
  • 実務でよくある疑問点(Q&A形式)

訪問看護ターミナルケア療養費とは?【医療保険】

訪問看護ターミナルケア療養費は、主治医との連携のもとに、訪問看護ステーションの看護師等が在宅等での終末期の看護を提供した場合に算定できる医療保険の費用です。

介護保険では「ターミナルケア加算」という形で評価されますが、医療保険では別体系の「訪問看護ターミナルケア療養費」として独立した費用が設けられています。在宅での看取りを支える訪問看護ステーションの役割を正当に評価するためのしくみです。

看護師 上妻
看護師 上妻

介護保険のターミナルケア加算と混同されがちですが、医療保険は「訪問看護ターミナルケア療養費」という独立した費用です。算定できる場面・要件が異なるので、しっかり区別して理解しておきましょう。

算定できる具体的な場面

具体的には、以下の条件をすべて満たした場合に算定できます。

  • 主治医の指示により訪問看護を実施していること
  • 死亡日および死亡日前14日以内の計15日間に、訪問看護基本療養費・精神科訪問看護基本療養費・退院支援指導加算のいずれかを合わせて2回以上算定していること
  • 訪問看護におけるターミナルケアの支援体制について、利用者・家族等に説明した上でターミナルケアを実施していること
POINT:令和8年度改定のポイント

令和8年度診療報酬改定(令和8年6月施行)では、算定回数のカウントに「退院支援指導加算」が新たに追加されました。退院日にターミナルケアに係る療養上必要な指導を行っている場合は、退院支援指導加算の算定を2回のうちの1回としてカウントできます。在宅での看取り移行を支える実態に即した要件緩和です。

訪問看護師が在宅で利用者と家族をサポートする様子

訪問看護ターミナルケア療養費1と2の違い

訪問看護ターミナルケア療養費には「1」と「2」の2種類があります。違いは利用者が亡くなった場所と、介護保険の看取り介護加算等を算定しているかどうかによって分かれます。

区分 算定対象となる利用者 料金
訪問看護ターミナルケア療養費1 在宅で死亡した利用者、または特別養護老人ホーム等で死亡した利用者のうち、看取り介護加算等を算定していない利用者(ターミナルケア後24時間以内に在宅・特別養護老人ホーム等以外で死亡した者を含む) 25,000円
訪問看護ターミナルケア療養費2 特別養護老人ホーム等で死亡した利用者のうち、介護保険の看取り介護加算等を算定している利用者(ターミナルケア後24時間以内に特別養護老人ホーム等以外で死亡した者を含む) 10,000円

在宅での看取りが療養費1(25,000円)、施設(特別養護老人ホーム等)で介護保険の看取り加算が並行して算定される場合は療養費2(10,000円)と理解しておくと整理しやすいでしょう。

「特別養護老人ホーム等」の範囲

療養費1・2の区分で登場する「特別養護老人ホーム等」とは、以下の施設を指します。

  • 指定特定施設(有料老人ホーム、軽費老人ホーム、養護老人ホームなど)
  • 指定認知症対応型共同生活介護事業所(認知症高齢者グループホーム)
  • 指定介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)

「看取り介護加算等」の範囲

療養費2の区分となる「看取り介護加算等」とは、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)別表の1に規定する看取り介護加算、その他これに相当する加算を指します。

看護師 上妻
看護師 上妻

「在宅で亡くなったなら療養費1」とシンプルに覚えるのが実務的です。施設入居中の利用者の場合は、その施設が介護保険の看取り介護加算等を算定しているかどうかで1か2かが変わります。必ず施設側に確認しておきましょう。

訪問看護ターミナルケア療養費の算定要件

算定するためには以下の要件をすべて満たす必要があります。

算定要件(すべて満たすこと)
  • 主治医との連携のもと、訪問看護ステーションの看護師等が在宅等での終末期の看護を提供すること
  • ターミナルケアの実施にあたり、厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容を踏まえ、利用者・家族等と十分な話し合いを行い、利用者本人の意思決定を基本に対応すること
  • 死亡した利用者について、死亡日および死亡日前14日以内の計15日間に、訪問看護基本療養費・精神科訪問看護基本療養費・退院支援指導加算のいずれかを合わせて2回以上算定していること
  • 訪問看護におけるターミナルケアの支援体制(訪問看護ステーションの連絡担当者の氏名・連絡先電話番号・緊急時の注意事項等)について利用者・家族等に説明した上でターミナルケアを行うこと
  • 死亡した場所および死亡時刻等を訪問看護記録書に記録すること

算定回数の考え方:「2回以上」の数え方

「計15日間に2回以上」という条件は、2日以上訪問している必要がある点に注意が必要です。同一日に2回訪問した場合でも「1回」としてカウントされます。つまり、死亡日および前14日以内に異なる2日以上で訪問しているかどうかが重要です。

注意

同一日に複数回訪問しても「1回」のカウントです。たとえば死亡日の前日に2回訪問していても、それだけでは2回の要件を満たしません。異なる2日以上での訪問が必要です。

介護保険と医療保険が混在するケース

1つの訪問看護ステーションが、死亡日および死亡日前14日以内に介護保険・医療保険の訪問看護をそれぞれ1日以上実施した場合は、最後に実施した訪問看護が医療保険による場合に、訪問看護ターミナルケア療養費を算定できます。介護保険と医療保険の訪問回数は合算して「2回以上」かを判断します。

訪問看護師と医師が連携して看護計画を確認している様子

訪問看護ターミナルケア療養費の留意点

実務では以下の留意点を必ず確認しておきましょう。

他ステーション・医療機関との重複算定は不可

同一の利用者に対して、他の訪問看護ステーションが訪問看護ターミナルケア療養費を算定している場合や、保険医療機関が在宅ターミナルケア加算・同一建物居住者ターミナルケア加算を算定している場合は、重複して算定できません。

注意:重複算定不可

複数のステーションが関わっているケースでは、どのステーションが算定するかを事前に確認・調整しておくことが重要です。算定漏れや二重請求のリスクを防ぐために、ケアマネジャーや主治医と連携しておきましょう。

「在宅以外での死亡」も含まれる場合がある

ターミナルケアを実施した後、24時間以内に在宅や特別養護老人ホーム等以外で死亡した場合も、ターミナルケア療養費の算定対象に含まれます。たとえば在宅でターミナルケアを行っていた利用者が、その後病院へ搬送されて亡くなった場合でも、24時間以内であれば対象です。

訪問看護記録書への記録が必須

死亡した場所と死亡時刻等を訪問看護記録書に記録することが算定の要件です。記録がなければ算定の根拠がなくなるため、看取りを行った際は必ずその日のうちに記録を残す習慣をチームで徹底してください。

遠隔死亡診断補助加算(令和8年度改定)

令和8年度診療報酬改定では、特別地域に居住する利用者について、情報通信機器(ICT)を利用した在宅での看取りに係る研修を受けた看護師が主治医の死亡診断を補助した場合に算定できる「遠隔死亡診断補助加算」も設けられています。離島・へき地等での看取りを支援するための評価です。

ターミナルケア療養費の算定フロー

算定までの流れを整理しておくと、実務でのチェックがしやすくなります。

  1. 主治医の指示書を確認訪問看護指示書に基づき、主治医と連携してターミナルケアを計画・開始します。
  2. 利用者・家族への支援体制の説明訪問看護ステーションの連絡担当者の氏名・連絡先・緊急時の注意事項等を説明し、理解を得た上でターミナルケアを実施します。
  3. 「人生の最終段階」のガイドラインに基づく意思確認厚生労働省ガイドラインの内容を踏まえ、利用者本人の意思決定を尊重しながら、家族・他職種と連携して対応します。
  4. 死亡日および前14日間の訪問実績を確認2日以上(合計2回以上)の訪問看護基本療養費・精神科訪問看護基本療養費・退院支援指導加算の算定があるかを確認します。
  5. 看取り後の記録死亡した場所・死亡時刻等を訪問看護記録書に記録します。
  6. ターミナルケア療養費1または2を算定亡くなった場所・看取り介護加算等の算定状況を確認し、療養費1か2かを判断して請求します。

介護保険のターミナルケア加算との比較

医療保険と介護保険では、ターミナルケアに関する評価のしくみが異なります。両者を正しく理解しておくことが、適切な算定につながります。

項目 訪問看護ターミナルケア療養費(医療保険) ターミナルケア加算(介護保険)
根拠となる保険制度 医療保険(訪問看護療養費) 介護保険(訪問看護費)
算定の名称 訪問看護ターミナルケア療養費1・2 ターミナルケア加算
算定額の目安 療養費1:25,000円
療養費2:10,000円
2,000単位(令和6年度介護報酬改定)
訪問回数の要件 死亡日・前14日以内の計15日間に2日以上の訪問(訪問看護基本療養費等を2回以上算定) 死亡日・前14日以内に2回以上のターミナルケアの実施
主治医との連携 必須(指示書に基づく) 必須(指示書に基づく)
記録の義務 死亡場所・死亡時刻等を訪問看護記録書に記録 ターミナルケアに関する計画・記録
看護師 上妻
看護師 上妻

どちらの保険が適用されているかによって、算定できる費用の名称・金額・要件が変わります。特に医療保険・介護保険が混在する時期は、最後に算定した保険の種類に注目して、どちらで請求するかを確認するのがポイントです。

よくある質問(Q&A)

ターミナルケア療養費は、在宅以外(病院など)で亡くなった場合でも算定できますか?

ターミナルケアを行った後、24時間以内に在宅や特別養護老人ホーム等以外(病院など)で亡くなった場合も算定対象に含まれます。これは平成22年度の改定で要件緩和されたもので、在宅でのターミナルケアを実施していたにもかかわらず最終的に病院で亡くなるケースも適切に評価されるようになっています。

死亡日の前日に2回訪問した場合、2回以上の要件を満たしますか?

満たしません。同一日の複数回訪問は「1回」としてカウントします。死亡日および死亡日前14日以内の計15日間に、異なる2日以上で訪問していることが必要です。たとえば死亡日の前日に1回・その前日(前々日)に1回の訪問があれば、2日以上の訪問として要件を満たします。

死亡日前14日以内に介護保険で1回・医療保険で1回訪問した場合、ターミナルケア療養費は算定できますか?

算定できます。介護保険と医療保険の訪問回数を合算して2回以上とカウントし、最後に実施した訪問が医療保険による場合に訪問看護ターミナルケア療養費を算定できます。

もともと介護保険適用の利用者が、特別訪問看護指示書により医療保険で訪問看護を実施中に亡くなった場合、どちらの保険で請求しますか?

この場合は医療保険での請求となります。特別訪問看護指示書が交付されている期間中は医療保険による訪問看護が行われているため、介護保険による訪問看護は1回も行われていないことになります。したがって「最後に訪問看護を行った保険」は医療保険となり、医療保険でのターミナルケア療養費の請求が適切です。

他の訪問看護ステーションが関わっている場合、どのステーションが算定しますか?

同一の利用者に対して、他の訪問看護ステーションがすでにターミナルケア療養費を算定している場合は、重複して算定できません。複数のステーションが関わっているケースでは、事前にどのステーションが算定するかを確認・調整しておくことが重要です。ケアマネジャーや主治医を交えて連携しておきましょう。

退院支援指導加算は2回の算定のうちの1回にカウントできますか?

令和8年度診療報酬改定(令和8年6月施行)より、退院支援指導加算が算定回数のカウント対象に追加されました。ただし、退院支援指導加算を1回としてカウントする場合は、退院日にターミナルケアに係る療養上必要な指導を行っていることが条件です。

訪問看護ターミナルケア療養費まとめ図解
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まとめ|訪問看護ターミナルケア療養費を正しく算定するために

訪問看護ターミナルケア療養費は、在宅での看取りを支えた訪問看護ステーションの役割を正当に評価するための医療保険の費用です。単に訪問するだけでなく、主治医との連携・利用者本人の意思決定支援・支援体制の説明・適切な記録という一連のプロセスを丁寧に踏んでこそ算定できるものです。

この記事のまとめ
  • 訪問看護ターミナルケア療養費は医療保険の費用。療養費1(25,000円)は在宅死亡や看取り介護加算等なしの施設死亡、療養費2(10,000円)は施設で看取り介護加算等を算定している場合が対象
  • 算定要件:死亡日および前14日以内に2日以上の訪問(訪問看護基本療養費等を2回以上算定)+支援体制の説明+訪問看護記録書への記録が必須
  • 令和8年度改定では退院支援指導加算が算定回数にカウント追加(令和8年6月施行)
  • 同一日の複数回訪問は「1回」とカウント。異なる2日以上の訪問が要件
  • 介護保険・医療保険が混在するケースは「最後に訪問した保険」で請求を判断する
  • 他ステーション・医療機関が同一利用者のターミナルケア加算等を算定している場合は重複算定不可

看取りの場面では、利用者・家族への支援と並行して算定要件の確認・記録の徹底を習慣化することが、ステーション全体の質向上にもつながります。

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