【令和9年度改定】訪問看護3団体が処遇改善と報酬確保を要望

日本看護協会・日本訪問看護財団・全国訪問看護事業協会の3団体は2026年7月13日、連名で厚生労働省老健局長に「令和9年度介護報酬改定に関する要望書」を提出しました。求めたのは全ての訪問看護師の処遇改善訪問看護事業所の安定的な運営を支える介護報酬の確保の2点です。

令和9年度改定に向けた業界団体側からの要望活動の第一弾にあたります。まだ「要望」段階であり決定事項ではありませんが、今後の社会保障審議会介護給付費分科会での議論の出発点となる動きのため、経営者・管理者は要望の内容と背景データを押さえておく価値があります。

この記事でわかること
  • 誰が・いつ・誰に・何を要望したのか(5W1H)
  • 要望の背景にある求人倍率・給与差・赤字経営の実態データ
  • 訪問看護ステーション経営への現時点での影響
  • 今から経営者・管理者がやるべき実務対応

何が決まったのか(要望の概要)

2026年7月13日、日本看護協会(会長:秋山智弥氏、会員70万人)・日本訪問看護財団(理事長:田村やよひ氏)・全国訪問看護事業協会(会長:中島正治氏)の3団体は「訪問看護推進連携会議」として連名し、厚生労働省老健局長・黒田秀郎氏に「令和9年度介護報酬改定に関する要望書」を提出しました。この時点では決定事項ではなく、あくまで業界団体からの要望である点に注意してください。

項目内容
提出日2026年(令和8年)7月13日
提出団体訪問看護推進連携会議(日本看護協会・日本訪問看護財団・全国訪問看護事業協会の3団体連名)
提出先厚生労働省 老健局長 黒田秀郎氏
要望書名令和9年度介護報酬改定に関する要望書
要望事項①全ての訪問看護師の処遇改善 ②訪問看護事業所の安定的な運営を支える介護報酬の確保
看護師 上妻
看護師 上妻

今回は要望を「出した」段階のニュースです。金額や単位数が決まったわけではないので、続報が出るまでは焦らず動向を見守りましょう。

内容の詳細|要望の背景にあるデータ

要望書では、2040年に向けて85歳以上人口の増加と生産年齢人口の減少が見込まれる中、在宅療養を支える訪問看護の体制強化・人材確保が不可欠だとした上で、次の実態データを根拠として示しています。

指標数値出典
訪問看護ステーションの求人倍率4.54倍(令和6年度)※病院・介護施設等より高水準日本看護協会「看護職の求職・求人・就職に関する分析報告書」
訪問看護事業所の赤字割合38.2%(令和6年度決算・全サービス平均37.5%を上回る)第249回介護給付費分科会 資料1(令和7年度介護事業経営概況調査)
訪問看護の収支差率令和5年度11.9%→令和6年度10.3%(▲1.6ポイント)同上
収入に対する給与費の割合令和5年度68.7%→令和6年度70.1%(+1.4ポイント)同上
看護職員の給与(月額・税込給与総額)病院409,436円/訪問看護ステーション383,262円/介護施設373,528円日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査」
全産業と医療・福祉分野の給与差全産業355,941円/医療・福祉318,371円(差37,570円・10.6%、2025年)毎月勤労統計調査(厚生労働省)

令和8(2026)年度介護報酬改定では、介護職員等処遇改善加算の対象に新たに訪問看護ステーション等が加わり、多くのサービスで加算率が引き上げられました。それでも他産業との給与差は拡大しており、他産業への人材流出が強く懸念される状況にあると要望書は指摘しています。

POINT|要望時の発言

秋山会長:「在宅医療を支える訪問看護を持続可能なものとするためには、他産業と医療・福祉分野の給与差の拡大による看護職の人材流出を防ぎ、処遇改善とそのための原資を確保することが喫緊の課題である」

黒田老健局長:「訪問看護は大切なサービスであり、光が当たることが大事だと思っている。訪問看護・訪問介護など在宅を支えていくことは新たな地域医療構想のテーマでもあり、ぜひ3団体の力添えをいただきたい」

訪問看護ステーションへの影響

現時点で単位数・加算率などの具体的な数値変更が決まったわけではありません。今回の要望は、令和9年度改定に向けた業界側からの要望活動の第一弾であり、今後は社会保障審議会介護給付費分科会での審議を経て、早ければ令和8年内〜令和9年にかけて改定の方向性が固まっていく見込みです(介護報酬改定は3年に1度実施されるサイクルが一般的で、令和6年度改定の次は令和9年度改定にあたります=確度高・公知の制度サイクル)。

経営者・管理者にとっての意味合いは次の通りです。

  • 処遇改善加算の対象拡大・加算率のさらなる引き上げが議論される可能性がある
  • 訪問看護事業所の赤字割合38.2%という数字は、今後の基本報酬・加算設計の議論で経営側の主張の根拠になり得る
  • 一方で、要望がそのまま反映される保証はなく、財源論・他サービスとのバランスの中で議論される
看護師 上妻
看護師 上妻

求人倍率4.54倍というのは体感どおりですね。今回のデータは、自事業所の採用・処遇の現状を数値で振り返るきっかけにもなりそうです。

今からやるべき実務対応

  1. 自事業所の収支差率・給与水準を把握する今回の要望書にある全国平均データ(収支差率10.3%、赤字割合38.2%等)と自事業所の数値を比較し、現在地を把握しておきましょう。
  2. 処遇改善加算の届出状況を再確認する令和8年度改定で対象拡大・加算率引き上げがあった処遇改善加算について、自事業所が最大限活用できているか確認しておくと、次の改定議論にも備えやすくなります。
  3. 審議会の議論を継続的にウォッチする社会保障審議会介護給付費分科会の資料は厚生労働省サイトで公開されます。続報が出た際に読み解けるよう、今回の要望内容を押さえておきましょう。
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処遇改善加算の内容や、令和8年度改定の全体像をあわせて確認しておくと、今回の要望の位置づけがより理解しやすくなります。

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まとめ|今は「要望」段階、続報の審議動向を注視

今回のニュースは、業界3団体が令和9年度介護報酬改定に向けて処遇改善と報酬確保を求める要望書を提出したという「要望段階」の動きです。数値が確定したわけではありませんが、業界側の主張の方向性を知るうえで重要な一歩といえます。

この記事のまとめ
  • 2026年7月13日、日本看護協会・日本訪問看護財団・全国訪問看護事業協会の3団体が厚労省老健局長に要望書を提出
  • 要望事項は「全ての訪問看護師の処遇改善」「訪問看護事業所の安定的な運営を支える介護報酬の確保」の2点
  • 背景には求人倍率4.54倍・赤字割合38.2%・他産業との給与差拡大などの実態データがある
  • 決定事項ではなく、今後の社会保障審議会介護給付費分科会での審議を注視する必要がある

次の改定議論の材料として、自事業所の処遇・収支状況を今のうちに整理しておきましょう。

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今回の要望はいつから制度に反映されますか?

本稿作成時点(2026年7月)では未定です。今回はあくまで業界団体からの要望書提出であり、今後は社会保障審議会介護給付費分科会での審議を経て、令和9年度(2027年度)介護報酬改定に向けた検討が進められる見込みです。

「全ての訪問看護師の処遇改善」とはどういう意味ですか?

令和8年度改定で処遇改善加算の対象に訪問看護ステーションが加わりましたが、それでも他産業との給与差は拡大しています。要望書は、加算の枠組みにとどまらず訪問看護師全体の処遇改善と、それを支える原資(介護報酬)の確保を求める趣旨です。

訪問看護事業所の赤字割合38.2%とはどのようなデータですか?

第249回介護給付費分科会に提出された「令和7年度介護事業経営概況調査」(令和6年度決算ベース)による数値で、全サービス平均の赤字割合37.5%を上回っています。訪問看護の収支差率も令和5年度11.9%から令和6年度10.3%へと1.6ポイント悪化しています。

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