「訪問看護でリハビリをしてもらえる」と聞いても、実際にどんなことをするのか具体的なイメージがわきにくいという声をよく聞きます。訪問看護でのリハビリは、単に体を動かす運動訓練だけでなく、状態観察やバイタル測定とセットで行われる看護業務の一環です。
この記事では、訪問看護でのリハビリの一連の流れと、算定上のルールを丁寧にわかりやすく解説します。
- 訪問看護でのリハビリの位置づけ
- 訪問時の状態観察・バイタル測定の内容
- 訪問看護計画書との関係
- 実際のリハビリ内容の具体例
- 算定上のルール(時間・回数・モニタリング)
目次
訪問看護でのリハビリとは?
訪問看護でのリハビリは、看護業務の一環として、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が提供するものです。多くの訪問看護ステーションでは3職種すべてが揃っているわけではないため、在籍しているセラピストが職種の垣根を超えて柔軟に対応する場面も少なくありません。在籍職種が限られる中でも、利用者の状態やニーズに応じて必要な視点を補い合う体制を整えておくことが、サービスの質を保つうえで重要です。
算定上のルール
理学療法士等による訪問看護には、いくつかの算定上のルールがあります。
- 1回あたり20分以上の実施が必要
- 1人の利用者につき週6回を限度として算定
- 訪問看護のリハビリを継続利用する場合、おおむね3か月に1回、看護職員によるモニタリング(同行訪問等)が必要
3か月に1回の看護職員によるモニタリングは見落とされやすいルールです。セラピストのみの訪問が続き、看護職員が関与する機会がないまま長期間が経過してしまうと、算定要件を満たせなくなるおそれがあるため注意が必要です。

訪問1回あたりの時間配分の目安
訪問看護のリハビリは、1回あたりおおむね30分〜60分程度の枠で実施されることが多く、その中で観察・測定・実際の介入をバランスよく組み立てる必要があります。時間配分の一例は次のとおりです。
| 工程 | 目安時間 |
|---|---|
| 状態観察・聴取 | 5分程度 |
| バイタル測定 | 5分程度 |
| リハビリ実施 | 30〜40分程度 |
| まとめ・申し送り事項の確認 | 5分程度 |
利用者の体調や当日の状況によって時間配分は前後しますが、観察・測定を省略せずに行いながら、実質的なリハビリの時間もしっかりと確保することが大切です。特に新人セラピストの場合は、時間配分の感覚をつかむまでにやや時間がかかることもあるため、先輩職員との同行を通じて実践的に学んでいくとよいでしょう。
訪問時の状態観察
リハビリを始める前には、次の3つの軸で状態を観察します。
- 訪問と訪問の間に起きた変化(疼痛・転倒・日常生活での困りごと等)の聴取
- 入室時の観察(顔色・移動状況・睡眠状態・精神状態等)
- 前回のリハビリ後から身体状況にどのような変化があったか
バイタル測定
リハビリを安全に実施するために、次の6項目のバイタル測定を行います。
| 測定項目 |
|---|
| 体温 |
| 血圧 |
| 脈拍数 |
| 経皮的動脈血酸素飽和度 |
| 肺の副雑音 |
| 腸の蠕動音の有無 |

バイタル測定は「いつもと同じだから」と省略せず、毎回きちんと確認することが大切です。わずかな変化に気づけるかどうかが、リハビリ中の急変を未然に防ぐことにつながります。

訪問看護計画書との関係
リハビリの内容は、訪問看護計画書に定めた目標・問題点・解決策に沿って実施されます。利用者ごとの生活目標(例:トイレ動作の自立、屋外歩行の再獲得等)を設定し、その達成に向けた具体的な問題点と介入方針を計画書にきちんと落とし込むことで、リハビリの方向性が明確になります。
職種ごとの視点の違い
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は、それぞれ得意とする視点が異なります。
- 理学療法士:起居動作・歩行等、基本的な身体機能の回復にアプローチする
- 作業療法士:食事・入浴・トイレ動作等、生活行為そのものの自立度を高める視点を持つ
- 言語聴覚士:嚥下機能・発話・コミュニケーション能力の維持向上にアプローチする
訪問看護ステーションに複数の職種が在籍している場合は、利用者の状態に応じてどの職種が主担当となるかを丁寧に検討し、必要に応じて複数の視点を組み合わせて介入することもあります。
実際のリハビリ内容の具体例
脳梗塞による左片麻痺があり、配偶者による介助なしではトイレ動作ができない利用者の場合、次のような介入内容が行われます。
- 神経筋促通療法による麻痺側の運動機能改善へのアプローチ実施
- 体幹筋を賦活し、座位・立位のバランス能力を高める訓練実施
- 高次脳機能障害がある場合は、その影響を踏まえた動作手順の工夫実施
こうした介入を積み重ねることで、「トイレ動作の自立」という目標達成を目指します。目標達成の過程は一直線ではなく、体調の波に合わせて内容を柔軟に調整していくことが求められます。
家族への指導・生活環境への働きかけ
訪問看護のリハビリは、利用者本人への直接的な介入だけにとどまりません。在宅という生活の場だからこそできる、家族への丁寧な介助方法の指導や、生活環境そのものへの働きかけも重要な役割です。特に高齢者のみの世帯や、家族の介助経験が浅い場合は、一度の説明だけでなく、複数回に分けて繰り返し確認しながら指導することが定着につながります。
- 家族が日常的に行う介助方法(移乗・体位変換等)について、負担が少なく安全な方法を指導する
- 手すりの設置位置、家具の配置等、生活動線上の環境調整を提案する
- 福祉用具(歩行器・車椅子・ベッド等)の選定・使い方についてアドバイスする
病院や施設でのリハビリと異なり、訪問看護のリハビリは利用者が実際に生活する空間で行われます。動線・段差・家具の配置など、その場でしか気づけない課題を見つけられることが訪問リハビリならではの強みです。
実務チェックリスト
- 訪問前後の状態観察(訪問間の変化・入室時観察・前回からの変化)を漏れなく実施しているか
- バイタル測定6項目を毎回確認しているか
- 訪問看護計画書の目標・問題点・解決策とリハビリ内容が対応しているか
- 1回20分以上・週6回以内という算定ルールを満たしているか
- 3か月に1回程度、看護職員によるモニタリングを行っているか
- 複数職種が関わる場合、主担当と役割分担が明確になっているか
訪問看護記録に残しておきたい内容
リハビリの内容は、後から振り返って効果を評価できるよう、次の点を記録に残しておくことが望ましいとされています。
- 訪問前後の状態観察の結果訪問間の変化・入室時の様子・前回からの変化を具体的に記録する。
- バイタル測定値6項目の測定結果を数値・所見として記録する。
- 実施した介入内容どのようなアプローチを行ったか、目標との関連を明記する。
- 次回への申し送り次回訪問時に確認すべき点、注意事項を記録に残す。
- 家族への指導内容実施した指導内容と、家族の理解度・実施状況を記録し、次回の指導に活かす。
リハビリの内容が毎回ワンパターンになっていないか、記録を通じて定期的に振り返ることも大切です。目標に対する効果測定ができていないと、訪問看護計画書の見直しのタイミングを逃してしまい、利用者の状態変化にリハビリ内容が追いつかなくなることがあります。
よくある質問
訪問看護のリハビリはどの職種が担当しますか?
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が担当します。多くのステーションでは3職種すべてが揃っていないため、在籍する職種が対応することが一般的です。
セラピストだけが継続的に訪問していれば問題ありませんか?
おおむね3か月に1回程度、看護職員によるモニタリング(同行訪問等)が必要とされています。セラピストのみの訪問が長期間続くことのないよう注意が必要です。
1回のリハビリの最低時間・週の上限回数はありますか?
1回あたり20分以上の実施が必要で、1人の利用者につき週6回を限度として算定されます。
リハビリは家族への指導も含まれますか?
含まれます。利用者本人への直接的な介入だけでなく、家族への介助方法の指導や、生活環境の調整・福祉用具の選定アドバイスなども、訪問看護のリハビリの重要な役割です。

看護師との連携が欠かせない理由
訪問看護のリハビリは、あくまで看護業務の一環として位置づけられています。そのため、セラピストが把握した情報を看護師と共有し、医療的な視点からのフォローと組み合わせることが重要です。たとえば、リハビリ中に発見した皮膚の異常や、体調の変化は、速やかに看護師・主治医へ共有する必要があります。
セラピスト単独では判断が難しい医療的な内容(服薬の影響、褥瘡の悪化リスク等)については、看護師と密に連携することで、利用者の安全を確保しながらリハビリを継続できます。定期的なカンファレンスや情報共有ノートの活用など、事業所ごとに連携の仕組みを整えておくとよいでしょう。連携が不十分なまま業務を分担してしまうと、些細な変化の見落としにつながるおそれがあります。特に非常勤やパートタイムのセラピストが多い事業所では、勤務日がずれることで情報共有のタイミングを逃しやすいため、共有方法をあらかじめルール化しておくことが望まれます。
多職種連携の広がり
訪問看護のリハビリは、訪問看護ステーション内の連携だけにとどまりません。主治医・ケアマネジャー・訪問介護員等、在宅を支える多職種との情報共有も欠かせません。特にケアマネジャーには、リハビリの進捗状況や生活動作の変化を定期的に報告することで、ケアプラン全体の見直しにも役立てられます。報告を怠ると、利用者の変化に応じたサービス調整が遅れてしまうこともあるため、日頃からのこまめな情報共有が求められます。訪問看護ステーション側から積極的に情報を発信する姿勢が、多職種からの信頼にもつながります。
まとめ|観察と目標設定に基づいたリハビリを提供しよう
訪問看護でのリハビリは、単なる運動訓練ではなく、状態観察・バイタル測定・訪問看護計画書に基づく目標設定とセットで提供されるものです。算定上のルールも踏まえながら、安全で効果的なリハビリを提供していきましょう。在宅ならではの環境調整・家族指導・多職種連携も含めた総合的な視点を持つことが、質の高い訪問リハビリにつながります。日々の観察・記録の積み重ねが、利用者の変化にいち早く気づき、必要な調整につなげる土台になります。
- 訪問看護のリハビリは理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が担当
- 訪問前後の状態観察(3つの軸)とバイタル測定6項目を毎回実施する
- リハビリ内容は訪問看護計画書の目標・問題点・解決策に沿って行う
- 1回20分以上・週6回限度という算定ルールがある
- 3か月に1回程度、看護職員によるモニタリングが必要
訪問看護のリハビリに向いている人の特徴、外来リハビリとの違いについても、関連記事をあわせてご確認ください。








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